| 「第2回なくそう!官製ワーキングプア反貧困集会」 かけはし2010.6.14号 |
五月三十日、東京・お茶の水の総評会館で、「第2回 なくそう! 官製ワーキングプア 反貧困集会」が開かれた。主催は実行委員会。「国・自治体がワーキングプアつくってどーすんだ!?」と問いかけた。
昨年四月。この会場に、国や地方自治体など、公共サービスの最前線で働く労働者が、前近代的な無権利状態に置かれている実態を告発すべく集まり声をあげた。この集会への注目や反応は、主催者の予想を大きく超えた。そして「官製ワーキングプア」という言葉が、解決すべきテーマとして広く社会に投げかけられ、各地で語られるという状況が作り出されてきた。
三つの分科会
で経験交流
集会の午前の部は、会館の各部屋で三つの分科会が持たれた。
第一分科会は、「有期雇用、解雇との闘い」。第二分科会は、「賃金、手当て、休暇などの改善の取り組み」。第三分科会は、「業務委託、指定管理の現場での取り組み」がテーマで、それぞれ経験の交流があった。
私が参加した第一分科会には、短期の雇用更新を余儀なくされたり、解雇撤回訴訟を闘う当事者ら、最多の約八十人が集まった。港区職労執行委員の本多伸行さんが司会を務めた。まず「緊急報告」として、国家公務員の「日々雇用」における「三年年限問題」が紹介された。人事院はフルタイムや臨時雇用など、国の機関で働く非正規労働者の雇用年限を「三年」とする計画を打ち出している。早ければこの六、七月に決定。十月にも実施される見込みだという。
国の機関で
「日雇い労働」
国の機関で働く非常勤労働者の雇用形態の多くは、「日々雇用」と呼ばれる「日雇い労働」である。民間企業で呼称される概念と違う点は、同じ職場で同じ仕事に就きながら、制度的には「任用を毎日更新している」という不可解な解釈がされていることだ。日給制で勤務日が設定され、更新のための強制的な離職期間もある。そのため生活できる給料にはほど遠く、他の仕事を掛け持つ職員が多いのが実態だ。
今回の制度改悪は、この日々雇用の年限を「三年」と明文化しようという動きで、「人事院規則化」が強行されると、国や自治体で働く約十五万人の非正規労働者に影響を及ぼす。「三年解雇」が問答無用で合法化されることになるのだ。「連帯労働者組合・杉並」の安田真幸さんは人事院、総務省、厚労省の担当者との交渉の経過を要約して報告した。
消費生活相
談員の闘い
都の消費生活相談員として約二十年間働いている玉城恵子さんが、発言に立った。〇八年四月、都は要綱改定で「一年更新で最長二年まで」と決める。継続して働きたければそのたびに試験を受け、それに合格しなければならないというのだ。
「職場の先輩たちはみな定年まで働いたはずだ」――一方的な通告に納得できない彼女は、同僚と討論を繰り返し労働組合を結成。東京都と交渉を続けている。
都の姿勢は頑なだった。「非常勤はもともと一年更新であり、来年度の採用条件や賃上げは、そもそも団交の協議事項ではない」と門前払いを繰り返した。「ならば労働組合は、いったい何を交渉できるのか。教えてほしい」と詰め寄れば、「それは自分たちで考えろ」と軽くあしらわれたという。
そんな組合員たちにも「神風」が吹いた。昨年九月。消費者庁の発足をめぐる国会での法案審議のなかで、全国にいる三千人弱の相談員の低賃金、不安定な雇用形態を見直す付帯決議が盛り込まれた。この六月にも答申が出される予定だ。
玉城さんは厳しい現実を見つめながらも、「福祉の相談員は待遇がよく雇い止めもない。私たちは四十人で年間四千件の相談をさばいている。みなさんとともになんとか雇用条件の改善を勝ち取りたい」と結んだ。
