「グリーン・イノベーション」に名を
借りた政財一体の国家戦略に反対する |
もんじゅ運転
再開を許すな
五月六日、一九九五年十二月のナトリウム漏れ・火災事故以来十四年五カ月にわたって運転を停止していた高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開が強行された。二〇〇九年までの総投資額が九千億円、事故後の改造工事に百七十九億円、停止中の維持費も年間約百六十億円と、これまでに優に一兆円を上回る額を費消してきた「金食い虫・もんじゅ」の運転再開強行は、それが政府・資本にとって死活をかけた戦略的課題であることを示すものである。
「もんじゅ」事故を引き起こした技術的欠陥が解消されたわけではない。
「再開直前の4月26日には2次系ナトリウム漏洩検出器1台が故障し警報を発報、漏洩監視機能が停止した。3種類ある検出器の中で最も頼りにしていた『ガスサンプリング型』の故障である」。「再開当日の午後11時頃、3台ある燃料の放射能漏れカバーガス検知器のA号機で警報が鳴り、翌日の正午頃にかけて5回発報。そこでようやく公表した。原因は『電気回路のノイズ』ということで停止したが、9日にはC号機も停止した。原因は調査中である」。
「臨界に達した8日には、1次メンテナンス冷却系配管の温度上昇で警報が鳴り、10日深夜には運転員の操作ミスで制御棒の挿入が一時中断した……」。「14日には、原子炉格納容器内で原子炉容器や1次冷却系機器・配管がある部屋の酸素濃度を調べる計器が一時停止し、約5時間半にわたって測定不能になった」「再開から1カ月未満で警報件数は300回以上、警報機作動や機器の故障が相次ぎ、未熟な『もんじゅ』を際立たせている」(原子力発電に反対する福井県民会議・小木曽美和子さんの報告。「はんげんぱつ新聞」10年6月号)。
元京大原子炉実験所講師の小林圭二さんは、高速増殖炉については米国をはじめとして世界で六十年近い開発の歴史があり、設計レベルでのあらゆる試行錯誤の末についに開発を断念したと指摘、「炉の特性を技術的にカバーできる次元を超えている」として「もんじゅ」が安全に運転できる可能性は低い、と語っている(毎日新聞6月12日「ニュース争論・もんじゅ運転再開の是非」)。
故右島一朗(高島義一)は「もんじゅ」ナトリウム漏洩・火災事故のすぐ後に、「高速増殖炉」の事故が技術的にも回避不可能であることを強調し、「『もんじゅ』はもう動かない」と警告を発した(本紙96年1月22日号、『右島一朗著作集』所収)。右島は原発推進派が、なんとかして「高速増殖炉」開発計画を存続させようと悪あがきを続けている根拠を、「『もんじゅ』がなくなるということは、プルトニウム『利用』計画自体の崩壊を意味する」からであり、かつ「政治的には、プルトニウム『利用』計画を進めることは、潜在的核保有国としての能力を開発し、保持し続けることであり、国連安保理常任理事国入りと政治大国化を目指す日本の支配体制にとって、それは手放したくない重大な意味を持つ」と述べていた(同「『もんじゅ』はもう動かない」)。
いま「もんじゅ」の運転再開が強行されたことは、一時は完全に「逆風」の中にあった原発推進派が、世界的な資本主義の危機の中で「グリーンな成長戦略」の軸として原発ビジネスに全力を投入していることと関連している。
原発増設のエネ
ルギー基本計画
六月十八日、菅政権は「エネルギー基本計画」を閣議決定した。同計画は二〇三〇年までのエネルギー政策の方向を示すもので、「エネルギーの安定調達」「地球温暖化対策の強化」を名目に、二〇三〇年までに十四基以上の原発を増設し、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入拡大を盛り込んでいる。基本計画は「自主エネルギー比率」(現行38%)、「二酸化炭素を出さない」とする「ゼロ・エミッション比率」(現行34%)をいずれも二〇三〇年までに約七〇%にまで高めるとの目標を設定しているが、その中心が原発の増設に置かれていることは明白だ。
