映画紹介 金成日制作・監督ドキュメンタリー作品
『1985年 花であること』 かけはし2010.9.6号 |
連綿とした差別的外国人管理の
不条理に立ち向かう姿鮮やかに |
絶妙なかけあいドキュメンタリー
『1985年 花であること』は、制作・監督を担当した金成日さんが、華僑2世の徐翠珍さんに聞き取りをし、その様子をドキュメンタリー映画にまとめたものである。
在日韓国人の金さんの質問も的確だし、それに応じる徐さんの話もなかなかおもしろい。自分が体験した困難な運動や闘いを、ユーモアを交え大阪弁で話す徐さんという人格の魅力が随所にあふれていて、観るものを感動させる。
二人とも外国人であるが、入管法・入管特例法からみるとその立場が異なるし、育った環境も違う。映画の中で監督の金さん自身が自分のことを語る場面もいくつかあって、二人の立場の違いも浮き彫りになっていて、入管問題を理解する上でも大いに勉強になる。
1985年・指紋押捺拒否
徐翠珍さんと金成日さんはともに一九八五年、外国人登録法で定められている指紋押捺義務を拒否し、ともにその翌年八六年十一月と十二月に逮捕され、それぞれ裁判闘争を闘った。その後の指紋押捺拒否運動のひろがりの結果、二〇〇〇年指紋押捺制度の全廃に成功した。ところが、9・11米国WTCビルへの同時多発テロの後「テロの未然防止」を理由に、二〇〇七年には外国人の入国時の指紋制度が復活した。
「テロの未然防止」を理由とし、米国の要請を受けるかたちで実施されたものに、外国人登録法を廃止してあらたに二〇〇九年に提出された「入管法・入管特例法・住民基本台帳法」の「改正」がある。この改正案は、ごく一部の人々を除きほとんど反対運動もないままに同年七月七日(つまり政権交代選挙に突入する直前の国会で)成立した。三年以内に施行実施されることになっている。
このほか、金融機関からの送金が十万円を超えるときは本人確認の証明が必要だとか、海外送金などの件で弁護士が相談を受けたとき、警察への通報義務を課すゲートキーパー法案などがある。
改正「入管法・入管特例法」は、従来通り在日コリアンと中国人を差別して扱っている。だから韓国人社会の中では、むしろ制度が改善されると歓迎する傾向もあった。在日コリアンが多数を占める「特別永住者」には、「特別永住者証明者」の常時携帯制度や不携帯による刑事罰は一部緩和され、「再入国許可制度」も緩和されるものの、国家管理の対象者であることは変わっていない。
新在留管理制度でも権利制限
「中長期在留者」には、多くの個人情報を記録したICチップ付き在留カードを常時携帯させ、厳しく監視することになった。中長期という用語からは、日本に数カ月から数年にかけて日本で働く外国人研究者・会社員・労働者を想像するが、徐さんのような「一般永住者」も実はこの範疇に入ることになった。
明治の初期に日本に移住した華僑の子孫のような、一世から数えれば人によっては百年以上も日本で暮らしてきた人々を、なぜかくも厳しく管理する必要があるのか。徐さんはこの点でも非常に怒っている。
また、改正住民基本台帳法によると、オーバーステイなどの非正規滞在者や難民申請中の仮放免者などは外国人住民票制度から除外される。従って、在留資格をなくしたこれらの人は日本では存在していないものとされ、声を上げることもできない。
徐さんによると、現在、中国国籍のままの在日華僑は十三万人。うち四万人が戦前からの人々で、老華僑といわれている。これとは別に、中国から日本に移住し、その後帰化した華人と呼ばれる中国人がいて、その数は二〇〇七年だけで十万五千人に増加しているとのことだ。
先にふれたように、中国人らは明治のはじめから日本に渡日してきたが、一八九九年「内地雑居令」という法律により、日本への移住・定住が法的に可能になり、日本政府は外国人登録制度を実施し、管理していった。とはいってもこの法律以降に渡日する場合は職業を制限し、許されたのは三刀(洋服仕立て職人のはさみ、理髪職人のカミソリ、料理職人の包丁の3つを指す)と行商のみ。断髪を行い、礼装は洋服を着用のこととした明治政府にとって、理髪や洋服職人は草創期の明治時代から必要な技術者であったといわれる。
