| 国交省成長戦略会議――航空分野報告批判 かけはし2010.6.21号 |
地方空港問題など航空政策の
破綻を隠蔽し営利主義を優先 |
国土交通省成長戦略会議は、国土交通分野の成長戦略の策定と称して観光、航空、海洋、運輸・建設の四分野について提言するために〇九年十月二十六日に設置され、
本年五月十七日、最終報告を明らかにした。とりわけ航空分野の報告書は、超過密航空運航の拡大に向けた羽田・成田空港の一体的運用と羽田の国際空港化、両空港を合わせた発着回数を現在の約五十二万回から約七十五万回への増加、膨大な赤字を生み出し続ける関西空港を救済するための伊丹空港との経営統合、安全軽視に貫かれた新自由主義的規制緩和とオープンスカイ(航空自由協定)の促進などを柱としている。これは〇九年十月にアジア国際空港競争からの遅れを取り戻すために掲げられた前原国交相路線を集約し、加速化させていくことを獲得目標としている。これは全国の空港反対闘争に真っ向から敵対し、日本の航空行政の破綻をさらに最悪な局面に導こうとしている。前原路線の反動性を暴露し、反空港全国運動の新たなステップを実現していくための一環として報告書を批判していこう。
責任を明確にしない提言
報告書は、赤字空港の続出、アジア国際空港競争の敗北による日本航空政策の破綻の直撃によって、これまでが「地方空港の建設に対して厚めの資金配分を可能とする空港整備勘定」と「収益路線からの内部補助を前提とし、不採算路線を含むネットワーク拡充を期待する対航空会社行政」であったことを認め、「低成長化の中、さらには、国家財政の更なる逼迫状況下、このパラダイムの継続のもたらす課題は看過できず、変革が不可避な状況となっている」という位置づけから始めている。
だが、ここには運輸族議員・ゼネコン・地元ボス・国交省官僚らが一体となって、第六次空港整備(一九九〇年代)と全国総合開発政策によって押し進めた一県一空港にしがみ続け、空港乱造によって、日航、全日空などの航空会社には採算を度外視した定期便を就航させ、利権獲得を貪ってきた共謀犯罪を切開し総括する姿勢は全くない。日航の「倒産」にみられるように日本の航空政策破綻は地方空港路線からの撤退が相次いでおり、地方空港の赤字は膨らみ、自治体財政の破産を拡大させながら、そのツケを民衆に押しつける悪循環へと追い込んでいるのが実態だ。無駄な空港は廃港しかないことは明白だ。しかし戦略会議は、この結論を中途半端な「変革が不可避」という表現にしかできなかったところに限界性を露呈させてしまった。
ところが「空港整備勘定によって、結果として利用実績が乏しい空港も含め整備を行い、全国で98の空港が供用されている」 ことを認め、さらに空港の「高コストかつ赤字体質」や「空港整備勘定(旧空港整備特会)」の問題点を取り上げ、「空港整備勘定の在り方についても必要な見直しを行うべきであったが、実際には、空港政策のシフトが不完全な状態のままとなっている」と明記しながらも、公租公課も含めた空港整備勘定の各歳入・歳出のあり方の見直しは具体的な削減数値も含めて航空族、官僚、各経営体などの抵抗があるため提示することはできなかった。
だから弱々しく「経営状況の透明化・地代の適正化に関する取組み」と設定し、「空港関連企業のほとんどについては、経営実態は明確になっていない。経営一体化等を実現する前段階におけるガバナンス構築に向けて、空港関連企業の経営状況に対する監視を強化するとともに、経営効率性の横比較も含め、その透明化を図ることとする」とした。地方自治体管理空港についても「地方自治体に対し、国が公表した空港別収支を参考とした決算の策定・公開を要請中という段階であるが、これを定期的に行うよう、
さらに要請を行うべきである」と明記するにとどまってしまった。空港運営として当たり前のことができていなかった根拠を明らかにすることが優先されなければならない。「どんぶり勘定」と隠蔽政策が容認されてきたことを切開し、その構造を解体するためには貪ってきた連中の犯罪を明らかにすることが必要だ。
結局、当面の空港運営について「空港整備勘定から支出することとするが、空港別収支の公表に加え、可能な限り空港別の予算を公表するなど、空港整備勘定の透明化・効率化をより一層推進する」とトーンを落としてしまった。どれだけ実行するのかかなりいかがわしい。その証拠の一つをあげておこう。一県一空港という空港乱建設政策を促進するための根拠として動員してきたのが過大需要予測だったにもかかわらず、このマジックでさえも浮き彫りにすることができないのだ。
