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    かけはし2012.年5月14日号

連立政権とトロイカの打倒へ

ドイツ
NRW州議会、解散そして選挙

左翼的圧力の解体か反資本
主義的前進かの決定的戦闘

マヌエル・ケルナー

最重要州で決定的な挑戦を経験


 欧州では、日本のメディアがほとんど取り上げないもう一つの重大選挙がある。ドイツの地方選と連邦選挙だ。欧州の経済と政治に対するその圧倒的な影響力を考えれば、ドイツの結果こそが本質的に最も重大かもしれない。以下は、それがどのような諸関係の中で闘われるのかを伝えている。(「かけはし」編集部)
 二〇一〇年五月、ノルトライン・ウェストファーレン州(以下、NRW)の左翼党は、議会進出の敷居である得票率五%を超え(五・六%)、全州の中で最大の人口をもつ(同時にドイツの心臓とも言える最重要工業州の・訳者)ドイツ西部の州議会に席を占めた。今この州議会は解散し、五月一三日にあらためて選挙が行われる。
 二〇一〇年、それはいくつかの理由から重要な成功だった。第一に、それは連邦レベルの左翼党にとっては、国の西側における相対的な弱さを乗り越えるという点でかなりの成果だった。第二に、強力な反資本主義潮流並びに左翼改良主義潮流を抱え、革命的な背景をもつ諸グループからの大きな影響を受けているNRWの左翼党は、左翼党内部では左派に位置し、国の東部で優勢な連立主義的方向に対するオルタナティブを代表している。
 NRW左翼党は州議会進出後、特別な状況にぶつかった。総数一八一議席中一一議席(内女性が六)をもつ左翼党会派はわずか九〇議席の支持しかないSPD/緑少数内閣に対して野党となったが、保守のCDU並びに自由主義のFDPもまた野党だった。
 これは永続的な挑戦を意味していた。なぜならば、すべての決定、すべての「イエス」あるいは「ノー」、またすべての棄権が、政権会派の決議案――予算案でさえ――が通るか否かを決める可能性をもっていたからだ。いっぽうこれは、議会への関心を高めた。議会は通常の決まり仕事、つまりあらゆる物事が政府の指導の下に政権会派指導部によってあらかじめ決定され討論がある種の儀式となっている、そのようなものとはかけ離れたものとなった。他方でこの状況は、議会活動のさまざまなレベルにおける立場の練り上げや討論に集中するよう、事前に予想されていた以上に左翼党会派を刺激した――とはいえこれは、DGB(ドイツの労組ナショナルセンター・訳者)の諸労組や他の議会外社会運動との密接な協力の下で行われ、党とその会派は、諸動員、特に反核動員や社会的抗議運動に参加しようと努めた。

SPDと緑に左への転換を強制


 SPDと緑の党は慎重かつ相対的に、しかし実体をもって左翼への転換を始め、シュレーダー(連立政権時代の首相、SPD・訳者)/フィッシャー(同政権外相、緑・訳者)の残忍な反社会政策と「アジェンダ二〇一〇」から自身を遠ざけた。実際その政策は、SPDを選挙上の重大な危機へと導いたのだった。そしてそれこそが、SPDと緑の党を、二〇一〇年と二〇一一年に左翼党の諸要求の圧力に敏感にさせた理由だ。彼らは、「社会的予防」政策という名前の下に、いくつかの社会的かつ民主的進歩を具体化する準備ができていた。そして、社会的解体や公共サービスの要員削減あるいは私有化の新たな底抜け騒ぎの諸手段を左翼党は受け容れないだろうということを念頭に置きながら、新自由主義的ショック予算を提出しなかった。
 こうして左翼党会派は、棄権という手段によって、二〇一〇年並びに二〇一一年の予算の採択と州首相(政府首班)としてのハンネローレ・クラフト(SPD)選出を受け容れた。また、たとえ不十分だったとしても一連の積極的な、進歩的な性格の諸決定に賛成投票した。いくつかの事例として以下のものがある。大学授業料の廃止、学校における素行記述(「コプフノーテン」)の廃止、公共部門における諸決定に対する職員代表によるより高い関与(「ミットベスティムング」)の再導入、公共事業入札に参入する企業向けの、社会的かつ環境上の基準そして連帯税に対する忠誠を定める法(「タリフトロイエ・ウント・フェルガーベゲセッツ」)の再導入、難民に課せられた住居要件(「レジデンツプフリヒト・フュア・フリュックトリンゲ」)の廃止、住民投票による市長のリコールに可能性を開く措置並びに自治体での市民主導に対するより改善された措置の導入、州の建物に対する再生可能エネルギー供給計画、だ。

