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シリーズ ふざけるな!労政審 @           かけはし2009.11.30号

これが使用者委員、公益委員の
ジコチュー・身勝手意見だ!

はじめに

 長妻厚労相による労働者派遣法抜本改正諮問を受け、十月七日から始まった労政審審議の中で、使用者委員、公益委員は、身勝手が目に余る発言を繰り返し、ひたすら派遣労働を擁護、抜本改正にあくまで抵抗している。全体を通してそこでの発言の特徴は、この労働形態の下で派遣労働者が目の前で強いられている非人間的な状況にまったく関心がない、ということだ。この事実に触れる発言は、まったくと言っていいほど出てこない。派遣労働者という存在は、彼らの議論の中ではあたかも透明人間のように消えてしまっている。代わりに強調されることは、企業の都合、人を使う側の「利点」。それらの都合、「利点」は、「権利」とまで主張されている。この論理を突き詰めれば労働者の権利の全否定にまで行き着いてしまう。
 派遣労働者がどうなろうと知ったことか、といわんばかりのこんな議論を許すわけにはいかない。断固とした反撃、逆襲が必要だ。
 以下では、「労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動」の中で進められている論点整理などを参考に、現在明らかになっている彼らの主張の要点、それに対する批判をシリーズとして掲載する。
 ところでこの欄を担当する筆者は長らく中小製造業の現場で働いてきた者だが、その立場から許し難いと思わざるを得ない点を一つだけ最初に触れておきたい。
 それは後に挙げる彼らの意見を見れば分かることだが、ことある毎に、中小企業が苦境に立たされるなどと、中小企業を派遣労働正当化の「御旗」に使っていることだ。しかし中小企業に力づくで無理難題を押し付け不当きわまりないコスト切り下げを迫り、中小企業を圧迫しているのは紛れもなく大資本に他ならない。それは、中小企業で働く者は誰もが知っている。しかし労政審で彼らが行っている議論は、そこに矛先を向けず、その構造を容認したままただ安く無権利な労働者が必要との議論へ誘導しようとしているだけであり、こうしてあたかも、世間的には「弱者」と思われている中小企業の味方のようなふりをする点で実に不誠実かつ卑怯きわまりない。しかも彼らは、その場合そこで働く労働者はどうなるのかなど、てんで気にしていないのだ。本当に怒りがこみ上げる議論だ。
 その上実際に派遣労働を大々的に利用し利益を上げてきたのは大資本、大企業だ。いくつかの調査(例えば「赤旗」8月13日付)も、企業規模が大きくなるほど派遣労働者を活用していることを示している。そしてそれは、筆者の経験から言っても、中小企業の特質としてそうならざるを得ないと、十分に納得できる。中小企業は、派遣労働には移れない。派遣労働の禁止は中小企業いじめ、などという意見は、その点でもためにする事実のねつ造というしかない。
 日本における雇用の圧倒的部分を担っている中小企業を存続させる責任を負うべき者は何よりも大企業、大資本なのであり(いじめているのも彼らだ)、もちろん派遣労働者などではまったくない。そのことを改めてはっきり確認しよう。それを逆転させるような労政審の議論など許してはならない。
 個人的な怒りからやや脇にそれたが、以下本題に入りたい。なお、労政審発言の詳細を知りたい読者は、同審議会を傍聴している労働者たちがいくつかのウェブサイトにその内容を掲載しているのでそちらを参照していただきたい。ここでは派遣労働ネットワークのアドレスを紹介する。<http://haken-net.or.jp/>

〈1〉国際競争があるから?

発言@(公益、大橋勇夫、中央大学大学院戦略経営研究科教授、10/7)
 「国際相場を基準にして案を詰めるべき。製造業の国際競争は厳しいことを前提に、米国、ヨーロッパの派遣はどういう規制なのか?」
発言A(使用者、石井卓爾、三和電気工業(株)代表取締役、10/7)
 「企業は厳しい国際競争にさらされ、値下げ、コスト下げを迫られている。派遣法の見直しがこのような流れで進むなら、国内に製造拠点をもてなくなると話している」
発言B(使用者、高橋弘行、日本経団連、11/10)
 「二〇〇四年の製造業派遣解禁以降、国際競争は厳しさを増し、景気変動が大きくなっている。それに伴って需要予測が困難で、企業の最大生産量に合わせて雇用の維持が難しい中、派遣という制度を禁止すると日本の企業は生き残れない。厳しい国際競争の中、柔軟な生産体制を構築しなければならない」
発言C(使用者、市川隆治、全国中小企業団体中央専務理事、11/10)
 「常用型派遣を広げるという考え方について、中小企業は大部分が登録型派遣に頼っている。登録型と常用型では、時給に大きな開きがある。中小企業は、常用型派遣を雇うとなると、コスト増により経営悪化が懸念される。外国の相場感で考えてほしい。外国は登録型が主流である」

