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労働者保護の派遣法改正を!日本労働弁護団集会      かけはし2010.3.15号

かけ値なしの改正を

「要綱」のままの法案化では
派遣労働者の権利は守れない

政治主導での
見直し強く要求

 労働者派遣法改正案の法律案要綱(以下要綱)が労政審で了承され、派遣法改正案が政府案として今国会に提出される手続きが大詰めを迎えている。緩和に次ぐ緩和を重ねてきた労働規制が規制強化へと逆転される方向がもう一歩固められつつある、とは言える。
 しかしこの要綱は、本紙でも問題を指摘してきた昨年十二月二十八日の労政審答申をそのまま踏襲したものであり、派遣労働者の願いからは相当に隔たったものとなっている(別掲「解説」参照)。このままの法案化では派遣労働者の権利を守る上で大きな問題を残す。ここに来てこの問題をめぐり、各方面からの懸念と批判も高まり始めた。
 日弁連は、その観点からの意見書を長妻厚労相に提出、「専門26業務」、製造業派遣禁止や日雇い派遣禁止の例外規定、均等待遇、みなし雇用に関わる違法認識要件及び適用される直接雇用契約、事前面接解禁などについて見直しを求めた。さらに三月二日には亀井金融相が、「雇用される側の立場を組み込んだ政策」が必要とし、要綱が「そのまま政府案となることはない」と発言、福島みずほ消費者・少子化担当相も「基本政策閣僚委員会などで協議しよりよいものに」と続いた。ギリギリとしたつばぜり合いが続いている。
 まさにこの局面に規制強化の声を突き付けるべく、三月五日夕総評会館で、日本労働弁護団主催の標記集会が行われ、二百人以上の参加の下、派遣労働者の権利を守るに足る法改正を求めた。集会には、連合から出ている労政審労働者委員の小山JAM副書記長も参加し、労政審答申を了承した立場を説明した。小山氏の立場は、重大な問題が残されていることを確認しつつも、公労使三者合意システムの尊重及び規制強化方向の打ち固めを強調し、運動の強化で次の見直しを、とするものだった。しかしそれ以外の発言は、政治主導による抜本改正の法案化を強く求める意見で占められた。

名ばかり改正の
問題点次々指摘

 まず主催者挨拶に立った宮里労働弁護団会長は、直接雇用、期間に定めなし、という雇用の大原則を踏まえた抜本改正が必要とし、現行派遣法を盾として出された昨年末の松下PDP最高裁反動判決がその不可欠性の証しだ、と力説した。
 基調報告に立った水口労働弁護団幹事長は要綱を一つ一つ分析、規制強化への転換という点は評価しつつも、その不十分性、問題点を具体的に解説した。その上で、要綱は法案ではない、さらなる見直しに向け全力を、と訴えた。
 その後先の小山氏を挟んで、抜本改正を求め運動してきた派遣ユニオン、全労連、東京東部労組、なにわユニオンの各代表が、派遣労働者の権利を守る闘いの現状を基に、要綱の問題点、実効性の弱さを説得力を持って指摘、要綱を「名ばかり改正」と厳しく非難した上で、抜本改正が必要不可欠と強調した。なにわユニオンの発言は「労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動・大阪」を代表するものでもあった。
 次いで神奈川シティーユニオンの日系ブラジル人労働者を含む四人の派遣労働者が、派遣労働者が置かれている非人間的な境遇をつぶさに訴え、何としても抜本改正を、と求めた。ニーズがあるなどとうそぶかれた上に、派遣先企業によって人格否定にも及ぶ冷酷な仕打ちが加えられていることを、悔しさで時に声も詰まらせながら生々しく告発したこれらの発言は、参加者の胸を強く揺さぶるものだった。
 これらの発言を受け、徳住労働弁護団副会長が集約発言を行い、特に、常用雇用の定義、専門業務、施行時期の見直しを強調しつつ、自分たちで法をつくる闘いが可能な時代をここからこじ開けようと訴えた。そして次に課題となる例として、有期雇用規制の問題、労働者性の法的確立の問題を挙げた(現在例えば牛丼のすき家―一部上場企業ゼンショーが経営―を先頭に、労働者を業務請負の個人自営業者などと言い張り、雇用責任をまったく負おうとしない卑劣な無法経営の横行がある)。この集会ではまた、少なくとも十一項目の見直し点を明らかにした労働弁護団アピールも発表された。
 特に大企業を中心とした目に余る雇用責任逃れを許さない派遣法抜本改正を何としても実現するために力の限り闘おう。  (神谷)


