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   かけはし2011.1.17号

大資本・米オバマ政権に全面追随

消費税の引き上げを前提とし
再び小泉構造改革の方向へ



2年連続で借金
が税収を上回る

菅政権は二〇一一年度政府予算案を決定した(10・12・24)。一般会計の総額で九十二兆四千百十六億円と一〇年度当初予算(92兆2992億円)を千百二十四億円も上回っており、過去最大となった。また、税収の見込み額が四十兆九千二百七十億円に対し、新規国債発行額は一〇年度と同水準の四十四兆二千九百八十億円で二年連続で借金が税収を上回った。完璧な財政破綻であり、借金漬けを深め、雪だるま式に膨れ上がっているのが実態だ。
 一切の責任は歴代の政権・与党、そして菅政権にある。カネがないというなら二百四十兆円以上の巨額な内部留保を貯め込む大企業に対する法人税率の引き上げ、大株主・資産家優遇税制の廃止、証券税制や贈与税、所得税の最高税率(40%)の引き上げなど累進課税の強化、軍事費・米軍支援予算、乱開発・環境破壊を拡大するゼネコン応援や原発推進の電力資本優遇政策など無駄な予算の大幅カットを優先すればいいだけだ。メディアも含めて、こんな単純なことに一切触れず、一体となって消費税増税キャンペーンを展開している。消費税は大きな逆進性を持ち、低所得者の税負担率を上昇させる最悪の民衆犠牲の押し付けである。いったい菅首相の「最小不幸社会を目指す」「不条理を正す政治」(年頭会見)がどこに反映されているというのだ。社会保障財源を口実にした消費税議論の「方向性」提示というトリック表現を駆使し、歴代の政権が貯めてきた膨大な借金のツケを民衆に転嫁する消費税増税の強行を許してはならない。「最大不幸社会」に突進しているのが本当の姿である。

借金は住民1人
あたり524万

 歳出は、国債の元利払い
に充てる国債費が二十一兆五千億円を除いて七十兆円を計上した。同時に財務省は社会保障財源の安定的確保のために消費税増税が必要というデマキャンペーンを展開しながら、どう喝的に国債残高が一一年度末に六百六十八兆円、地方と合わせ約八百九十一兆円に膨らみ、国内総生産(GDP)の一・八倍に達していることをクローズアップ(12・24)。さらに一一年度の利払い費が約九兆九千億円と巨額になっており、一日あたりの計算で約二百七十二億円の支払いとなっているだけではなく、借金が民衆一人当たり約五百二十四万円の借金に相当するというのだ。
 しかも税外収入として「埋蔵金」と称して鉄道運輸機構からの納付金(1兆2千億円)や財政投融資特別会計からの受け入れ金(1兆588億円)、独立行政法人などから七兆円をかき集めたが、一一年度限りの財源が多く、埋蔵金も一一年度でほぼ枯渇してしまうという危機アジリをマスコミをフル動員して繰り広げている。
  世界的同時不況と経済危機の深まりによって五%台の失業率、三百万人以上の失業者、しかも長期失業が百二十八万人を超える最悪の雇用状態だ。民衆の生存の危機に対して社会保障・生活・雇用・医療・教育・農業関係への手厚い予算措置は当然であるが、予算案は削減・圧縮を強めている。社会保障費圧縮派にいたっては、社会保障費が前年度比五・三%増の二十八兆七千七十九億円と一般会計歳出の三割を超えて突出しいるから、子ども手当などこれ以上のばら撒きをするな、年金給付・医療・介護など高齢化によって経費が増え毎年一兆円以上の自然増だから抑制措置が必要だと繰り返している。その結論は、小泉政権時の二〇〇二年度以降、社会保障費の自然増を毎年度二千二百億円削減した政策に戻れということなのである。小泉構造改革によって民衆の生存権がズタズタに破壊されていったことの再現を行えと主張しているに等しい。
 菅政権は、この「圧力」に便乗し、利用しながら消費税増税を行おうとしている。社会保障費は毎年一兆円程度増え続けるから消費税は一%の引き上げで約二兆五千億円の税収増で大丈夫だというのだ。かつて仙谷官房長官が行政刷新担当相だった時、「人口減少、超高齢化社会の中で、現役世代に大きな負担をかける仕組みはもたない。 消費税を二〇%にしても追いつかない」とぶち上げていた(10・1・6)。つまり、財界の要請もあり消費税増税を際限なく引き上げていくことが本音なのである。消費税増税を行えば自動的に社会保障財源が安定化するというのはデマにすぎない。これまでも消費税増税しても継続して医療・介護・年金改悪を強行してきたが、それを繰り返さない法制度を制定するとなぜ言わないのか。

