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    かけはし2012.年5月21日号

欧州に「緊縮ノー」の嵐!

フランス

反資本主義新党の選挙戦

反緊縮の統一的闘いに向
け「遮蔽幕を打ち破る」

解説


  フランス大統領選挙は、右翼サルコジ現大統領の敗北、社会党のオランド新大統領の誕生に終わった。フランス、ギリシアに見られるように、支配階級自らが招いたこの危機を民衆の犠牲のもとに乗り切ろうとする緊縮政策を、ヨーロッパの民衆が大衆的に拒否しているのである。しかし、社会党オランド候補の勝利は、もし次の総選挙で社会党が勝利し、社会党を中心とする左翼連立政権が出来たとしても、それが緊縮政策からの決別を意味するわけではない。この点での社会党の路線の不確かさは、かつて民衆の大きな期待をになって出現したジョスパン左翼連立政権が、その期待を裏切り、民営化の推進をはじめとする新自由主義の路線の枠内にとどまった結果、民衆の期待が幻滅に変わり、それによって生み出された人々の意識の政治混乱が極右国民戦線の台頭を許した時と基本的に変わっていない。社会党のこの動揺的路線こそが、今回もまた、国民戦線の高い得票率を生み出したのである。
 NPA(反資本主義新党)のプトゥー候補は、知名度のない無名の候補からのスタートであり、困難な闘いを強いられ、得票率は一・一五%にとどまった。前回の二〇〇七年の大統領選挙でオリヴィエ・ブザンスノー候補が獲得した四・〇八%から大幅に後退した。「左翼の緊縮政策」を推進しかねない社会党の路線に対する批判は、極右の国民戦線のマヌーバーの余地を作り出すと同時に、左翼の中では左翼戦線(共産党と社会党から出た左派の連合)メランション候補の票を大幅に増やすことになった。かつては、主としてブザンスノー候補に流れた社会党に対する左からの批判票が、今回は左翼戦線に流れたのである。しかし、左翼戦線の中心勢力である共産党は、社会党政権が成立した場合にその連立政権に入るかどうかを一貫して曖昧なままにしている。この意味において、左翼の中の政治的位置関係は二〇〇二年の大統領選挙以来基本的に変わっていない。
 上に紹介した記事は、仏NPA機関紙「トゥテタヌー」(一四六号、二〇一二年四月二六日)に掲載された、第一回投票直後のプトゥー候補の宣言、並びにNPAの選挙戦を紹介するルメートルの記事。なお、EU諸国で高まる緊縮政策に対する大衆的抵抗を示すものとして、ギリシャの選挙結果に対するトゥサンの評価とイギリスの下院補選結果を伝える記事も合わせて紹介する。(「かけはし」編集部)

フランス大統領選挙第1回投票結果

有権者数   46,037,545
投票者数   36,585,858
投票率       79,47%
白票・無効票   700.119
有効票     35,885,739

1 フランソワ・オランド(社会党)         10,273,582  28,63%
2 ニコラ・サルコジ(国民運動連合)          9.753,844  27.18%
3 マリーヌ・ルペン(国民戦線)            6,421.773  17.90%
4 ジャン=リュック・メランション(左翼戦線)     3.985,298  11.11%
5 フランソワ・バイル(民主運動)          3,275,349   9.13%
6 エヴァ・ジョリ(緑の党)              828,451 2.31%
7 ニコラ・デュポン=エニャン(立ち上がれ共和国)   644.086 1,79%
8 フィリップ・プトー(反資本主義新党)        411,178  1.15%
9 ナタリー・アルトー(労働者の闘争)         202,562   0.56%
10 ジャック・シュミナド(連帯と進歩)          89,572   0.25%