 文字通り企業の都合一本槍の主張が繰り返されているが、その結論は要するに労働者にかかるコストを引き下げたいということに尽きている。そしてその手段として派遣労働に狙いが定められている。これは極めて明確だ。例えば発言Cはまさにあけすけ、登録型と常用型とをコスト比較した上で「安い」登録型が必要と言う。
 しかしこれらの方策は、それこそ派遣労働の非人間的な実態を、あるいは派遣労働者とは非人間的に「安く」使ってもいい存在だとのまるで身分制度のような社会構造を、あらかじめ前提にしなければそもそも成り立たない。これは文字通り不正義ではないか、そしてこれらの主張の裏にあるものは、人間の平等、尊厳や、最低限度の健康で文化的な生活などの、端からの破壊ではないのか。このような前提の上では、例えばこの間、識者としてたびたび登場する濱口桂一郎氏が主張するような派遣労働者の処遇「改善の工夫」などは、ほとんど意味をなさない。
 ここで前提にされている社会は、資本が労働者の生存保障に責任を持つつもりのない社会だ。そんなことは国際基準としても現代では通用するわけがない。国際競争の問題とは、本当は、社会に責任を負うことを含め、産業を指揮すると自負する資本そのものの未来に向けた創造能力が問われている問題、と言うべきだ。問われているのは彼らなのだ。その観点から見れば、その自覚もなく、問題を社会全体にすり変え、労働者を痛めつけるという方法しか主張できない者たちは結局のところ自分の無能をさらけ出している、と言うしかない。
 われわれ労働者はそんな者たちを許すわけにはいかない。彼らには打ち勝たなければならない。そしてそれとは別に、先のような主張に同調する特に公益委員に対しては、公益を名乗る以上は、先のような社会のあり方の問題に対して真しに何かを考えているのか、その責任を問わなければならない。

〈2〉製造業派遣は禁止すべきでない?

発言@(公益、岩村雅彦、東京大学大学院法学政治研究科教授、10/7)
 「派遣法の規制を強めることが必要だとして、今がそのタイミングなのか非常に不安を持っている。派遣の位置づけを含めた議論が必要。製造派遣は具体的に分析、議論しておらず、いきなり禁止にいくのは議論の飛躍」
発言A(使用者、市川隆治、前出、10/15)
 「製造業への派遣を原則禁止することで、育児などによりフルタイムで働けない人たちの勤労権、職業選択の自由を侵害するのではないか」
発言B(使用者、市川隆治、前出、11/10)
 「派遣切りが問題となったからと原則禁止することは行き過ぎである。派遣元・派遣先がきちんと雇用責任を取るような制度の手直しが必要で、そういったことで対応すべきである」

 発言Aにはこじつけがあまりに過ぎる。なぜ直接雇用では駄目なのかを何も語りもせずにいきなり職業選択の自由侵害とは問題外の議論と言うしかない。労働者にとっては、なぜ派遣でなければならないのかが問題なのだ。しかし派遣でなければならないという決めつけの陰には、国際競争の問題で露骨に現れたように、コスト切り下げという動機が明らかに隠れている。そうである以上、同一人物がBのようにもう一方で処遇改善の工夫などと心にもないことを発言することは不誠実この上ない。
 製造業派遣を舞台に大量の労働者が路頭に迷わされるという現実が突き付けられ、資本の無責任があからさまに露呈した以上、厳格な規制は当然の要請だ。タイミングは今でないとすればいつなのだろうか。
 しかしそれ以前に、そもそも製造業派遣は絶対に認めてはならない雇用形態だった。この雇用形態の下では、労災の危険が飛躍的に高まる以外ないからだ。それは、労働者の命そのものの使い捨てだ。現実にも、このわずか四年の間に派遣労働者の労災死傷はまさに激増した。それは必然であり、製造業の現場で働く者ならば容易に予測できたことだ。何故か。それは、労災の最後の防波堤は、仕事に対する労働者の身体に刻み込まれた精通(危険要因の状況の感覚的察知)と、それらを伝え合うとともに助け合う、働く者同士の親密な連帯だからだ。そしてそれらを、システムや設備などで完全に代行することなど決してできない。危険が不可避的に付随する業務に先の二つのものを二つとも最初から欠落させた派遣という雇用形態を認めたことは、未必の故意による犯罪と言ってもよいほどの大罪だ。製造業派遣規制の問題は、そもそもタイミングなどというものが入り込む余地のない問題と言わなければならない。今さら「分析」などという寝言を許す余地などない。(つづく)(神谷)




