| G8・G20サミット かけはし2010.7.12号 |
「ミニ帝国主義」諸国の取り込み
G8サミット(「主要国首脳会議」)が六月二十五〜二十六日、カナダ・トロントで開催され、同二十六〜二十七日にG20サミット(20カ国・地域首脳会議)が開催された。
すでに昨年七月のG8(イタリア・ラクイラ)と同9月のG20(米国・ピッツバーグ)を通じて、今後はG20が「国際経済協力についての第一の会合」となることが宣言されている。G8は今や、没落する「主要国」のノスタルジーを表現する場でしかない。採択されたG8首脳宣言では、イランと北朝鮮に対する非難と、イスラエル軍によるガザ支援船への攻撃に対する「遺憾」以外は、従来何度も確認され、実施されてこなかった努力目標が羅列されているだけである。首脳の間の議論では、金融規制と財政再建を強調するヨーロッパ諸国と、景気刺激を強調する米国の間の対立と妥協が主要な話題であったと報じられている。
しかし、実際にはG8の存続自体が主要なテーマであったと推測される。英国のキャメロン首相はG8の縮小を主張しており、英国が主催国となる二〇一三年のG8は、各国首脳が集まる国連総会などの機会に付随的な会合として開催することを計画している(「ガーディアン」6月28日)。菅首相がG8首脳の夕食会で、今後のG8のあり方について「先進国同士の意思疎通の場として維持すべきだ」と存続論を主張した(「毎日」6月27日)ことからも、逆にこの推測が裏付けられる。
いずれにせよ、今回のトロントでのG8・G20が、G8の終焉、G20によるその代替を印象付けたことは間違いない。
G20は、従来のG7にロシアと「新興国」を加えた「二十カ国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議」として一九九九年から開催されている。
カナダの「ザ・グローバル・アンド・メール」紙によると、G20に招請する「新興国」のリストは、当時のカナダのポール・マーティン財務相と米国のローレンス・サマーズ財務長官が、「戦略的に重要」かつ「安全」な国という基準で選んだ。
G20首脳会議は〇八年から開催されており、中国、ブラジルをはじめとする「新興国」の世界経済の牽引力としての役割を反映して、G8に代わって大国間の利害調整の場となっている。
G20は、人口において世界の三分の二を代表しており、米国やECと対立する中国やブラジルも参加している。しかし、いかなる国際法上の正統性も持たない私的な会合であることに変わりはない。むしろ従来、米・日・EUや国際金融機関が推進する新自由主義的グローバリゼーションに抵抗するG77、あるいは「南」の諸国を代表してきた中国、インド、ブラジル、南アフリカ等の新興大国を新自由主義的グローバリゼーションの救済者、あるいは新たな牽引力として取り込むことを意図したものであり、これらの新興大国は「ミニ帝国主義」として、「先進国クラブ」への加入を承認されたのである。
第二段階に入った世界経済危機
今回のG20首脳会議においては、「先進国が二〇一三年までに財政赤字を少なくとも半減させる」という目標を盛り込んだ首脳宣言が採択された。
これはギリシャ危機が衝撃的に示した世界経済危機の第二段階への突入という事態に対する「先進国」の狼狽を示している。
〇八年の「リーマン・ショック」を法外な規模の公的資金投入を通じて乗り切った世界の金融機関は、あり余った資金を各国の国債等の投機的売買に投入している。
住宅ローン等の不良債権の証券化を主要な原因とする金融危機が去ったわけではない。米国では依然として住宅立ち退き強制をめぐる攻防が続いているし、住宅価格の下落により不良債権そのものは増え続けている。金融機関の倒産や年金機構の破産も続いている。一方、銀行救済に投入された公的資金は実体経済には還流されず、新たな投機バブルが始まっている。
銀行救済や景気浮揚のために気前よく支出された資金が、当然にも各国の国債の増加をもたらし、経済危機や法人税引き下げに等に伴う税収減と相まって、財政赤字の深刻化をもたらしている。
しかし、投機的な金融機関にとっては、国家財政が危機であればあるほど、国債の金利が確実な利潤を保証し、しかも瞬時の市場操作を通じて莫大な利益が得られる。
国債の市場価格や金利の変動は、一定程度はその国家の経済・財政状態や政策に対する評価を反映するが、短期の急激な変動は多くの場合、投機筋による人為的な操作である。どの国に、どのタイミングで襲いかかるかは投機筋の恣意に任されている。格付け機関なるものが犯罪的な投機に手を貸している。ひとたび投機に襲われたときのダメージは甚大であり、回復には長い年月が必要となる。