この点は、通常国会で廃案になった「地球温暖化対策基本法案」が事実上「原発推進隠れみの法案」であること(本紙4月19日号2面参照)とセットになっている。たとえば同法案の会期内成立を訴えていた「Make The Ruleキャンペーン」の一員であるWWFジャパンも、同法案の次期臨時国会での成立を主張しながらも、その問題点の一つとして「未来に負の遺産を残すことになる原子力発電が、主要な温暖化対策としてうたわれている」ことを批判している。
民主党政権は、「地球温暖化対策」の中枢に「原発推進」を置く世界的な流れを促進し、危機に陥った資本主義の新たな「成長戦略」の一環として原発増設に重点を置いている。菅首相は六月十一日に行った所信表明演説でも、「強い経済」実現のための第一の項目に「グリーン・イノベーション」を掲げた。そこでは「グリーン」な成長の柱として「原子力産業を含むエネルギー部門」がわざわざ言及された。
さらに「アジア経済戦略」の中でも、「都市化や工業化、それに伴う環境問題の発生」や「鉄道、道路、水道、電力」などの急速に成長するアジア市場の「新たな需要に応える」必要がうたわれた。ここでは明示的に「原発」という言葉が出されてはいない。しかしこの間、首相・閣僚自ら原発のセールスマンとして諸国に原発を売り込んでいる現状を見れば、ここでは「原発輸出」が戦略的な国策として主張されていることは明らかである。
この点では、民主党政権が自公政権と同様に原子力産業や経産省官僚の意を代弁している姿が明らかになっている。トヨタ出身の直嶋正行経産相が最も積極派だが、仙谷由人官房長官も「原発ビジネス推進派」だ(6月26日、日経新聞)。
加熱する原発
輸出ビジネス
六月十八日に「エネルギー基本計画」とともに閣議決定された「新成長戦略」は、原子力利用の拡大を日本の「エネルギー安全保障」の柱に位置づけ、アジア諸国への「エネルギーなどのインフラ整備促進に官民をあげて取り組む」ことをうたいあげた。岡田外相が六月二十五日の記者会見で「インドとの原子力協定との締結に向けて交渉を開始する」と発表したことは、その現れである。
「アジアは今後原発の急拡大が予想される市場だ。中国は現在11基の原発をさらに28基増やす計画。ベトナムなど東南アジアも原発導入を検討する。中でもインドの動きは速く、先進国間の受注合戦がスタート。市場規模は25年までに16兆円を超えるとの試算もある」。
「政府がインドと原子力協定の締結交渉に入る方針を発表したことについて、産業界からは『機器・技術の輸出には協定が必要。交渉の進展を期待する』(日立製作所)と一様に歓迎する声が上がっている。原子力協定がないと、日本企業は2国間協定を持つ米国企業などを通じて参入機会をうかがうしかなく、みすみす商機を逸しかねないとの見方が強かったからだ」(日経新聞、6月26日)。
こうして「核保有国」であり、かつNPT未加盟国であるインドの核開発への懸念を押し切って、「官民一体」の原発輸出ビジネスの利益が前面に押し出されたのである。
今年十一月に横浜で開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議では、「エネルギー効率の向上」「グリーンな成長」を目標の一つに掲げている。六月十九〜二十日には原発集中県である福井県の福井市で「APECエネルギー大臣会合」も開催された。
APEC会議は各国の原発開発をめぐる角逐の場ともなるだろう。われわれは原発を「気候温暖化対策」の切り札であるかのように持ちあげるデマゴギーと対決しなければならない。
オルタグローバリゼション運動の中に反原発の闘いをしっかりと位置づけて行動しよう。
(6月28日 河村恵)
「ミーダーン」がシンポジウム
〈 鏡 〉としてのパレスチナ―
ナクバから同時代を問う
身近な他者に
集中する差別
