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 中国で拡大する「反日行動」              かけはし2005.4.18号

右翼政治家・自民党政府の排外主義的居直りを許すな


「反日デモ」の背景と原因

 中国各地で日本の常任理事国入り反対などを求める「反日デモ」が拡大している。四月二日の四川省成都市で行われた数千人規模の集会を皮切りに、三日の広東省深 市で二千人規模のデモ、九日には北京で一万人規模のデモがおこなわれ、上海や成都などでも抗議行動が確認された。十日には広州で二万人、深 で一万人、海南省海口市で一万人、江蘇省蘇州市では二千人規模のデモが行われた。
 デモでは「日本の常任理事国入り反対」「日本製品ボイコット」「魚釣島を中国に返せ」などのスローガンの書かれた横断幕や中国国旗が掲げられ、抗日戦争を題材とした国歌が歌われた。九日北京での抗議デモでは、デモ隊が大使館前で警備する機動隊の部隊にせまり、ペットボトルやコンクリート片などを大使館に向かって投げつけた。また各地のデモでは日系スーパーなどが抗議行動の対象とされた。
 「反日デモ」はなぜ起こったのだろうか。ことの発端は、三月二十日に国連のアナン事務総長が発表した国連改革に関する勧告についての発言である。国連改革の中で焦点となる安保理拡大について、勧告では、常任理事国六カ国増を柱としたA案と任期四年で再選可能な準常任理事国新設を柱としたB案が併記されている。アナン事務総長は、国連加盟国がA案で合意した場合、「アジア地域の割り当て二カ国のうち一つはもちろん日本に行く」と語った。その直後から日本の常任理事国入りに反対する署名が中国各地で集められた。三月二十九日には、北京吉利大学の学生が日本大使館を訪れ、学生ら五千人による常任理事国反対署名が書かれた横断幕を届けた。署名はネットでも集められ、四月四日の段階で千五百万人の署名が集まった。
 その最中、アサヒビールの名誉顧問を務める中条高徳が、「新しい歴史教科書をつくる会」の会報に「靖国神社を参拝しない政治家に、政治にあたる資格はない」という趣旨の文章を発表したなどとして、中国東北部の吉林省長春市などでアサヒビールの不買運動が起こった。「抵制日貨」(日本製品ボイコット)というスローガンが日本の常任理事国入り反対運動の中に急速に広まった。「抵制日貨」というスローガンは、一九一九年、山東省のドイツの権益を日本が継承することを定めたベルサイユ条約に反対する北京学生の反対運動から急速に反政府運動として全国に拡大したいわゆる「五四運動」のなかで掲げられたスローガンである。

