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相次いで明らかになった戦争犯罪             かけはし2006.6.19号

米軍によるイラク市民虐殺を許すな!

植民地主義とレイシズムに満ちた侵略と占領をただちにやめろ


暴かれた残虐な作戦の実像

 イラク戦争・占領支配の泥沼化の中で、米軍によるイラク市民の虐殺事件が相次いで暴露されている。
 五月二十六日、米国のメディアは昨年十一月十九日にイラク西部のアンバル州ハディサで、米海兵隊員が女性や子どもをふくむ一般市民二十四人を虐殺したと報じた。この事件は当初、武装勢力が仕掛けた路肩爆弾で民間人が十五人死に、その後の戦闘で武装勢力八人が死亡したと報じられていた。しかし生存者の証言などにより、実際には路肩爆弾で米海兵隊員一人が死亡した後、海兵隊員が付近の民家を捜索し、女性や子どもをふくむ民間人二十四人を一方的に虐殺した可能性が高まったのである。
 海兵隊幹部から説明を受けた共和党のクライン下院議員は「虐殺にあたる」と認めている。五月三十一日には、ブッシュ大統領自ら、海兵隊によるハディサ虐殺が事実なら「法を破った者は厳正に処罰されるだろう」と語り、初めてこの事件に言及した。
 しかし米軍によるイラク民間人の虐殺疑惑はハディサにとどまらず、さらに拡大している。イラク中部イシャキでは、三月十五日に米軍の掃討作戦で武装勢力との交戦になり、「巻き添え」で最大九人が死亡したと米軍が発表した。米軍は、この攻撃が「作戦規則」にのっとった「適切」なものだとしている。しかし、英BBC放送によれば、地元の警察は生後六カ月の乳児など子ども三人を含む一家十一人を米軍が射殺したと主張している。この件については米軍の側は「民間人虐殺はまったくのウソ」と反論しているが、子どもの遺体などのビデオ映像も存在している。
 西部ハマンディヤでは、四月二十六日に海兵隊員ら八人が民家から男性を連行して殺害した。五月二十六日になって米軍は「刑事捜査が必要」として、虐殺行為があったことを事実上認めている。そして五月末には中部サマラで、病院に車で向かう途中の妊婦とその親族の女性が「警告を無視して検問所で停止しなかった」として米兵の銃撃を受け、胎児とともに死亡し、駐留米軍が調査中との報道も入っている。

だれもが反米武装勢力に見える


 イラクではマリキ内閣の発足にもかかわらず、「内戦」ぶくみの武装勢力の攻撃が持続、拡大しており、治安状況は悪化の一途をたどっている。二〇〇三年三月のイラク開戦以後の米兵の死者は二千五百人に迫っており、米兵の恐怖に駆られた民衆虐殺などの人権侵害がエスカレートしている。六月八日、イラク政府のマリキ首相と駐留米軍のケーシー司令官らはバグダッドで記者会見し、「イラク聖戦アルカイダ組織」の指導者アブムサブ・ザルカウィが米軍の攻撃で死亡したと発表し、「テロとの闘い」の「成果」だと述べた。しかしザルカウィの死によって一連の「テロ」攻撃の真相は闇のなかに葬られたとも言えるのであり、反米武装闘争や「テロ」が下火になるなどとはだれも考えてはいない。
 米軍にとって誰もが「反米武装勢力」に見えている。そのため市民への無差別攻撃を繰り返し、そのことが民衆の反米意識をいっそう増大させて、占領支配を危機に追い込むという悪循環が繰り返されている。イラク保健省の発表によれば五月だけでも遺体安置所に運ばれたイラク市民の死者数は千四百人を超えている。
 二〇〇四年四月、十一月の二度にわたるファルージャでの大虐殺、アブグレイブ刑務所でのおぞましいまでの虐待、グアンタナモをはじめとして世界各地に設置された収容所での「テロリスト容疑者」とされた人びとへの、国際人権法を踏みにじった人権侵害に示されるように、米軍の無法ぶりは国際世論の非難の的となっている。アムネスティ・インターナショナルが五月二十三日に発表した昨年の世界の人権状況をまとめた年次報告書は、「テロとの闘いの名のもとに各国政府は人権侵害を黙認している」と批判した。とりわけアメリカとその同盟国の収容所では数千人が起訴の見通しや公正な審理を受ける見通しもないままに拘束されていると批判している。またグアンタナモをはじめアフガニスタンやイラクの収容所では二〇〇五年末の段階で一万四千人が拘束されていると指摘した。

戦争被害者への公正な補償を

 ハディサ虐殺などで再びクローズアップされている米軍の戦争犯罪は、まさに戦争の見通しのつかない泥沼化と、米軍の植民地主義・レイシズムの表現である。それは自らの侵略・占領がなんの「大義」もない貧しい民衆へのテロ・リンチであることへのうしろめたさがもたらす「恐怖」の深さを示すものである。
 二〇〇四年秋、ファルージャに猛攻をかける前に、第1海兵師団第3大隊は戦意を高めるために「古代ローマ式の戦車レース」を模したセレモニーを行ったと言われる。
 「なかでもファルージャに一番乗りした『キロ中隊』の猛者たちは、手作りの衣装と小道具で古代兵士になりきった。そして中隊長は彼らに、映画『グラディエーター』で『野蛮人』を殺しに行くローマ兵にかけられた激励の言葉を繰り返した。『ここで諸君がやることは永遠に記憶されるだろう』」(「米軍イラク『虐殺』戦慄の目撃証言」、『ニューズウィーク』日本版06年6月14日号)。そしてファルージャでの戦闘では、指揮官の一人は「(起爆装置になる)携帯電話を持つ人間を見つけたら、迷わず頭に銃弾をぶち込む」と語ったという。そして昨年十一月のハディサの虐殺の当事者も、この「キロ中隊」だったのである。
 同記事は良心的兵役拒否者として帰国した陸軍兵士クリフ・ヒックスの「鎮痛剤や酒で神経を麻痺させてからパトロールに出ていた。まちがって人を殺すのも日常茶飯事だった」という証言を紹介している。ウソにまみれた「大義」のない戦争に動員された米軍兵士の絶望と恐怖――ここにこそ日常化する虐殺と犯罪の根拠がある。
 五月三十日、クウェート駐留の米兵千五百人がイラク西部アンバル県に増派された。五月三十一日には、イラク南部の最大都市バスラで一カ月間の「非常事態宣言」が発令された。同日サマワでは陸上自衛隊とオーストラリア軍の車列が爆弾攻撃を受けた。支持率の低下に直面するブッシュ政権は、それにもかかわらず戦争と占領を終結させる道を自らふさいでいるようである。
 これ以上の占領の継続が、イラク市民に対する占領軍の虐殺・虐待・人権侵害をさらに多発させ、イラク民衆の民主主義的主権にもとづく平和と復興を完全に頓挫させることは明白だ。アフガニスタンにおいても戦争がさらに拡大し、占領軍とカルザイ政権への批判が高まっている。
 六月末のブッシュ・小泉会談は「日米同盟の新たな段階」に向けたグローバルな「軍事一体化」を改めて宣言する場になるだろうと予測されている。こうした「対テロ」戦争での一体化を絶対に許さず、すべての占領軍のイラク、アフガニスタンからの撤退を要求しよう。自衛隊のイラク、インド洋からの撤退を! ブッシュのイランへの新たな軍事的冒険を許すな! ブッシュと米国の戦争犯罪を究明し処罰を! 戦争被害者への公正な補償を!(平井純一)


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