私の問題は
あなたの問題
沖縄県那覇市の女性センターで働くNさんは、施設設立当初から勤務してきた。九九年採用以前の雇用条件については、「六十三才まで働ける」という約束があったが、それ以降は「一年ごとの更新」に切り替わった。同じ非常勤職員が、二通りの働き方をしているのだ。しかし組合の働きかけで、実質的には年限の適用を阻止して現在に至っている。
Nさんは「私は組合の運動の成果にただ乗りしていた」と自戒しながら、「本土の『三年年限雇い止め』は今のところ、沖縄には届いていない。しかし那覇市人事課は、ことあれば『国のやり方に倣え』とチャンスをうかがっている」と警戒。「正規職員は非正規の問題をほったらかしにしている。でもそれはやがて必ず自分に降りかかる」。「沖縄の平和の問題、基地の問題も、日本全体の問題だ。つまり私の問題はあなたの問題ですよ、と言い続けていきたい」と締めくくった。
劇や俳句、
音楽で訴え
昼食休憩の後、午後の部・全体集会が始まった。
実行委の有志がステージに並び、「非正規労働者同窓会物語」という構成劇を演じた。同窓会に集まった懐かしい友人たちが、それぞれ近況を語り出して物語は始まる。教え子たちが社会の第一線で活躍していると喜ぶ教師に、当人が実は非正規、非常勤という不安定で過酷な現実を告白する。思わず失笑を誘うシナリオに、長丁場の集会の緊張が心地よく解きほぐされていく。
京都大学時間雇用職員組合「ユニオン・エクスタシー」の組合員・井上昌哉さんは、京大図書館で働いてきた。国立大学法人化の際に導入された「雇い止め条項」。京大ではこの「五年問題」で、全職員の半数以上の非常勤職員の、さらに半数の千三百人が、この三月に職を失うという。
「学生運動と労働運動の違いがよくわからなかった」と明かす井上さんは、同僚の小川恭平さんとともに大学側の発表に抗議。ストライキに突入した。テントと座り込みで団交を要求してきた。
抵抗の原点
いきいきと
とりあえずストを打ったが、後に当局の弾圧の激しさを痛感した。二人は五年を待たず四年目に雇い止めに遭った。それでもめげずに府労委や裁判に訴えて闘っている。
敷地内で一番目立つ時計台前には、「くびくびカフェ」を開店。「くびくび」とは解雇された二人をさす。コーヒーの値段は、所得を一万で割った額。年収二百万円なら二百円。五百万円なら五百円だ。自然や語り口やユニークなエピソードの数々に会場は沸き、敵のどんな攻撃も仲間たちと明るく不屈にはね返していく、抵抗運動の原点を見た気がした。
自治体直接雇用非正規労働者の闘いの数々が紹介された後、壱花花さんのイラストがスクリーンに映し出された。ソフトなタッチで鋭く権力を皮肉る作品の数々は、商業新聞にもたびたび掲載されている。
公募した「ワーキングプア川柳」の選考結果が、乱鬼龍さん(レイバーネット日本・川柳班)から発表された。新潟県職員組合非常勤部会の仲間は、合計六十四の句を寄せた。加えて当日の参加者から募った句の中から
、乱さんは「非常勤 賃下げだけは正規なみ」
「初夢は 元の職場に再雇用」
「成果主義 削られたのは人件費」
「休める日 指で数えてから寝込む」
「よっ社長 おだてられても非常勤」などを選んで評した。
大学の非常勤講師・コール佐藤さんが、おなじみの「非常勤ブルース」を熱唱。さらに佐藤さんは、入選した川柳を即興で歌にして披露した。
焦点は「雇い
止め制度化」
全国各地で不屈に闘い続ける人々の、生き生きとした報告に熱心に耳を傾ける参加者たち。紙面の関係でそのすべてを紹介できないのが残念だ。
