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                            かけはし2008.4.21号

立川反戦ビラ弾圧 最高裁不当判決を許すな

被告・弁護士が怒りの発言
民主主義の根幹を破壊するあまりにも無内容な判決だ



 四月十一日、立川反戦ビラ入れ裁判・最高裁不当判決後、正門前で元被告の大洞俊之さん、高田幸美さん、大西章寛さんは、次々と怒りの発言を行った。
 大洞さんは、「こんな中味だったら、わざわざここに聞きに来ることはなかった。内容がない判決だ。判決理由を述べるならば、集合住宅へのチラシ入れでなんらかのガイドラインを示すとか、表現の自由との関連で付帯意見が出るとか、少数意見があるとかと思ったが、全くなかった。決定判決と同じではないか。私たちは、この判決をこれからも批判し続ける。傍聴席には、言論弾圧を受けた仲間たちが駆けつけた。葛飾マンションビラ配布弾圧も私たちと同じ最高裁第二小法廷だ。今日の判決をひっくり返すような判決をかちとってほしい」と訴えた。
 高田さんは、「当時、不当逮捕されてから七十五日も拘束され、四年間も被告人と言われてきた。これからも同じような人たちが出てくるのかと思うと到底許すことはできない。ビラを通した日常的なコミュニケーションに対して、突然逮捕され、公安警察に机をガンガン叩かれて取り調べをやられた。それが合法ですという判断をくだした。司法には不信感しかない。これで日本の民主主義の灯火の一つが消えてしまったと思えるぐらい憤っている」と抗議した。
 大西さんは、「ここまでひどい判決が出るとは思っていなかった。日本の民主主義派危うくなったと実感した。本来であれば民主主義の根幹である表現の自由を守るのが、憲法判断をする最高裁の役割だ。自らの役割を放棄した判決だ。逆に、この判決がどのように悪い影響を及ぼすのかと思うと心配だ。不当判決に対して市民一人一人が認めないという声を上げていくことしか、悪影響を防ぐしかない」と決意表明した。
 内田雅敏弁護士は、「最高裁は、『表現の自由は大事だけれど、他人の権利を侵害してはいけない』と簡単に言っているにすぎない。一審判決は、具体的事例を積み重ね、細かく分析したが、最高裁はこういう作業を全くしていない。そういう意味で一審判決の素晴らしさは輝いている。これからも語り続けられるだろう。本来、五人で出す判決が三人によって書かれた。今井裁判長は、かつて東京地裁労働部にいて細かな判決を出してきた。上にいけばいくほど簡単な理由で結論を出してしまった。十五人がいる大法廷で判断すべきだった。それほど重要な、民主主義社会にとって根幹に関わる問題だ」と強調した。
 傍聴に駆けつけた葛飾マンション・ビラ配布事件被告の荒川康生さん、板橋高校卒業式ビラ配布弾圧事件被告の藤田勝久さんから立川反戦ビラ入れ裁判・最高裁不当判決を許さず無罪判決をかちとるために奮闘していくことを表明した。最後に参加者全体で最高裁不当判決抗議のシュプレヒコールを行った。

兵士とのコミュニ
ケーションの継続

 全体は司法記者クラブに移動し、記者会見。夜からは、国分寺労政会館で「4・11判決報告集会」が行われた。
 判決に対して弁護団は、管理権者が認めないビラ配布は住居侵入罪が成立するとした最高裁判断に対して厳しく批判した。
 石埼学さん(亜細亜大学助教授・憲法学)は、「住居侵入罪に関して判決は、抽象的に書かざるをえなかった。ガイドラインみたいなものも書けなかった。書いてしまったらボロが出て、欠陥判決であることが明らかになってしまうからだ」と指摘した。 
 国連人権委員会などに不当判決を訴えていこうと提案する寺中誠さん(アムネスティ日本)、自衛隊員とのコミュニケーションを追求し続けていこうと呼びかける新倉裕史さん(非核市民宣言運動・ヨコスカ)から問題提起があった。
 国家公務員法ビラ配布弾圧事件被告の堀越明男さん、板橋高校卒業式ビラ配布弾圧事件被告の藤田さんから連帯挨拶が行われた。
 立川反戦ビラ弾圧救援会は、四月十九日(土)不当判決を認めない立川集会・デモ(午後一時/錦中央公園〔立川駅下車徒歩10分〕)への参加、最高裁不当判決を認めないキャンペーンの展開を訴えた。
 最後に三人の元被告は、あらためて抗議のアピールを行い決意表明を行った。抗議声明を参加者全体で採択した。      (Y)

