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新疆ウィグル自治区 「中華民族」主義反対! プロレタリア国際主義を 
                           
かけはし2009.7.20号

漢民族大国主義の支配を打破し民族自決権を無条件に承認せよ

抑圧に抗議するウィグル人民への暴力的弾圧を許さない!

急速に拡大した抗議行動


 新疆ウィグル自治区の政府所在地であるウルムチ市で、七月五日夜から六日早朝にかけて大規模な抗議行動が発生した。抗議行動は、六月二十六日に広東省韶関市の玩具工場で発生したウィグル人出稼ぎ労働者と漢人の出稼ぎ労働者同士の大規模な衝突で二人のウィグル人労働者が死亡したことに対するものであった。この抗議行動は当初学生らを中心に行われた三百人程度の行動だったが、みるみるうちに千〜二千人規模に膨れ上がり、解散を命じた警備当局と衝突が発生し混乱が拡大、その後の騒乱などにより多数の犠牲者が出た。
 「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙は、ウルムチでの抗議行動に参加した女性のインタビューを掲載している。マイマイティと名乗るこの女性によると、当初三百人ほどが人民広場で平和的に抗議行動を行っていたが、参加者が増加し、千人以上になったところで、警察が解散を命じた。ところが参加者たちはそれを拒否し、警察と衝突になったと証言している。
 国営の新華社によると、七月十日現在で死者は百八十四人にのぼり、千六百八十人が負傷し、現在病院で治療中の九百三十九人のうち、七十四人が危篤状態にあり、二百十六人が重傷である。警察車輌を含む六百二十七台の車輌が破壊され、二百九十一の商店が被害を受けた。焼き討ちにあった家屋は二十九棟にのぼる。全国政治協商会議のアブライティ・アブドロシティ副主席(ウィグル族、党中央委員で元新疆ウイグル自治区主席、党委副書記を歴任)は、七月十二日に開かれた幹部向けの会議で「七月五日の事件は、新中国の成立以来で、最大の犠牲者数と最も深刻な経済的損失、最も激しい社会的な影響を与えた暴力犯罪事件である」と語った。
 七月七日には、中国政府が対外メディアにウルムチ市内の騒乱現場を公開したが、その際、女性を中心とした二百人のウィグル民衆が「逮捕された家族をかえせ!」と抗議の訴えを行った映像や写真が全世界に配信された。ウルムチだけでなく西部のカシュガルなどでも現地モスクに集まろうとした数百人のウィグル人と警察が衝突している。

急きょ帰国した胡錦濤

 今回の事件は、ウィグル人による「騒乱」だけに止まらなかったことが大きな特徴だ。七月七日には、棍棒や鉄棒などで武装した漢民族による大規模な反ウィグル族デモがウルムチ市内で行われ、警備にあたっていた武装警察と一部で衝突した。国内有力企業幹部三百人を引き連れて七月五日にイタリア入りをしていた中国の胡錦涛・国家主席は、事態の深刻化を受け、九日のG8会合に出席する予定を中止し、ピサから急遽帰国の途に就いた。中国の最高首脳がG8会合という最重要の外交スケジュールを中止してまで対応に当たるほど、今回の事件は大きな衝撃を与えたといえる。
 帰国した胡錦濤総書記は中共中央政治局常務委員会の緊急会議を開いた。常務委員会は「ウルムチ『7・5』事件には深い政治的背景がある。これは国内外の『三つの勢力(過激宗教勢力、民族分裂勢力、国際テロ勢力:訳注)』が入念に画策・組織した重大な暴力犯罪事件であり、各族民衆の生命と財産に重大な損失を与え、現地の正常な秩序と社会の安定に深刻な破壊をもたらした」と強調した。同八日には党中央委員で公安部長(日本の警察庁長官にあたる)の孟建柱がウルムチ入りし、人民広場などで警備に当たっていた武装警察を激励し、負傷した市民を病院に見舞っている。
 七月十一日には、中央アジアにおける資源開発や経済協力を目的として中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタンの六カ国の政府により二〇〇一年六月に上海で設立された上海協力機構が声明を発表している。声明では「新疆ウィグル自治区は中華人民共和国の不可分の領土であり、そこで発生した事態は中国の内政問題である」「テロリズム、分裂主義、原理主義、国際的組織犯罪に対する取締りについて協力し、この地区の安全と安定に共同で維持する」。
 上海協力機構は9・11テロ以降、域内で抱える民族問題や独立問題に対して、共同の軍事演習などを通じて弾圧を強化している。二〇〇七年には初めて六カ国による合同軍事演習「平和への使命2007」を行い、アメリカへの対抗をも視野に入れた協力体制を強めている。ウィグルや中央アジアにおける民族独立派の動きを封じることはこれらの国々の共通の利害でもある。

