保守・自民連合政権の政治的本質
歳出削減、緊縮政策を推進する
金持ちのための人種主義政府
ソーシャリスト・レジスタンス |
五月のイギリス総選挙で労働党が敗北し多数党が不在という事態がつくられた。キャスティングボードを握った自由民主党は、多数派の「ポストの一位総取り」という選挙システムの変更を条件に保守・自民連合政権に合意した。だがこの連合は反動的で反階級的な政治・経済政策を積極的に進めている。とりわけギリシャの経済危機はこの構造に拍車をかけている。(「かけはし」編集部)
反労働者階級連合
保守党単独多数政権を別とすれば、今回の保守―自民連立は、今総選挙であり得た中では最悪の結果だ。なぜならば、この組み合わせは、歳出削減、緊縮政策、失業のために利用可能な最も有効な足場であるからだ。キャメロンとクレッグはわれわれに、連立は「国益」という観点で形成されたと告げている。それは、彼ら自身の階級利害を表す婉曲語にすぎない。
クレッグを副首相にすることによって表現された連立内の見かけ上の対等性は、必要ならばどんな手を使おうが権力の手綱を握りしめる、と決意していた保守党指導部が準備した欺瞞だ。それは、死の抱擁であり、既に自民党をバラバラに切り裂きつつある。
内閣という表飾りに向きを変える中で自民党は、反動的連立を下支えし、職、年金、サービスに対する保守党がずっと準備してきた猛攻撃に同意を与えることを決定した。
歳出削減計画と財政赤字削減は、反労働者階級連合の基礎だ。まったくあきれることに、自民党は選挙運動では、危機に対するブラウンの取り組みを支持していた。その取り組みは、次の年の経済需要を維持することを目的に、限られた水準のものだが、政府による刺激(及び量的金融緩和)に向かうものだった。これは不十分なものであり、歳出削減を回避するものではなかった。しかし、一時的には危機の打撃を吸収した―とはいえこの取り組みは、経済が翌年は回復し、その時には労働者階級も請求書の支払いが可能となるだろう、という幻想に基づくものだったが―。
しかしながらこれは、より多くの人びとを仕事に留め、反撃にとってのよりよい条件を生み出す可能性があったという点で、重要な違いのある政策だった。この方向は今やがらくたとして投げ捨てられた。そして、さらにもっと多くを予定した上での、公的支出の六十億ポンドの即時的めった切りという保守党の諸提案が、好ましいとされた。これは、経済情勢をただ悪化させ、全面的な倍加された崩壊的不況の可能性をもっとありそうにするものにすぎない。
このことに対しては、選挙期間中の全欧州を襲った危機という背景が、警告信号として役立つはずと思われた。アテネでは暴動があり、いわばその伝染がスペイン、ポルトガル、イタリアを恐れさせていた。この混合物に加えて、金融システムと金融市場に新たに現れた不安定性、さらにサルコジが行使した脅迫があった。彼は、単一通貨のための七千五百億ユーロにのぼるEU財政援助基金をメルケルが受け容れないのであれば、フランスをユーロ圏から引かせるとしたのだった。
自民党は、労働党並びに民族政党(英下院には通常、スコットランド、北アイルランド、ウェールズから、その地域のみに支持者がいる地域政党の議員が合わせて二十〜三十人選出されている―訳者)が差し出した代わりとなる取引―進歩的連合と呼ばれた―があることを承知の上で、保守党に従ったのだ。
原則なき自由主義者
進歩的連合は、われわれが要求したり支持したりした構想ではない。しかしわれわれは、これらの党がいずれも労働者階級の利害を代表などしていないとしても、自民党が保守党と連携するのか、それとも彼らに反対するのかに関し、中立ではない。キャロライン・ルーカス(注1)は、それをうまく表現し、両陣営とも進歩的ではない、従って彼女としては、推薦する政策をケースバイケースという基準の下に支持することになる、と語った。
自民党にとっては今回の決定は、彼ら自身の原則に対する際立つ裏切りを意味した。現在の制度は長い間、自民党の過少代表を生み出してきていた。労働党は、このイギリスの奇怪かつ腐敗した選挙制度を比例代表制(PR)のある種の形態で置き換える中身のある可能性を差し出した。これは、自民党が何年にもわたって要求してきたものだ。それは、議会選挙において代表されるべきものを何百万人という有権者から盗み取ってきた「ポストの一位総取り」という恥ずべき反民主主義的制度を、完全に変えることになっただろう。もちろんそれは、労働者民主主義を意味しない。しかしそれは、極度に重要な労働者階級の民主主義要求だ。
