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ラテンアメリカ・カリブ海地域で動いている2つのプロジェクト
                            
かけはし2007.7.30号

社会運動の発展の度合いが将来を決定する

エリック・トゥーサンへのインタビュー(下)
世界銀行・国際通貨基金に代わる金融機関設立の動き
                         ベロニーク・キーセル


資本市場から
借金をしない

 重要な点は、二つの新組織は世銀やIADBと違って、資本市場からは借りないということである。世銀は、資本市場から資金を借り入れているため、しばしばそれを自分たちの新自由主義政策の言い訳として使う。曰く、資本市場から借り入れている銀行としては、最低利率で借りるためにはAAAランクを保つことが非常に重要なのです、と。もし私たちがどんな犠牲を払っても利益を追求するという政策を踏襲しないつもりなら、このランク付けに左右されるようになってはならない。

 南銀行は、自らが融資を行う資金を以下の4つの方法で調達する。
(1)加盟国の出資
(2)加盟国からの借入
(3)共通国際税、即ち、加盟国に様々なタイプの国際税を課し、その税収は開発銀行の方に回す。例えば、トービン税、多国籍企業の利益送還に課す税、環境保護税などが考えられる
(4)寄付
 もし、南の通貨基金が設立されるとしたら、同基金が火急の際に加盟国を救済するための金は、各加盟国の外貨準備金の一部から提供される資金が使われる。必要な際には、基金はすべての加盟国に外貨準備金の二〇%の供託を呼びかける。例えば、もしボリビアが投機筋の攻撃を受けたら、即座に同基金はブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、パラグアイ、エクアドルの各中央銀行に送金を呼びかける。数時間後には各国の準備金の二〇%が、ボリビア救済のために集められる。重要なのは、資金は恒久的に貯めおかれるのではなく、緊急事態のときだけ、メンバーがお金を出し合うということだ。
 エクアドル案の一般原則のその他の重要な点は、加盟している国家が南銀行や南通貨基金の話相手になるということである。公営企業や小規模生産者、共同組合、先住民コミュニティなどが融資先として考えられている。論理上、南の巨大多国籍企業、南アメリカで言えば、ペトロブラス(半官半民の巨大ブラジル企業)、PDSVA(ベネズエラの石油会社)、テチント(アルゼンチンの民間企業)……などには融資されない。融資は、公共セクター、小規模生産者、地域コミュニティ、自治体当局、小教区などに対して行われる。
 融資金は加盟国政府を経由して、これらの相手に貸し付けられる。これは、南銀行を「マストドン(象に似た巨大な古生物)」になるのを防ぐのが目的である。世銀に起こっている様な事態は避けなくてはならない。世銀は一万三千人近い雇用者を擁し、南の隅々にまで目を光らせている。エクアドル案では、南銀行や南基金の業務を上記のように設定することで、この二機関が大きな権威を持つことがないよう、巧妙に考案されている。
 南銀行の制度は、職員の数からいうとあまり多くなく、各国政府が相談相手になる。その目的は、各国が、南銀行の指導の元、環境に配慮した代替的開発モデルを見つけ出し、社会正義を推進し、普段は容易に資金にアクセスできない人々を支援する、そのために必要な所に主に資金を貸し付けるようになることである。だから、まずは、巨大民間企業は融資先にはなりえない。

エクアドル案
と他案の違い

 エクアドル案では、各加盟国は、毎年、南銀行と南通貨基金の業務や行為を公に説明するような仕組みを導入しなくてはならない。これには、議会での議論を必ず取り入れなくてはならない。
 記録は門外不出とするのではなく、基本的に公的所有物とするべきである。これには臨時の例外規定がつく。南通貨基金は、投機による攻撃を受けている時は、情報を一時的に機密にすることを決定できる。

南銀行も課税
の対象となる

 訴追免除の特権はない。つまり、南銀行ならびに南通貨基金当局は、自分たちの行為に関して法廷で証言する義務がある。南銀行ならびに南通貨基金は倫理的行為の主体になりうると考えられる。従って、告訴することもできる。