「在外勢力の陰謀」ではない

 漢人による反ウィグル族デモという事態を受けて、自治区トップの王楽泉・新疆ウィグル自治区共産党委員会書記(中国共産党中央委員)は、ウルムチ市内で七日午後九時から八日午前八時までの全面的な交通規制に踏み切ると発表し、次のような談話を発表した。
 「ラビヤ・カーディルを中心とする国外の敵対勢力と国内のごく少数の不逞分子が、広東省韶関市の『旭日玩具工場』での集団的暴力事件という一般的事件を民族事件であるとして民族的憎悪を扇動した。これは国内外敵対勢力による巨大な陰謀であり、かれらの目的は民族の団結を破壊することであり、民族的対立を挑発し、社会の安定と団結を破壊するものである。われわれ各民族の幹部・大衆はこのことをしっかりと認識し、敵のペテンにだまされないようしなければならない」。
 すべては在外勢力による「巨大な陰謀」とする新疆ウィグル自治区のトップ、王楽泉氏は、一九九一年に新疆に派遣され、九五年から新疆ウィグル自治区共産党委員会書記、新疆生産建設兵団第一政治委員をつとめ、二〇〇二年には党中央政治局委員に就任している。この王楽泉氏の新疆での評価について、中国独立ペンクラブの王力雄氏はこう語る。「新疆の地元民族は一九三〇〜四〇年代に新疆を支配した漢人軍閥の盛世才(1892〜1970)のことを暴君として記憶している。そして新疆で強硬な政策を実施している中国共産党書記の王楽泉を『王世才』と呼んでいる」(『我が西域、君の東トルキスタン』(未訳)58頁)。
 中国政府は事件直後から、今回の抗議行動が外国勢力の先導によるものであると非難してきた。六日早朝に新疆テレビで放映されたヌル・ベクリ新疆ウィグル自治区主席の談話は次のように述べている。「これは典型的な外国からの指揮による国内行動であり、陰謀的、組織的な破壊強奪事件である。各民族による磐石の団結によって、三つの勢力(過激宗教勢力、民族分裂勢力、国際テロ勢力:訳注)の扇動襲撃は各民族人民によって必ず唾棄され、敵の分裂破壊活動は必ず敗北するだろう」。
 しかしこれまでに中国当局が示した「証拠」とは、ラビヤ氏がインターネット上で「(中国政府への抗議は)もっと大胆にやるべきだ」などと述べていたというものに過ぎない。在外敵対勢力によるテロ扇動という中国政府お決まりのシナリオは、昨年のチベット騒乱の際にも使われた。新疆ウィグル自治区ではたしかに、急進的な独立派による武装襲撃などが続いている。昨年の北京五輪の直前にはカシュガルで十七人の武装警察を殺害するテロ事件も発生した。だがもし仮に、在外政治勢力がインターネットで「もっと大胆」な行動を呼びかけたところで、ウィグル人に対する民族差別や抑圧がなければ「扇動」されることなどないはずである。
 七月七日、外交部の秦剛報道官は北京で行われた記者会見の際に、記者から具体的な証拠があるのか、と質問され「真相はいずれ明らかになる。今後関連部門が証拠を公表すると信じている」と一切の具体的証拠を示すことはなかった。その後、中国メディアによるラビヤ氏への非難は一層強まっている。中国政府は事件の一切の「証拠」をすべてのメディアとウィグル人民のまえに公開し、民衆の審判を仰がなければならない。
 中国政府はこの事件が民族問題・宗教問題ではないと主張する。前出のアブライティ・アブドロシティ副主席は今回の事件が民族問題ではない、と述べている。「このような信じがたく、怒りを禁じえない暴力行為によって、国内外の民族分裂勢力の本性が徹底的に明らかにされた。今回の事件は民族問題ではなく、宗教問題もない。それは祖国統一を防衛し、民族妥結を維持する政治闘争であることをはっきりと認識しなければならない」。
 事件のきっかけや、事態の拡大は、労働現場での摩擦や過酷な搾取、あるいは他の意図を持った勢力による宣伝の場合もあるだろう。しかしその根底にある問題の核心は言うまでもなく「民族問題」である。さらに長期的・歴史的な尺度で考えるのであればそれは社会・経済体制の問題でもあり、極めて遠くの未来においては人類は民族問題を解決している可能性もあるだろう。しかし、いまこの瞬間において集団的な共同体を形成している民族が世代をつなぐ集団として意識・記憶するなかで発生する民族的摩擦はまぎれもなく「民族問題」なのであり、それを「経済格差の問題に過ぎない」だとか「一部の破壊分子の扇動によるもの」などと断定してはならない。ましてや仮にも「マルクス主義」「社会主義」を掲げる政党が、その名の下に民族抑圧を正当化してはならない。