徐さんの両親は一九三〇年代に上海から渡日し、神戸に定住した洋服職人だった。当時は日中十五年戦争の始まる直前である。この後在日中国人に対する管理統制が強化されていく。徐さんは一九四七年生まれだが、敗戦直後の日本に残留した中国人の総数は約六万人だったという。戦後日本に残留した外国人のほとんどは、元植民地出身の朝鮮人・台湾人や中国人だった。一九四七年に始まった戦後の外国人登録制度では前者を「特別永住者」、後者(元敵国人)を「一般永住者」として管理を差別化した。「一般永住者」はこの時点で、四万二千百人強であったそうだ。
映画では最初、真っ暗な画面に「関西空港の外国人入国ゲート」という文字だけが写り、「指紋採るんですか。嫌と言ったらどうなるんですか。私の国はここで、日本生まれなんですけど……」と、台湾から日本に入国する徐さんが係官に執拗に質問している声だけが聞こえる。係官が事務的に答える声が続き、最後は「納得できないけど、入国できなかったら困るから……(指紋採られて)残念でした、残念でした……」という徐さんの声。入国時に一般永住者は特別永住者とは違う扱いを受け、指紋押捺が義務づけられることになった。
このあと、満州国の指紋管理局の門看板の写真が映る。そして、日本は当時から指紋を使って中国人を管理していたというナレーションが流れる。満州でのこの業務は戦後の日本にそのまま受継がれ、この業務で表彰された役人は満州時代から同じ業務を担当していたという。私自身、満州国の指紋管理のことを知らなかったから、この場面にまず衝撃を受けた。
映画はそれぞれの時代ごとの徐さんの記憶をよみがえらせていく。子ども時代、中華同文学校に入学することに何の疑いも持っていなかったこと、そこで受けた民族教育のこと。しかし一方では日本人の名前がほしかったという当時の記憶。
就職するときに受けた差別。大阪西成に移って、民間の保育所で保母として働いたこと。その保育所が大阪市に移管されることになり、公務員採用の国籍条項を撤廃させるために闘い、そして勝利した経験。指紋押捺拒否運動で二度逮捕されたこと、その当時考えたこと。指紋押捺拒否の件に関わって昭和天皇大葬時に出される大赦を拒否する訴訟を起こしたこと。靖国訴訟のこと。
この訴訟でつくづく、加害者が声を出さない限りダメだ、日本人は確かに中国では中国人を殺したとしても、日本国内では大変な目にあっていた、その人たちが声を上げていかない限り世の中は変わらないと思ったこと。九条を守る運動。これらの運動を通して徐さんの生き方を監督の金さんがインタビューで鮮やかに浮き彫りにしていく。
平等な市民権で多民族連帯の夢
映画制作は初めてで、監督をしたのも初めてだという金さんたちによるこの映画。登場人物はほとんど徐さん一人だというのに、観るものを飽きさせない。良くできた映画だと思う。八月十三日、試写会があり、八十人ばかりの人が参加した。この映画の制作意図は、やはり改正「入管法・入管特例法」が施行されるまでにこれを修正する運動をもう一度つくるため、そのテコとしてこの映画を使いたいという点にあるのではないかと私は思った。
徐さんは試写会の後のあいさつで、自分が一番言いたかったのは映画の最後の場面(自分たちは移民だが、この日本社会でそれなりの役割を果たしてきた。いまだ戦後処理ができていない現段階では、簡単に日本に帰化するということはできないが、でもこの日本で市民権を得て生活していかなければならない。私たちの「平等要求」の闘いは、「新移民」たちとの連帯につながり、確実に多民族化を加速していくこの日本社会を多文化共生社会へと変えていく足がかりになるのではないか、と言うくだり)だと言っていた。
金監督は映画祭への出品を考えているそうだが、今のところ映画館では上映されない。だから、DVD(1枚2000円、有料上映会はDVD込みで5000円)を購入して、全国各地でさまざまな規模の上映会を開いてほしい。これが徐さんたちの希望である。なお、この映画の題名は、石原吉郎『サンチョ・パンサの帰郷』(花であること)の詩から引用されている。(T・T)
DVD購入のための連絡先
市民共同オフィスSORA
電話:06―7777――4935
ファックス:06―7777―4925
呼びかけ
どっちが深刻?世界の貧困、日本の貧困
=「犠牲の累進性」を超えて=
◎日時:9月19日(日)12時30分開場、13時開始(16時終了予定)
◎場所:築地本願寺第二伝道会館「蓮華殿」
b東京都中央区築地3-5-1
b行き方:東京地下鉄日比谷線「築地」駅1番出口下車徒歩1分。有楽町線「新富町」駅徒歩5分。
b地図:
http://tsukijihongwanji.jp/tsukiji/map.html
◎共催:反貧困ネットワーク/動く→動かす
