もどる

    かけはし2011.8.1号

政治・社会変革求める民衆の闘い

クアラルンプールの弾圧

自由・公正な選挙制度求める
市民の運動に恐怖する支配者

ダニエル・サバイ

 六月末、マレーシア社会主義党(PSM)に対して権力は「共産党の復活・圧制との闘い」を口実に三〇人のPSM党員を逮捕した。PSMの国会議員を含む六人はなお勾留されている。七月九日には自由・公正な選挙を求める市民の五万人集会に警察が襲いかかり一六〇〇人が逮捕された。PSMの仲間たちと連帯し、権力の弾圧に抗議する闘いは、今、アジアを中心に広がり始めている。(「かけはし」編集部)

 二〇一三年に予定されている総選挙をひかえて、マレーシア政府はあらゆる形態の反対運動を封じ込めようと絶望的な試みを行っている。「ベルシッ」という名で知られている二〇〇六年に作られた自由で公正な選挙を求める連合組織は、選挙の前に選挙法を改正することを目指して新しいキャンペーン「ベルシッ2」を開始した。この連合組織は市民社会の六二の非政府組織によって構成され、野党が支持している。「ベルシッ2」は、三週間の選挙運動期間、選挙リストの確認、不正の防止、メディアへの比例原則に基づくアクセス、汚職を終わらせることなど八項目の要求を出している。
 「ベルシッ2」は大衆のあいだに大きな反響を引き起こし、七月九日の土曜日にデモを呼びかけた。政府はこのデモを阻止するために、デモの禁止、二〇〇人以上の活動家の逮捕、幾千人ものデモ参加者がクアラルンプールに向かうことを阻止するなど、できるかぎりのあらゆることを行った。しかしこのデモには五万人以上が参加した。警察は、平和的デモを放水銃や催涙ガスなどで追い散らした上に、デモ参加者一六〇〇人以上を逮捕した。すべての逮捕者は、その後釈放された。
 多くの権威主義的政権がそうであるように、アラブ革命は、一九五七年の独立以来この国を一度の中断もなく支配してきたUMNO(統一マレー国民組織)を主要政党とするマレーシア政府を恐怖にたたきこんだ。政府は、「ベルシッ2」運動のあらゆる拡張を阻止することを望んでいる。二〇〇七年に始まった「ベルシッ」の最初のキャンペーンは、続く二〇〇八年に与党連合とUMNOにかつてない選挙での敗北をもたらしたのである。
 こうした中で政府は、「もうたくさんだ、いますぐ退陣を」というキャンペーンの文脈の中でリーフレットを配布していたPSM(マレーシア社会党)の三〇人の活動家を逮捕した(本紙七月一一日号参照)。連邦議会議員をふくむ六人が勾留された。政府の緊急事態本部は、きわめて厳しい条件の下で彼らを起訴ぬきで六〇日間の勾留を科して孤立させている。かれらの弁護士と家族の面会権はきわめて制限されている。
 PSMは、即時無条件の解放のために国際的キャンペーンを開始した。
(ダニエル・サバイはフランスNPAと第四インターナショナルのメンバー。彼女は「インターナショナルビューポイント」のアジア通信員)
(「インターナショナルビューポイント」一一年七月号)

獄中からの訴え

PSMへの弾圧を許すな!

なぜ私はこれからも社会
主義者として闘いぬくのか

ジェヤクマル・デバライ

 ジェヤクマル・デバライとマレーシア社会主義党の二九人の党員は、共産党の復活と王制との戦争を企てたと告訴されてペナンで拘禁された。容疑を支える証拠は何もないにもかかわらず、これはきわめて重大な告訴である。(「インターナショナルビューポイント」編集部)

 「やあクマル、まだ君は風車に向かって槍を構えているのかい」。四年前、医者の友人がある会議で私にそうあいさつした。その前の週に、メディアにマレーシア社会主義党に関する幾つかのニュースが載っていた。
 多くの人びとにとっては、社会主義の実験はすでに歴史の屑かごに投げ込まれたものと見なされており、惑わされた人びとだけが社会主義のために活動しているのだった。
 しかしわれわれPSM(マレーシア社会主義党)は、これから三〇年〜六〇年以内に起きるだろう途方もない経済的・エコロジー的惨害を避ける上で、社会主義は重要で決定的でさえある役割を果たすと信じている。
 われわれは、企業の貪欲に駆り立てられた経済に対して機能しうるオルタナティブを発見しなければならないと確信している。われわれはこの立場のために三つの重要な主張を勧告している。