「民族問題と青年党員の教育」

 トロツキーは、一九二三年三月『プラウダ』に「民族問題と青年党員の教育」という論文を寄稿した。そこではこう述べられている。
 「かつて抑圧されてきた民族から完全かつ無条件の信頼を得ることがいかに大きな歴史的重要性を持っているかを、われわれが理解しなかったり、または理解不足であるなら、地方の土着勤労者大衆のありとあらゆる要求、すべての屈辱感、すべての不満に民族的反抗の色合いが不可避的に加わるであろう」。
 「民族問題がわれわれによって解決されてしまったとうぬぼれるなら、とんでもない妄想に陥ることになる。実際には、このような自己満足(しかもそれは、わが党のメンバーにさえうかがわれる)のもとに、しばしば大国の民族主義が、すなわち攻撃的ではないが、まどろんでおり、安眠を妨害されることを好まない民族主義が潜んでいるのである。民族問題の『解決』は、すべての民族に対し、その民族が自分の母語と思っている言語で、何ものにも邪魔されず世界の文化に触れる機会を保証することによって、はじめて可能になる。これは、ソヴィエト連邦全体の物質的および文化的向上を前提としている。このような向上に必要な期間を勝手に短縮することはできない。しかし、われわれにできることが一つある。それは、かつてツァーリズムによって抑圧されてきたすべての弱小で遅れた民族に対し、彼らの非常に重要で大切な要求がたとえ充たされていない場合でも、その原因はソヴィエト連邦全体に共通の客観的条件にあるのであって、けっして配慮不足にあるのでもなければ、けっして大国主義的な不公平にあるのでもないということを、綱領的な声明によってではなく、日常のわれわれの国家活動を通して、示し実証することである。そしてこの課題、すなわちあらゆる経験によって確かめられた、弱小民族からの全幅で無条件の信頼をかちとることこそが、党として最も重要な課題なのだ」。
 「かつて抑圧されてきた少数民族の民族的屈辱感は、数十年、数百年にわたり蓄積されてきたものである。そしてこうした遺産は、たとえば女性の抑圧された状態と同じで、たとえ誠意にあふれていようと、たとえ立法的な性格を持っていようと、一片の布告でなくすことなどできない。生活の中で、暮らしの中で、日常の自らの経験を通じて、その行く手をさえぎる外からのどんな制約や圧迫もないし、誰も軽蔑的ないしは見下したような態度をとらず、それどころか『権利』だけでなく、女性がもっと高まるよう援助しようという親身の共感もあると、女性が感じるようにする必要がある」。(『トロツキー研究』bQ)

