もどる

人工衛星なのか弾道ミサイルなのか?           かけはし2009.3.23号

不透明な「飛行体」の発射は北の「体制保持」のカードか



 「宇宙は人類共同の財産であり、今日、宇宙の平和的利用は世界的な流れとなっている。(朝鮮民主主義人民)共和国政府の宇宙開発と平和的利用政策に従って、わが国では1980年代から自らの力と技術とによって人工地球衛星を打ち上げるための研究・開発事業がたゆみなく進められてきた。この過程でわが国の科学者、技術者たちは1998年8月、初の試験衛星『光明星1号』を打ち上げ、たった1回で宇宙軌道に進入させるという大いなる成果をなしとげた」。

打ち上げは4月8日?

 周到に発言の水位を高めてきた北韓(北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国)が「言葉」の段階を超えて「行動」の段階に進んでいる模様だ。2月24日、北韓「朝鮮宇宙空間技術委員会」は代弁人の談話を発表し、こう主張した。さらに委員会は「現在、試験通信衛星『光明星2号』を運搬ロケット『銀河2号』で打ち上げるための準備事業が、咸興北道花台郡にある東海衛星発射場で本格的に進められている」と発表した。周辺国が一斉に警告のメッセージを送っているにもかかわらず、「人工衛星」の発射計画を規定事実化したのだ。北韓はさらに2月27日、ロケット推進体の組み立てに突入した。
 いつごろ打ち上げるのだろうか? 大方の北韓専門家らは「3月末〜4月初めとなるだろう」と口をそろえる。「前例」があるからだ。北韓は去る1998年8月31日に「光明星1号」を発射した。これに先立ち、同月3日には最高人民会議(国会に相当)代議員を選出しており、発射5日後の同年9月5日、「衛星が軌道進入に成功した」と発表した。そして9月9日、共和国建国記念日(9月9節)に合わせてキム・ジョンイル国防委員長は4年余の「遺訓統治」時代に終わりを告げ執権1期を発足させた。「光明星1号」はこれを知らせる一種の「祝砲」だった。
 5年を周期とするキム委員長の執権3期は当初、昨年秋に始められなければならなかった。けれどもキム委員長は昨年の9・9節記念式に姿を現さなかった。彼の「健康異常説」が最高潮に達していた時期だった。3月8日には北韓最高人民会議の代議員選出が予定されている。さらに1カ月後の4月8日頃、キム委員長が国防委員長に再推挙されるとともに執権3期の開幕を告げるものと思われる。2回目の「祝砲」がこの期間に打ち上げられるものと見通す理由だ。2月27日、韓国統一部が提出した資料を見ると、キム・ジョンイル国防委員長は2月の1カ月間に実に15回にもわたる公開行動を行った。執権3期の発足を前にして内部統制に入ったものと見られる。
 発射するという「飛行体」の正体は何なのか? 弾道ミサイルという主張と人工衛星を載せた宇宙発射体(SLV)という主張が対立している。2つの間の違いは、国防部が2004年に編集した〈大量殺傷武器 問答百科〉によく整理されている。弾道ミサイルは弾頭を運搬する軍事目的のロケット推進体だ。反面、宇宙発射体は人工衛星を地球上空の宇宙軌道に進入させるための推進体だ。簡単に言うと、弾道ミサイルは頭部に爆弾を載せているとするなら、宇宙発射体はその場所に人工衛星を座らせている。一部の技術的違いはあるものの、2つのうちの1つの技術を確保すれば、他の1つを開発することも、いくらでも可能になる、ということだ。周辺国が反発するのも、このためだ。

