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フランス年金闘争                   かけはし2010.11.8号

「60歳年金と法案撤回」を
統一の旗印に闘争を継続

11月6日に全国でデモとストを準備
サンドラ・デマルク


 フランスの議会は十月二十七日、六十歳から六十二歳まで定年を延長することを骨子とした年金改悪方案を成立させた。だが労働者人民の側は十月二十八日に続き、十一月六日にもストとデモを全国で展開すると発表した。闘いは青年にも広がり一層拡大している。(「かけはし」編集部)

サルコジとの対決
色を一層強める

 フランスではさる五月以降、年金法案反対の動員が情勢の際立った特徴になっている。大結集の日々が相次ぎ、年金改悪反対の運動は発展し、深く根づき続けている。それはこの傑出した運動が単に年金改悪のみならず、より広範に、反社会的で、レイシスト的で、権威主義的なサルコジの政策全体を大衆的に拒否していることの証である。それは、危機によって若者の間でも賃金取得者の間でも不正が浮き彫りとなり、蓄積されてきたためでもある。
 デモが繰り返し行われているにもかかわらず、しぼんでしまうどころか、とりわけ三百五十万人が街頭に出た十月十二日と十九日の例に見られるように、記録を更新しているのはそのためである。結集はますます戦闘的でラディカルになっている。民間部門の動員は高レベルであり、今や青年(現段階では基本的に高校生)も動員の列に入ってきた。若者たちが、かれらの見つけられる職が短期的なものであり、この改悪によって健康なうちに手に入る年金全額所得が危ういものにされてしまうことを理解したためである。
 状況は少しずつ変化してきた。多くの人びと、それもきわめて多くの人びとが、勝利は可能であり、サルコジを打倒できると考えている。動員の現段階ですでに政府は世論の闘いに敗北した。世論調査では七〇%がこの動員を支持し、年金改悪に反対している。現在、労働者、非正規雇用労働者、若者たちの多数が、年金問題とは政府が数カ月にわたって信じ込ませようとしてきたような人口統計上の問題ではなく、財政問題でもないことを知っている。
 ストライキは少しずつ状況の一角に姿を現してきた。ストライキとデモのたびごとに、ためらいがちの日々の行動では政府を打ち負かすには不十分であるということが、きわめて多くのセクターの人びとにとってますます明白になっていった。実際、現在のストライキ行動は、長期ストへの賛成票が六一%に達するここ数週間に見られるように、すべての行動部門で十分に討議されてきたわけではなかった。
 まさしく問題は労働組合連合の指導部にある。かれらは下部からの闘争継続の圧力を受けているが、ゼネストの呼びかけを回避することを確認している。この運動の開始以来、ストライキとデモの支えとなる労働組合の団結が勝ち取られてきたことは疑いない。しかし労働組合間の調整では、政府との大きな社会的対決は呼びかけられず、もはや法案の撤回は要求されていない。その代わりに新たな交渉と修正が提案されている。

労働者は長期スト
高校生も闘争参加

 しかし経済の中心部門は、長期ストの開始あるいは拡大を決定した。たとえば鉄道労働者、EDF(欧州開発基金)センター、精油所がそうである。精油所のストは一九六八年五月以来なかったことである。十月十四日以来、十三の精油所で現在のストライキ行動に入り、サービスステーションと貯蔵所への石油の配備、供給を完全に止めた。ストライキは大規模なものであり、実質上の全員一致を更新し続けている。
 今回の運動はあらゆる所で動きだしており、毎日のように新たなイニシアティブ、封鎖行動(料金所、道路、空港、工業地帯など)や地域デモが、統一的かつ職業間の垣根を超えた形で行われている。動員に参加したさまざまな部門の大衆集会が毎日行われており、最初は小さなものであったが、今ではますます重要なものになっている。しかし、民間部門のように公共部門でもあちこちで多くのストライキが起こることになれば、現在の行動はなおあまりにも分散的で少数の現象であり、全国スト日のスト参加率は高いとはいえそれほど異例なものではない、ということにも留意すべきである。
 ここ数日、とりわけ十月十九日のストとデモ以来きわめて突出したダイナミックな部隊として若者たちが動員に全面的に参加し、多くの高校が封鎖されている。そこには以前の動員では見られなかった決意と政治化が存在している。かれらは操作されていると言われるたびごとに、またかれらのデモの権利に異議が唱えられるたびごとに、かれらの決意は広がっている。大学での動員は少しずつ始まっている。今後、高校の休暇を前にして、それは大きな課題となる。

