「青年戦線」最新号より

2000年4月1日・No.154より

|●治安諸法の発動を許さず、学園・地域・職場をむすんだ闘いのうねりを!…大仲 恵
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●共青同アピール
|● 山谷越冬闘争に参加して…………………………………………………………板橋道雄
|●寿越冬闘争に参加して……………………………………………………………海田 昇
|●1.15 日雇全協総決起集会報告

|●反失業闘争と野宿労働者…………………………………………………………遠山裕樹
|●アジアにおけるゲイ・レズビアン運動と私たち
|●私自身のノートから 男性の当事者運動と男のあり方………………………鈴木和久
|●座談会 青年論を語る―2
|●学習ノート ローザ・ルクセンブルクの組織論………………………………中野新一
|●読書案内「中国香港特別区最新事情」…………………………………………早野 一 
|●連帯を求めて(29)………………………………………………………………萩原邦彦 


反失業闘争と野宿労働者 行政による切り捨てを許さず就労権と生存権を闘いとろう

遠山裕樹



 
急増する野宿労働者

 一九九九年十二月十七日、厚生省は、全国都道府県が把握している野宿労働者の概数報告(今年五月〜十一月)を集計し、二万四百五十一人に達していることを公表した。九七年七月〜九九年三月の総数は一万六千二百四十七人だったが、今回の集計では一・三倍になっている。十月の完全失業者数が三百十一万人(総務庁)。とりわけ男性の「五十五歳〜五十九歳」が四・六%、「六十歳〜六十四歳」が九・八%も上昇している。また、雇用者数は、「常用雇用」四千六百九十六万人(対前年同月比二十七万人減)、「臨時雇い」五百二十一万人(同二十六万人増)、「日雇い」百二十五万人(同二万人減)となっている。
 この数値は、バブル崩壊後、政府・資本が一体となって自らの延命をかけて雇用の弾力化・流動化政策を進め、正規雇用を削減し、代わりにパートタイマーや契約社員、派遣労働者などの膨大な非正規雇用の不安定雇用労働者を作り出してきた「成果」だと言える。
 この戦略のねらいは、「必要なときに、必要な人材を、必要な量だけ調達する体制」(労働力調達のジャスト・イン・タイム・システム)=労働者使い捨て体制の構築であった。さらに日経連は、この攻撃を九五年に「新時代の『日本的経営』」として路線化していった。そして、昨年、資本の忠実な代弁者として政府は、ついに念願の労基法や労働者派遣などの労働関係法の改悪を強行した。
 現在、日産をはじめ大企業において大規模リストラ攻撃が押し進められている。必然的に失業者数の増加と比例して野宿労働者の増加が予想されるという深刻な事態を迎えている。野宿者・人権資料センターの今回の調査によれば、「野宿が常態化する」直前の就業形態は「日雇い」五五・四%、「常雇」三一・七%、「臨時・アルバイト」七・一%という結果が出ている。これは建設産業の日雇労働者にかぎらず、比較的安定的な就労をしてきた人々までもが野宿に至っていることを明らかにしている。

 「生活空間としての寄せ場」の解体

 このような野宿労働者の増大傾向に対して山谷労働者福祉会館・活動委員会のなすびさん(「寄せ場No12 寄せ場と野宿者をめぐる最近の状況」)は、山谷での実践を踏まえバブル崩壊後直後の九三年頃〜九七年秋(第一期)とそれ以降(第二期)に分けて実態分析をしている。バブル崩壊*宿労働者の増大という単純な見方を批判するなど、重要なアプローチを提起しているので紹介しておく。
 バブル崩壊後の第1期は、寄せ場での求人はほとんどなくなり、「従来の日雇い労働者の就業・生活空間としての寄せ場は、あっけなく解体された。寄せ場に仕事がこなくなったが、労働現場には仕事がたくさんあり、若年層の建設労働者が非常に多かった」。このような現象に対してなすびさんは、建設業界が求人手段を寄せ場から新聞・雑誌広告に転換し、高齢者を排除しながら下層労働力を再編してきたためであり、同時に、日雇労働者は「野宿よりマシ」だとして労働条件の劣悪化、暴力飯場による賃金不払いなどにも耐えながら増加していったと分析。
 結果として、五十歳以上の日雇労働者は、ほとんど従来の日雇労働につけなくなり、野宿者として路上に放り出された。このような攻撃は日雇労働市場にかぎらず、全産業の中高年労働者をターゲットに全般化していった。つまり、「全産業からの高齢者の野宿化」だと強調している。
 第二期は、高齢者にかぎらず二十代、三十代などの若い層の野宿者も増えていったことをクローズアップさせながら分析。具体的には、「フリーター」から土建業へと「転職」し、「携帯電話一本で仕事を受け」ながら日雇労働を繰り返していく。だが、突然、解雇・失業に追い込まれ野宿に至るプロセスを述べている。
 こうした事態は、日雇労働者に限らず派遣労働者においても同じような状況が進行していった。昨年の越年越冬では派遣労働者だった若年の野宿者が増えていると報告があった。なすびさんは、「運動からは非常に遠いところにいる不安定就労層が野宿化し始めており、九七年頃からの野宿者増大を象徴的に表している」と指摘している。なおセンターの調査によれば、野宿労働者の年齢は、二十代一%、三十代五%、四十代二一%、五十代四五%、六十代二五%、七十代二%だったことに現われているように、各年代層から野宿労働者が増えていく兆候を示している。