不信感を拡大させる日本政府


 四月五日には、中国民衆の感情をさらに逆なでするかのように、日本の文部科学省が「新しい歴史教科書をつくる会」の主張に沿った扶桑社の教科書を検定に合格させた。これは独島(竹島)は日本固有の領土であり、現在は韓国によって不当に占領されている、という文部科学省の改定意見にそって改定された同社の「公民」の教科書の検定合格によって批判を強めた韓国をも巻き込み、日本政府に対する批判を拡大させた。
 それだけではない。二〇〇一年八月、二〇〇二年四月、二〇〇三年一月、二〇〇四年一月に東アジア各国の要請を無視して強行された小泉首相による靖国参拝や軍隊慰安婦をはじめ戦争被害者に対する戦後補償を一貫して棚上げにしてきた。そして侵略戦争に対して真摯に反省することなく、アメリカの対テロ戦争への協力を突破口とした恒常的な海外派兵を目指す憲法九条改悪策動などによって、アジア民衆の不信感はこれまでになく高まっている。そのなかで国連常任理事国入りが浮上したことによる、起こるべくして起こった「反日デモ」なのである。
 にもかかわらず、一連の「反日デモ」を報道する日本のメディアでは「中国政府 なぜ暴力を止めないのか」(4月11日「朝日」社説)、「領土問題や教科書問題などで対日圧力に利用できると考える反日デモは放置している。日本政府は、このような中国政府の対応を認めてはならない」(同「読売」社説)、「中国人も非理性的な反日運動が自国の国益を損なうことを理解してもらいたい」(同「毎日」社説)などという、まるで問題は中国政府が「暴力的デモ」を容認したことにあるかのような報道が氾濫している。
 日本の政治家たちも同じような反応を示している。「破壊活動を止めなかった」(町村外相)、「貧富の差のはけ口のひとつとして、噴出している。当局もガス抜きで見過ごしている」(安倍晋三自民党幹事長代理)、「中国の一部指導者が、こういうことが日本に圧力をかけるのに良いと考えるなら大きな間違いだ」(高村正彦元外相)。政府や与党の責任ある立場の政治家は、戦後補償などに対する自らの不作為こそが今回の「反日デモ」を引き起こしたにもかかわらず、それを棚に上げて「反日デモ」を批判しているのだ。四月十日に練馬の陸上自衛隊駐屯地で行われた同駐屯地の創立記念式典に出席した石原慎太郎東京都知事は、「地方の不満が募る中、中国はその不満を自国の政府でなく日本に向けさせている」「私たちの不満はいったいだれが中国に伝えるのか」などと発言している。このような発言を許してはならない。

階級的自立性と国際主義


 その一方で、今回の「反日デモ」の底流をながれるもうひとつのダイナミズムである「愛国主義」という側面を認識しなければならない。世界的で歴史的な階級闘争の後退局面における資本のグローバリゼーションは中国を資本主義化へむかわせた。中国共産党は国有資産の私有化を進める一方で「三つの代表」論を通じて、労働者階級の利害ではなく、支配的エリートとブルジョアジーの利害を代表する政党への脱却を図ってきた。社会主義を捨てた一党独裁政党の支配の正統性を担保するものは、抗日戦争であり、民族主義であり、愛国主義であった。いま中国で台頭しつつある民族主義や愛国主義は、帝国主義諸国に対する被抑圧民族のそれでもなく、周辺国のそれでもない。それは一党独裁と資本主義国家という党と国家の正統性を保証するためのものでしかない。
 「グローバリゼーションの時代に民族主義や愛国主義は時代遅れだ」と考えるのは誤りである。グローバリゼーションの時代だからこそ、ブルジョアジーはより自由な資本の移動を求める一方で、自らをまもるための暴力装置を強化しようとする。軍事的にだけでなく、経済的にもそうである――WTO交渉は極めて具体的な各国の利害が反映される――。それは労働者を分断し、排外主義をあおる。
 領土問題がその最たる例だ。ブルジョアジーの経済的利権という問題が、「領土問題」という没階級的なスパイスで味付けをされている。その意味で独島や魚釣島など領土・資源問題における関係各国の共同管理・開発という主張はオルタナティブたり得ないだけでなく、反動的である。それはブルジョアジーによる共同開発が前提となっていること、そしてそれが大量生産・大量浪費という人類と地球の未来を閉ざす資本主義システムの延長を前提としているからである。これは「労働者政府か資本家政府か」という教条的な提起とは無縁の、エコロジーと人類の未来に関わる主張である。人類が自然と調和のとれた生産力を維持する方法を社会的に定着させるまでは、地球資源のこれ以上の略奪を許してはならない。
 グローバリゼーションの時代に問われているのは階級的自立性と国際主義である。戦争と貧困に反対する東アジアの労働者民衆は団結して日本帝国主義の策動と各国政府が進める新自由主義政策を粉砕しよう。
(4月12日 早野 一)