票数での敗北と
未来への種まき


 われわれの得票結果は、四一万一一八三票、得票率一・一五%と、わずかであった。われわれは、フィリップ・プトゥーが引き起こした共感がうまく投票へとつながらなかったという点を十分に認識している。この選挙で争点は、サルコジに対して制裁を加え、彼を一掃したいとする意欲に支配されたのであり、論争は、社会的緊急策や危機対策という真の問題を労働界や勤労大衆が自らの力を通じて実施を強制していくということにはならずに、「左右対立」の枠内にとどまってしまった。有効票を投じる必要があるとする心理が全面的に働くことになった。
 この少ない得票という結果はわれわれの選挙戦の実際の影響力の大きさやその後におけるその重要性をそのまま示すものではない。
 この無名の労働者候補は、その声を送り届け、政治家やマスコミの決まりきったあり方を揺さぶり、その思想を伝え、広範な共感を獲得することに成功した。これは、騒然とした選挙戦の中で、労働界の声を、反資本主義の声を伝えるための長い政治的闘いにとって有益な今回の成果である。『ル・モンド』紙が「遮蔽幕を打ち破った」と書いたように、プトゥーは、大統領選挙の立候補資格に必要な五〇〇人の推薦議員を集める「われわれの第一回投票」にも、選挙戦の論戦でも認められることに成功した。そこで遭遇し、引き起こされた共感は体制内の選択という論理によって支配された選挙では票には表現されなかったが、この選挙戦の数カ月間を通じて撒かれた種は今後その果実を実らせていくことだろう。

勤労階級の利益
を防衛する挑戦


 この闘いは、過半数を少し超える多数決でプトゥーを候補者に選出したNPAの昨年六月の全国会議から始まった。
自身を労働者の候補であると明確にしているこの労働者の候補は、労働界にとって職業的政治家の世界に対抗して危機の結末を明らかにする最良の候補であると同時に、この選挙戦の中で危機に対するわれわれの解答を大衆的に宣伝し、擁護するために仲間全体を結集するための最良の候補でもあった。労働者としての彼の経験、労働組合運動の彼の経験、彼の政治的過去、によって、彼は困難な情勢に立ち向かうことができた。仲間と外部の人々の全体に名前を知られるための夏の運動、それからの長い闘いの道筋、候補者としての合法性を勝ち取るための第一段階、わが国において賃金労働者の闘いと抵抗が解雇の問題を提起していたまさにその時点で放送された番組「モ・クルワゼ」を通じて獲得した信頼の始まり、「われわれの第一回投票」であった五七〇名もの推薦議員を集める運動の成功、によって、プトゥーはついに候補者になり、実際の選挙戦を開始した。
 プトゥーの粘り強さ、勇気、謙虚さは、職業的政治家の傲慢(ごうまん)さに対抗する強力な切り札となった。物事に上から対処できると信じている連中は、「プトゥー効果」の前にびっくりして考えを改めなければならなかった。社会的侮辱が尊大さに席を譲ったが、プトゥーとこの闘いに参加したNPAのすべての活動家は、われわれの挑戦を掲げることに成功した。この挑戦とは、すなわち、労働者と勤労階級の利益を防衛し、危機に対するわれわれの解答を擁護し、論争を展開し、民主的態度を保持し、イニシアチブを発揮し、信頼を作り出し、すべてのエネルギーと意欲を結びつけることにほかならない。……
 われわれが認められるようになるためには以上のようなすべての段階を超えていく必要があった。このことを可能にしたのは、以上のやり方である。

次は、左右の緊縮路線への対抗


 今回の闘いは重要な段階を画するものである。ナタリー・アルトー候補の投票結果が自己確認の論理に埋没してしまった「労働者の闘争派」の困難を浮き彫りにし、「左翼戦線」を中心とするジャン・リュック・メランションによって展開された力強い選挙戦がそれ自身の矛盾を克服することができていないのに対して、われわれのささやかな成功は、反資本主義派、革命派の結集という開始された活動を継続すると同時に右翼と左翼の緊縮政策に反対する戦線の構築と労働界の統一をはかるためのテコとなるのである。

