| 朝鮮学校も無償化に!下町集会 かけはし2010.8.2号 |
【東京東部】七月二十二日、東京・荒川区の「サンパール荒川」小ホールで、「朝鮮学校も無償化に!下町集会」が開催された。主催は実行委。定員を大きく上回る二百三十人が集まった。
民主党がマニュフェストに掲げ、今年四月から実施された「公立高校無償化制度」。これによって公立高校及び私立学校、専修学校と外国人学校が授業料無償化や助成の対象になった。
ところが文部科学省は四月三十日の告示で、朝鮮学校については「北朝鮮による拉致問題」や「教育内容が不明」などを理由に、「検討委員会で検討する」と結論を先送りにした。同じ「各種学校」扱いになっている三十一の外国人学校、インターナショナルスクールは、制度が適用されているにもかかわらずである。こうした露骨な差別待遇に抗議する運動が、その後各地で盛りあがった。
朝鮮学校の子ども
たちが民族舞踊
司会を部落解放同盟荒川支部の小野崎篤さんが務めた。呼びかけ人の一人である森本孝子さん(平和憲法を守る荒川の会・共同代表)は、本集会を開催するまでの経緯を紹介した。
「私は地域で護憲や平和活動をしています。『無償化法』から朝鮮学校が排除されると聞いたとき、『またか』と思いました。怒りと情けなさでいっぱいになりました」。
森本さんは、この下町で何かできないかと声をかけて歩いた。「よし、やろうよ」――それぞれの分野で活動をしていた人たちの思いは同じだった。「こんなに多くの人に集まっていただき、本当に感動で胸がいっぱいです。これは日本の民主主義とか人権感覚を問う問題だと思っています。無償化に向けて一日も早く政府を動かしたい。政府みずからが子供たちを差別しているということを認識させたい。差別を放置している人は、差別する側になってしまう。今日はみなさんお一人お一人のお話をしっかりと胸に刻んで、日本政府に対して一日も早く差別をやめるよう訴えていきたい」。
朝鮮第一初中級学校校長の康哲敏(カン・チョルミン)さんのあいさつの後、同校舞踏部の子どもたちによる民族舞踊が披露された。流麗かつ一糸乱れぬ身のこなしは、さまざまなイベントを通じて、地域ではすっかりおなじみだ。
踊りの後、子どもたちはステージに横一列に並んだ。「ここにお集まりの善良なる下町のみなさま」と呼びかけると、会場は暖かい笑いに包まれた。去年十月。鳩山首相の「朝鮮学校無償化」発言を聞いたときは、みんなで抱き合って喜んだ。昨日のことのように思い出す。
その喜びもつかの間、去年の暮れから雲行きが怪しくなった。「同じ子どもなのに、なぜ私たちはこんな差別を受けなければならないのか」。「私たちは日本の、地域の良識ある人々と手を取り合い、より良い社会をつくるためにがんばっています。私たちの父母は、日本の方と同じように納税しています。これ以上何をすればいいのですか。日本から出て行くしかないのですか」。「わが国を植民地にし、やむなく日本に住むようになった私たちを差別し続けてきて、まだ足りないというのですか。差別なき国で、日本のみなさまと共に生きていける日が迎えられるよう私たちもがんばっていきます。どうか力を貸してください。よろしくお願いします」。
なぜ対立や憎しみ
を煽り立てるのか
田中宏さん(一橋大学名誉教授)は豊富な資料を駆使して「朝鮮高校無償化適用除外」を批判する講演を行なった。
「保護者の会」の女性が演壇に上がった。「三人の子どもを育ててきました。今日本では、教育の格差は所得の格差に起因していると言われています。日本の人びと以上に、在日の親たちは苦しいが、今日まで耐え忍んできました」。「無償化が高校だけだとしても、教育環境の大きな変化に喜び胸が打たれた。ところが政府は朝鮮高校だけを除外するに至った。この問題で、なぜ再び対立や憎しみを煽るのか」。