荒川区職労の白石孝さんは、午後の全体会に先立って基調報告をした。昨年の集会を通じ、運動の中心で「官製ワーキングプア」の問題に取り組んできた。各地の現場でがんばっていた人々の声を集め、可視化し、社会に届けよう。公共サービスを担っている労働者の声を、政党や組織の壁を越えてひとつにしよう、という意気込みで活動してきた。
喫緊の課題は、前述の人事院による「三年雇い止め制度化問題」である。「これが強行されると、国と地方自治体で働く非正規労働者に対して、かなり大きな影響がある。絶対にこれを阻止しなければならない。これが今日の集会の大きな目的だ」と白石さんは訴えた。そして「官製ワーキングプア」と呼ばれる人々の全国の闘いを集約した新刊を紹介した。(※)ぜひ読んでほしい一冊である。
天と地ほどの
待遇格差が
公共職場の最前線で、時として常勤・正規職員たちの「盾」にすらなって懸命に働く非常勤・非正規労働者たち。不安定で短い雇用契約を繰り返しながら、専門的な技術を蓄積し、ベテランに成長していく。数年で異動を繰り返す正規職員の引継ぎを補助しながら、誇りある良質なサービスを提供してきた。
臨時職員や非常勤職員は、就労日数が限られているために、常勤職員と同量同質の業務でも、より速い処理が求められ、当然労働密度は高くなっていく。すなわち職業人としての高度な能力が求められるわけだが、日給制、有給なし。年限雇い止めと再雇用への不安。正規職員との待遇の格差は歴然としている。同じフロアで机を並べながら、その待遇は天と地ほどの違いがあるのだ。本来こうした実績は、「実質的には無期雇用」との期待を本人はじめ、職場の同僚らに抱かせて当然であるし、賃金も適正に経験加算されるべきである。
「行政改革」による「公務員減らし」の大合唱は、高級官僚と窓口職員を同一視させ、嫉妬心を煽ってバッシングへと向かった。仕事への「やりがい」や向上心は、当局にいいように利用され、労働者の分断を後押ししてきた。
人権無視の
「常勤化防止」
漫然と機械的に発せられる「雇い止め」だが、たとえば国家公務員の職場での「日々雇用」には、明確な法的解釈が見当たらないという。あるのは、六一年の閣議決定「定員外職員の常勤化防止」である。つまり、非常勤職員の「常勤職員化防止」。それは社会保険はじめ、各種の保障制度の適用を免れるためでもある。だから有期雇用かつ劣悪な労働条件のまま放置されているのだ。
それだけではない。最近では、裁判になった際に原告が勝ち取る「期待権」を恐れ、はじめから年限を明示する傾向が増えているという。これは当局の開き直りである。
同一価値労働
・同一賃金を
正社員大労組の動きは、極めて鈍い。大組合に所属する労働者の現実は、ここ数年の経済環境の悪化でかなり厳しいものになっている。組合員たちは組合に「守られている」のではなく、それよりもさらに低い待遇の人々が巷にあふれ出たことによって、相対的に自分たちの既得権が浮き上がり、「恵まれている」と錯覚させられているに過ぎない。あるいは、ひたすら自分にそれを言い聞かせているだけのことではないか。
資本や当局から恫喝を受ければ、自分たちの現在の地位を守るために、非正規や派遣労働者の首を差し出してはばからない労組幹部。しかし他者への犠牲は、必ず自分にはね返ってくる。まさに「去るも地獄。残るも地獄」である。
仲間を守らなければ、自分も守れない。「同一価値労働・同一賃金」の実現こそ、問題解決の第一歩だ。そんな思いを改めて強くした、内容の濃い集会だった。
(佐藤隆)
(※)新刊「なくそう! 官製ワーキングプア」(官製ワーキングプア研究会・日本評論社)が会場で販売され、集会後には出版記念パーティーが開かれた。
徹底審議で派遣法抜本改正を!
改正案をずさんに扱うな!