◎資料代:300円(払える人のみで結構です)
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★「大変だ」「生活ができない」――
こんな叫び声をあげると「弱音を吐くな」「不満を言うな」「アフリカの子どもたちを見なさい」と怒られる。日本でも貧困が社会問題として取り上げられるようになってきたが、「日本の貧困問題は○○よりはまだまし」という言葉をそれでもまだ耳にする。他と比べてましな生活でも、苦しいことに変わりはない。
★ではアフリカの子どもたちについて声を上げると?「そんなのは遠い国の話。私たちには関係ない」…。ここから脱出するにはどうしたらいいのか。
★日本の貧困と世界の貧困に取り組むネットワークが連携して、世界の貧困をなくすために作られた「ミレニアム開発目標」(MDGs)をモデルに、私たち日本のバージョンを作った。目の前の叫び声にふたをする「犠牲の累進性」を超えて、私たちの声を響かせるには? みんなで考え、動いてみよう!
※「犠牲の累進性」とは?ー「お前の置かれた状況などは、ほかのもっと貧しい人や大変な人に比べたらなんでもない」というような言い分で問題から目を逸らさせ、我慢を強いるやり口、雰囲気。例えば正社員の長時間労働より非正規の低賃金の方が、非正規の不安定労働よりもホームレスの過酷な生活の方が、日本のホームレスよりも第三世界のスラムの貧民の方がより貧しくて大変なんだ、という形で現在その人が向き合っている困難を呑ませようとするやり口。(雨宮処凛)
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◎パネリスト・企画概要
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b司会:松元千枝(ジャーナリスト)、中島実優(大学生、活動家一丁あがり講座一期生)
bパネリスト:吉岡逸夫(ジャーナリスト)、湯浅誠(反貧困ネット事務局長)、稲場雅紀(「動く→動かす」事務局長)、雨宮処凛(作家・活動家)
b世界の貧困解消を目指す国際目標「ミレニアム開発目標(MDGs)」と、日本の貧困をなくすための目標「日本版貧困削減目標」(日本版MDGs)について解説!
b和太鼓とアフリカの太鼓の掛け合い演奏あり!!
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◎「スタンド・アップ」やります!
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「スタンド・アップ」(STAND UP)は、「ミレニアム開発目標」(MDGs)の達成と貧困の解消に向けた取り組みを訴えるためのグローバルアクションです。世界各地で1億7000万人以上が立ち上がり、参加者数でギネス記録を作って注目を集め、世界の貧困を終わらせるという強い声を各国のリーダーたちに届けます。
今回は、世界の貧困・日本の貧困の両方を終わらせる声を届けるスタンド・アップを行います。鳴り物(カスタネット・拍手など)で音を出しながら立ち上がるので、鳴り物を持ってご参加ください。
〈ネット中継あり
http://www.ustream.tv/channel/hanhinkon〉
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◎会場にて出店・出展募集中!
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当日、会場手前の1階ロビーにてブースを設置し、販売や展示を行うことが出来ます。ブース出展をご希望の方は以下の連絡先までご連絡ください。
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◎連絡先:
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・動く→動かす:東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル2F
(特活)アフリカ日本協議会気付
担当:稲場雅紀 電子メール:office@ugokuugokasu.jp
電話:03-3834-6902(アフリカ日本協議会呼出)
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