【解説・要綱の何が問題か】
例外という名の大穴
一方でさらなる緩和

 以下ではいくつもある問題の内主要なものを七点だけ取り上げる。

1 規制の大穴
 登録型、製造業派遣は原則禁止とされているが、その例外規定が大穴になっている。
 一つは「専門26業務」の大穴。このでたらめさについては問題が広く知られ始め、つい最近厚労省も厳格適用の行政指導通達を出さざるを得なくなった。特に女性労働者差別の温床としても問題が極めて大きい。
 もう一つは「常用雇用」の大穴。実は「常用雇用」には法的定義がない。現在あるものはただ、派遣労働に関する厚労省の「業務取扱要領」だけであり、これによれば、短期雇用契約であっても反復更新で一年以上の雇用見通しさえあれば「常用」とされてしまう。また、派遣元との雇用契約が期限に定めのない「常用型」とされている派遣労働者が、現在、派遣先からの業務打ち切りを理由に大量解雇されている実情もある。つまり現在のままの「常用雇用」では、雇用の不安定性から解放される担保にはまったくならない。今回の例外規定のままでは、現在登録型として働いている派遣労働者の八〇%が例外としてそのまま不安定雇用の下に置かれる、との試算もある。
 本来例外なしの禁止が必要であり、少なくとも、いずれの例外規定にも厳格な見直しが必要だ。
2 みなし雇用の大穴
 違法派遣について派遣先に直接雇用されているとみなす規定だが、まず違法派遣とは何かとの規定が五類型に限られる規定となっていること。現実にはさまざまな違法状態があることを考えれば、これでは派遣先の責任を著しく軽減するものとなってしまう。
 第二にみなし雇用義務の発生要件に派遣先の違法認識を入れていること。しかし実際には、派遣元、派遣先共謀によって、派遣先は違法を知らなかった、との形式づくりが横行している。
 第三に派遣先に課される直接雇用条件が、従前の派遣元との雇用契約と同じでよいとされている問題がある。派遣元との契約は有期契約である以上、これでは何ら安定雇用とはならない。松下PDPの吉岡さんの例のように、直接雇用となっても期間切れによって簡単に解雇される可能性が大だ。これでは派遣労働者は、違法派遣を明らかにし直接雇用を求めることが事実上不可能になる。もちろん、賃金など他の労働条件格差がそのまま残る問題もある。
 これらが見直されなければ、みなし雇用の実効性は限りなく空洞化しかねない。
3 事前面接解禁
 「常用型」について事前面接を認めた規定がそのまま残された。「常用型」のいい加減さは見た通りだ。つまりこの規定では、現在横行している違法な事前面接を単に追認するものにすぎなくなっている。
 派遣労働とは、派遣先企業が何ら雇用責任を負わずに済む労働力使用だが、この事前面接解禁は、そのような無責任な者に採用決定の権限まで与えるというとんでもなく虫の良い規制緩和だ。逆に言えば法的な雇用主である派遣元は採用権限がないということになり、これは派遣元の雇用責任を一層空洞化することにつながるだろう。いわば、派遣元も派遣先も誰一人雇用責任を負わない状態の出現だ。こんなめちゃめちゃなことを認めることはもはや法治とは言えない。
4 派遣先責任強化の先送り
 団交応諾義務を始めとして、賃金未払いに対する共同責任、中途解約時の残存期間賃金支払い義務、労災補償責任の共同責任化など、派遣先責任強化の規定がない。これはそれらの規定を今後の課題とした労政審答申に従ったものだが、これによって派遣労働者の権利保護には裁判に訴えるなどの法的措置しか道がなくなり、大きな障害が残ることになる。
5 日雇い派遣禁止の例外規定
 要綱では、日雇い派遣について、専門的業務で「当該日雇い労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼす恐れがないと認められる業務として政令で定める業務」を例外として認めるとしている。しかしこの基準は極めて不明確であり脱法的拡張解釈の危険がすこぶる高い。元々日雇い派遣は雇用の不安定性が高く権利侵害が起きやすいだけではなく、社会保険等の資格要件が得られないなどの不利益が多い。そのことを考え合わせれば無条件の禁止とすべきものだ。
6 均等待遇の回避
 要綱では「均衡」待遇に「配慮する」とされた。これではこれまでもそうであったように、労働条件の均等性確保に実効性はまったくない。「均等」条件の「義務化」を規定すべきだ。
7 施行期日
 次から次へと問題が露見しているさなかに最高五年の施行猶予期間が置かれた。露骨な派遣先、派遣元配慮であり、当然ながら批判が集中している。即刻の施行としなければならない。