労働―自民連立は、財政支出削減に対しては有効性がより劣った足場になると思われる。そしてそれこそが、労働―自民連立を自民党が拒否した理由の一つだ。そのような政権は、歳出削減という課題を実施せよとする、メディアの巨大な圧力の下に置かれることになったと思われるからだ。労働党という選択肢に付随しては議席数という単純計算がきわどいものであり、その連立がおそらく五年はもたない、ということは確かだ。しかしその連立は、次の選挙が「ポストの一位総取り」システムの下では行われない、ということを確実にする上では十分に続き得たと思われる。
自民党が結局結論としたものは、すべての切り札と中心的閣僚が保守党の手中にある連立だ。保守党は自民党に「代案的投票制度」に関する国民投票という案を差し出した。それは比例の要素を持っていないが故にPRではない。さらに、労働党や保守党のがっちり固められた多数が支配する選挙区に関しては、そしてこの多数派こそが「ポストの一位総取り」システムという形で選挙に歪みをもたらす要素なのだが、「代案的投票制度」は何の効果もないが故に、この案が「ポストの一位総取り」システムよりましだなどということはおそらく間違いなく、まったくない。
自民党が保守党から引き出した一つのことは、五年の任期の内早期の立法化ということだ。これは、次の総選挙が二〇一五年五月七日に予定される、ということを意味するだろう。
これはそれ自身として極めて重要な選挙改革策だ、とはいえ、一つの政権がその地位にとどまるには五年はあまりに長すぎる。このような政治環境の中でのその目的は、自民党の冷笑主義に格好の例証を与えている。自民党が望んだことは、保守党が全面的な多数を獲得できると考えたときに後で再び吐き出すために、権力を手にするためにのみ彼らを使う、このようなことがないことを確実にしたいということだった。政府不信任動議の可決には投票の五五%を要する、という議会手続きの法外な変革提案は、内閣にとどまりたいという自民党のなりふり構わない姿の、もう一つの実例だ。しかし、経済的困窮と労働者階級に対する攻撃の五年間に、これらの捨て鉢さが安定した政権を保証し得るか否かは、まったく別のことがらだ。
この両党間の取引の中には、限界があるとしてもいくつか進歩的な策もあるにはある。身分証明カードの廃止、相続税軽減の延期とキャピタルゲイン税の引き上げなどだ。連立協定の残りのほとんどは保守党の政策だ。自民党がエリートの政策と調和を乱していた一つの課題であるトライデントミサイルの更新問題は、保留になっている。免税点引き上げに対する確約は明確ではないがそれは、それがこの先深い草むらに蹴り出されることを確実にするものだ。逆進的な付加価値税の相当な引き上げが近々あることも明確だ(既に発表されている―訳者)。
人種主義者への助け船
移民に関する十年後の特赦という自民党の提案は、非EU移民には上限規制をかけるという保守党の反動的提案を選び取ることによって、がらくたのように捨てられた。今回の選挙運動の恥ずべき特徴の一つは、保守党、労働党双方が彼らの特赦提案に関して、等しく人種主義的攻撃を繰り返したことだった。これらの攻撃の背後には、選挙運動期間に極右を止めることを主要三政党すべてに不可能とした破綻した姿勢があった。彼らはそうする代わりに、どれだけ多くの移民の入国を止めるか、どれだけ多くを送り返すかを、極右と競争した。
これは、運動期間中にBNP(英国国民党)とUKIP(英国独立党)が達成した前進に対する直接の責任が彼らにあることを示す。全国レベルでBNPとUKIPが獲得した嘆かわしい得票の理由は、主要政党が極右に反対するのではなく競争したことにある。
戦争と環境は今回の選挙では周辺的問題となり、連立協定でも何らの変わりばえもない。自民党は原発問題でも立場を崩壊させた。新世代原発という保守党の政策が自民党との連立政策となり、自民党は、それが投票に付されるとき棄権する権利を確保する、というだけだ。協定は、ヒースロー空港とロンドンの他の空港における第三滑走路には反対している。しかし、テームズ川河口への新空港設置というボリス・ジョンソンの提案に関しては何も触れていない。