 【訂正】本紙前号(4月14日号)3面「根津さんを解雇できなかった」5段6行目「二〇〇年」を「二〇〇六年」に、同5面「架橋」5段右12〜13行「指揮官に値しない」を「指揮官の名に値しない」に訂正します。



「守れ言論 活かそう憲法」市民集会
言論弾圧6事件弁護団が連携して反撃を呼びかけ

 四月七日、「守れ言論 活かそう憲法!4・7市民集会」が弁護士会館で行われ、二百五十人以上が参加した。集会は、グローバル派兵大国とセットである国内治安弾圧体制作りのために、国家権力の不当なビラ弾圧をうけた仲間たちの弁護団(言論弾圧6事件弁護団〈葛飾ビラ配布弾圧事件、立川反戦ビラ入れ事件、国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法弾圧事件、都立板橋高校卒業式事件、大分・選挙弾圧大石市議事件〉)が主催した。
 集会は、立川反戦ビラ入れ最高裁の判決公判が四月十一日、午後三時に行うことが通告されているという緊迫した状況のなかで始まった。なぜならば最高裁は、高裁判決を破棄する場合、口頭弁論の法廷を開くことになっているが、十一日の公判では口頭弁論が開かれない。つまり、高裁の不当判決を維持したままの判決が出る可能性が十分に予想されるからだ。立川反戦ビラ入れ裁判は、不当弾圧から裁判闘争に入って五年目だ。裁判闘争の過程で立川自衛隊官舎住人へのビラ入れ活動を公安政治警察と陸上自衛隊情報保全隊が一体となり、狙い撃ちにした事件だったことが明らかになった。弾圧は全国の反戦運動への先制打撃と反戦ビラ配布への萎縮を効果をねらったものだったことも明らかになっている。しかし権力のビラ弾圧に抗して、被弾圧者と弁護団は、共通の敵である権力の暴挙を許さず、反撃のための裁判闘争の勝利に向けてスクラムをねばり強く築き上げてきた。その成果としてこの日の集会へと結びつき実現した。

困難な状況を
こじあけよう

 集会の冒頭は、国公法弾圧堀越事件(〇四年三月)での公安の違法捜査を厳しく批判したCGを上映した。公安は、目黒社会保険事務所勤務の堀越さんが休日に、「赤旗」号外を配布した活動を、公務員の政治活動を禁止した国家公務員法違反としてデッチ上げ逮捕するために約一カ月、一日十人以上と車四台で尾行、盗撮を繰り返し百七十一人以上を動員した。膨大なカネと公安を使って堀越さんを不当逮捕し、起訴。東京地裁で罰金十万円執行猶予の不当判決が出ている。DVDは、検察側証拠として裁判で提出された盗撮ビデオを取り上げることを通して公安の政治的意図を浮き彫りし、糾弾している。
 主催者挨拶を内田雅敏弁護士が行い、「立川裁判では一審無罪だったが、高裁では有罪、そして十一日の最高裁では口頭弁論を開かずに判決を出そうとしている。今『靖国』の上映中止、プリンスホテルでの日教組集会中止が続いている。こういう雰囲気を裁判所は助長している。しかし、『靖国』上映中止には多くの批判が巻き起こり、弁護士会でも声明だけではなく、この講堂で上映しようと準備している。全国の仲間とともに困難な状況を突破していこう」と力強くアピールした。
 立川反戦ビラ入れ事件弁護団の虎頭昭夫弁護士は、「最高裁判決の場合、『上告棄却』という結果は変わらないが、なぜ上告を棄却して高裁判決を支持するのかという理由を述べるはずだ。例えば、住居侵入罪との関連で入った場所について一審が住居、二審は邸宅と規定しているが、ビラ配布の基準をどのように判断するか。表現の自由とビラ配布活動の憲法判断などどのような評価をするか。裁判官の中で少数意見がどこまで明らかになるかなど注目していきたい」と強調した。
 葛飾ビラ配布弾圧事件弁護団の後藤寛弁護士は、「東京地裁では無罪判決だったが、高裁で不当な逆転有罪判決だった。高裁判決は、チラシ配布の目的自体に不当な点はないし、表現の自由は守られると言っておきながら他人の財産権、管理権等を不当に侵害することは許されないなどと乱暴な判断をした。このような粗雑きわまりない判決は、被告と弁護団にとって逆に闘いやすいと判断し、上告趣意書を作成中だ。一般の人が民間のマンションに入ることの判断は、今後の国民生活にとって大きな影響を与える。高裁のようないいかげんな判決は許さないということで奮闘している」と決意を述べた。