春闘勝利!派遣法NO!
すべての争議の勝利を!
おおさかユニオンネットワーク集会


 【大阪】二月十九日、エルおおさか南館で「春闘勝利!派遣法NO!すべての争議の勝利をめざして―おおさかユニオンネットワーク決起集会」が開かれ、百五十人の労働者が参加した。友延さん(ゼネラルユニオン)が司会をした。闘いの映像「自動車会社の社長さんに会いたい」(土屋トカチ制作)の上映の後、ユニオンネットワーク代表の垣沼さん(全日建連帯労組)が主催者あいさつをした。
 「大企業の内部留保は昨年と比べても数十兆円も増え、一方非正規の労働者は全体の三割を超え、その多くは年収が二百万円以下という状況。鳩山新政権はこの状況を改善してくれるのではとの期待はあるが、現実はそのようになっていない。労政審の派遣法改正の答申はひどいし、資本の側の反撃も起きている。また普天間基地の問題もある。来る参議院選挙では、自民党に入れることはないだろうが、民主党は票数を減らすのではないだろうか」。
 続いて、近藤弁護士(大阪労働者弁護団)が労政審答申を批判する形で派遣法改正に関する提起を行った。「リーマンショックを理由に大量解雇が断強行された。しかし解雇四条件にあるように、簡単に首を切るのは本来許されるものではない。雇用の安定を保障すること、派遣労働者にも正規労働者と同等の均等待遇をすること、違法派遣には罰則を科すこと、直接雇用とは有期雇用のことではなく、期限の定めのない雇用でなくてはならない」などの指摘があった。

二つの免職・解
雇争議勝利報告

次に、大阪市・新任教員免職闘争(大阪教育合同)とパナソニック電工・派遣解雇争議(宮城合同労組)の勝利解決報告が行われた。前者の報告者、井澤絵梨子さんは二〇〇四年新任で大阪市小学校教諭に採用され一年後に免職処分。〇五年大阪地裁に訴訟を提訴。〇八年八月大阪高裁で完全勝訴するが市教委が上告していた。五年近い闘いの後の昨年十二月二十二日、最高裁が上告不受理を決定し、免職処分は取り消された。十二月二十四日付けで地位と身分が回復、市教委は正式に謝罪した。いま彼女は現場復帰のための研修を命ぜられ、希望の現場で楽しく研修を行っている。現在職場復帰のための交渉が続いているが、この五年間に実施された評価育成システム(人事査定制度)との関係でのバックペイの額、五年間の年休の扱いなどについてはまだ同意に至っていない。
パナソニック電工の方は、宮城合同労組の星野委員長、ふくしま連帯ユニオン(支援する会)の佐藤さん、当該の佐藤昌子さんから報告があった。もともと佐藤さんはパナソニック電工の面接を受け直接雇用されていたために、会社は慰謝料・解決金・バックペイの方向で動き出していたが、プラズマディスプレイ上告受理で一度は態度を変えたとのこと。しかし、この二つは別々の件だとの裁判所の判断に従い十二月二十五日に和解が成立した。佐藤昌子さんはいまや地元では有名人。十八年働いてきたが、またゼロからの出発となった。一月の新年会では職場の同僚が佐藤さんの復帰を祝ってくれた。パナソニックの正社員はユニオンショップ協定により、全員がパナソニック労連に加入している。労連幹部は、「佐藤さん一人が別の組合に加入しているので労連の充実した福利厚生制度が利用できないが、後で問題にしないように」と伝えたそうである。
 佐藤さんは「雇用や最低賃金の問題など地に足をつけてこれからも闘っていきたい、そのようにすることでしか仲間は増えていかない、当事者の意欲がそがれないような組合をつくっていきたい」と決意を述べた。

より入り組んだ
攻防に連携確認

続いて三人から争議アピールがあった。後藤さん(全港湾)から。クボタは外国人労働者らを長年偽装請負という雇用形態で使用してきて、社会的批判が高まると有期契約の直接雇用に切り替え、雇い止め解雇した。現在二十人以上の集団訴訟で闘っている。大阪府労委の使用者委員をしているクボタの北岡正好取締役の即刻辞任を大阪府知事に要求している、との報告。国労闘争団(佐賀)から。鳩山政権下で雇用・和解金・不採用期間の年金の問題について政治解決に向けた話が進んでいて、三月末には解決するだろう、との報告。吉岡さん(パナソニック・プラズマディスプレー)から。十二月十八日の最高裁判決が偽装請負を認定し、雇い止めは不法行為だと認定しながらも労働契約は有効とし、結果的に不法行為を容認した。この判決の問題をILOに提訴し国際社会に訴えていく、との決意表明。
 これに続いて、山原さん(ユニオンネットワーク事務局長)が春闘行動の行動提起。企業は派遣切りで切るものは全部切ったので、今再び偽装請負に戻ったりしている。新たな偽装や有期雇用の問題、臨職公務員や講師の偽装請負の問題、再雇用不安があり、より入り組んだ労使の攻防がある。このような中、派遣法NO!春闘勝利を掲げ三月三日におおさかユニオンネットワークの春闘総行動を行うとの提起があった。最後に、各組合や争議の当該から十件を超えるアピールがあり、大野さん(全港湾)のまとめと団結ガンバローで集会を終えた。(T・T)


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