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中国  二重の抑圧――新疆短評(下)          かけはし2009.9.14号

民族矛盾は何故深まるのか

廖化(香港・先駆社)


 官僚資本主義下の
新疆―略奪と独占

 中国共産党の抱える民族矛盾は今日に始まったことではないが、なぜ現在ますます深まっているのか。それは「改革開放」政策以降における中国共産党の資本主義路線の発展に関係している。共産党は自らも官僚資本の党に転換して以降、ますます新疆を資源開発と発展の対象と見なすようになった。このようなインセンティブは毛沢東時代には見られなかったことである。世界の搾取工場となった中国は、かつての石油の自給自足国から、今では消費量の半分を輸入でまかなわなければならなくなった。世界の石油資源を確保することは重要な国策となっている。それは当然、自国の石油資源採掘の強化も意味する。現在、石油及び天然ガスの採掘業が新疆の工業総生産に占める割合は三四・一%に達する。石油及び原料の処理は二二%を占める。この二つをあわせると工業総生産の半分に達する(原注5)。新疆の石油と天然ガスの埋蔵量はそれぞれ二百九億トン、一〇・八五億立方メートルにのぼり、国内埋蔵量の二五・五%と二七・九%を占める。近年、中国石油天然ガス公司(ペトロチャイナ)と中国石油化工公司(シノペック)はともに石油と天然ガスの採掘を積極的に加速させている。もしこれにカザフスタンから新疆を経由して中国全国に輸送されている二千万トンの原油を加えたら、二〇一〇年には新疆は全国最大の石油と天然ガスの供給基地になるだろう(原注6)。
 しかし地元住民が自然資源の採掘から得る利益は少ない。前述の『中国民族問題報告』では次のように述べられている。
 「民族地区の資源開発の補償問題は、一九八六年に公布された『鉱物資源法』に基づき、石油と他の各鉱物の鉱山企業は所有者権益に属する資源税と資源補償費を支払わなければならないが、この二つをあわせても平均一・八%にしかならず、アメリカにおける陸上石油の一二・五%、海上石油の一六・七%、他の鉱物の五〜八%の資源税率を大きく下回っている。……圧倒的多数の現地民衆は資源採掘から相応の利益を得ることができていないにもかかわらず、環境悪化がもたらす多くの悪影響を引き受けなければならない」(原注7)。

発展の成果を享受
できない少数民族

 八月末の「フィナンシャルタイムズ」の報道によると、二〇〇五年、石油業界が収めた百四十八億人民元の各種税収のうち、新疆ウィグル自治区政府は二億四千万元しか得ることができなかった。
 石油関連あるいは他の産業の国有企業の雇用においても、ウィグル人に提供される雇用機会は極めて少ない。これはウィグル人の深刻な失業の原因のひとつになっている。最近、不当に拘束された中央民族大学系学院のイリハム・トフティ教授(訳注2)は、「新疆の経済発展と民族関係」という文章の中で、失業問題についてこう述べている。
 「実際には、新疆の労働力の雇用矛盾は早くから発生していた。少数民族、特にウィグル民族が集住する都市と農村ではさらに深刻である。また、国家が新疆に次々と建設する工業企業や新開墾区、新都市においては常に東部地域からの大量の人口流入(漢民族の:訳注)をともない、現地の少数民族労働者を雇用することはほとんどない。それと同時に、少数民族の集住する古い都市と農村への十分なプロジェクト投資はほとんどないか無視されている。地域開発計画の制定においても、予算分配と資源活用などでは、新疆の少数民族は周縁化され、極めて不平等な状態に置かれている。中央政府と自治区政府の開発計画でも、経済発展の遅れた新疆の少数民族が集住する地域の都市と農村に対する開発プロジェクトはなく、工業化についても何ら考慮されていない。広大な南疆(訳注3)の少数民族集住区にはそれなりの規模に達する企業は存在していない。それゆえ、少数民族の集住地区の開発予算は予算総額のごくわずかを占めるに過ぎない。ある意味においては、新疆の少数民族は新疆の経済発展の成果を充分に享受できてはいないのである」(原注8)。
 「改革開放」政策以降、新疆のウィグル民族のなかで二極化が進行した。ラビヤ・カーディル(訳注4)のような大資本家も誕生した。だが漢人の資本家、特に官僚資本を背景とした資本家と比較すると、数の上でも実力の上でも、比較にならないほどの違いがある。王力雄によると、(新疆ウィグル自治区の)ミネラルウォーター市場の七割を占める「新疆雪百真氷川水」は、自治区のトップである王楽泉・共産党委員会書記の婿が経営しているという(原注9)。これらの官僚資本も近年において、各種の社会的インフラ建設と旧市外区の再開発において大もうけした。新疆の観光業も漢民族企業が主導権を握っている。ハラール食品(イスラムの作法にのっとり調理された食材)を扱う一部の大企業も漢民族が経営している。
 少数民族における労働者民衆にとって、民族抑圧のほかに、階級抑圧がそれに加わる。しかし民族差別ゆえに、就職においてはウィグル民族はさまざまな方法で排除されている。それゆえ、この種の階級抑圧は、直接的な雇用関係のなかで表現されることは少ない。それが比較的多く表現されるのは新疆の資源略奪と市場独占においてである。この点については、新疆の状況は、チベットに比べてもさらに深刻であろう。