六月二十七日、「ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉」は、「ミーダーン」が二〇〇八年の「ナクバ(イスラエルの建国によるパレスチナ人の追放と離散)六十年」にあたって行われた「連続セミナー・〈ナクバ六〇年〉」をもとにした〈鏡〉としてのパレスチナ――ナクバから同時代を問う』(現代企画室刊)の刊行を記念して「シンポジウム イスラエルへの対抗言説から〈別の現実〉へ」を、東京・御茶ノ水の韓国YMCAで開催した。
「第一部『〈鏡〉としてのパレスチナ』 私はこう読む」では浜邦彦さん(カリブ研究/早稲田大学)と大富亮さん(チェチェン・ニュース発行人)がコメント。
浜さんは、「ディアスポラ」(離散の民)としてのユダヤ人と、カリブ海に連れてこられた「ブラック・ディアスポラ」としてのアフリカ黒人奴隷の子孫の「クレオール文化」を重ねて論じつつ、「身近な存在としての他者」に集中される差別意識の問題や、「変えることのできない属性」としての被差別的存在としての自己認識から生じるアイデンティティーについて語った。
大富さんはチェチェン問題の歴史的概略と、チェチェンとパレスチナについて「圧倒的強者と圧倒的弱者」との非対称的戦争、国連システムの機能不全、「国家なき民」という存在などの共通性について指摘した。
ガザ封鎖と自由
船団襲撃を問う
「第二部 現局面における支援/連帯とは:ガザ自由船団襲撃から見えるもの」では、出席できなかった阿部浩己さん(国際人権法/神奈川大)からのビデオメッセージ。阿部さんはガザ自由船団への公海上での襲撃について「封鎖中の敵国の海岸に貨物や物資が到達することを阻止するのは合法」というイスラエル側の主張を紹介して、「ガザは敵国ではない」と一蹴し、そもそも封鎖は市民への「集団的懲罰」を禁じたジュネーブ条約違反であり、さらに「占領」自体が違法とイスラエルの暴挙を批判した。また公海上で船舶を拿捕するのは「奴隷取引、海賊、無許可での放送」など以外には国連海洋法条約違反だ、と強調した。同時に阿部さんは、国際刑事裁判所に戦争犯罪や「人道に反する罪」を訴追することは重要な意義があるが、刑事裁判所の処罰の対象はあくまで個人であり、そうした犯罪行為を生み出した国家的構造に異議を申し立てる運動が必要だ、と語った。
「ミーダーン」の早尾貴紀さんは、「占領が当たり前のこととして問われなくなっているパレスチナの現状」(占領のノーマライゼーション)について語り、「ガザが危機を深めていったのはハマスの実効支配が契機なのではない。すでに二〇〇五年の段階でイスラエルはすべての入口を封鎖していた。一九九三年のオスロ合意以来『自治』という名目で占領方式が転換し、ガザからイスラエルに住民が働きに出ることが不可能になった。さらにさかのぼれば一九六七年の占領、一九四八年のナクバ以後、ガザは監獄になっていた。『最悪』が更新され続けてきた歴史だ」と訴えた。
太田昌国さん(南北問題/第三世界問題)は、二〇〇一年九月に南アのダーバンで開催された「人種差別・奴隷制・植民地主義に反対する国際会議」についてふれ、「過去」への歴史的責任を問いただす支配された国の側からの追及によって米国とイスラエルが途中で会議をボイコットするまでになったが、直後の「9・11」でダーバン会議が完全にニュースから消えてしまい、その構造が今日まで続いていることについて述べた。
鵜飼哲さん(フランス文学・思想/一橋大学)は「イスラエル=ナチ」という規定の誤りを指摘するとともに、逆に「ナチと同じことをしなければ何をやってもいい」ということになったイスラエルに対してディアスポラのユダヤ人から「自分たちをイスラエルと一緒にするな」という怒りの表現として「イスラエルこそ反ユダヤ主義」という主張がなされ、他方西欧への批判自体を「反ユダヤ主義」だとする言説も出ている状況が語られた。
最後に司会の田浪亜央江さん(パレスチナ政治文化研究/ミーダーン)が、ガザ封鎖に関してエジプト、さらにファタハのアッバスまでがイスラエルと共犯関係になっている深刻な事態への危機意識を表明した。 (K)
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