裁判員制度への
危機感を表明

 次に「守れ言論 活かそう憲法」をテーマにジャーナリストの大谷昭宏さんと憲法学者の小澤隆一さんの討論が行われた。
 二人は、(1)言論弾圧と「萎縮」「自粛」効果(2)立川・葛飾事件の一審と二審判決の検証と批判(3)裁判制度の問題点(4)政治ビラなどのポスティング規制の強化を通した憲法二十一条への攻撃と反撃の方向性などの論点について問題提起した。
 とりわけ裁判員制度に対して大谷さんは、「裁判員制度の実施の流れのなかでメディア規制の意図も見えてきた。しかし制度推進は、弁護士会・法務省・裁判所がお手てつないで仲良しこよしで作ろうとしている。制度に関わることについて日弁連は大喧嘩しない態度だ。様々な規制が強化されていることに沈黙せず、『手を引くぞ』と言うべきだ。メディアも同様な姿勢だ。このような状況にもっと危機感をもつべきである」と厳しく批判した。
 言論弾圧6事件の国家公務員法(政治活動の制限)弾圧事件被告の堀越明男さん、板橋高校卒業式事件被告の藤田勝久さん、世田谷国公法弾圧事件被告の宇治橋眞一さん、大分・選挙弾圧大石市議事件弁護団の河野善一郎弁護士、立川反戦ビラ入れ事件被告の大西章寛さんと大洞俊之さん、葛飾ビラ弾圧事件被告の荒川康生さんから決意表明が行われた。
 参加者全体で立川反戦ビラ入れ最高裁での不当判決を許さない抗議声明、葛飾マンションビラ配布弾圧事件の最高裁弁論の実施と無罪判決を求める声明を採択。四月十一日の立川反戦ビラ弾圧最高裁判決公判への傍聴をに確認した。(Y)



VAWW―NETジャパンが集会

NHK番組改変訴訟│最高裁は何を裁くのか


 四月四日、「戦争と日本への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)の主催で「NHK番組改変事件訴訟 最高裁口頭弁論開廷に向けて 『最高裁は何を裁こうとしているのか?』」が、東京・池袋の東京芸術劇場中会議室で開催された。
 二〇〇〇年末の「女性国際戦犯法廷」を記録したNHKのドキュメント番組が安倍前首相、中川昭一・元政調会長らの極右政治家の圧力によってズタズタに改変された問題をめぐり、故松井やよりさんを先頭にしてVAWW―NETジャパンが提訴した「NHK番組改変裁判」の高裁判決(2007年1月29日)は、原告側の完全勝利と言えるものだった(本紙07年2月12日号参照)。
 高裁判決は、取材対象者が取材に応じるに際しての放送事業者への「期待と信頼」は法的に保護される必要があり、「編集の自由」もこの「期待と信頼」に応じて制限される、とした。ただしこの「期待権」は報道一般に適用されるのではなく、ドキュメンタリーなど事実関係の表現が取材対象者の関心となる「特段の事情」を有する場合に限られる。
 また同判決は、NHKの側が右翼の宣伝活動や安倍、中川ら国会議員の発言を「必要以上に重く受け止め、その意図を忖度(そんたく)してできるだけ当たり障りのないような番組にすることを考えて試写に臨み、その結果、直接指示、修正を繰り返して改編が行われた」と認めた。それは政治家による「直接指示、介入」はないとしたものの、事実上そうした安倍、中川ら極右政治家の強い圧力が、番組改変の背後にあったことをも示唆したのである。
 来る四月二十四日には最高裁第1小法廷でNHK裁判の上告審口頭弁論が行われる。この日の集会は、最高裁での争点は何かという疑問点についての理解を共有するために開催されたものである。