社会党と左翼党
は戦略的に動揺

 こうした状況に直面した右派、経営者、政府そしてサルコジは、この不当な改悪を守る決意を依然として固めている。サルコジは力の試し合いをしようとしている。力の行使が特徴となっている。それは精油労働者のストや高校生への警察の介入、議会での強硬戦術、最も穏健な労組指導部とさえもあらゆる討論を拒否していることに示されている。かれらの決意は理解できる。この改悪はかれらにとっては、危機のツケをあくまでもそれに責任のない者に支払わせるというかれらの緊縮政策の核心だからである。この改悪に成功すれば、金融市場を活性化させることになるだろう。しかしそれだけではなく、フランスにおいて力関係を変革し、富の配分を金持ちに有利に変えることになる。それはまた、かつての闘争の遺産である「社会的・財政的」負担を取り除き、最も抵抗する部門を屈服させるチャンスでもある。
 サルコジにとって中心的要素とは、大統領選挙に先立って自らの陣営を結集することでもある。しかし彼はなお勝利にはほど遠く、抵抗を打ち破ったり沈黙させたりしてはいない。
 今回の動員の広がりは、政府を打倒する可能性を示すものである。それゆえ、この闘争における社会的・政治的左翼の全面的団結が緊急課題なのである。NPA(フランス反資本主義新党)がわが勢力の再結集、そしてとりわけコペルニクス協会とATTACが主導する全国コレクティフ(集団・グループ)を通じた再結集を可能にする、すべての統一的・政治的イニシアティブにコミットしている意味はここにある。
 「六十歳年金と法案撤回」のスローガンによる統一は、とりわけ社会党との関係での基本ならびに行動戦略における一定の相違を隠すものではない。社会党は六十歳での年金支給を支持しているが、右派の議員とともに年金受給資格年数を四十一・五年に延長することに賛成した。それは事実上、六十歳年金受給の考え方を破壊するものだ。
 また動員の拡大に直面する中で、われわれは二〇一二年の大統領選挙を準備している。左翼の左派、とりわけジャンルク・メルションの左翼党との分岐が存在するのは、行動の戦略に関わっている。左翼党は当面の戦略として国民投票を主張している。それは社会的な力の試し合いがこれからだという時に、動員を街頭から制度的レベルに移行させるものである!
 NPAは動員の開始以来、闘争を組織し、政治的目的と要求――それは法案の撤回、そして現在では疑いなく法案の廃棄と、社会的危機の責任者すなわちサルコジとウェルスの辞任――を軸にした統一を追求する党として登場した。われわれはまた、危機を撃つ緊急の社会的・政治的プランを通じた反資本主義的展望を発展させている。
 今後が決定的である。法案は通るだろうが、それは動員を沈黙させたり、止めさせたりはしない。なぜなら今日街頭に出たりストライキをしている人びとにとって、この政府には正統性がないからである。われわれはこの国で施行された法が撤廃できることも知っている。それはすでに二〇〇六年の初期雇用契約(CPE)で起きたことなのである。

▼サンドラ・デマルクは仏反資本主義新党(NPA)執行委員で、第四インターナショナルの指導部メンバー
(「インターナショナルビューポイント」10年10月号)



【見解】
「尖閣」諸島(釣魚島)沖漁船衝突事件―脱「領土主義」の新構想を

みどりの未来・運営委員会(10月13日発表 10月27日修正)


 「尖閣諸島」問題をめぐって日本のすべての政党・マスメディア論調は「固有の領土」論をふりかざし「中国の不当性」を言いつのっている。「挙国一致」とも言うべきこの状況への批判が必要だ。地域から「みどりの政治」を構想する自治体議員を中心にした政治グループ「みどりの未来」の見解を転載する。(本紙編集部)

 9月の尖閣諸島(中国名:釣魚島)海域での中国漁船衝突事件をめぐって、中国側の強硬姿勢、日中両国国民の敵対感情が高まっています。このような事態を招いた日本政府の先の見通しのない対応の責任は重大です。