98年の「テポドン1号」判断

 北韓の「朝鮮中央通信」は2月16日、「最近、米国をはじめとする一部の国々が、われわれがまるで『長距離ミサイル発射の準備』をしているかのように騒ぎたてている」とし、「わが国から何が打ち上がっていくかは、結果を見れば分かるだろう」と付け加えた。間違った言い分ではない。「結果を見れば」、その正体が分かる。1998年8月、北韓が「光明星1号」を発射したと主張した時、わが政府は「大陸間弾道ミサイル・テポドン1号」の発射試験だと発表した。けれども米国側では判断が異なった。同年9月、ジェームス・ルビン国務省代弁人(当時)はブリーフィングで、「北韓は極めて小さな衛星を地球軌道に載せようとしたが失敗したものと結論づけた」と発表した。ある軍事・安保専門家は、こう説明する。
 「衛星は北韓の領土の上空で軌道に進入させなければならない。垂直に発射し、飛行体の角度も大きく曲がる必要がない。反面、弾道ミサイルはいったん上空に打ち上げて、その後、大きく放物線を描きながら、バッと曲がらなければならない。技術的に見ると、30度の角度の時に最も遠くまで飛んでいく。発射以降の飛行体の軌跡を調べてみれば弾道ミサイルなのか、衛星発射体なのか、簡単に見分けることができる」。
 北韓が打ち上げる飛行体が宇宙飛行体ならば、少なくとも国際法的には大きな問題はない。1967年に締結された「宇宙の平和的目的のために各国家間で締結された国際条約」は宇宙空間で軍備競争が繰り広げられるのを阻むことに焦点を合わせている。人工衛星の発射については軍事的目的であろうとも規制の方案はない。だが弾道ミサイルだと判明したなら状況は、いささか複雑になる。北韓がミサイル技術統制体制(MTCR)に加入してはいないけれども、国連安保理が2006年10月14日に出した決議案1718号が「制裁」の名分となり得る。国連安保理は当時「北韓が弾道ミサイル・プログラムと関連する一切の活動を中止し、ミサイル発射の猶予についてのそれまでの約束を再確認すること」を決議した経過がある。一方では宇宙発射体だと言い、他方では弾道ミサイルだと主張して対立している理由だ。
 今回は成功するのだろうか? 1998年に比べて可能性は極めて高い。北韓と緊密な関係を維持しつつ、ミサイル技術を開発してきたイランが2月2日、自ら開発した宇宙発射体に人工衛星を装着して軌道に載せることに成功したからだ。
 人工衛星の発射成功は何を意味するのか? 周辺国の反発にもかかわらず、北韓が発射を強行する意図とも相まって、大きく言って3つに整理することができる。まずは「北韓内部用」だ。衛星の発射成功はキム・ジョンイル委員長の「執権第3期」を華々しく開くという「イベント」となり得るからだ。果てしない南韓(韓国)との「体制競走用」という側面もある。南と北はイランに続き「10番目の自力衛星発射国」としての地位を巡って角逐を繰り広げている。韓国航空宇宙研究院は科学技術衛星2号を載せた衛星発射体(KSLV―1)を今年の6月中に全羅南道高興の羅老宇宙センターから発射する計画だ。北としては「体制誇示」のために先手を打つ必要がある、という訳だ。

日本など周辺国も緊迫


 「対米交渉用」という分析も外すことはできない。これまで米・北の交渉は核問題を中心としてなされてきた。けれども北核が「不能化」の段階を超えて「廃棄」の段階に立ち入れば、「核カード」の重要性は著しく減じる。北としては「他のカード」が必要な時だ。弾道ミサイルは効果的な交渉のレバレッジ(てこ)となり得る。国際法的制裁が不可能な状況で北のミサイルの脅しを減らす方法は1つだ。「カネ」を払って買い入れるのだ。「交渉」の余地はある。キム・ジョンイル委員長は2000年10月にピョンヤンを訪れたメドゥリン・オルブライト米国務長官(当時)に「ミサイル開発を中断する条件として(北韓の)衛星を米国が発射してくれるというのはどうだろうか」と提案したことがある。いくらでも「売ることができる」という意味だ。
 そこで、だ。周辺諸国もすばやく動き出している。スティーブン・ボズワース米対北政策特別代表が3月初めソン・キム北核特使と共に韓、中、ロ、日歴訪に乗り出す。これに先だってウ・デウェイ中国外務省副部長(6者会談首席代表)は最近、北韓を訪問してキム・ゲグワン外務省副相と会い人工衛星発射問題を協議したことが伝えられている。「ミサイルを撃てば迎撃する」と脅しをかけている日本側でも、水面下では「対北特使派遣説」が出回っている。情勢が緊迫しつつ揺れ動いている。それにもかかわらず、わが政府は微動だにしない。韓(朝鮮)半島の運命を再び外部の力に委ねるつもりか? 後ろ手を組んで余裕ありげに虚勢を張っている時ではない。(「ハンギョレ21」第750号、09年3月9日付、チョン・イノワン記者)