空港過大需要予測のデッチ上げで「活躍」してきたのが国交省の天下り先である「運輸政策研究機構」だった。元国土交通審議官だった羽生会長は、この間、東京新聞(3月6日)の取材で「予測は建設の必要があるのか、事前に検証する重要な数字だが、多くのケースで実需の二、三倍もの予測を出し、『無駄』批判を浴びる空港建設につながってきた。発注者(国)側からこういう結果を出せとまでは言われないが、造りたい国の意図をおもんぱかってしまう。地元業者の期待感もあり、これに反する結果を出せればいいが、そうもいかない」などと暴露してしまった。あげくのはてに担当した静岡空港、北九州空港の実需の数倍の過大予測を出して批判されているが、「建設の是非を問われれば反対だ」などと無責任丸出しの発言をしている。
結局、鳩山前政権は、ずさんな航空政策を担ってきた責任回避のために航空需要予測関連委託業務に係る事業仕分けの一つとして「運輸政策研究機構」を対象に上げ、「事業規模縮減と予測値実態のかい離について徹底的に検証」というあいまいな判定をさせた(5・20)。これは歴史的に国交省の関与責任を隠蔽するためにスケープゴートにしたにすぎない。そのことを証明するかのように運輸政策研には国土交通省を「研究休職」扱いとなった現役職員十二人が出向していることが暴露されてしまった(5・20共同通信)。国交省が深く関与し、事業仕分けという演出装置が犯罪実態を覆い隠す役割だったことが見事に明らかとなってしまったのである。
なお、いいかげんな需要予測に基づいて強制収用まで強行した静岡空港建設の事業認定をめぐる裁判闘争では、静岡地裁は国・県側の立場にたった不当判決を強行したが、高裁段階ではこの「運輸政策研究機構」の存在が反対派にとって有利となる重要な証拠役割を担うことだろう。
国交省の空港乱建設路線の犯罪を暴き出し、税金の不正支出の総額を出させ、責任者たちに返還を含め責任を取ってもらわなければならない。
詭弁に満ちた羽田・成田問題
成長戦略会議は、カネと暴力によって強引に押し進めてきた成田空港建設、騒音・環境破壊を撒き散らす羽田空港の拡張を強行してきたにもかかわらず「首都圏空港強化の遅れ」と設定し、「羽田・成田の空港容量の恒常的不足、内・際ハブ機能の欠如が、アジア各都市等との都市間競争上の弱点となり、ひいては、日本の経済成長の足枷にもなってきている」、「首都圏空港の容量不足は、航空会社の大型機偏重につながり、便数頻度等利用者メリット提供を妨げる一因となるとともに、羽田・成田の『要塞化』、オープンスカイの導入遅れを通じて、厳しい競争から彼らを遮断し、強固な収益体質構築を遅らせてきた面も存在。また、LCC(格安航空会社)等、低コストメリット提供のインセンティブが働きにくい構造」からの転換を強調し、航空政策破綻からの「再生」
に向けて突き進めというのだ。
そのうえで「航空分野の成長戦略ビジョン」をめぐる情勢をめぐって、「羽田の新滑走路・新国際線旅客ターミナルの供用開始。地元の協力を前提とした成田の発着回数大幅増。
これは、積年の課題を解決する千載一遇のチャンスである」などと金儲け優先主義へとアクセルを踏み出す。
羽田空港に関しては、内・際ハブ機能を強化するために第四滑走路の整備による容量拡大とともに、二十四時間国際拠点空港化を進める。一〇年十月以降、昼間三万回、深夜早朝三万回の発着枠を国際定期便。昼間時間帯(午前6時―午後23時)は、羽田のアクセス利便性を活かしてアジア近距離ビジネス路線が就航し、深夜早朝時間帯(午後23時―午前6時)は欧米を含む世界の主要都市に新たな路線が就航する。この過密ダイヤによって現在の昼間三十・三万回、第四滑走路供用の十月時以降が昼間三十三・一万回
で深夜早朝四万回。一一年が昼間三十五万回で深夜早朝四万回。一三年が昼間四十・七万回で深夜早朝四万回と設定し、過密運航を押し進めるというのだ。これは必然的に米軍航空管制・空域、成田空域との接近による航空機事故、管制ミスなどの多発化へとつながり、飛行コース直下の住民に轟音・排気ガスを無限にまきちらしていくにもかかわらず、それらを無視した最後通牒である。
そして「首都圏空港の容量不足という事態の再来を防ぐため、適時適切な容量増に努める。当然ながら、これら検討においては、国内・国際両需要の今後の変動を注視し、必要に応じて国際線の更なる増枠も検討する」と明記し、過密運航ダイヤ・安全軽視・巨額な借金問題を棚上げにしつつ羽田第五滑走路拡張案作成を言い出している。しかもこの需要予測として「運輸政策研究機構」が試算した「首都圏航空需要が20年後には93万6000回に達する」というでっち上げ予測さえも参考にするとしている。過大需要予測責任隠しを強行した国交省は、財界・ゼネコンなどが要求する羽田第五滑走路への突進というねらいがあったのである。アナーキーな航空過密運航を阻止し、航空規制を強化していくことが求められている。