緊縮政策強要に向けた強行突破

 しかしSPDと緑の党は新たな転進を準備していた。左翼党から票を得ることに背を向け、CDUと共に彼らは、金融市場カジノへの参加が原因の破産者であるラント・ウェストLB銀行向け一〇億ドルの臨時支出に賛成投票した。しかもそこには、職員のための見通しも私的債権者の引き込みもなく、その一方、ウェストLBの債務に対する、並びに対銀行保証人としての州の行動に対する、両方の監査という左翼党の要求は一切無視された。
 SPDと緑の党は学校に対しても、CDUとのいわばインチキの合意に達し、二〇一〇年五月の選挙前の約束を裏切った。左翼党だけが、一〇年生までの全生徒に共通の教育を提供する単線教育システムのための闘いを継続した。自治体に対しSPDと緑の党は、今度はFDPの支持をてこに、「ギリシャ型」のメカニズムを決定し、州による赤字補填金融支援(「シュテルクングシュパルト」)を活用しようとする赤字の自治体に、残酷な緊縮諸方策をとるよう強制した。
 二〇一二年三月、全く押し詰まって、政権会派は二〇一二年予算案を提出した。それは中でも、学校と保育園の給食財源を削減していた。論争は思想的に、予算規律をめぐるものだった。左翼党の党と議員団(NRWではあらゆる重要決定を共に行い、その事実に誇りを持っている)は、少数内閣の予算案を通過させることとなる棄権を、ギリギリの限度と定めた。その上で、SPDと緑の党が左翼党の中心要求四項目に関する実質的な譲歩に用意ができていないならば、反対投票することをはっきり示した。以下がその四要求だ。
一)州内公共交通利用に対する、一カ月一五ユーロの「社会切符」(「ランデスヴァイテス・ソツィアルティケット・フュア一五ユーロ」)。
二)自治体向けの十分な資金供与(州内では、四〇〇の自治体の内三九二が赤字で運営されている)。
三)低所得の個人と家族が利用できるまともな住宅を建設する新たな努力(「ソツィアレル・ヴォーヌングスバウ」)。
四)三歳以下の子ども向けに保障された良質なデイケア施設(州内では現在、一〇万人以上に対して不足がある)。
 SPDと緑の党はこれらの要求に対して、いかなる譲歩の用意もなかった。それは、州の借り入れに対して憲法上課された限界を超えることなくそれらの本質をかなえることが可能と思われた、としてもである。FDPには、三回目あるいは最後の投票段階で予算を通す用意があった。しかし彼らは二回目の投票では反対すると公表した。すると今回、州議会事務局から出されたある種真意不明な法的見解には、二回目投票での否決は政権会派予算案の敗北を意味することとなる、と明記された(まさにいかがわしい。なぜならば法律は、政府に三回目投票までに自己修正の可能性を与えているからだ)。FDPが間に合うほど素早く方針を変えることができず、左翼党は断固としたままである以上、予算案は賛成九〇票(SPDと緑)、反対九一票(CDU、FDP、左翼党)で否決された。次いでハンネローレ・クラフトは即座に、議会解散と八週間以内の新たな選挙という動議を提出した。この動議は満場一致で採択された。