最高裁審理の
核心的テーマ

 最初に「最高裁で何が問われようとしているのか?」と題して、中村秀一弁護士が報告した。
 中村弁護士は、@「期待ないし信頼利益・説明義務を論じた原判決」が「法令の解釈に関する重要な事項を含む事件」としたNHK、NEP(NHKエンタープライズ)、DJ(ドキュメンタリー・ジャパン)の「上告受理申し立て」を受理したことで、高裁判決を破棄して被告(NHKなど)の逆転勝訴となる可能性、A「債務不履行責任としての説明義務を認めなかった原判決」は「法令の解釈に関する重要な事項を含む事件」としたVAWW―NETの「付帯上告受理申し立て」を受理したことで、被告側の「債務不履行としての説明義務違反」を認め、原告VAWW―NETが勝訴となる可能性、B原判決を破棄・差し戻しして結論を持ち越す、という三つの可能性を提起した。
 次に緑川由香弁護士が被告側の「上告受理申し立て」理由についての反論を提起した。たとえば被告側が「説明義務を負わせる根拠となる自己決定権については、生命、身体に軽微ではない結果を発生させる可能性のある治療を実施するか否かの決定のように、真に人の自己実現に不可欠な決定行為に限定し、かつ行うべき説明の範囲も厳格に解するとするのが最高裁の判例」(「最高裁平成13年11月27日第二小法廷判決」)としていることを批判し、最高裁の判例(「最高裁平成16年11月18日第一小法廷判決」)でも、「分譲住宅の売主の買主に対する説明義務違反」を明確にしている、と主張した。
 大沼和子弁護士は、「NHK自らはVAWW―NETの期待を生じさせるような行為を一切行っておらず、仮にDJの説明によりVAWW―NETに期待や信頼を生じることがあったとしても、かかる行為につきNHKには故意も過失もない」とするNHK側の主張について詳細な反論を行った。主任弁護人の飯田正剛弁護士は、政治家の異常なまでの圧力と介入によって番組が改変されたという現実の認識にふまえ、「期待権」と「説明義務」という原告側の主張が通るか否かと、最高裁審理の核心を提起した。

NHKに放送倫理
違反の申し立て

 次に日隅一雄弁護士が、昨年一月二十九日の高裁判決を報じるNHKのニュース番組が、「今回の判決の中で東京高等裁判所は、この番組をめぐって朝日新聞が『政治家の圧力で改編された』と報道したことについて、『国会議員が具体的に番組に介入したとは認められない』と述べました」などとキャスターに語らせ、その上、安倍首相(当時)や中川自民党政調会長(当時)が自己の「正当性」が証明された、と「朝日」の誤りを一方的にしゃべる場面を放映したことを、放送と人権等権利に関する委員会(BRC)に「放送倫理違反」として申立書を提出したこと(1月25日)を報告した。そもそも高裁判決は、訴訟の対象外である「朝日」の報道については言及しておらず、政治家の圧力の存在を事実上認定したにもかかわらず、NHKはあたかも「朝日」報道の誤りが認定されたかのような虚偽の印象を意識的に垂れ流したのである。
 フロアからの元報道関係者の発言の後、VAWW―NETジャパンの西野瑠美子さんは次のように語った。
 「裁判を通して、私たちは『慰安婦』問題をめぐる歴史認識と責任に向き合わない日本政府の姿勢が、日本社会に、そしてメディアの現場に、どのような負の影響をもたらしているか、また日本社会の右傾化に伴い、組織ジャーナリズムのチェック機能が弱まり、権力の監視、権力との闘いを回避するまでに衰退していることを目の当たりにした。しかし、この事件に多くの人びとが声を上げ、複数のジャーナリストが真実に声を上げたことは大きな希望であった」「VAWW―NETが提訴したのは、被害者の尊厳の回復を阻むものへの異議申し立てであり、不正義を正したいとの思いからだった。番組改編と裁判のプロセスにおいて味わった痛みと苦しみ、悔しさと怒りが、裁判を闘い抜く原動力であった。最後まで正義を諦めず、『勝訴』を勝ち取りたい」。
 国際放送における「国益」に沿った報道の強調など、政府・財界からのNHKの放送内容への露骨な統制が強まっている。最高裁での「勝訴」へ、ともに闘おう。
         (K)

bNHK裁判上告審口頭弁論/4月24日(木)午前10時半/最高裁第1小法廷(傍聴問い合わせ:最高裁裁判関係庶務係 03―3264―8111)。午後1時から星陵会館(地下鉄永田町駅下車)で報告集会予定。


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