ブラジルの南
銀行への接近

 まず特筆すべきは、それまでためらっていたブラジルが南銀行への参加を表明したことである。しかし、現ルラ政権の経済・社会政策や外交政策から容易に想像がつくことだが、ブラジルがこの南銀行を商業政策のための道具と考え、欧州連合(EU)を無批判にモデルとした経済ブロックを確立する話ばかりしていることに留意する必要がある。
 CADTMと他の社会運動(ヨーロッパのも、その他地域のも)にとって、EUは一番いいモデルとはいえない。もちろん、良い面もある。通貨が共通で、内部の国境を意識しなくて済む場所で、特に人々が自由に移動できる。しかし、現在のEUは新自由主義政策を支持し、人の移動よりも資本の循環に力をいれている。東からの新加盟国間では、市民移動の新たな制限も行われている。
 EUの中では、相変わらず労働者間の競争が激しく行われている。EUの枠組みの中で、労働条件は向上してこなかったし、雇用主の労働者への義務も大して進展していない。社会を守るシステムがまだ確立していないところ、例えばハンガリーなどでは、ある意味、EUへの参加イコール民営化となる傾向がある。
 ブラジルのようなEUに対する無批判な賞賛は、もちろん他のラテンアメリカ政府にも共通している。彼らはただEUに幻想を抱いているだけかも知れない。しかし、多分おそらくは、彼等は「ヨーロッパは現在の状況の中でとてもうまくやっている、このまま新自由主義にぴったりと近い路線を続けるモデルを提案する必要がある」と共通して考えていると思われる。

ブラジルをめ
ぐる綱引き

 ラテンアメリカでのブラジルの経済力を考えると、ブラジルの参加は南銀行の力を最初から強めることになり、それは非常に重要な意味をもつ。ブラジルの問題点は、ルラ政権の方向性であり、現在採用されている経済・社会モデルにある。ブラジルの南銀行への参加が、銀行の性質を新自由主義からそう遠くない、より伝統的な者にする方向で働くことははっきりしている。
 一方、ブラジルが参加しなければ、我々が提案している代替的モデルに近い銀行にすることはより容易となるだろう。ブラジルが南銀行に参加した理由は、そうしないわけにはいかなかったからである。もし、ベネズエラ・アルゼンチン案に沿った方向で南銀行が設立されなかったなら、ブラジルがこの銀行を歯牙にもかけなかったという可能性もないわけではない。しかし、この地域での経済支配を維持するためには、ブラジルは南銀行から完全に距離を置くことはできないだろう。
 一方、エクアドルやベネズエラ、ボリビアの立場に立って考えると、彼等がブラジルの参加を求めるのは理解できる。なぜなら、ブラジルの経済力は重要であり、また、同地域の一連の進歩的政権は、ルラ政権と米国の接近を牽制するためにブラジルといい関係を維持することを望んでいる。ブラジルが米国と近しくなれば、米国の野望に対して同地域が脆弱化することになる。
 外交・地政学的ゲームがまさに目の前で繰り広げられている。理想を言えば、ブラジルの政権が真に左翼的な政策を採って、米国との同盟関係や農産物輸出振興の基本方針をやめ(ブラジルの輸出は地域市場を独占しかねない)、輸出志向経済とは違う方向にいくことである。しかし、現状はこの理想からはほど遠い。