抜本改正の可能
性をふさぐな
主旨説明と四月二十三日の短時間審議以降ストップしていた衆議院厚生労働委員会での派遣法改正審議が五月二十八日から再開した。しかし次に決定されていた六月二日の審議は、鳩山首相辞任に始まる一連のドタバタであっさりと頓挫。派遣法の今国会での行方はまったく見通せない状況が生まれている。
会期末が迫る中、国会も波乱含みと予想される。何が起こるか分からない状況を前提に、「派遣法抜本改正 国会行動」は基本方向として、衆議院での継続審議を求め、秋再度の十分な審議、補強・修正追求、として運動を組み直すことを呼びかけている。その上で、六月八日に予定されていた国会前座り込みは、国会審議中断が確実に見込まれるため中止された。
実際現在の混乱状況の中でほとんど審議らしい審議もないままの衆議院強行通過などを許せば、修正どころか廃案につながりかねない。そしてもし廃案となれば、それが日本経団連を始めとする規制反対派を喜ばせ、彼らに息継ぎの時間を与えることは火を見るよりも明らかなのだ。そのようなことは決して許してはならない。国会日程は予断を許さない。即座の行動態勢を維持しつつ、現場、当事者の要求に基づく徹底した審議、そしてそれを通じた抜本改正のための補強、修正を強く求めよう。(神谷)
衆議院厚生労働委員会
派遣法審議傍聴記
同日の審議について、実際に傍聴した仲間から報告が届いた。自、公、みんなの党の派遣労働に対するおざなりな認識と姿勢を浮き彫りにするものであり、派遣労働の問題を広く訴える一つの材料として参考にしていただきたい(編集部)。
露骨な経営
側の立場
この日の審議は、自民党、公明党、共産党、みんなの党と、野党からの質疑。
大村秀晃(自民党)は、みなし規定について「使いかってが悪くなる」。また、登録型派遣の二十六業務以外の禁止について「派遣労働をやめる形になり、雇用が不安定になる。線引きが難しく、県の労働局の管理にも限界がある」と経営側の立場にたった質問。それに対し長妻厚労相は、「二月二十八日に二十六業務の解釈の通知を出し、さらに企業からの問い合わせに対し『質疑応答集』を県労働局に送付した」と回答。それに対し、大村委員は、「線引きは不透明であり、難しい。応答集などにコストを掛けても不適だ」と労働者保護の観点からではなく、「行政コスト」に対する質問に終始したものであった。長妻厚労相は、「行政業務は大変であり、企業に遵守していただくのが基本」と答弁。また、法改正による十八万人の派遣労働者に『影響』が出るが、その対策についての質問には、「失業を生まないようにして行きたい。施行猶予期間が三年から五年あるので、そこで対策をして行きたい」と答弁するにとどまった。
抜け穴理由
に改正反対?
坂口力(公明党)は、「私のところに連日FAXが大量に送られてくる。抜け穴だらけだと。改正はされているようだが抜け道もある。派遣労働に規制がかかると請負に流れると考えられるが、この改正で労働条件が改善されるのか」という立場から「請負業務と派遣業務」の労働条件の違いについて質問した。厚労副大臣は「平成十七年の製造業請負時給一〇一八・七円、製造業派遣時給一〇二二・一円と大きな相違はない」ことを示した。また雇用保険(請負91・2%、派遣88・8%)健康保険(請負82・5%、派遣85・1%)、厚生年金(請負74・0%、派遣82・4%)等の加入率についても相違ないと数字を示し答弁した。坂口委員は、「働く条件がよくなるのかどうかわからなく、改正の意味が問われている」と批判した。
適切な追及に
逃げの答弁
高橋千鶴子(共産党)は、今国会での徹底審議を求め、常用雇用すべて許可制にすべきであること。今回の改正案も緩い。厳しくしないとだめだと指摘した。長妻厚労相は、「自由な経済市場、労働市場に制約を掛けすぎることになる。」と答弁。高橋委員は、さらに資生堂鎌倉工場で八年間派遣で働き、その後請負労働者になるようにサインを強要され拒否した二十二人が解雇、訴訟を起こした事例を示し、「みなし雇用」の対象になるかどうか尋ねた。長妻厚労相は事例に対する直接のコメントは避けつつもみなし雇用の説明を行い、違法な働かせ方については適用すると答弁した。また、みなし雇用の雇用期間について、派遣可能期間の制限に違反した場合は、その雇用期間で良いとされているが、期間の定めのない常時雇用にすべきという質問には、「実質的な判断で」という答弁にとどまった。
ずさんな派
遣労働擁護
江田憲司(みんなの党)は、経営者側が派遣労働者から集めたアンケートなるデータを示し、派遣労働を良いと思っている労働者が高い数字であることを示し、誰のための改正なのかと迫ったが、派遣先での労働者が良くないと回答すれば雇い止めになるので当然高い数字になるのは明らかで傍聴者からの失笑をかった。みんなの党の政治性が見えた。 (H)
※なお、六月一日に行われた参院厚労委審議で長妻厚労相は、共産党の小池晃委員による質問に対して、医療部門に対する専門業務派遣の拡大は行わないと答弁している。
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