教育基本法の改悪を先取りした教科書検定
新自由主義と大国主義路線を支える教科書づくりに抗議を


侵略戦争の賛美
を積極的に承認

 文部科学省は、四月五日、来年度から中学校で使われる教科書の検定結果を発表したが、天皇制と侵略戦争、植民地支配を賛美し、憲法改悪と戦争ができる国家作りを主張する「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史と公民教科書(いずれも扶桑社)を検定で合格させた。われわれは、「つくる会」の教科書が四年前、初めて検定に合格した時、中国や韓国などのアジア民衆から厳しい批判を浴びたにもかかわらず、小泉政権がなんら反省することなく、開き直り、合格させたことを糾弾する。
 さらに問題は、「つくる会」の教科書を新自由主義と大国主義路線を支えていく教科書として積極的に位置づけて合格させていることだ。歴史教科書に対して中山成彬文科相は、○四年十一月に内閣府主催のタウンミーティングなどで「やっと最近、いわゆる『従軍慰安婦』とか強制連行とかいった言葉が減ってきたのは本当に良かった」「自虐史観にたった教育だけはしてはいけない。自分たちの民族や歴史に誇りを持っていけるような教育をすることが大事だ」などと「つくる会」と同様の発言を公然と繰り返してきた。
 そもそも中山は、一九九七年に発足した「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の副代表であり、現在は「座長」である。また、「つくる会」と共同行動を深めながら、憲法改悪と教育基本法改悪運動、「自虐史観」歴史教科書撲滅運動を率先して行ってきた。このような人物が文科相に就任し続けていることを絶対に許してはならない。
 中国や韓国の民衆は、「つくる会」教科書への糾弾や日本の国連常任理事国入りの野望に対して、連日、日本大使館への抗議行動、反日デモ、日本企業批判と商品不買運動などを展開し、その動きは大きく広がりつつある。四月九日、中国北京市では二万人近くの反日デモが決行され、日本大使館を実力闘争によって包囲した。アジア民衆の批判を受けとめ、小泉政権による教育の反動化攻撃をはねかえしていかなければならない。「つくる会」教科書採択絶対阻止!教科書検定制度による国定教科書化攻撃をやめろ!憲法改悪と教育基本法改悪iに反対し、「日の丸・君が代」強制と弾圧に抗議していこう。

「韓国併合」「満州
国」の建設も美化

 「つくる会」の歴史教科書の反動的内容の主な箇所は、以下のようになっている。アジア太平洋戦争を「大東亜戦争」とよび、「日本は米英に宣戦布告し、この戦争は『自存自衛』のための戦争であると宣言した」と書いて、侵略戦争を真っ向から否定し、正当な戦争であったと主張するのだ。そして、この侵略戦争によって欧米の植民地だった諸国の独立を実現していったなどと手前勝手にでっち上げまでもしている。
 同様の水準として、「満州は、五族協和、王道楽土建設のスローガンのもと、日本の重工業の進出などにより急激な経済成長をとげた」などと記述し、天皇制軍隊の関東軍の犯罪とかいらい国家である満州国の植民地支配を美化している。
 このような歴史の偽造は、一貫した基調として前面に押し出されている。それは一見、客観的な装いをしながら巧妙に自己正当化のトーンを刷り込んでいく手法を使っているのだ。例えば、「韓国併合」(一九一○年)について、「日本政府は、日本の安全と満州の権益を防衛するために、韓国の併合を必要であると考えた」などと述べ、一方的な侵略戦争と植民地支配の犯罪を隠蔽しつつ、やむをえなかったというニュアンスを強めながら、結局は正当な選択だったと言いたいわけだ。