成田空港に関しては、「地元協議」と称して計画推進を強行し「我が国最大のボトルネックの解消が見込まれる」などと三里塚闘争を押し潰し、空港公害下の住民の不安や反対を排除していくことを宣言している。「成田の増枠について地元合意が得られ次第、首都圏空港を含むオープンスカイについて主要国との間で協議を開始」し、現在の二十二万回の発着枠を二〇一一年度中
に二十五万回、一二年度中に二十七万回を実現し、さらに一四年度中に三十 万回などと直進的増枠に向かうことを描き出した。
この強引な発着の拡大は、過密ダイヤ・管制によるニアミス・接触事故、滑走路離発着事故の多発化、飛行コース下住民に対する轟音・ジッェト機排気ガスまき散らしが必至だ。しかも成田空港会社は、安全・環境破壊を無視してA・B滑走路の同時平行離着陸方式によって空港処理能力を拡大しようとしている。三十万回発着計画による騒音区域の拡大に対し
て飛行コース・直下・周辺の住民の不安、生活破壊に対する怒りが次々と上がっている。空港会社は、防音工事の 対応で強行突破を図ろうとしているが、工事費削減を優先とするため適用範囲を限りなく狭めようとしている。住民は、そのねらいが露骨なため、より怒りを増幅させてしまうという状態に入っている。
さらに「LCCの本格的な参入促進を図るため、専用ターミナルの整備等により、低コストオペレーションが可能となる環境を整える」ことまで提示している。とりわけLCC会社は、コスト削減のために機体整備軽視、乗務員合理化と長時間過密労働、労働者分断・対立労務支配などによって安全軽視の経営を強化している。成田空港過密運航とセットなったLCC会社参入促進は危険な空港に踏み出すということなのである。空港会社の野望を許さず、発着枠の拡大・滑走路再延長、三里塚農民追い出し攻撃、共有地強奪を許してはならない。
展望のない関西・大阪・神戸空港
関西空港に関しては、ゼネコン、関西財界、地元利権集団のために膨大な借金を膨らませてきた経緯について検証することもなく、「有利子・無利子を含め、いまだ一・
三 兆円を超える巨額の負債を抱えており、それに伴い毎年度二百億円以上の利払いが発生し、負債の元利返済が会社経営上の大きな負担となっている」と述べ、「経常収支ベースのバランスを確保するためには、毎年度、政府補給金に依存せざるを得ない状況」であると認めざるをえなかった。
一九九四年に開港した関西空港は、建設費がかさんだ上、需要が伸び悩み、巨額の負債を抱えている。国は、二〇〇三年度から〇九年度まで計七百二十八億円の補給金を投入。一〇年度は百六十億円を概算要求したが、〇九年の事業仕分けで、経営改善の抜本的解決策が得られるまで凍結と判定されるほどの絶望的な借金空港なのである。
成長戦略会議は、関西国際空港会社が抱える一兆円超の負債を減らすために、 成田国際空港会社の株式上場益の活用を検討すると報告書に明記した。大阪(伊丹)空港を株式会社化し「関空の補完的空港として活用」として位置づけた。そして関西空港と持ち株会社の下で経営統合、両空港の事業運営権を民間に売却して関西空港の一兆円を超える有利子債務圧縮に充てるというのである。ただでさえ膨大な借金を抱える破綻空港であるにもかかわらず、いったい誰がその負担を抱えこむというのだ。なんら具体的な根拠を示すこともなく「持株会社の設立といった方式により、両空港の経営統合を先行させつつ、民間の提案を積極的に受け入れる中で、具体的方策を検討していくことが適当である」などとと提示する。
伊丹に関しては、「将来的なリニア等の周辺状況の変化や跡地の土地利用計画の策定状況等を見通し、廃港・関空への一元化を検討する等、民間の経営判断により、具体的な活用方策を決定する」とした。つまり、空港跡地売却をエサにすれば買い手が現れるだろうという漫画的願望のレベルでしかない。その延長で「廃港」も選択肢の一つだと吹き出すのであった。空港供給過剰状態であるにもかかわらず関西財界などは政府支援の継続によって関空、大阪空港、神戸空港の現状維持を主張し続けている。関西経済同友会は、「民間資金に過度に依存するものであり、実現可能性には疑問が残る」「(関空会社の債務圧縮手法は)実現可能とは考えられない」と報告書批判を強めているのが実態である。
