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    かけはし2013.年7月22日号

除染事業と労働の実態を問う


7.6 被ばく労働を考えるネットワーク集会

住民・労働者の健康は置き去り

――闇に消える原発の国費


腐り果てた
原発システム
 七月六日午後一時三〇分から、文京区民センターを会場に、被ばく労働を考えるネットワークが主催する「立ち上がった除染労働者 除染事業と除染労働の実態を問う7・6集会」が開催された。
 集会の中心は、除染事業のずさんさと除染労働の劣悪・非道な実態を具体的に暴く報告とそれに基づく課題提起。ひどい実情に怒りをもって立ち上がり、関係省庁や雇用事業主に果敢な闘いを挑んできた当該の労働者、労働組合、その労働者を支援し共に闘いを進めてきた被ばく労働を考えるネットワーク、労働安全衛生センターから報告と課題提起が行われ、日本労働弁護団の中で始められた被ばく労働問題への取り組みを踏まえた法的側面からの問題提起、さらに福島の住民が直面している問題についての、市民の立場からの報告も行われた。
 当該の労働者と現地住民からの具体的な報告は特に、東電と日本政府の行っている原発事故対応や除染事業がいかに被災地住民を、また従事する労働者をないがしろにし無責任なものかを、会場を一杯に埋めた労働者、市民に今さらながらに思い知らせた。
 なお、原発が抱える実に醜悪な闇がいくつも暴露されたこの集会には報道のTVカメラも入っていた。それらは本来広く伝えられるべき問題のはずだが、しかし今のところその映像は、NHKニュースのバック映像として説明もなく流されただけだ。

現場労働者が
怒りの告発
 東京労働安全センターの平野敏夫さんによる主催者あいさつから集会が始まった。平野さんは、いわき市で開いた健康相談で受けた相談を紹介した。甲状腺がんと診断された労働者の話だ。一八歳から東電の原発サイトで働いてきたという。放射線被曝の影響が十分に疑われる例だが、診察を受けた福島大学の医師からは、あっさりと原発は無関係と告げられたという。平野さんは、自身が取り組んできたアスベスト被害と比較しながら、放射線による健康被害には何の証拠も残らない、今が、被ばくしないことが大事と力説、その観点からいかに現場に切り込むか、と問題を提起した。
 当該の労働者は二人が報告に立った。現地で続く厳しい抑圧を考慮し、名前は伏せられ、写真撮影も行わないよう要請された。
 一人は楢葉町の先行除染に従事した労働者だ。二次下請け業者に契約社員として直接雇用された。しかし同じ班で働く仲間たちですら契約はバラバラ、契約毎に賃金も違っていたという。除染事業が実にいい加減な形で始まっていたことを示す話しだが、特殊勤務手当(以下危険手当)の話しも一カ月経った頃はじめて、しかも部分的に知っただけ。その時までもちろんこの手当は払われていない。
 おかしいではないかということで手当支払いを求め仲間と一緒に交渉を求めたら、賃金をいきなり引き下げられ、それまでは会社持ちだった宿泊費など諸々を差し引かれた上で、手当を合わせた総額で従前の賃金総額に帳尻を合わせる、という実に御都合主義的な回答を提示された。この計算では、賃金部分が一日二〇〇〇円にしかならない。こんな回答に納得できるわけはなく、ふくしま連帯ユニオンに加入し、闘いはここから始まった。
 彼が告発した問題のもう一つは被ばく危険の完全な無視。支給されたのはマスクと手袋だけ、後は全部自分持ちだったという。本来密閉空間での休憩が必要なのだが、そんな場所はまったくない。空間線量は平均で〇・七マイクロシーベルト/時とされていたが、作業場所や休憩場所のいたるところにホットスポットがあったのだから、どれだけ被ばくしたか本当に不安だ、と彼は語った。なお元請けの清水建設は、放射線管理手帳の発行まで拒否していた。
 もう一人の労働者も危険手当不払いに対する労基署の不当な姿勢(後述)に直面、闘いを始めた。三次下請けで草刈りに従事したという彼が特に力説したことは、除染事業のいい加減さだ。彼の雇用主は今回のような事業など一度も経験のない素人。しかも何の準備もなく急ごしらえの起業だったという。彼は交渉の中でこれを知り、二次下請け業者の圧力に右往左往したこの人物に少々同情心すら湧いたと語った。
 当然のことだが、仕事のことも現場のことも何も知らないこのような者たちに、責任ある放射線防護などできるはずもない。そしてこのような端から能力も資格も欠いた事業者が除染事業に群がっている。除染効果にも疑問符がつくこの仕組みは今も何も変わっていない、彼はこう強調した。