「中華民族」政策と大国主義

 中国国内のウィグル人が受けてきた社会的な差別はいまに始まったことではない。新中国建国以前からの強硬な対トルキスタン政策、民族自決権を認めない新中国以降の民族政策、二〇〇一年9・11テロ以降に強化された中央アジア地域における対テロ戦争に名を借りた民族独立運動への一層の弾圧、資源開発の必要から大量に投入される漢民族資本、貧困解消の一環として沿海工業地帯に「輸出」されるウィグル人労働者が受ける差別、漢人社会によるウィグル人に対する社会的、経済的な差別や排除その他、中国共産党が自画自賛してきた「中華民族」政策の限界こそが、今回の事件の真の背景なのである。
 二〇〇〇年の人口センサスによるとウルムチ市の人口は二百八万人、ウィグル族が一二・八%、漢民族は七五・三%を占める。新疆ウィグル自治区全体でみれば人口二千四十万人、ウィグル族四五・二%、漢民族四〇・六%となっている。統計に含まれていない人民解放軍を含めると自治区全体の民族構成は漢民族が過半数を占める。新疆ウィグル自治区には人民解放軍の後方部隊から生まれた「新疆生産建設兵団」という屯田兵制度が一九五四年から現在まで続いている。豊富な水利ルートや肥沃な土地周辺に建設され、辺境警備などを担ってきた。
 兵団はゴビ砂漠の真ん中に突如として現れるオアシスの如く人口的に建設されている。地元のウィグル人からは漢民族政権の屯田兵として映っている。兵団は、中ソ紛争の時代には「ソ連修正主義から国境を守るため」、そして現在では「祖国分裂勢力から祖国を守るために」という大義名分のもとで組織が維持されている。二〇〇三年に、国務院新聞弁公室が発表した『新疆の歴史と発展』白書によると、自治区の各地に点在する兵団の下に、師団(開墾区)が十四、農牧団場が百七十四、工業、建築、運輸、商業などの企業が四千三百九十一社、科学研究、教育、文化、医療衛生、体育、金融、保険などの社会事業体と司法機構があり、総人口は二百四十五万三千六百人で、労働人口は九十三万三千人とある。
 兵団は生産だけでなく、警察、司法、行政のすべてにおいて独自の体系を持っており、それらはウィグル人民から隔絶している。兵団の九〇%は漢民族によって占められているが、その中でも、兵団の中枢を担う官僚階層と農業や工業に従事する労働者階層に分かれ、市場経済化がすすむなかで労働者階層は兵団の搾取システムの下層に位置づけられている。近年、資源価格の高騰などで発展産業として注目されている石油をはじめとするエネルギー産業は、国有で中央直轄企業である。兵団とエネルギー産業という自治区の経済の中枢を占める空間からウィグル人は排除されている。学校を卒業してもウィグル人というだけで就職先がなく、不安定な社会・経済状態に置かれる。「自治区」と呼ばれる地域においてもこのような状態なのだから、仕事を求めて漢民族が多数を占める地域に出稼ぎにでたとしても、そこでは不当な社会的差別を受ける。そのあらわれのひとつが広東省での漢民族労働者によるウィグル人労働者への襲撃事件なのである。

