| 臨時国会へ、共同闘争の組織化を かけはし2010.7.5号 |
| 有期雇用抜本規制・最低賃金大幅引き上げをかちとろう! |
菅政権に要求実現を迫ろう
参院選が公示された。鳩山から菅へと体制を変えた民主党は、日米同盟堅持、消費税引き上げ容認と法人税引き下げ、成長戦略を掲げ、大資本依存と
新自由主義手法への屈服をあからさまにしつつある。この三十年の、とりわけ小泉の下で加速された社会と生活の破壊に対し明確にノーを突き付け、そこからの抜本的な転換を強く要求し、それ故、「生活第一」を前面に出した民主党を政権に押し出した多くの人々への、明白な背信だ。
それでも菅首相自身は、自らの政策路線を、「強い社会保障」のためであり、まともな職を作り出すためだ、と強弁している。公式には、昨年の「生活第一」も投げ捨てられたわけではない。そうであるならば、それを事実で証明してもらおう。まず何よりも、今目の前にある貧困と、まともとは正反対の職の現実に、徹底して取り組んでもらおう。
この要求を改めてはっきり突き付け、菅政権に口先だけのごまかしなど許さない労働者民衆の自立した闘いを、今こそ社会の表面に登場させなければならない。辺野古への新基地建設など決して許さない、とする沖縄の人びとの決然とした闘いに続こう。
その最初の有効な一撃は、参院選で共産党、社民党に票を集中させることに他ならない。支配的エリートに対する菅政権の屈服に信任を与えてはならない。そしてその闘いと一体のものとして、派遣法抜本改正、有期雇用の抜本的規制強化、最低賃金の大幅引き上げを柱とした強大な闘いを、この秋共同の態勢で登場させる努力を草の根から積み上げよう。
ここに掲げた要求に応えることこそ「まともな職」への第一歩だ。菅首相の言葉に嘘がないというのならば、政権はこれらの要求から逃げることなど許されない。そして政権に逃げ口上を与えないためにこそ、広範な労働者民衆の共同した大衆行動を作りだし、要求実現を徹底して政権に迫らなければならない。この秋われわれは、まずそのために全力を尽くそう。
現場の実状に踏まえて修正へ
実際、先に挙げた課題が、この秋具体的な闘争課題として労働者民衆の前に提起されている。
第一の派遣法抜本改正の課題は今さら言うまでもない。秋の臨時国会ではこの改正を、今度こそしっかり手にしよう。
派遣法改正は本来は、連立三党合意にしたがって、通常国会の中で実現されるはずのものだった。しかし通常国会の厚生労働委員会では合計わずか五時間足らずしか審議されず、最後は政局騒動と参院選対策の思わくが優先される中、継続審議とされた。
二〇〇八年秋、すさまじい「派遣切り」が派遣労働の非道さを多くの人々の胸に焼き付け、一刻も早い事態の改善が、派遣法の抜本改正が、責任を負うべき課題として政治に突き付けられた。それから既に二年が経とうとしている。にもかかかわらず、また議会内勢力関係としてはその責任を果たす条件が整えられたにもかかわらず、今通常国会は結局のところ、抜本改正のはるか手前で足踏みしたまま時間を浪費した。まさに政治の怠慢であり、この点については何よりも、政権と国会運営の中心を握る民主党が、責任を厳しく問われなければならない。臨時国会ではもはやこのような怠慢を許してはならない。
そして、当事者はむろんのこと各方面から指摘されている政府案の致命的とも言える大きな問題点を是正させる課題が、厳然と残っている。共産党は既に修正案を公表している。そしてこの問題では、政府案で十分だなどという意見は、経営側を除けばほとんどないという事実も確認しよう。連合も公式には、今かどうかは別としてだが、さらなる改正の必要を認めているのだ。議論に消極的になる理由などまったくない。常用雇用の定義、専門二十六業務、みなし雇用、派遣先責任など、改正の意義を大きくそこないかねないこれらの問題に対し、まず、嘘にまみれた机上の空論ではなく、現場の実情と向き合った真摯で充実した審議を行わせなければならない。
本紙掲載の厚生労働委員会傍聴記にも明らかなように、恥知らずな嘘は今なお横行している。実態を逆転させ、派遣業界と派遣先大資本を助けるだけのこのような嘘を徹底的に突き崩す審議を求めよう。そのような審議を通じて、当事者の切実な願いに応え得る改正内容を浮き彫りにし、修正、補強を最大限に求め実現につなげる闘いをギリギリまで繰り広げよう。
そのためにこそ強調しなければならないことがある。それは、垣根を越えた共同を誠実に真剣に追求することが、この秋とくに必要とされている、ということだ。