労基署も環境
省も責任逃れ
 中心にある問題の一つは、後に続く報告でも共通に指摘されたことだが、この不正義に、労基署(厚労省)も、発注者であり事業の制度設計者でもある環境省も逃げ回り、受注事業者を事実として助け、無責任体制を放置していることだ。労基署は、危険手当は労働基準法が規定する賃金ではない(したがってノータッチ)、などとの理解不能な詭弁を弄している。環境省は環境省で、元請け以下の下請け契約に関しては「民・民」関係であり、関与しないなどとうそぶく始末だ。要するに、従事する労働者のことなどまったく気にかけていないこと、ある意味で見下し切っていることが露骨に透けている。しかしそれは結局のところ、事業目的の達成に関しても実は何の関心もないこと、事業が住民をごまかす飾りでしかないことを問わず語りに語る姿勢に他ならない。
 その上で労働者に支払われていない危険手当は国費、つまりわれわれの税金だという問題がある。巨額に達すると思われるそれがどこに行ったのか分からない。結局は暴力団まで絡んだ受注事業者にまるまる横流しされているというとんでもない問題が起きていることになるのだが、彼らにとってはそのこともどうでもいいことらしい。
 三人目の現場報告者であるいわき自由労組の桂書記長からは、労基署からは、除染事業は建設業にはあたらない可能性があるなどと、建設業法が規定する元請け責任に対する今後の追及に予防線を張る見解が流され始めている、と警戒が呼びかけられた。
 一方で、被ばく労働を考えるネットワークのなすびさんは、最低賃金プラス危険手当マイナス控除として総額を従前の賃金に合わせる方式が、実状を隠ぺいするおざなりな「実態調査」をも手段として、国も一体となって全体化されている、このような形で敵も体制を作ったと現状を整理し、それをどう打ち破るか、またすべてを行政がゼネコン任せに丸投げしている体制の中で安全管理をどう進めさせるか、と課題を提起した。

拡大している
放射能被害
 ふくしま連帯ユニオンの組合員として前述の労働者の決起を共にになってきた佐藤昌子さんは、郡山市に住む一人の住民としての視点から、住民の被ばく、またその不安がまったく軽視され、いかにおざなりにされているかを、本当に悔しいと訴えた。集団疎開の権利を訴えた裁判では、高裁が除染の不十分さと疎開も選択肢であることを認めながら、その選択をすべて自己責任としてかたづけたこと、六月の健康調査報告では、甲状腺がんの発見数が疑いを含めて二七人とされ、通常の発生比率の一〇〇倍以上になっていると認めながら、原発事故との因果関係を否定していることなどを挙げながら、生活維持のために恐怖心を自ら消して過ごすしかない状況に追い込まれている住民の実情を、時に声をつまらせながら明らかにし、誇りを取り戻す闘いとして、まるで事故をなかったことにしたがっているように見える県や国や東電の動きを押し返したいと語った。
 関西労働安全衛生センターの西野方庸さんは、除染労働の被ばく防止と管理の責任主体がはっきりしないまま放置されている、とその無責任状態を指摘し、放射線管理手帳を発行させることを手始めに、健康チェックをフォローできる態勢を要求しなければならないと提起した。
 報告を受けての若干の討論を含めて、原発推進勢力のこの非道な状況を改善する自浄能力のなさがあらためて明らかにされた。広く力をつなぎ合わせながら、被ばく労働者のいのちを守る現場からの要求を社会的に浮上させ強めることが求められる。今回提起された具体的課題に向け、被ばく労働を考えるネットワークを中心とした闘いを共に支えよう。     (神谷)