ウィグル人への苛酷な搾取

 中国政府は、莫大な資金を新疆ウィグル自治区に投入してきた。前述の『新疆の歴史と発展』白書によると、「新疆ウイグル自治区が成立した一九五五年から二〇〇〇年までに、中央政府が新疆に与えた財政補助金は累計八百七十七億四千百万元に達した。特に一九九六年以来、中央政府の財力増強および西部大開発戦略の実施にともない、中央政府が新疆に与える一般的財政補助金は年を追って増加し、一九九六年は五十九億七百万元、一九九七年は六十八億三千八百万元、一九九八年は八十億千二百万元、一九九九年は九十四億元、二〇〇〇年は百十九億二百万元、二〇〇一年は百八十三億八千二百万元である。中央政府はまた各種の特別財政移転支出、民族優遇政策による財政移転支出を通じて資金の投入と支持を大きくしている」。
 だが、構造的な不平等と民族問題が解決されないなかで、一部の体制派ウィグル人官僚以外の現地ウィグル人にとって、投入される莫大な資金は「経済侵略」のためだと理解されてもおかしくはない。
 大規模な抗議行動のきっかけとなったのは、六月二十六日に広東省韶関市のおもちゃ工場「旭日玩具工場」の宿舎敷地内で発生したウィグル人労働者数百名とその何倍もの人数の漢民族労働者による大規模な衝突である。中国政府の発表だけでも、この衝突で百十八人が負傷し、うちウィグル人は七十九人、十六人が重傷、二人のウィグル人労働者が亡くなっている。偶然この衝突を撮影していた人間が、インターネットでその映像を公開し、ウィグル自治区をはじめ中国全土、全世界に配信された。6・26韶関事件では、現場に駆けつけた警官はほとんど介入をせず、数の上でも優勢であった漢人側のなすがままにさせていたという。数の上でも圧倒的であった漢人労働者による襲撃は翌早朝まで続いたという。衝突の発端は、この工場を解雇された漢民族の労働者がウサ晴らしのためにインターネット上で、漢民族の女性が、この工場のウィグル人労働者らに強姦された、という虚偽の情報を流したことがきっかけだという。
 約一万八千人が働く「旭日玩具」では、今年の五月から六月にかけて、新疆カシュガル地区から八百人のウィグル人労働者を受け入れていた。自治区から遠く四千キロも離れた広東省になぜこれほどのウィグル人労働者がいるのか。広東省のトップである省共産党委員会書記の汪洋はこう語っている。「(中国)沿海部の企業、とりわけ香港企業は積極的に内陸部、とくに少数民族地域で労働者募集をしている。沿海部は中央政府の呼びかけに応えて、先ず豊かになった地域があとに続く地域を支援し、沿海部と内陸部が共同で発展するという重要な政策を実施してきた。個別偶然の事件によってこの政策に影響を与えてはならない。内陸部とくに少数民族地区の人民に対する深い感情をもって、法に従い今回の事件を処理しなければならない。この偶然の事件が沿海部と内陸部の経済協力、民族団結に影を落とすことがあってはならない」。
 だが、この「支援」と呼ばれる政策とは、「監獄工場」と呼ばれる中国沿海部の苛酷な労働衛生環境のなかに内陸部の、とくに少数民族(ウィグル人)労働者を投げ入れ、搾取するということに他ならない。少数民族に対する社会的な蔑視が一般的である漢人社会においてウィグル人労働者家族が置かれてきた状況は中国共産党の掲げる「民族団結」「調和ある社会」などとは程遠いものであることは容易に想像がつく。
 労働者インターナショナルのための委員会(CWI=ミリタント派)の中国語サイトに掲載された論評は次のように韶関事件の意味を分析している。
 「この衝突は中国における一つの象徴的な意義を持っている。経済危機が、失業率の歴史的記録を更新させ(1949年以来の高率)、賃金を引き下げている(2億の出稼ぎ農民が数少ない雇用を奪い合う)。同時に官僚腐敗がすべての社会領域に浸透している。抗議の意思を示す手段は制限され、労働者自身の組織化も弾圧を受ける。当局に対する怒りは増すばかりだが、同時にそれは人種差別主義、犯罪、薬物、自殺、その他の絶望的な手段で表現される。旭日実業の経営者(香港人)の資産は十億ドルを超えており、豪華な別荘と三十台以上ものレーシングカーが停車する駐車場を所有している。韶関市の最低賃金は月五百元。まさに今日の『二つの祖国』とでも言わんばかりの極端な光景が広がっているのである。出稼ぎ労働者は二百六十一年間、飲み食いもせず働いて得られる賃金でやっと一台のフェラーリーが買えるというありさまだ。このような低賃金労働は、いつの日にか悲劇的な結末をもたらすだろう」。