地域に共存す
る二つの計画

 現在、パラグアイは極右政権であるが、今年の大統領選で入れ替わる可能性がある。左翼の神父が勝利をおさめそうである。アルゼンチンは、反IMF、反新自由主義を標榜しているが、現アルゼンチン政権は自国内の資本主義の強化を目指している。
 実際、今日ラテンアメリカでは、二つの大きな流れが起こっている。
 かたや、南銀行と拡大するメルコスール(南米南部共同体)の存在がある。アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラは、米国が主導するFTAA(米州自由貿易協定)に反対するより強い地域同盟を求め、手始めとしてブラジルを仲間にし、メルコスールに固執している。ボリビアもそうである。そしてエクアドルはオブザーバーとしてそれに参加している。つまり、同地域には主に貿易と経済関係で規定され、資本主義モデルに支配された経済ブロックがある。この経済圏のおかげで為替の防衛とある種の地域統合が可能となっている。
 そして、また別の取り組みもある。ALBA(the Bolivarian Alternative for Latin America and the Caribbeanボリバール主義)で、ベネズエラとボリビアが参加している。キューバ、ハイチ、ニカラグアも加わった。エクアドルはオブザーバーとして参加している。ALBAの会合が、南銀行に関するキト会議の五日前にベネズエラで開かれた。ALBAは、キューバ、ベネズエラ、ボリビアを中枢軸とする政治グループである。この三国は、反資本主義、反帝国主義的志向をもち、人々の連帯を目指す「二十一世紀の社会主義」実現に向けて取り組んでいくことを固く決意している。
 このようにラテンアメリカ・カリブ海地域には、全くユニークな状況が存在している。そこでは二つのタイプのプロジェクトが動いており、一部、競合しながらも、共存している。いくつかの国は両方に属している。ベネズエラとボリビアは、メルコスールとALBA、双方に参加している。一方、ブラジルはALBAには参加していない。
 なぜなら、ALBAがメルコスールより左寄りの路線をとることを明確にしているからであり、また、キューバが参加しているからである。ブラジルは、キューバと敵対してはいないが、明らかにワシントンとの友情を大事にしたいと強く思っている。
 南銀行は、このふたつの間に位置しているが、どちらかと言えば、ALBAよりメルコスールに近い。キューバを始め、ハイチやニカラグアといったALBAの重要なメンバーが加盟していないからである。もちろん、南銀行が将来、カリブ海諸国や中央アメリカまで拡大することは十分あり得る。将来、政権が変わればメキシコの参加もあり得るし、途上国の他の大陸、即ち、アフリカ、アジアと特別な関係ができる可能性もある。
 メルコスールは経済ブロックであり、ブラジルが大きな地位を占めている。実際、ブラジルは「ミニ帝国主義」と呼んでもおかしくない強大な経済力をこの地域で誇っており、その経済的パートナーを支配している。ブラジルはアルゼンチン、ベネズエラ、エクアドル、あるいはパラグアイに、これらの国がブラジルに輸出する以上の額を輸出しているので、これらの国の対ブラジル貿易収支はマイナスである。ブラジルには同国を本社とするペトロブラスのような多国籍企業もある。同社は近隣諸国の重要な経済セクターを押さえている。ペトロブラスはブラジルの他の多国籍企業と共に、同地域のガスならびにボリビアの石油を独占している。他のブラジルの企業はパラグアイを支配している。
 ブラジルとアルゼンチンが牛耳るメルコスールは、フランス・ドイツ・英国トリオが牛耳り、新自由主義資本主義が支配するEUと似ている。一方、ALBAは経済的というより、より政治的なプロジェクトで、より物々交換や寄付といった関係に基づいている。ベネズエラは多額の支援をニカラグア、ボリビア、ハイチに対して行っている。ALBAは私にとって本当に興味深いプロジェクトだ。

内部で進む力
強い大衆運動

 エクアドルはラジカルな方向性を取っており、最も抑圧された人々への収入分配政策を支持している。エクアドルは二〇〇九年以降、米国のマンタ軍事基地利用協定を更新しないつもりだ。エクアドルは地域を破壊するような石油採掘に関して、疑問を呈している。 例えばアマゾン熱帯雨林がいい例である。
 ここの保護政策を見ると、エクアドルの姿勢が良く分かる。そしてそこから考えると、エクアドルの政策がブラジルより、よりベネズエラやボリビアに近いことがわかるだろう。パラグアイでは、より左寄りの方向に大統領が替わるかもしれない。それ以上に、ブラジルの力強い大衆運動を無視してはならない。特に土地無し農民運動は、ルラの政策に異議をとなえ、真の土地改革を目指して行動を強化している。
 これからの数カ月、あるいは数年、私達は強化された民衆のダイナミクスを彼等の活動やALBAのようなプロジェクトの中で目撃することになるだろう。南銀行の方向性は、銀行設立を支持する各政府にかかっている。しかし、たとえブラジルやアルゼンチンが進める方向性に行きそうになっても、それでゲームが終わったわけではない。私達は、南銀行が撒いた希望の種が大きな実を結ぶように、今から全力をつくさなくてはらない。

bエリック・トゥーサンは、CADTA(第三世界債務廃絶委員会の代表でエクアドル政府の経済アドバイザー)


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