エネルギー転換も重大な対決点


 二年近い少数内閣の実績について何らかのより完全な評価を加えようとすれば、エネルギー政策の中心的な側面を加えなければならない。NRWの憲法は、独占的地位をむさぼり、あるいはその経済的な力を乱用する企業の社会化を義務づけている(二七条)。この法は、ヒトラーとナチスに権力をもたらすことに大きく貢献した諸過程を妨げる目的の下に、第二次大戦後導入された。もちろん公式の政治は、この条文について知らないふりを装った。それらの条文が、エネルギーの大独占体であるRWEやE・ONの事例に全く十分に当てはまると見えたように思われたとしてもだ。実際それらの企業は、一〇〇%再生可能エネルギーへの転換を妨げ、反社会的かつ反環境的価格政策をもって、独占による超過利潤を引き出しているのだ。
 左翼党は、エネルギー企業を社会化、再共有化し、分散化、民主化するために、さらに産業社会の環境的かつ社会的な再構築計画をめざしキャンペーンしてきた。そして、公的所有の州内高電圧送電ネットワークを目指す要求を前に進めた。
 しかしSPDと緑の党は、対象の複合企業を形式上自立的にすると思われる、RWEの送電網――アンプリオン――を購入するという申し出に力を貸す、したがって私有の会社が送電網の所有者となると思われる、この最も穏健な提案を拒絶した。
 エネルギー価格については、左翼党は一つの事実を強く非難してきたし、今も非難し続けている。その事実とは、最も多く消費する者(特に産業)の支払いが最も少なく、その一方、質素な収入の私的家計がエネルギー勘定書の山を支払い、最低収入の数十万人がエネルギーカットの犠牲者となるか、それに脅かされ、社会生活への初歩的な参加という重大な側面から排除されている、ということだ。
 左翼党は、大企業向けに行われている特別贈与の廃止、並びに所得に結び付けられる累進率によって融通される、そのような電力の基礎的取り置きの無料消費を要求しているが、その理由こそ先の事実なのだ。
 NRW左翼党は電力闘争を開始した。そしてその二〇一〇年政綱を最新化し、リーフレットとして発行する簡略版(「クルツヴァールプログラム」)を作成した。

新勢力台頭下予断許さない闘い


 党は五月一三日向けの候補者リストとして一二人を再選抜した。その一二人は、二〇一〇年のリストの先頭にいた同志たち(こうして一一人の現職議員たち)とその例に入らない一人だ。すなわち今リストの先頭にいる同志は、三九歳になる看護士のカサリナ・シュヴァベディッセンであり、彼女はこれまで、党のスポークスパーソン二人の内の一人となってきた。こうしてリストの先頭に並ぶ一一人の内には女性候補が七人いる。
 議会選出に必要とされる五%の敷居を左翼党が超えることは確実なわけではない。連邦レベルの世論調査で党は二、三ポイント失っている。そして州レベルでは現在、四%前後を上下している。この理由の一つは、選挙に向けた「海賊党」の華々しい台頭だ。この党は、経済的、社会的問題にはあいまいなままである一方で「インターネットの自由」のためにキャンペーンしている。しかし、政治過程をより透明にすると約束しながら新勢力として自身を押し出すことに成功し、抗議票のかなりの数を獲得している。
 この選挙は左翼党にとって決定的な戦闘だ。シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン州の五月六日、並びにNRWの五月一三日にわれわれは、西の政治的チェス盤上に党がその存在を維持できるか否かを知ることになるだろう。そして党がNRWで敗北するならば、それは、二〇一二年六月の連邦選挙に対して悪い兆候となり、党内部における左派潮流の相当な弱体化となるだろう。

▼筆者は、ドイツにおける二つの第四インターナショナル公然分派の一つであるisL(国際主義社会主義左翼)の調整委員会メンバーであると共に、ケルンの左翼党メンバー。また、NRWにおいて「WASG(雇用と社会的公正のための選挙オルタナティブ、SPDから離党した左派の元SPD党員を中心に結成され、後に左翼党を構成する一つの勢力となる・訳者)に近い」と見られ、連邦レベルで活動している教育目的の協会、SALZe.V.の教育責任者でもある。先の協会は現在、左翼党からの公的認知を求めている。(「インターナショナルビューポイント」二〇一二年四月号)
 



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