フィリップ・プトゥーの宣言


 私に投票してくれた人々に感謝の意を表明する。なぜなら、われわれは、この選挙戦において、投票結果を超えて、反資本主義の解答をともに作り出すことに成功したからである。その解答とは、解雇禁止、すべての人に一律三百ユーロの所得の引き上げ、債務の帳消し、新たな富の再分配、一〇年間かけての脱原発というものだった。この選挙戦で、われわれは、賃金労働者と民衆が資本主義の災いと闘うためには自らの力のみに依拠することが絶対に必要であることを示そうと試みた。ニコラ・サルコジは、この五年間、自分の友人である金持ちのための政策を、反社会的で、排外主義的、人種差別的な政策を展開してきた。
 このサルコジが第一回投票で民衆の圧倒的多数によって拒否されたという事実はもちろん実に大きな励ましとなる結果である。反対に、極右のマリーヌ・ル・ペンが約二〇%という高い得票率を得たという事実は悪いニュースである。彼女の党(国民戦線)と彼女自身は勤労大衆の利益をまったく代表していない。それはわれわれが闘い続けなければならない死活の危険である。
 社会党とその候補者は、この強固な右翼に対して解答となり得ていない。社会党のプロジェクトは、EUとヨーロッパの社会民主主義勢力の選択している基本路線のもとにある。この党はすでに厳しい政策を宣言しているが、これは「左翼の緊縮」政策を支持するものである。
 この五年間、NPA(反資本主義新党)は、サルコジとその政府の政策に対して街頭と選挙の両方で闘って来た。NPAが、五月一日のメーデーに向けて、この選挙戦でわれわれが擁護してきた緊急政策を要求し、サルコジの政策に反対し、マリーヌ・ル・ペンが代表している危険に抗して、フランスのすべての都市でデモに立ち上がるよう訴えるのは、このような意味においてである。
 われわれの展開してきた選挙戦の続きとしての五月六日の第二回投票では、われわれはニコラ・サルコジの再選阻止を望む人々の陣営に組するだろう。はっきりと言おう。サルコジに反対票を投じることによって、サルコジとその一派を一掃しなければならないのだ、と。だが、このことは社会党のフランソワ・オランドの政策を何ら支持することを意味するものではない。
 われわれは、われわれの選挙戦を通じてわれわれを知るようになったすべての人々に対して、独立した反資本主義勢力をともに生かすことができるようにするために、ともに結集し、われわれと接触するよう、訴える。右翼と左翼の両方の緊縮政策に反対する闘いにおいて、われわれは「左翼戦線」と「労働者の闘争派」に対して、労働組合活動家に対して、労働界が必要としている反撃を今から展開するよう、呼びかけるものである。

  フィリップ・プトゥー
 二〇一二年四月二二日二〇時


ギリシャ

民衆の頑強な抵抗を映し出
す選挙結果に欧州貫く激震

エリック・トゥサン(CADTM 第三世界債務帳消し委員会)