 「連絡会議」のねらい

 このような野宿労働者の増加に対して政府・各自治体は、どのような対策をしてきただろうか。典型的な事例を取り上げてみよう。この間で言えば、五月に政府と六自治体(東京都、新宿区、川崎市、横浜市、名古屋市、大阪市)の構成による「ホームレス問題連絡会議」を行い、「自立支援事業政策」とセンターの開設を今年の秋を目標に東京、大阪をはじめ全国二十カ所を開設するなど野宿労働者問題の取り組みをようやく開始した。
 しかし、この行政による連絡会議は、野宿労働者に対して、@就労意欲はあるが仕事がなく失業状態にある人 Aアルコール依存症や精神的・身体的疾患をもち、医療・福祉の援護が必要な人 B社会的な束縛を嫌ったり、身元を明らかにせ社会生活を拒否する人などと差別・選別し、施設「収容・隔離」していくことをねらっている。事実、各自治体は共通して野宿労働者を排除するための法的整備を要求し、とりわけ大阪市は「強制力の伴った本人確認のための調査権の発動」を求めるなど露骨な「排除・収容・隔離」攻撃を強調している。
 連絡会議がこの十月にも開かれたが、「自立支援事業」を就労対策問題として位置づけるよりも、「施設収容・隔離」の比重が強く厚生省主導で進められているのが現状だ。
 他方、労働省は、今年の一月から「緊急日雇労働者多数雇用奨励金制度」を設けた。だか、この制度は東京、横浜、名古屋、大阪の五つの日雇手帳を持つ労働者を雇用した業者に対して一人一日五千円を援助するというもので、最初から野宿労働者を対象にせず、業者に対する資金援助の性格が強いものだ。
 さらに政府は、「緊急地域雇用特別基金事業」を行っている。しかしその実態は、例えば、東京都は「ホームレス対策」と称して、この事業給付金から「森林整備事業」のための作業員の募集を行ったが、その数は住み込み枠がたったの十人というレベルなのだ。各自治体もかろうじて「ホームレス対策」を開始しつつあるが、その規模は小さく、とうてい野宿労働者の増大傾向に対して間に合っていない状況だ。
 大失業を作り出した張本人である政府は、いっこうに減少しない失業者数の対策としてこの八月に「第九次雇用対策基本計画」を決定した。計画は、「経済・産業構造の転換に的確に対応した雇用創出・安定」「個々人の就業能力の向上と経済発展を担う人材育成」など新自由主義にもとづく雇用・賃金・労働時間破壊を行い、労働者間の分断と競争主義を作り出していく内容になっている。あげくのはてに重負担を強制する雇用保険制度の改悪、「特別な配慮を必要とする人達への対応」として「意欲と能力に応じて働ける社会」と称して障害者間の競争強化をあおり、「日雇い・ホームレス対策」に対しては施設収容と切り捨てを行っていく中味になっている。

 「屋根と仕事」を獲得する闘いを進めよう

 このような政府・自治体のずさんな野宿労働者対策に対して金子雅臣さん(東京都職員)は、廃止されている失業対策事業を取り上げ、政府の失業問題に対する責任回避を批判し、@失業対策は社会的責任であり、一大施策として財政支出すべきだ A福祉的労働も含めた労働施策が必要 Bリストラに対する法的規制と公的就労が必要だと強調している。(w季刊 Shelter-less No4 失業対策の過去と未来x)
 全都野宿労働者統一実の仲間たちは、野宿労働者のニーズに対応した自立支援事業とセンターの設立、雇用拡大、生活保護適用・法外援護支給、越冬対策事業などの充実を求めている。自立支援センターの年内開設について都側は「関係区との調整中」を理由にいまだに実現していない。仲間たちは、この越年越冬の闘いを通して「早期開設実現」の闘いを強化しつつある。
 さらに、全国日雇労働組合協議会の呼びかけで闘い抜かれた十・一五〜一六反失業全国集会では、@二〇〇〇年、国家と対決する全国中央闘争を打ち抜き、「分断・排除・収容」の棄民政策を葬り去る A排除攻撃に対しては、全国からはせ参じて闘う B全国各地の共闘関係を形成・強化していくことを参加者全体で確認している。この三本柱を軸にしつつ、同時に「屋根と仕事を獲得」するための闘い、すなわち就労保障要求・生活保障要求・居住地防衛・労務供給支配体制との闘いを反失業闘争として位置づけ押し進めていこうとしている。野宿労働者や日雇全協の闘いに連帯し、反失業闘争の闘いを強めていこう。

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