二〇〇九年七月二十八日

原注
原注5:「信報」二〇〇九年七月九日。
原注6:Beijing wants more oil out of Xinjiang
http://www.asianews.it/index.php?art=4259&l=en#
原注7:『中国民族問題報告』、中国社会科学出版社、二〇〇八、百十七頁。
原注8:「ウィグルオンライン」ウェブサイト
http://www.uighurbiz.net/bbs/viewthread.php?tid=487&extra=page%3D1
原注9:『私の西域、君の東トルキスタン』二〇〇七年十月、台湾大塊文化出版、九十六頁。
訳注
(訳注2)イリハム・トフティ:一九六九年、新疆アルトゥシュの生まれで、東北師範大学、北京中央民族大学で学士と修士の学位を取得し、韓国、日本、パキスタンに留学した経験をもち、中央民族大学経済学院の副教授をつとめる。ウェブサイト「ウィグルオンライン」で積極的に彼は中国政府の民族政策及び新疆ウィグル自治区指導者の経済政策を批判し、ウィグル族人民の権利や民族融合を主張し、暴力に反対していた。これまでにも何度か当局から警告を受け、短期間拘束され、ウェブサイトも一時閉鎖されたことがあった。七月五日のウルムチでの騒乱の直後、新疆ウィグル自治区人民政府のヌル・ベクリ主席は、「ウィグルオンライン」を「デマを流布し、暴力を扇動した」と名指しで批判した。イリハム氏は、七月八日未明に知人に電話で「すでに正式な通知を受け取った。恐らくこれが最後の電話になりそうです」と語った後、消息を絶った。
アジア連帯講座の関連報道参照
http://solidarity.blog.shinobi.jp/Entry/539/
(訳注3)南疆:王力雄の『私の西域、君の東トルキスタン』によると、「新疆には三つの山脈がある。北部のアルタイ山はロシア、モンゴル、カザフスタンとの自然国境をなす。南部の崑崙山はチベットとの自然国境である。千七百キロにわたる天山山脈は新疆を南北に分け隔てており、習慣上、天山以南を南疆と呼び、以北を北疆と呼ぶ。北疆にはジュンガル盆地、南疆にはタリム盆地があることから、新疆は「三山が二つの盆地を挟んでいる」地形と言われている。タリム盆地にあるタクラマカン砂漠は中国最大の砂漠で、二千百キロにわたるタリム川は中国最大の内陸河川である。」
(訳注4)ラビヤ・カーディル:一九四八年、新疆ウィグル自治区北部のアルタイ市生まれ。手製の衣料品などを市場で販売して生活の糧を得るが、文化大革命では「投機活動」を理由に批判を受ける。改革開放政策以降、日用雑貨販売やクリーニングサービスなどで商才を現し、八七年にショッピングビルを建設(後にラビヤ貿易ビルと呼ばれる)、貿易会社などを興し、ロシアおよび中央アジア各国との貿易で財を成す。九三年には共産党の統一戦線組織である中国人民政治協商会議全国委員に選出される。九五年には雑誌「フォーブス」の中国十大富豪のリストで第八位にランク付けされる。九六年の政治協商会議においてウィグル人の人権状況の改善を訴える。九九年に国家安全危険罪の容疑で拘束され、〇〇年に禁固八年の実刑判決を受ける。〇五年三月、外国での治療を理由に釈放され、米国に亡命。〇六年五月に米国ウィグル人協会会長に就任。同年十一月には世界ウィグル会議の議長に選出される。中国政府はラビヤを「東トルキスタンテロリスト」であり、七月五日のウルムチ騒乱の直後から、彼女がこの騒乱の黒幕であると激しく非難している。


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