6.25 大阪WTC住民訴訟第7回口頭弁論

橋下はムダ遣いしたカネ返せ

安全無視・利便性欠く移転

 【大阪】大阪WTC住民訴訟の第七回口頭弁論が六月二五日、大阪地裁大法廷で開かれた。
 WTCビルは第三セクター方式で一九九五年に建設されたが、設計時には長周期地震動に備えた制震や免震構造などは考慮されていなかった。総事業費一一九三億円、高さ二五六mの大阪南港北の咲洲コスモスクエア(埋め立て地)に建設された超高層ビルである。アクセスの不便さやバブル崩壊により、周辺開発が進まずオフィス入居の予測が外れ、空フロアーが多かったため、大阪市の部局を入居させたりしていた。二〇一〇年大阪府が八五億円で購入した(現在は大阪府咲洲庁舎という名称になっている)。
この日の法廷では、原告側から準備書面(六)についての陳述が二点にわたり行われた。被告側の反論はなかった。

耐震調査は故意
か重大な過失
 @ ビルの設計者である日建設計に耐震調査を依頼
 長周期地震動の影響調査については、〇七年度に大阪府・大阪市構造物耐震検討委員会が設置され、専門家による検討委員会は一年かけて検討した末、〇七年度末(橋下知事は〇八年一月に就任)に結果の報告をした。その内容は学会の近畿支部のシンポジウムで報告された。断層の新しい評価手法によって予測される揺れは、従前の指針による想定の五倍以上の可能性があり、長周期地震動については継続して検討する必要がある、という内容であった。
 橋下府知事はこの検討結果を無視し庁舎移転をすすめるため、WTCビルの建築設計をした日建設計に長周期地震動の耐震調査を依頼した。日建設計は二〇〇九年一月に報告書を提出。報告書は、十勝沖地震(〇三年)、新潟県中越地震(〇四年)等の解析、日本建築学会・土木学会の研究結果をあまり参考にせず、自らの机上計算を過信し、東海・東南海地震、南海地震での大阪の地震動について、学会の想定を参考にせず独自の基準で検討したものであった。
 日建設計は〇九年一月、「WTCビルを本庁舎として利用する場合大阪府には、オイルダンパー等の制震装置を設置し、エレベータロープの振れ止めを設置するという対策を実施すれば、基準値はほぼクリアーできる」と報告した。大阪府は、この日建設計の報告書に基づき、ダンパー等の補強を行うということを前提として、一〇年に購入を決定した。
 日建設計は利害関係のある会社である。日建設計に依頼した理由を橋下知事は、WTCビルのことをよく知っている設計会社に依頼する方がいいと思ったというが、常識的には、自分の設計したビルが耐震上大きな問題があるとは報告しないものである。耐震調査は第三者に依頼すべきであった。橋下知事のやり方には、移転に有利な結論を得るための故意または重大な過失があったといわざるを得ない。

府庁舎移転
は違法行為
 A 地方自治法に違反した庁舎移転
本庁舎は、府民が日常的に利用すると同時に防災拠点になる施設である。自治法四条一項では、事務所を移転するなどは条例で定めるとなっている。また、同法四条三項では、条例には議員の三分の二以上の賛成が必要だ。庁舎の移転は、そのぐらい慎重にしなければならない事柄なのである。実際、移転のための条例案は二度にわたって否決された。
三・一一が起き、大阪地域は震度三でほとんどの建物には損傷等はなかったが、超高層ビルであるWTCビルは、一〇分間にもわたって振動し続け、最上階(五二階)では短辺方向で片側一三七cm、長辺方向で片側八六cmも振れ、エレベーターが停止し、三六〇カ所に損傷が生じた。大阪府は一一年五月にWTCの安全性や防災機能について再検証を行い、さらに六月から八月にかけて専門家会議が四回開催され、検証結果がまとめられた。これを踏まえ、一一年八月に橋下知事はWTCビルへの庁舎移転を断念した。
 しかし、現在WTC咲洲庁舎には移転費用一一億円をかけて府庁機能の四割が移転し、二〇〇〇人の職員が勤務している。住宅や町づくり部や環境部局など住民生活に密着した部署が移転している。二〇一一年につくられた府市統合本部もここに入っている。
 地方自治法四条二項によると、事務所の移転には、他の官庁との関係や交通の利便性等を検討しなければならないとされているが、WTC咲洲庁舎は利便性を欠いている。