1 マレーシアの現在の経済路線は「底辺への競争」を促す

 市場へのアクセスをコントロールする資本と技術的専門知識のグローバルな所有者は、比較的少数――約五〇〇から一〇〇〇――の企業である。かれらは今日の一極的世界の中で強力な存在となり、「見切り品漁り」をすることができる。最大の政府でさえもかれらを統制できない。マレーシアが自国に投資家を誘致するために採っている措置は、法人税を引き下げ、消費税法案を成立させて税収を増やすことだ。税の重圧は一般のマレーシア人に背負わされている。
 「労働の柔軟性」の強化。これは誤った言い方であり、実際には労働の契約化を通じて、そして労組の弱体化によって、雇用保障と労働者の諸権利を掘り崩すことだ。そして医療や高等教育などの基本的サービスを民営化することだ。こうした措置は人口の七〇%を占める低所得層への経済的圧力を増大させる。そしてこれらは、他の開発途上国も採用している措置であり、外国による直接投資の嵐の中で、それぞれが隣国を出しぬこうとしている。開発という枠組みの中で福祉に優しい社会をつくることは困難である。

2 慢性的消費不足は金融資本の大規模な拡大とますます爆発的になる金融「バブル」をもたらす

 最も安価な場所に工場を立地させるために「安物買い競争」を行う大企業の能力は、こうした企業に巨額の利益をもたらすが、同時にグローバル経済の総消費需要の発展を妨げる。米国や欧州の企業が、一〇〇人の米国人労働者をレイオフし、中国に移転して一〇〇人の労働者を七分の一の賃金で雇うことになれば、労働者階級の総購買力は減少する。消費需要の健全な成長が存在しなければ、企業収益をより多くの消費物資の生産に投資することはできない。したがって企業は、先物市場、通貨取引、株式市場、あるいはデリバティブなどの他の金融商品といったカネを稼ぐための代案的方法に挑戦する必要がある。
 この傾向は、「量的緩和」――工業生産を刺激して失業を減らすために米国経済により多くのカネを注ぎ込む――が、世界のさまざまな地域におけるいっそうの金融バブルの創出という形で裏目に出た事実によって浮かび上がった。問題は消費需要の不振なのであって、生産資本の欠落なのではない。
 ここにおける問題は、不十分な規制ではなく世界の富の間違った配分にある! この問題に対処するためには企業の権力に挑戦しなければならない!

3 われわれは環境による成長の限界に到達している

 グローバル経済は石油に大きく依存している。この石油という商品は、次の五〇年かそこらで使い果たされる。われわれは緊急に石油に代わる燃料資源を考える必要があるだけではなく、はるかに効率的な燃料を考えなければならない。
 グローバルな温暖化が進んでいる。海水面がどれだけ早く上昇するかは、依然として推測の問題ではあるが、しかしそれは、その影響がわれわれの孫の世代の問題であってわれわれの世代の問題でないのならば、無視する余裕があるということを意味するのだろうか。
 経済下降を避けるために世界で年間平均成長率四%が必要だとする経済モデルは、持続可能でないことは明らかだ! 次の五〇年のためにではない! われわれはすでにより公平に生産している富の再分配を必要としている。われわれは廃棄物を減らさなければならない! 成長は無限ではありえない。
 アダム・スミスの「見えざる手」が今日の企業主導のグローバリゼーションにおいても働いているがゆえに、野放しの欲望が世界の大多数の人びとに可能な最善の結果をもたらすというパラダイムに挑戦する準備がわれわれにあれば、こうしたことすべてが可能となる。
 世界の普通の人びとは、世界で最もカネ持ちの五六〇の企業の手から国家と世界の経済への方針を指令する力を取り去るために権力を取る必要がある。
 われわれは、民主主義的プロセスを通じてこうした課題に着手するために、世界の貧しい人びとの力を強める必要がある。こうしたことは二一世紀の社会主義が直面している課題である。これらは容易には達成できない目標である。
 しかしわれわれが直面している問題は、きわめて深刻である。これらの課題に着手できなければ、世界の人びとの大量死をもたらすエコロジー・食料・気候災害をもたらしかねない。
 私が孫たちに譲り渡したいのはこんな世界ではない。私が社会主義者であり、こんな逮捕弾圧にもかかわらず社会主義者であり続けたいのは、そのためである。

▼ジェヤクマル・デバライはマレーシア社会主義党の国会議員。
(「インターナショナルビューポイント」二〇一一年七月号)

 

 


もどる

Back