■ 領土問題は現実に生じている

 日中両国は、これまで、1978年の「日中平和友好条約」締結の際の小平氏の「尖閣論争の棚上げ」「解決は次の世代の智恵に託す」という方針に従って、決定的な対立を回避してきました。2004年の中国人活動家「上陸」で逮捕後すぐに「国外」退去処分にした当時の小泉首相も、この方針を優先させたものと言えます。
 ところが今回、日本政府は何ら展望もない中でこれを一方的に破棄しました。現に中国・台湾・日本間で領土問題が発生しているにもかかわらず、「領土問題は存在しない」とすることは、「中国側の主張は無視する」「問題解決のために対話する必要はない」と宣言するに等しいものです。政府は領土問題が生じていることを認め、対話と交渉によって解決するという態度を表明するべきです。

■ 日本の領有を根本から問い直す

 中国の強硬姿勢の背景には、この海域の石油・天然ガスの発見をきっかけにした中国の資源ナショナリズムや覇権主義的な態度があることは明らかです。
 一方、日本の領有権の設定は日清戦争中の1895年であり、朝鮮半島と台湾への侵略、領土拡張の戦争の一環として行なわれました。
 「歴史的に日本の領土」という主張に対しては、これを否定する歴史資料や論文も公表されています。そもそも、日本政府が領有権を正当化する「無主地先占の原則」(所有者のいない島については最初に占有した者の支配権が認められる)は、帝国主義列強による領土獲得と植民地支配を正当化する法理であり、また、アイヌなど世界の先住民の土地を強奪してきた歴史にも通ずる論理です(註)。共産党を含む全ての国政政党が当然のように日本の領有権を主張するのは、このような近代日本についての歴史認識の致命的な欠如を表わしています。

■「領土主義」を超えて共同の「保全」を

 そもそも国境線は近代の歴史においては極めて恣意的に引かれたものであり、国家同士の利害も衝突します。しかし、私たち「みどり」の依拠する「現地主義」「市民主権」の原則から考えれば、当事者である沖縄、中国、そして台湾の漁民が国籍にかかわらず安心して漁を営むことができる条件を整えることこそが優先されるべきだと考えます。
 天児慧氏(早稲田大学)は、紛争の発生している領土領海地域に限定した「脱国家主権」、「共同主権」による解決を主張し、そのために、「当該地域をめぐる諸問題を解決するための専門委員会を設置する」ことを提案しています。加々美光行氏(愛知大学)も、「南極条約」のような領土主権を凍結する国際条約の締結を提案しています。私たちは、こうした考えを基本的に支持します。
 同時に、日中両国における脱炭素社会の構築も不可欠です。領土問題が発生している要因ともなっている尖閣諸島の石油・ガス資源については、共同で「開発」するのではなく、将来世代のために東シナ海の美しい生態系を「保全」し、あえて開発しないことが重要だということを提案します。このような賢明な姿勢こそ、両国の対立と地球を「クールダウン」させ、両国の国益にもつながるものと考えます。
 国益をかざしたパワー対決や被害者意識に基づくナショナリズムの発露に希望はありません。今、私たちには、「日中両国の次世代」としての智恵が求められています。
*一部修正しました
2010年10月13日 みどりの未来運営委員会(10月27日一部修正)

[註]
 10月13日公表の文章では、「(無主地先占の原則は)……アイヌなど世界の先住民の土地を強奪した法理です。」とありましたが、「日本がアイヌの土地を強奪し、これを日本の領土であると主張したのは、日本がこの地域をすでに『支配』していたという理由からであり、『無主地先占の原則』とは違うのではないか」という旨の指摘がありました。
 確かに明治政府は、アイヌの土地について「すでに日本が支配」しているなどとして、対外的に「無主地先占」論を持ち出してはいないようです。しかし、江戸幕府からアイヌ支配を引き継いだ明治政府は、アイヌ民族の土地を「持ち主なき土地」(=「無主の土地」)として強奪し、国有化し、さらにこれを民間へ売り払うなどしたばかりか、ロシアとの交渉においては、この土地を勝手に分割し、取り引きしたりしました。
 北海道ウタリ協会(現在北海道アイヌ協会)が1984年5月に総会で決議した「アイヌ民族に関する法律案」においても、こうした政策の不当性を強く訴えています。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/8729/ainu.html
 「無主地先占」の法理は、「持ち主なき土地」を当事者との交渉なく強奪してきた近代国家の論理が基礎にあり、その意味ではこれとアイヌ民族などの土地強奪の歴史には通ずるものがあると考えます。しかしながら、10月13日公表の文章のままでは正確さに欠けるため、今回示した通りの表現に修正しました(10月27日)。


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