南北関係についてのイ大統領語録

「自由主義体制で統一するのが究極の目標」

 「新たな南北関係定立のための調整期だった」。
 2月25日、イ・ミョンバク(MB)大統領就任1周年を前にして政府は、この1年をこう評価した。何を、どのように「調整」しようとしたのかは分からないが、手にした成績表は、みすぼらしいことこの上ない。西海(黄海)で南と北が銃撃をしあっていた時も止まることのなかった金剛山観光は、今は全面中断したままだ。苦労の末に始まった開城観光も同様だ。半世紀のハン(恨)がつのる離散家族の出会いも見通しはない。分断の歴史に風穴を開けた京義線の列車運行も断たれてしまった。南北和解・協力の「玉童子(大切なもの)」である開城工団(工業団地)にも不安の陰が色濃くたれこめている。(注)
 調整期が終わったというが、新たな政策の方向は作られたのだろうか? それも確実ではない。「待っているのも政策」だと言うばかりだ。その片鱗を求めるためにイ・ミョンバク大統領の「口」に注目してみよう。昨年11月に米国を訪れた際、イ大統領は「自由民主主義体制で統一するのが究極の目標」だと語った。これを北韓(北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国)の立場から見れば「体制転覆」を、「吸収統一」を意味する。大統領の発言だ。軽く考えることはできない。当然にも激しい反発以外にはありえなかった。
 それにもかかわらず大統領の発言は続けられた。就任1周年を前にした2月12日、青瓦台(大統領府)でハンナラ党青年委員会の関係者と晩さんを行いつつ、こう語った。「3度3度のご飯を心配しなければならない社会主義ならば、そんな社会主義はやらないほうがよいのではないのか」と。はなから、何のためらいもなしに北韓を刺激したわけだ。反応? 激烈だった。
北韓・祖国平和統一委員会は2月21日、談話を出し、「われわれの尊厳と体制をひどく中傷・冒とくする悪談」であり「最も無慈悲かつ断固たる決算によって逆賊・徒党と決着をつけなければならないだろう」と興奮した。祖平統はさらに「同族の尊厳と体制を悪らつに冒とくし、全面否定している時に、どんな北南和合があるのか、どんな共生・共栄があり得るというのか」とし、「北南関係の改善、国の平和や統一を一切、期待することができないということが一層明白になった」と付け加えた。
 すべての外交がそうであるように、「南北関係にも『相手』がいる」。どちらか一方が関係を改善するとして踏み出したとしても、瞬時にしてたやすく対話が可能となるわけではない。ましてやこの1年間、いかなる対話もなしに、互いに向けた「非難・応酬」の水位ばかりが局限へと登りつめてきた。対話? 当分は難しいだろう。一部では「就任中にただの1度も南北対話をすることができない」という極論まで出てきている。「6・15」と「10・4」の2度にわたる首脳会談というしっかりした元手を持って出発してから、ちょうど1年ぶりで、だ。
 3月中旬になれば西海・延坪沖合いではワタリガニ漁が本格的に始まる。北韓は既に事実上、海上の軍事分界線(休戦ライン)の役割を果たしてきた北方限界線(NLL)を認めない、という点を明確にした。「挑発」に対する警告も何度も出されている状態だ。わが政府も「応戦」をいとわないという。国防部長官が直接乗り出し「対応攻撃」「挑発への挑発」の意志を燃え立たせている。南と北は互いに向かい合って走る機関車となった。
 冷静さを取り戻さなければならない。手遅れになる前に。いったん「衝突の軌道」に乗ってしまえば、遅ればせにどちらか一方が後悔をしても、もうどうにもならなくなる。一方が機関車を停めたとしても、もう一方が走り続ければ正面衝突は避けられない。だから南も北も「共に自制せよ!」。(「ハンギョレ21」第750号、09年3月9日付より)
(注) 三月十日、韓国統一省と北朝鮮の軍事当局はそれぞれ開城工業団地との通行の再開、金剛山観光地区への陸路通行の再開を発表した。(「かけはし」編集部)


もどる

Back