差別排外主義との闘いを

 資本主義の過酷な鞭に対する不満や反抗は、「大民族主義」という麻薬によって容易に別なものにすりかえられてしまう。「悲劇的な結末」を回避するためのたゆまぬ努力は抑圧民族側の前衛(党)の任務である。自覚的であれ無自覚であれ、多数派民族による民族主義の危険性を取り除く唯一の方法は、抑圧されている側の民族による言語と文化を最大限尊重し、大民族主義のわずかな表れにも敏感になることである。だが「唯一の前衛」を自認する中国共産党は「民族自決権」の承認を含むこの任務を早々に放棄し、多様な民族構成を「中華民族」という「国家」との等符号で結びつけられる一つの概念でくくり、民族間の政治的、社会的な格差は経済格差の解消で解決することができるとしており、民族摩擦を緩和する道筋を大きく歪めている。
 七日、韶関市で事件の事後処理を担っていた中国共産党新疆ウィグル自治区カシュガル地区委員会のアブドゥル・クユム・マイマイティ副書記は、「今後も新疆の豊富な労働力を沿海地域へ送り出すという方向に変化はない。」「中国の西部地区の豊富な労働力を発達した沿海地域へ移転・就職させるという方法は、中国の基本的な国情に合致した重要な政策である。この政策が西部地区と沿海部の協力を促進し、西部地域の発展の歩みを加速させている。しかも西部地区の労働力の質と学習能力の向上、農村部の収入増加に重要な影響をもたらしている」と新華社のインタビューに答えている。
 沿海地域での労働とは言うまでもなく資本主義企業における搾取労働を指す。広東省一帯は、過酷な労働条件や危険な労働環境、そして何よりも団結権不在の「世界の搾取工場」である。官僚独裁の労働者国家における資本主義復活の伝動ベルトは官僚支配体制自身である。民族自決権を否定された被抑圧民族は官僚支配体制の中で資本の搾取と民族抑圧という二重の鎖に喘いでいる。
 同七日、新華社は旭日玩具工場事件の容疑者として十三人の容疑者(うち3人が新疆ウィグル籍)と、インターネットでデマ情報を流布した二人を逮捕したというニュースを報道し、翌八日には、旭日玩具工場の生産と秩序が正常に戻ったことを報道している。そして、旭日玩具工場のウィグル人労働者が「民族分裂分子が旭日工場の集団乱闘事件を(ウルムチでの)暴力犯罪の言い訳としていることに憤慨している」と伝えている。
 中国における新たな社会主義革命を目指す運動において、中国共産党支配下の漢民族の労働者農民がもつ中華民族主義はきわめて大きな桎梏となる。新自由主義に対する批判派として内外でも注目を集めている「新左派」のウェブサイト「烏有之郷」では「祖国分裂策動分子を許すな」「毛沢東の民族政策へ戻れ」「世界ウィグル会議と米帝の関係」などの文章で圧倒されている。多数派民族である漢民族の民族主義をふり返る文章はほとんどない。
 中華民族主義の旗の下にいっさいの階級的、エコロジー的、反官僚的闘争を屈服させてはならない。日本の労働者人民は、天皇制・靖国ナショナリズムとの闘争、戦争被害者への真の謝罪と賠償、中国をはじめとするアジア各地へ進出する日本企業による労働運動弾圧への抗議、WTOやIMFなど国際機関における大国支配へ抵抗、経済危機の中で強まる資本の攻勢に対する反撃、反テロ戦争に追随する支配階級の策動への抵抗などを通じて、中国そして日本から差別排外主義をたたき出さなければならない。ウィグルをはじめ中国における民族問題解決の道筋をゴビ砂漠の彼方に浮かび上がる蜃気楼の先に消し去ってはならない。
(09年7月13日 早野 一)

※その他の資料
◎王力雄『私の西域、君の東トルキスタン』を読む―新疆のパレスチナ化、或いはチェチェン化(燕のたより/第7回集広舎)
http://www.shukousha.com/column/liu007.html
王力雄が07年台湾で出版した新疆ウィグル自治区への訪問ルポを日本語で紹介。
◎思いつくままBlog http://
blog.goo.ne.jp/sinpenzakki
ウィグル事件、中国人識者の論評など、翻訳。王力雄のチベット関連の著述も。
◎書籍『中国の民族問題 ― 危機の本質』(加々美光行/岩波書店)
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/60/0/6001940.html
「清末以降の近現代史と国際政治の動向の中にチベット、ウイグル、モンゴルを位置づけ,民族自決運動の実態,中国共産党の民族政策,ダライ・ラマ14世の主張等を紹介.『9・11』以降の反テロ国際連合が中国民族問題に及ぼした影響についても考察する」(岩波書店ウェブサイトより)初期のコミンテルンや中国共産党が掲げていた民族自決の問題についても考察している。必読の書。


89年民主化運動のリーダーのウルケシ(ウィグル族)の声明(抜粋)