「分からない
けど購入?」
裁判終了後、弁護士会館で報告会が行われ、西川・豊島両弁護士から裁判のポイントをかみ砕いた説明が行われた。
西川弁護士:@ 今まで主張して来たことを今回あらためて行ったのは、前回裁判の前に、裁判所の方から争点整理があったからだ。その点について、不十分だった点をまとめて今回提出した。日建設計に依頼したことが不当であることは明らかだが、何に反して違法なのか?耐震調査をしっかりしていればなかったのに、いい加減な調査しかしなかった、だから違法だ。注意義務違反について故意ないしは重大な過失があった。
府民生活に関係する庁舎を勝手に移転することはできない。府庁を訪れる人の七割ぐらいが、まちづくり部を訪れているといわれる。しかし、条例の制定はないから、移転は違法だ。移転に使った費用は違法な支出だ。
 A 大阪府側の主張では、地方自治法がいう主たる事務所とはどこか?被告側は、知事が常駐し、議会があるところ、つまり大手前庁舎だという。しかし、知事や議会ではなく、住民生活にとってどうかという観点で見なければいけない。被告側の論理では、府市統合本部があるWTC咲洲庁舎が主たる事務所と考えることもできる。その場合、大手前庁舎は従たる事務所なのか?WTC咲洲庁舎と大手前庁舎という主たる事務所が二つ補完して初めて府庁が機能するといういびつな構造ができてしまった。これは条例制定を経ずに知事の独断で一一億円も使って移転が行われた結果だ。(二重行政の解消といいながら、二重行政をつくった、笑い)
 豊島:耐震調査について被告の方から専門的な反論があった。説明は難しいが、原告側は、WTCビルは欠陥ビルだと主張してきた。咲洲の液状化、防災拠点としての機能喪失、長周期地震動の影響(ビルは倒れなくても、中にいる人は揺れで振り回される、電線やガス管の破断)、などのことは購入前から分かっていたはずだ。政府は、地震時に予想される最低限の告示波を提示している。東海・東南海、南海地震ではもっと大きな波が来るのではないかと言われているが、そのようなあらゆるデータを考慮して調査するべきなのに、日建設計はこれらを考慮していない。
 府側の反論では、波だけではなく、地盤、建物などを総合的に判断しなければならないのに、原告側は波のことだけに限定している、だからダメだ。中央防災会議でも、長周期地震動のことはまだよく解明されていない。だから、耐震調査をしても長周期地震動の影響はよく分からないということだ。これは原発建設の論理と同じだ。分からないけれど購入する、移転するとなるのか。分からないなら、安全性を尊重しようとなるはずではないのか。


ここでは仕事
にならない!
会場から、以前WTCに会社が移転し、ここで働いていたという人が発言。台風が来ると、地下鉄が運休するので、会社の指示で仕事を早く切り上げ帰宅していたこと。仕事中ガンガンガンというドリルで工事をしているような音がしたが、後で調べると、ビルが風で揺れ、ボルトで止めている鉄板どうしが摩擦して発生した音だった。ビルが揺れ天井の板が落ちてきたこともある。ここでは仕事にならないから、会社は再び中之島に移転したこと、などの証言をした。
次回口頭弁論は、九月一〇日(火)。 (T・T)

 


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