こんなレベルの「解決策」では、どんなに悪あがきしようが巨額な借金を押しとどめることはできない。そのことを最も掌握しているのが国交省官僚たちだ。一一年度概算予算の関空建設を盛らないことを決め、経営統合した新体制で決めてもらうなどと責任を押しつけようとしている。こんな場当たり的対応では全く展望はない。関西空港を廃港することしかないのだ。これ以上、ムダのツケを民衆に押し付けることをやめろ。
環境破壊を前提にした報告書
戦略会議は、地球温暖化対策についても前原路線どおり全く無視の立場である。鳩山政権は四月に地球温暖化対策基本法案を国会に提出した(参院選により廃案)。
法案は、国内の温室効果ガス排出量を二〇二〇年に一九九〇年比二五%削減する目標と、国内排出量取引制度の創設を柱としているが、削減目標に主要国が合意することを前提とし、排出量取引との関連でも生産量当たりの排出量による上限設定をあいまいにしたままであり、削減とは逆行する欠陥法案だ。しかしこの法案との関連において戦略会議は、最低限、航空政策としてどのように温暖化対策を貫徹していくのかが問われていたにもかかわらず、例えば、航空機を対象とした航空機のCO2排出規制を導入する法案制定などの具体的規制指針を明記することもできなかった。だからこそ過密航空運航によるCO2排出量増加による環境破壊を前提とした報告書の性格を暴露し、厳しく批判していかなければならない。
人権・環境破壊、事故多発化にひた走る前原国交相路線を阻止していこう。
(遠山裕樹)
大地共有委員会ニュースレター第4号 2010年5月25日
共有地裁判に勝利しよう!
カンパありがとうございます
三里塚芝山連合空港反対同盟大地共有委員会(U)
裁判は現在のところ、原告(空港会社)、被告(反対同盟・一坪共有者)それぞれがお互いの主張を文章(準備書面)や証拠書類(書証)を提出し合っている段階です。
空港会社の今回の裁判の狙いは、「シンポ・円卓会議」の結論をうけて事業認定を取り下げたことにより、強制的な土地取り上げ(強制代執行)が不可能になったことを受け、その替わりに司法権力―裁判所を使って土地を強奪しようとするものです。
空港会社は地権者や地元住民の意志を全く顧みず、ひたすら利益の追及のために空港機能の拡大を図っています。空港会社は新たに共有地の点在する横堀地区(横風滑走路予定地)に誘導路とエプロンを作ろうとしています。こうした計画を遂行する上で支障となる共有地の解消は欠かせません。また、東峰地区の住民を追い出して平行滑走路を南側に延長して3500メートル級にするという計画とも不可分のものです。
こうした策動を許さないためにも裁判闘争に勝利しなければなりません。
今後、各共有地裁判の併合、証人尋問、裁判所の現地調査などを追求していきます。また傍聴などの呼びかけも行っていきますので、その際はよろしくお願いします。
〈裁判闘争資金カンパの御礼〉
引き続き協力をお願いします
カンパ目標300万円〈現在150万円です〉
裁判闘争資金カンパの呼びかけに対して、北海道から福岡まで全国から約80名の皆様から約150万円のカンパが振り込まれ、直接手渡し等で寄せられました。大変有り難うございました。
カンパを寄せられ
た方のメッセージ
b司法権力を使った「共有地強奪」を許さない新しい陣型を作りましょう。(京都府・Aさん)
b一年間御苦労様でした。来年もみなさまご健康でご活躍ください。(宮城県・Bさん)
b裁判資金カンパです。共有者ではありませんが、支援します。(埼玉県・Cさん)
b私は成田の問題には深くかかわっておりませんが、国と空港会社のやり方は全くとんでもないことで、人をバカにしていて許し難いと思っています。(千葉県・Dさん)
bできることは限られていますが、ひとまずよろしくお願いいたします。(奈良県・Eさん)
目 次
大地共有委員会(=)アピール 1P/東峰団結小屋維持会アピール 2P/4・11三里塚・東峰現地行動の集会発言から 吉川 守さん(一坪共有者、愛知県) 3P/1・17 2010年反対同盟旗開き 柳川秀夫さん、加瀬勉さんの発言 4P/4・11三里塚東峰現地行動報告 三里塚空港に反対する連絡会 7P/成田プロジェクト:航空・連続セミナー報告 8P
発行:三里塚芝山連合空港反対同盟大地共有委員(U)
連絡先:〒289―1601 千葉県山武郡芝山町香山新田131―4
電話&FAX0479―78―0039
振替口座 00290―1―100426 大地共有委員会(U)
大地共有委員会ブログ http://blog.livedoor.jp/kyouyutisanri
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