「子供たちは毎日の生活のなかで、友人からでさえ拉致問題や自分のアイデンティティに対する心ない言葉をぶつけられる。在日の存在すら知らない高校生に、私たちの問題を一から説明するのは大変なことだ。しかし私は、若者の間で『差別』という言葉が風化していくなかで、時間がかかっても一つひとつ説明していくことでしか、真の友愛は生まれないと娘に話している」。
「日朝間の政治問題が起こるたびに、なぜいつも弱い立場の在日の子どもたちが、やり玉にあげられるのか。在日コリアンは日本の古くからの友人です。どうか寛容な優しい気持ちで敵対をやめ、子どもたちの笑顔を奪うことなく、高校無償化適用のためにこれからますますご尽力くださるよう深くお願い申しあげます」。
女性は声を震わせ、目を潤ませながら訴えた。
荒川の地から
全国へ発信を
「墨田ネット」の渡辺つむぎさんは、このかんの取り組みを簡潔に報告した。日頃は墨田区で教育現場での「日の丸・君が代」の強制に反対し、西暦記載の卒業証書の発行を求める運動などを担っている。
「この三カ月間、錦糸町駅前で署名情宣を行なった。普段はこちらから通行人を追いかけてお願いするが、自分から進んで署名してくれる人が多かった」。「私たちは三十五筆の署名を集め、その手応えに喜んでいた。でも朝鮮高校の人たちは四百筆を集めた。参りました」。「今後も無償化が実現するまで地域のみなさんとがんばっていきます。今日の集会は大成功。このつながりを大切にして地域で取り組んでいきたいと思います」。
「荒川国際平和展実行委」の森谷新さんが発言した。
「日本の高校で、授業料が払えず、高校を中退する人が増えている。そんなおり、民主党政権は『高校無償化』法を制定した。私は、さすが民主党だ。よくやるなと思った」。「私たちは二〇〇二年、小泉首相が訪朝した際の『平壌宣言』を思い起こす必要がある。この宣言に基づいて、日朝国交正常化交渉を直ちに開始すべきだという運動を進めていく。国交正常化が進展しない限り、拉致問題の解決はない」。
「ただし、無償化問題と拉致問題を結びつけることは、戦術上得策ではない。『平壌宣言をきちんと履行しろ』と日本政府に迫ると同時に、それと切り離しながら無償化問題を闘う。荒川の地から全国へ。みなさんと一緒に、問題解決のためにがんばりたいと思っています」。
人は変わること
ができるはずだ
石岡ようこさんは、所属する「葛飾人権ネット」のこれまでの取り組みを振り返った。
「葛飾人権ネットは一九八〇年、指紋押捺に反対する運動から始まった。新井英一さん、李政美さんのコンサート。映画上映会や田中宏さんの連続講演会などを葛飾の地でしてきました」。
「私は高校時代に在日の二人の友人と出会い、人生の見方が変わった。本当にたくさんのことをもらった」。
「今回の事態はとても許せなかった。私は子供たちと朝鮮学校を訪れ、交流を続けてきたからだ。さっそく街頭署名や国会行動に取り組んだ。初めてたった一人で駅頭にも立った」。仲間たちと集めた署名は六〇〇筆。朝鮮学校に届けた。
「戦後植民地支配を反省しない日本は、残滓を引きずっている。でも人は変わっていく。必ず未来がある」と石岡さんは楽観する。そして、「日本政府のやりかたは、いつかしっぺ返しを食らう。子どもたちのために、希望を持ってがんばりたい」と結んだ。
朝鮮中高級学校校長・慎吉雄(シン・ギルン)さんの発言があり、呼びかけ人の一人・尾澤邦子さん(ノレの会)が「集会宣言」を読みあげた。
一人ひとりの発言に、参加者は大きな拍手を送り、共感の笑いで応えた。東京東部地域で地道に活動する人々がこの日、一堂に会した。「下町から民族差別を許さない」という強い一体感にあふれた、感動的な集会だった。(佐藤隆)
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