ギリシャ危機以降、各国政府は投機的金融機関の餌食となる現実性に怯えている。しかし、各国政府は、投機を規制するのでなく、投機的金融機関に狙われないようにするという一点で、財政再建策を競っている。年金の切り下げ、公務員人件費の削減、医療・教育・福祉の切り捨てと判で押したような緊縮政策のオンパレードである。
フランス、ドイツをはじめとするEU諸国は、〇八年以降金融規制と金融取引への課税を具体的に進めてきている。米国のオバマ政権も金融改革法の可決によって一歩を踏み出した。一方で、オバマ政権は国内産業の建て直し、輸出力の強化を打ち出し、借金による輸入に依存した経済からの転換をはかろうとしている。しかし、オバマの民主党に重要な影響力を持つ金融ロビーや政権内のその代弁者たちの抵抗は依然として強力である
G20の宣言においては、「経済回復は……脆弱(ぜいじゃく)である」という認識の下で、「成長に配慮した」(つまり、米国の主張に配慮した)財政再建計画が打ち出された。
「主要国は二〇一三年までに財政赤字を少なくとも半減させる」という合意は、投機的金融機関を宥めるためのその場しのぎの約束にすぎない。しかし、同時にそれは、各国政府が進めようとしている一連の緊縮政策を権威づけるものであり、「財政再建」の呪文によって労働者人民に容赦なく襲いかかるという決意の表明でもある。
中国をはじめとする「新興国」は存在感を高めたが、G77諸国や「南」諸国の利益を代表して不公正な国際経済のシステムを改革するようなイニシアチブを発揮するのではなく、「旧先進国」との協調を一貫してアピールした。
千人近くを逮捕、空前の治安体制
カナダでは、労働組合、市民運動団体、NGO、先住民団体をはじめ広範なグループが連日、G8・G20に反対する創意的な活動を展開し、六月二十六日には、海外からの活動家を含めて推定一万人から二万五千人がデモに参加した。
カナダ政府はG8・G20の警備のため、一カ月以上前から活動家に対する監視と嫌がらせを執拗に繰り返し、サミットの直前から交通規制、予防拘束を強化した。「テロリスト」からサミットを防衛するという名目で、空前の弾圧体制を敷いた。二十六日には警察の指示によってトロントのダウンタウンへの往復の交通手段の運行が中止され(「テロリストが火炎瓶を持ち込む」という情報を理由に)、通行人は警察の誰何(すいか)を受けた。
デモ参加者たちは、経済危機の犠牲を労働者や貧しい人々に押し付けるG8・G20の経済政策への批判や、環境破壊、先住民の生活の破壊への抗議、警察の過剰警備への批判を表現しながら、平和的にデモを行った。デモが終わった後、一部のグループが商店のウィンドウや警察の自動車などを破壊し、警官隊と衝突した。
同日夜に警察が座り込みをしていた活動家約百五十人を逮捕。翌日(27日)朝に、釈放を要求するデモが行われたが、警官隊が催涙弾やゴム弾で攻撃、この中でさらに六百人が逮捕された。
一連の行動での逮捕者の数は九百人から千人と推定されており、この中には多数の報道関係者も含まれている。人権団体は一連の警察の行動に関する調査を要求しており、七月一日には逮捕された人たちに連帯する集会・デモが行われた。
G20は、G8の役割を引き継いだだけでなく、人々の怒りの中で、警察の厳重警備に守られて開催されるというスタイルも、G8をそのまま継承している。新自由主義グローバリゼーションに反対する運動も、G20の宣言に示された新しい攻勢に対して闘争を再構築しなければならない。
十月には韓国でG20首脳会議が予定されている。十月G8と、十一月に横浜で開催されるAPECに向けて、新自由主義グローバリゼーションに反対する運動を再び組織しよう。
鳩山辞任の後、菅政権は新自由主義的「改革」路線への復帰を進めており、階級的性格を鮮明にしている。この政策はまさにG20の宣言そのものである。
「私が住んでいる町(トロント)は犯罪が行われた現場のようです。犯人たちは夜の闇に溶けて、去ってしまいました。私は二十七日に黒い服を着、窓を壊し、自動車を壊していった若者たちのことを言っているのではありません。私が言っているのは、社会のセーフティーネットを破壊し、不況の真っ只中にまともな雇用を焼き捨ててしまった各国の首脳のことです。世界の最も金持ちの、最も特権的な人たちによってもたらされた危機の影響を前にして、この首脳たちは自国の最も貧しい人たちや最も弱い立場の人たちに勘定書きをたたきつけることを決めたのです」(ナオミ・クライン「銀行危機のツケは大衆に」、「ザ・グローバル・アンド・メール」紙6月28日付)。
ギリシャで、スペインで、フランスで労働者市民は「金持ちに課税せよ」、「私たちには責任はない」と主張して大規模なデモやストライキを繰り返している。階級闘争の復活の確実な徴候である。日本でも、民主党政権による新自由主義的「改革」に反対する階級的闘いを準備しよう。 (小林秀史)
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