法人税引き下げ
軍事費は満額

 その一方で社会保障費圧縮派は、財界の要求である法人実効税率が五%引き下げを追認している。財務省の試算でも最大で二兆円を超える減税だ。しかし企業減税しても国内投資、雇用拡大につながる保障などは全くない。海外投資、内部留保へと移動するのがみえみえだから法人税減税は撤回するしかない。
 また、上場株式などの譲渡益や配当にかかる税金を軽減している証券優遇税制を一三年末まで二年延長する大サービス付きだ。企業減税財源として欠損金の繰越控除制度や研究開発減税の縮小などで八千億円程度をまわすと財務省はいうが、本来ならば民衆生活面に支出すべきである。しかしそのことは無視だ。法人税引き下げが消費税増税に向けた動きとセットであることの現れである。
 「新成長戦略」関連事業予算を増やすために「各省庁の予算を(2010年度金額から)一割削減」させて約一兆三千億円をでっち上げたが、結局、「元気な日本復活特別枠」などとフザケたネーミングで設けた予算額が二兆一千億円に膨んでしまった。とりわけ防衛省予算の在日米軍の駐留経費(思いやり予算)千八百五十八億円が特別枠に回され、日米安保強化のために満額確保した。これこそが予算のばら撒きというのだ。メディアは、「思いやり予算や人件費など、削りにくい従来型の事業」(毎日10・12・25)と擁護し、「古色の目立つ結果になった」と言うだけである。社会保障圧縮を主張しているにもかかわらず、米軍支援は「聖域」扱いなのである。
 このように予算案で無駄遣いを取り上げればきりがないが、とりわけ突出しているのは軍事費(4兆7752億円[一〇年度当初予算比0・3%減])だ。新防衛大綱に基づいて対中国、北朝鮮シフトを位置づけた「動的防衛力」にむけて再編成していくための予算配分である。
 南西諸島の部隊配備調査費(3000万円)、PAC3那覇配備(243億円)、航空自衛隊輸送機二機(657億円)、海上自衛隊潜水艦一機(577億円)・固定翼哨戒機三機(563億円)、各レベルの軍事演習など戦争のために税金が無駄に使われてしまうのだ。
 さらに「思いやり予算」と合わせて米軍再編関係経費(1230億円)、沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)関係経費(101億円)の合計額は三千百八十億円に上った。また、一〇年五月の日米合意に基づいて米軍辺野古新基地建設するために環境現況調査費など計十六億円を計上している。
 一月六日に訪米した前原外相は、クリントン国務長官と会談し、今春に予定されている菅直人首相の訪米に向け、新たな日米安全保障共同戦略を策定することで合意した。日本の周辺事態に関する円滑な日米協力のための協議と言っているが、新防衛大綱を前提に新たな中国、北朝鮮と対抗していく共同軍事体制のレベルアップに着手していくことにある。だから軍事費・米軍支援費は、ほぼ前年水準を維持し、削減することをしなかったのである。グローバル日米安保体制の再編強化を許してはならない。
 反民衆予算の典型が公共事業関係費である。菅政権は、一〇年度当初予算比五・一%減だと自慢するが五兆四千七百九十九億円の重点配分をした。自民党を支持してきたゼネコン・土建業界を選別しながら三大都市圏環状道路建設に重点配分し道路事業に一兆二千三百五十九億円。地球温暖化対策を排除した環境・乱開発のモータリゼーション促進予である。
これだけではない。国際コンテナ戦略港湾として京浜、阪神港整備(1666億円)、ダム事業・治水(5686億円)事業に予算を配分し、あいかわらずの大型乱開発路線を続けている。ゼネコン・土建業界は大喜びだ。
 安全軽視の超過密運航、住民の環境・生存権破壊を拡大する羽田空港整備(131億円)、成田空港整備(2億円)など空港関連に七百十九億円を配分した。空港行政の破綻の結果としてある関西空港の膨大な借金埋め合わせのために大阪(伊丹)空港を経営統合させる準備経費として十億円を計上した。
 さらに国交省は、関空の運営部門と大阪空港を統合する「統合事業運営会社」と、関空の負債の多くと土地を引き継ぐ「関空土地保有会社」を一二年四月に設立して両空港の運営権を民間に売却する計画だが、その展望は全くない。大赤字空港を誰が買い取るというのだ。空港公害の拡大を続け、金儲け主義優先の航空行政にストップをかける必要がある。
 原子力政策に対しても格段の予算措置を行った。菅政権の新成長戦略の重要政策だ。原子力発電分が七百八十七億円。とりわけ発電施設のある自治体に交付される原発推進のための地域買収費である電源立地地域対策交付金は、本年度比一・三%増の千百八十八億円だ。これ以上の環境・生存権を脅かす原子力拡大政策をやめろ。

生活・生存権の
破壊へと導く

 菅首相は「予算案は民主党政権になって初めて一から作った予算だ。元気な日本を復活させるための予算と位置づけた」(10・12・24)などとうそぶいたが、予算案でやろうとしていることは日米安保を基軸としたグローバル派兵国家建設と連動する、財界が策定した金儲け主義、大量生産・大量消費・大量廃棄型政策に貫かれた新成長戦略であり、新自由主義政策の強化である。
 さっそく日本経団連の米倉会長から「新成長戦略に沿った配慮、努力が行われている」とほめられつつ、「消費税を目的税化した上でその税率を引き上げることを含めた、税制抜本改革が不可欠である」と消費税増税にむけて加速せよと指令が出るほどだ。経済同友会は、「2020年の日本創生」(1・11)で29年度までに消費税17%上げろと言い出し始めた。
 事実、真っ先にやったことは財界が要求していた一兆五千億円規模の大企業減税の決定を皮切りに、巨額な軍事費と米軍「思いやり予算」、普天間基地の「県内移設」強行をはじめとする安保体制の強化、環太平洋連携協定(TPP)への参加を前提とした農業破壊政策の踏み出し、民衆生活面の手薄な予算配分など立て続けに行った。
 民衆に対して負担を押し付けてきた自公政権と何ら変わらないではないか。否!それ以上に大資本、米オバマ政権に忠実である姿を前面に出し、エスカレートしてきている。民衆の生活・生存権の破壊へと導く政府予算案に反対していこう。   (遠山裕樹)


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