12月労政審を大衆的に包囲しよう
もう耐えるつもりなどない!
抵抗派の後ろ向き審議許すな


 十月七日に厚労省労政審職業安定分科会を皮切りに始まった派遣法抜本改正諮問の審議は、同分科会労働力需給制度部会に場を移し、ここでの審議も十一月十日までに三回を重ねた。既に本紙でも伝えたように、使用者委員、公益委員は相変わらず、現実を無視したでっち上げ的「事実認識」やこじつけ的屁理屈まで持ち出し、三党合意に基づく厚労相諮問に抵抗している。
 至近の十一月十日でも、登録型派遣や製造業派遣の禁止では「中小企業は人手に困る」とか「派遣と正規では期待するものに違いがある」、「人材活用に違いがある」ため均等待遇は難しい(使い捨てを自ら認めているに等しいが、以上は使用者委員)、「雇用の安定と労働力需給とは対立しない」(公益委員)など、企業の身勝手な都合しか頭にない議論が重ねられている。彼らの目には、厚労省もやっと認めたOECD三十カ国中最悪レベルにある日本の貧困率は、そしてそこに派遣労働が大きく作用している現実は、まったく映っていないかのようだ。
 労働者は何一つぜいたくなど要求しているわけではない。人間としての尊厳の下に生き抜くことの保障、労働者派遣法抜本改正要求の核心は、唯一それだけだ。使用者委員や公益委員はしかし、この核心に何一つ応えようとしないのだ。このギリギリのところからの要求に真摯に向き合えないのであれば、現在の構成の労政審は社会的資格を失ったに等しい。総選挙で国民が命じた明確な政策転換指示に照らして失格であることも、もちろん言うまでもない。
 この現状を許してはならない。派遣労働に対する労働者の怒りの声を、もう耐えるつもりなどないとの意志を労政審にたたきつけ、常識が通るまじめな審議に引き戻そう。まさにそのために「労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動」(以下共同行動)は、十月十五日の第一回労働力需給制度部会審議以降、毎回厚労省前行動に立ち上がっている。年内のすべての審議に対してもさらに行動を強めることを呼びかけている(日程は後掲参照)。
 ホワイトカラーエグゼンプション導入を狙った三年前の労政審では、まさにそのような労働者の怒りを込めた大衆行動が、非道な先の制度導入を葬り去る上で重要な力となった。今こそ当時の闘いをより力強く再現しなければならない。十二月の審議に対してはそのような行動に向け準備が進められている。その一環として十二月一日には、「もう一つの労政審」と銘打った院内集会が設定された。そこに向け、この間の労政審審議を整理し徹底的に大反論を打ち返す作業も進行中だ。
 派遣法抜本改正に対する大義の丸でない抵抗を完全に打ち砕くために、共同行動の呼びかけに全力を挙げて結集しよう。年末にかけた緊急雇用対策の実効化を図る下からの運動と一体化し、労働者民衆の垣根を越えた団結の力を今こそ発揮しよう。   (神谷哲治)
■労政審日程
 12月9日(水)午前10時 厚労省
 12月18日(金)午前11時 厚労省
 12月25日(金)午後2時 厚労省
 共同行動抗議・要請行動は審議開始時間三十分前から。ただし十二月の行動時間は長時間となる可能性あり。
■「もう一つの労政審」
 12月1日(火)12時30分〜午後2時 各党議員の決意表明、午後2時〜午後4時 「もう一つの労政審」/衆議院第2会館第4会議室

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