通常国会での審議停滞の最大の要因は紛れもなく、規制強化反対派の隠然とした抵抗だった。政府案以上の規制には徹底的に抵抗し、あわよくば廃案を狙っていたこれらの勢力にとって、実質審議の封じ込めは有効な手段だったに違いない。
しかしこのような抵抗を許してしまったことには、運動の側にも確かに弱さがあったことを認める必要がある。その重要な一つとして、通常国会では残念ながら、抜本改正を政治の課題へと引き出してきた共同の闘いが事実上機能しなかった。それは闘いの力を分散させただけではなく、共同の中に体現されていた、要求の社会的大義という核心を、一定程度見えにくくした。議会の中に確固とした代弁政党を共産党と社民党以外にもっていない運動側にとって、これは極めて大きな障害になり得る。議会を握る民主党を縛ってきた最大の力は、日比谷年越し派遣村に典型的に体現された、文字通り社会的大義だったからだ。それはまさに事実として、広範な共同によってこそ有無を言わさぬ姿を現し、人びとをさらに揺り動かした。派遣法抜本改正要求が広範な共同を基礎に力を得てきたという事実を、改めてしっかり確認しよう。
規制強化反対派の抵抗は秋もしつこく続くだろう。参院選の結果によっては強まることさえあり得る。そうであればなおのこと、しっかりとした共同を再び登場させ、彼らを何としても封じ込めなければならない。
労働規制について、緩和に次ぐ緩和が続いてきたこの三十年を逆転へと変える足掛かりを手にする可能性が、派遣法改正として差し出されている。あまりにも問題が多い改正案ではある。しかし、運動によって、民衆の声に強制されてそれが渋々出されてきたものであることも、紛れもなく事実だ。そうであればわれわれは、この差し出されたものをまず握らなければならないと思う。そしてそれを闘いの武器に鍛えなければならない。そのような鍛えは、派遣法改正を政治の課題へと引き上げてきた闘いを基礎に据える限り決して不可能なことではない。まさにそのためにこそ、問題点の修正、補強を徹底的に追求し、一つでも実現する闘いをやり切ることが必要だと考える。
どのような理想的な法であれ、法それ自身に現実を変える力があるわけではない。そしていずれにしろ現場での闘いなしにその法が生きることはない。それは、たとえば労働基準法が今多くの職場で空洞化させられている事実がよく示している。逆に不完全な法でもわれわれ労働者民衆は、闘いでその不完全さを乗り越えてきた。
抜本改正要求を少しもゆるめることなく、派遣法改正案の修正、補強を再度共同して全力で追求し、最後はこの秋必ず改正を確定させよう。
有期雇用規制強化の闘い
第二に、この秋は有期雇用規制の見直しが具体的に問題となる。有期雇用労働者全体の保護について、現在厚労省内に設置されている研究会が、今年夏最終報告書を出す予定となっているからだ。
今日本では、派遣労働者もその一部とする、パート、契約労働者などの有期雇用労働者が、被雇用者全体の約一四%(2009年)を占めるとされている。しかし、労働の規制解体が進められてきた時代に増え続けてきたこの労働者は、入り口規制(有期雇用対象者の限定など)も、出口規制(契約更新回数や途中打ち切りの制限など)もない無保護のまま、長く放置されてきた。非正規労働者の闘いをその頂点とする職の不安定化に対する批判の高まりと社会的圧力の中、ようやくその見直しが課題とされ、先の研究会がそのために設置された。
今年四月には中間報告が出され、全有期雇用労働者の保護強化という方向が示されている。その中では、入り口規制については具体的に触れられていないものの、出口規制の法制化検討が求められているという(日本経済新聞、4月27日付)。
全有期雇用労働者と言う以上、そこには派遣労働者も当然関わってくる。つまり、有期雇用規制の強化の進み方次第では、派遣法改正案の欠陥をある程度埋めることにもつながり得るということになる。経営側はしたがって、派遣法の場合と同様、あるいはそれ以上に激しい抵抗に出てくるだろう。
最終報告書が法制化検討を結論とすれば、そして中間報告を前提とすればおそらくそうなると思われるが、労政審が本格的対決の最初の場となる。こうしてこの秋労政審を舞台に、労働規制強化への逆転をより確かなものにし、さらに派遣法抜本改正を求める闘いの第二回戦の意味をも加味した闘争が、労働者民衆に提起される。この機会を攻勢的に迎え撃ち、労働者に必要な有期規制をねじ込む闘争に転化しよう。