軍隊慰安婦の記述
が完全に消えた

 申請本段階の内容を見るとその露骨な意図が見える。三・一独立運動(一九一九年)について、「朝鮮総督府は、その参加者多数を検束した」と簡単に書くことによって日本軍による虐殺弾圧の実態を無視している。「創氏改名」については、民衆自身の要求に対応したような記述をしながら、植民地支配の一環である人権侵害犯罪を防衛しようとしている。このような詭弁に対して、さすがにごまかしきれないとして「誤解するおそれのある表現である」と検定意見がつき、しぶしぶと「武力で弾圧した」、「日本式の姓名を名乗らせる創氏改名などが行われた」と修正せざるをえなかった。
 南京大虐殺については、「注」という形式で「中国の軍民に多数の死傷者が出た。……実態については資料の上で疑問点も出され、さまざまな見解があり、今日でも論争が続いている」と書くことによって少なくとも三十万人が虐殺された事実をぼかすことに重点を置いている。申請本は、「東京裁判では、日本軍が多数の中国民衆を殺害したと認定された」という書き方をして、なんとしてでも事実を直視することを必死に避けている。
 軍隊慰安婦の記述は、全くない。今回、他の教科書も軍隊慰安婦を本文に記述しなかった。「つくる会」の一九九七年結成以降、自民党とともに「軍隊慰安婦」問題を取り上げ、抹殺運動を強化してきたことによって教科書会社が自主規制するという事態になってしまった。教科書会社の帝国書院が、元慰安婦の賠償請求訴訟に関する新聞記事を掲載しただけであった。
 「つくる会」の教科書には、強制連行の記述もない。ただ、検定意見がつき、「多数の朝鮮人や中国人が、日本鉱山などに連れてこられ、きびしい条件のもとで働かされた」と修正した程度である。どうしても強制連行という犯罪を消し去りたくてしょうがないのだ。
 「つくる会」の公民教科書も天皇制、大日本帝国憲法、教育勅語などを賛美した内容になっている。とりわけ現在進行形であるイラク侵略戦争への自衛隊派兵を支持し、戦時治安弾圧体制作りを意識的に押し出している。また、民衆の人権と権利制限、「対テロ」グローバル戦争への参戦、「国防義務」などを掲げながら憲法改悪を強調しているのだ。
 具体的には、「日本国憲法における自衛隊の位置づけが不明瞭ならば、憲法の規定自体を変えるべきであるという意見もある」という形式でアプローチし、自衛隊のPKO(国連平和維持活動)、日米安保体制の強化と「国防義務」を喚起している。なんと自衛隊の写真を十二枚も使い自衛隊の存在意義を突出させようとしている。
 小泉政権の大国主義路線を忠実に反映して、竹島問題を取り扱っている。申請段階では「韓国とわが国で領有権をめぐって対立している竹島」と記述していた。だが、「領有権について誤解する恐れがある」と検定意見がついた。そして、ナショナリズムを意識的に記述させていく先例として、「韓国が不法占拠している竹島」と表現をストレートに変えさせてしまった。
 さらにジェンダー・フリーの敵視、男女共同参画社会作りの否定、家族主義と性別役割分担の強調など女性差別主義、差別排外主義の煽動だ。このような反動的な教科書を教育現場で使うことを絶対に許してはならない。

「つくる会」教科書
の採択絶対阻止へ

 検定合格した教科書は、八月末までに全国各地の教育委員会で選択され、採択していく日程となっている。「つくる会」の反動教科書の採択阻止に向けて各地域の取り組みを強化していかなければならない。まず確認しなければならないのは、検定制度自体が国家権力の教育への不当な介入であることだ。教科書の検定によって、実質的に国定教科書化を強めてきたのが実態である。そして、教科書採択制度を改悪と同時に、自民党、「つくる会」、日本会議などの天皇主義右翼勢力によって「自虐史観」教育撲滅運動を展開し、圧力を強めてきた。その過程において教育労働者や保護者の意見を排除し、情報開示などを狭めて、「つくる会」の教科書を東京都と愛媛県の障害児学校などで採択している。
 「つくる会」は、今年の採択目標を一〇%にしている。すでに地方議会に対して自民党の地方議員と日本会議などが連係して請願運動を行っている。「つくる会」教科書採択運動は、教基法改悪、憲法改悪運動と一体のものとして押し進めていることに注意しなければならない。各地域のこの間の教基法・憲法改悪運動の成果と結合させながら「つくる会」教科書の採択阻止を掲げて、各自治体と教育委員会への申し入れや草の根運動を積み上げていこう。    (遠山裕樹)


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