既成支配否認と
社会の鋭い分極
 五月六日の選挙で急進左派連合・Syrizaは、得票数で前回の選挙(二〇〇九年)での四・五%から一六・五%へと伸長し「第二党」となった(議席では一三から五二へ)。人口の多い大都市と一八歳から三五歳までの年齢層でSyrizaは第一党となった。
 社会党(全ギリシャ社会主義運動 PASOK)は二〇〇九年の得票の三分の二を失った(得票率四四%から一三・二%へ、議席数では一六〇から四一へ一一九の減)。PASOKは「現金払い」の厳格な緊縮政策と、「トロイカ」(EU、欧州中央銀行、IMF)ならびに民間大企業への従属という政策へのツケを支払うことになった。
 二〇一一年一二月に入閣した主要右派政党である新民主主義党(ND)は、第一党を維持したが得票率を三三・五%から一八・九%へと大幅に減らすことになった。しかし最も多くを獲得した政党に五〇議席をボーナスとして与えるという法外な配分措置のために、議席を増やした。新民主主義党は得票の四〇%を失ったにもかかわらず一七議席の増となったのである(九一議席から一〇八議席へ)。五月六日の投票日の前夜、新民主主義党は多くの議員が脱党したため七一人の議員しかいなかった(PASOKは、反民衆的立場への抗議によって二〇一〇年から二〇一二年の間に三一人の議員を失っていた)。新民主主義党はSyrizaに比べて得票率で二・一%多いだけなのに二倍の議席を得ているのだ(新民主主義党の一〇八議席に対してSyrizaは五二議席)。
 議会参加に傾いたネオナチグループ「黄金の夜明け」は、議会進出を果たした。これまで取るに足りない得票しかできなかった同グループは七%近い得票で二一議席を得た。このためかれらは党発展のための公的資金を受けとることになる。
 ギリシャ共産党(KKE)は若干の前進をなしとげた(得票率では七・五%から八・五へ、議席では二一から二六へ、五議席増)。
 民主的左翼(DIMAR Syrizaから二〇一〇〜一一年に分裂)は六%の得票で一九議席。
 緑の党は、政権参加のツケを支払うことになった極右政党であるLAOSと同様に三%の壁を超えられず、議席を獲得できなかった(LAOSは前回選挙で一七議席を獲得していた)。
 Antarsya(最左派の連合)は約一・一%の得票にとどまった。
 PASOKよりも左に位置するグループ:すなわちSyriza+KKE+Dimar+Antarsyaで得た議席は、二〇〇九年の三四議席に対して九七議席(現在のところ)となる。この数は一九五八年以来、左翼が獲得した最高記録である。右翼については二〇〇九年のLAOSの一七議席に対して、今回「黄金の夜明け」が二一議席を獲得した。

急進的要求の維
持か否かが要に
 ネオナチ政党の得票は最も気がかりな事態である(ヨルゴス・ミトラリアスの素早い分析を参照:
 http://www.cadtm.org/spip.php?page-
=mprimer&id_article=7899)

 今回の選挙で留意すべき主要なポイントは、即時かつ無条件に三年から五年間のギリシャ債務支払い停止、二〇一〇年以後実施された緊縮措置の撤回、トロイカとの合意の不履行、重要な銀行部門の国有化、これらの措置を実施する左翼政権の樹立という課題を選挙で訴えたSyrizaが獲得した積極的成果である。Syrizaの国会議員の一部は、ギリシャ債務の市民による監査と不当な債務の帳消しを積極的に支持した。そのうちの一人、ソフィア・サコラファは緊縮政策に反対して二〇一〇年にPASOKを離党した。
 われわれは、Syrizaが選挙での成功後に、この方針を維持するかどうかに注目しよう。こうしたラディカルな提案をこれほど多くの有権者が支持したことは、われわれへの励ましとなる。Syrizaがこの注目すべき民衆の支持という挑戦に応えられるか否かは、今後わかることである。
 「Syrizaの党首は、左翼の政党や環境問題に関心を抱いている政党とともに多数派連合を形成できるかどうかを探る談話の中で、近々行われる討議の焦点となるだろう五つのポイントを提起した。
1 年金や給与のカットなど、ギリシャの人びとをいっそう貧困化させるすべての緊急措置の即時撤回。
2 集団的労働協約の廃止など、労働者の基本的諸権利を掘り崩すすべての緊急措置の即時撤回。
3 国会議員に不起訴特権を与える法律の即時廃止。選挙法の改正と政治制度の全般的点検。
4 ギリシャの銀行の調査、『ブラックロック』がギリシャの銀行について行った監査記録の即時発行。
5 ギリシャの公的債務の原因を調査する国際監査委員会の設立と、監査結果が発表されるまですべての債務利払いの停止」(注)。

 左翼の連合に入ることが必要なギリシャ共産党(KKE)が、これまでのところSyrizaは「にせ革命政党」であると主張して、いささか高慢な孤立へと後退している状況では、討議は容易なことではないだろう。
注http://fr.wikipedia.org/wiki/
%C3%89lections_l%C3%A9gislatives_grecques_de_2012
 

 


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