それは、この闘争を派遣法抜本改正を求める闘いを名実ともに引き継ぐ闘いとすることで、より有効に果たされるだろう。それゆえまた、派遣法抜本改正をギリギリまで追求する闘いを共同の態勢でやり抜くことは、そしてたとえ不十分さを残したとしても闘争を背景に法を変えるという結果を手にすることは、この二回戦にも確実に力を与えるものとして、しっかりと確認されなければならない。
最賃引き上げに向けて
第三に、各県の最低賃金確定の時期となるこれから九月にかけて、最賃の大幅引き上げをめざす闘いが待ち構えている。
日本の最賃の低さと大きな地域間格差の存在は今さら指摘するまでもない。昨年確定の水準は、全国加重平均で時給七百十三円、前年比で十円の引き上げでしかなかった。最高の東京でさえ、七百九十一円、月二十二日、一日八時間フルタイムで働いても、月額十三・九万円強にしかならない。一方で最低水準の六百二十九円(佐賀、長崎、宮崎、沖縄)は、先のような東京から百六十二円も低くされている。
最賃法には、二〇〇七年の改正で、生活保護との整合性に加え、憲法二五条の精神が入れられた。しかし一方で企業の支払い能力条項が頑強に守られている。まさにこの条項を盾に先のような都市―地方間格差は広がる一方ともなっている。文字通り「ワーキングプア」の容認と言うほかはなく、「まともな職」どころの話ではない。
日本の最賃の低さ、「健康で文化的な生活」の確保とはほど遠い実態は、国際比較すればもっとはっきりする。たとえば、最賃が平均賃金のどのぐらいの水準になっているかを見た場合、日本はわずか二八%にしかならない。しかし多くの欧州諸国では四〇%を超え、最も低いアメリカでさえ、三三%が確保されている(以上、EU報告)。日本の最賃は、貧困大国のアメリカの水準に追いつくだけでも、さらに百三十円弱の引き上げが必要な水準なのだ。
このような、特に地方の最賃状況は、地域で若者が生きていく可能性を閉ざし、過疎と地域の疲弊をさらに進める一つの要因でもある。最賃の大幅引き上げと地域間格差の縮小は先送りの許されない急務だ。
まず、今年の水準を確定する各県の最賃審議会が集中するこれから九月、意見具申や傍聴などの審議会に対する直接的な大衆行動に加えて、最賃引き上げを求める声を社会的に高める運動に意識的に取り組もう。公契約条例制定運動や、自治体が最賃すれすれの賃金条件で臨時雇用を募集するような現実を改めさせる運動も、この中では重要な位置を占めると思われる。
最賃水準で働く労働者の大半は、地場の零細企業に雇用されている。そして現実には、その経営は極めて厳しい。その現実に立つ限り、最賃の引き上げは確かに非常に重たい課題だった。その事実は、最賃引き上げの課題が中小地場産業経営を圧迫する根本要因に立ち向かうことを絶対に必要とする課題であることを意味する。それは、日本に体質化されているかのような、中央、地方を貫く大資本依存(したがって優遇)の政治、産業政策、それらの根本的な転換を求める課題にほかならない。その意味で最賃引き上げの闘いは、各県の草の根の闘いを裾野としながらも、幅広い共同による対政府の全国闘争を必要とする闘いだ。
現実の最賃闘争がそこに十分踏み込めてはいないとしても、労働者民衆を取り巻く現状は、そこへの意識的な挑戦が始められなければならないことを告げている。そして政権を握る民主党はマニフェストに、「最低賃金を全国平均で時給千円を目指す」と書き込み、菅首相は「まともな職をつくる」と大見得を切っている。ならば菅政権には、それを実行する責任がある。その実行を可能とする、財源措置を伴った産業政策と大資本規制に取り組む責任がある。
最賃闘争を労働者民衆の全国的な一大闘争として現実化する可能性への挑戦を、時代が要求している。そのことをはっきり確認し、先の挑戦を意識的に探りつつ、各県における最賃大幅引き上げを追求する闘いに率先して取り組もう。
全力の闘いで
最大限の成果を
この秋、菅政権が存在しているかどうか、実はそれも定かとは言えない。政権の連立構成も変わっているかもしれない。それは基本的に、現在の日本が、また世界が、さまざまなものの転換が求められている不安定な時代におかれていることの一つの反映だ。そうであればわれわれ労働者民衆は、自らの要求を値切ることなくはっきり突き出し、この社会の責任ある者たちにその実現を臆することなく求めていくことが、なお一層必要とされる。先の三つの課題を中心とした今秋の闘争をまさにそのような闘いとして、全力で展開しよう。そして最大限の成果を勝ち取ることにどん欲に挑もう。 (神谷)
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