 ウルムチでの騒乱の翌日、一九八九年民主化運動のリーダーの一人で現在は台湾に居住するウィグル族のウルケシが声明を発表した。
 「今回の事件は偶然に発生したものではない。その原因は長年積み重なってきた民族憎悪と大いに関係がある。広東省韶関市で発生したウィグル人と漢人の衝突はその導火線であり、長年来のウィグル人と漢人の関係の縮図である。すなわち漢人のウィグル人に対する高圧的支配と抑圧が、我慢の限界に達していたウィグル人の抵抗を呼び起こし、さらなら憎悪の深まりを見せた」。
 「政府は衝突の発生をすべて『テロ分子』『テロ攻撃』と形容し、ウィグル人に対処し、厳しい弾圧措置をとっているが、それは何ら問題の解決の助けにはならず、矛盾をさらに激化させるものにしかならない」。
 「私は、新疆ウィグル自治区を含む中国国内で、ウィグル人の民族自決権を含む民主主義が実施されることを強く主張する。独立を追求する事がウィグル人の直面する差別と抑圧を解決し、民族衝突と憎悪を解き解す最も現実的で最良の方法だとは思わないが、民族自決の権利を否定することはできない」。
 「今日、新疆で発生している一切の不正義は、中国政府の覇権的心情と野蛮な政策が最大の原因である。わたしは世界が、この広大で、麗しく、同時に世界の安全と安定に密接な関係をもつ地域にさらなる関心を持ち、今回の事件で流された人々の血を無駄にしないよう呼びかける」。




コラム
幸福実現党の監視を

 都議選投票日の朝、新聞を開いてみると寝ぼけ眼が吹っ飛んだ。全五段を使ったビックリするような「幸福の科学出版」の書籍広告が眼前に飛び込んできたのだ。そこには、選挙ポスターと見間違うような、幸福実現党党首大川きょう子の顔写真と、『「幸福実現党」党首の決断』のタイトル。そして、その横にはベタ白抜きで、`7月12日(日)本日開催 大川隆法『新・日本国憲法試案』セミナー「宗教立国の精神」aとあった。
 いくら書籍広告の体裁を整えていても、「これって公選法に抵触するんじゃない!」と考えるのが一般的。しかし、新聞社が「良きに計らえ」と掲載したのだから、それは問うまいと、さらに頁をめくっていくとそこにはもっと驚愕する化け物が待ちかまえていたのだ。二十五面に登場した一面をまるまる使った全十五段広告がそれ。何と栃木一区から立候補を予定している男が代表を務める進学塾の広告だった。ここには、さすがに幸福実現党の文字はないものの、候補者となる代表自身の顔写真と名前が堂々と記されていたのだ。いくら代理店に支払ったのか知るよしもないが、ボクはこの怪挙に「なかなかやるなー」と敬服とも感心ともつかぬ感慨に耽り、しばし沈黙。そして思った。「何かおかしい……」。
 そういえばこのごろ街中で、やけに幸福実現党の宣伝カーが走り回っているのを見かける。ポスターの掲示も群を抜く。その物量と動員力は半端ではない。自民党支持者層へも個別訪問を繰り返しているという。ある週刊誌で大川は、「うちは創価学会より票を持っている」と豪語していたが、あながち虚言、妄言とも思えない説得力だ。一説に拠れば信者の数一千万人。オウム真理教ならいざ知らず、勝算のない総選挙に、小選挙区三百人、比例区四十五人、合わせて三百四十五人もの立候補者を立てるはずがなかろう。先だって当選した千葉県知事森田健作の選挙にも、一役買ったと発言している。右翼反動の森田と相通じるところが、幸福の科学にはあるらしい。
 ボクは宗教を否定しない。ましてや選挙に出るなとも言わない。それは、宗教団体自身の考えだからだ。しかし、幸福の科学の政治団体「幸福実現党」の政策、主張を読むとその考えが一変する。彼らは宗教という名を語り、信者という実働部隊を使った右翼カルト集団だと言い切れるからだ。
 それらが最も如実に表れているのが、主要政策のひとつ、北朝鮮のミサイル基地への先制攻撃である。金正日に常識は通用しないと言い切り、自衛隊法改正を唱える様は、自民党国防族の十八番を奪いとる勢いだ。また、新・日本国憲法試案では、第五条で、「国民の生命・安全・財産を護るため、陸軍・海軍・空軍よりなる防衛軍を組織する」と明文化している。
 来る総選挙で彼らが議席を有するのかどうかは未知数だが、閉塞した今日、彼らに得票する有権者が登場するのも事実である。新秩序という反動思想で国民支配を企てる彼らを、ボクらは監視しなくてはならないだろう。       (雨)


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