この連立政権が直面するもっとも分裂含みの問題はEU問題だ。それは、EU心酔派の自民党大臣と共に、EU懐疑派の外務官房長官ウィリアム・ヘイグが閣内に席を共にする事態を引き起こしている。現議会の下ではユーロ圏には入らないという、またEUに対する権力の一部移行に関してはすべて国民投票に付すという協定は、保守党内部においてさえ、この問題での紛糾を押さえ込めそうにない。
連立は関わった両党の双方においてひどく矛盾に満ちている。保守党の右翼はこの連立を、自民党の下部大衆の大多数と同様に、裏切りと見なしている。これが意味することは、歳出削減の諸決定が実行に移され始めるや否や、特に両党共が彼らが行うことを意図している歳出削減に対しては、有権者からの委任をまったく受けていない以上、連立が大衆的圧力の下に置かれる、ということだ。
労働党はすでに以下のことを示しつつある。すなわちこの党は、一般論としては歳出削減に反対するつもりはないが、具体的な策のいくつかには反対するかもしれない、ということだ。彼らは「責任ある野党」でありたいと語っている。これは、保守―自民連立並びにメディアがばらまく「国益」という概念に対する、恥ずべきあきれた降伏だ。しかしそのこと自体は、彼らが政権党として統治してきたやり方、またビジネスの利害という方向で選挙を闘ってきたやり方と一直線につながっている。
労働党の左に新たな党を
今回の選挙における左翼の結果は悲惨なものだった。確かに、バーキンにおけるニック・グリフィン(BNP指導者―訳者)の敗北とブリングトンにおけるキャロライン・ルーカスの選出は二つの大きな積極的な成果だ。われわれは、双方の運動に関わった人びとに祝福を送りたい。「労働組合並びに社会主義連合」(TUSC)の結果は貧弱なものだった。それは全国レベルの選挙にはまったく影響力を持たなかった。さらに選挙後も、どのようなものに対しても基礎となりそうにはない。
レスペクトは、左翼のほかのどの部分よりもはるかによい票数を残したがしかし、もっていた国会議員と自治体議員のほとんどを失った。レスペクトは再編し戦略的な取り組みに立ち戻る必要がある。
労働党の左に有効な政党を打ち立てる必要は反攻のための決定的な要素であり続けている。今二〇一〇年選挙の教訓は、左翼が統一され多元的な左翼の党を生み出すための努力をさらに倍加しなければならない、ということだ。
このことは、労働組合の情勢に対する反応に第一級の重要性を付す。ほとんどの労働組合はここまで、さまざまなものの切り下げに直面する中、極めて消極的なままにある。このことは緊急の案件として変わらなければならない。労働組合は、銀行危機が生み出した予算赤字はトライデントミサイル更新取り消し、アフガニスタンでの戦争停止、イラクからの撤退、大企業や銀行や金持ちからの精力的な徴税を通して取り組まれなければならない、と要求すべきだ。最小限として、法人税はサッチャー政権の下で課されていた水準までは最低でも再度引き上げられるべきであり、百万人の緑の職を求める鍵となる要求は支持されなければならない。
われわれは、PRを基礎とした進歩的な選挙制度改革の早期実行に向け圧力をかける、労働組合内の大々的な運動と労働者運動の建設を追求しなければならない。労働者運動はさらに、人種主義的かつ反移民の政策への危険な傾きに反対する結集をも進めなければならない。ブレアとブラウンの後ろにおとなしく付き従った労働組合の年月は、われわれを保守党政権のまさに瀬戸際に引き連れてきた。労働者階級の運動と反歳出削減の有効な連合の創出のみが、真新しく大量かつ危険な攻撃から労働者階級を救出できる。
われわれは要求する
b公共サービス防衛の各地での反歳出削減キャンペーンを
b緊急予算デーに全国、各地いっせい抗議を
b各全国組合とTUCは、公共サービス防衛の全国デモを呼びかけよ
※ここに掲載したものは、『ソーシャリスト・レジスタンス』紙六十号の社説であり、五月十六日のソーシャリストレジスタンス全国委員会で採択された。
▼ソーシャリスト・レジスタンスは、スコットランド社会党、社会主義連合、レスペクト党に反映された再編を支持したイギリスのマルクス主義者によって、二〇〇二年に創立された。二〇〇九年七月、その支持者はこの組織を第四インターナショナルイギリス支部として再創立した。
(注1)緑の党の最初のまた唯一の国会議員。彼女はまた「ストップウォー連合」の指導的メンバーでもある。
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