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    かけはし2015.年6月8日号

獲得した地歩いかし 次の闘いへ


5・17大阪市住民投票結果を分析する (下)

ポピュリスト政治に貴重な一撃

さらなる橋下追撃が絶対に必要


橋下の政治的野望を阻止

 
 同時に、橋下・維新の政治的野望のために、大阪市を新自由主義的に解体されることを防いだことにも大きな意義がある。新自由主義的都市政策として、都市自治体を広域自治体と基礎自治体に分け、広域自治体を新たな資本蓄積の手段として使おうという流れが国際的に見られる。橋下の「大阪都」構想は決して彼の発明でも、発見でもないのだ。
さらに、これまでから指摘されてきたことだが、橋下にとって「大阪都」構想とは新自由主義的都市政策の実験であるとともに、「誰も為し得なかった」大阪市の解体を実行したという実績を持って、国政に自らが挑戦していくという政治的野望の道具でもあった。投票日前日には、橋下は街頭で「納税者をなめてる市議会や団体をみんなぶっつぶして、新しい大阪の政府を作ろう」と叫び、聴衆を扇動する場面もあった。

反「都構想」共闘の活動と到達点

 「都構想」にかける橋下・維新の執念はすさまじいものだった。市議会で一度は否決された協定書を、首相官邸を通じて公明党に強い圧力を加えることで強引に可決させ、住民投票に持ち込んだ。
反対の運動は、住民投票が現実のものとなった三月以降に、共闘・協力体制を作り出してきた。共産党の言うところの「一点共闘」である。唯一「大阪市をなくすことに反対」だけが共通の目標であり、政党レベルの共通スローガンは「5・17 WE SAY NO!」となった。もちろん運動の位置づけはそれぞれの政党、団体で異なるが、とにかく「大阪市をなくすことに反対」で共闘したのである。それが、公然とした形をとったのが、五月一〇日の反対集会であり、自民・共産・民主の共同街頭演説会であった。
その中で大きな役割を果たした訴えが「わからんかったら、とりあえず反対」というスローガンだった。何か消極的な訴えのように思えるかも知れないが、小泉政権以来の「ワンフレーズ」政治、ポピュリスト的な宣伝・扇動の横行に対して、一歩立ち止まって冷静に考えようという訴えは、民主主義のあり方を問う有効なキャンペーンだったと思う。橋下・維新も、このキャンペーンにはかなり神経をとがらしていた。
反対運動の中では、自民党系の「民意の声」「大阪市分割解体を考える市民の会」や「大阪市がなくなるで!えらいこっちゃの会」「大阪市なくさんといてよ!市民ネットワーク」など、さまざまな市民団体が結成され、それぞれ独自の活動を進めるとともに、各政党や政党系列の運動の隙間を埋める役割も果たした(本紙既報)。おおさか社会フォーラム事務局の呼びかけで結成された「大阪市なくさんといてよ!市民ネットワーク」は、学習会や豊富な資料・動画を掲載したホームページを通じて都構想反対の論争で重要な役割を果たし、投票日当日を含む八回の街頭宣伝、チラシ二万枚、グッズ制作などにとりくんだ。
また、運動圏の違いを超えた若者たちを中心としたグループ「民主主義と平和を守る有志(SADL=Small Axe for Democracy and Life)」はサウンドデモなどを主催し、大きな注目を集めた。そして、いろんな地域で、市民が自ら手作りのビラを配布する例も多く見られた。
党本部が日和見ないしは冷淡な態度をとり、大阪選出の議員や府組織のとりくみに限定された自民、民主、公明に対して、文字通り全国動員でとりくんだのが共産党とその影響力の下にある労働組合や諸団体だった。民主党系は、大阪市労連が運動にまったく参加できない中で、部分的には全国からの支援も得て、「府民のちから2015」として活動していた。
関西財界は、都構想をめぐる維新と自民の抗争や中央政界とのねじれ現象に当惑し、住民投票について明確な態度表明を避け、勝った方に乗るという姿勢を保ったと思われる。しかし、中小企業者や商店主などには都構想への批判・反発が多く、大阪商工会議所も反対決議をあげたのだが、会頭が決議の公表を差し止めた。これは会頭が京阪電鉄最高顧問でもあり、大阪市交通局の藤本局長が京阪グループの京福電鉄出身であるなど橋下との関係が強いからだと言われている。

住民投票後の橋下・維新の動き

 住民投票での敗北が明白となったあと、橋下は記者会見に臨んだ。満面にやや強ばった笑顔を貼り付けた橋下は、市長としての任期が終えてから政治家を引退することを言明した。ここでのパフォーマンスについては、さまざまな観測が乱れ飛んでいるが、将来の「復帰」への布石とも考えられよう。そして、メディアは完全にこのパフォーマンスに「魅了」されてしまった。
橋下は、その翌日から精力的に動き始めた。まず自民党、公明党の議会控室を訪れ、市議団幹部と握手してみせた。そして「都構想」の代わりに、「総合区」設置の検討を官僚に指示した。 「総合区」とは、二〇一四年六月の地方自治法改正によって制度化されたもので、「各行政区を『総合区』に格上げして予算編成や人事権の一部を持たせる」「道府県と政令市の仕事の重複をなくすために『調整会議』を設置する。両者の意見が異なれば、総務相が勧告することで決着を図る」「現行の区長は『総合区長』にすることを認め、総合区長は副市長などと同じ特別職とする」という内容である。
この「総合区」設置は、もともと自民・公明が「特別区」設置への対案として提案していたものだったため、明らかに自民・公明と共産党とを分断し、反維新共闘を分裂させようという狙いだった。そして、「ノーサイド」論がメディアによって喧伝されるだけでなく、橋下・維新や反対派からも言われている。事実、五月二二日に行われた大阪市議会の議長選挙において、公明が白紙投票することで、維新が自民・共産の推す候補を破って議長のポストを手中にした。

橋下・維新を追撃する闘いを

 住民投票の勝利で少なくとも最悪の事態は避けられ、闘いの前進にとって大きな地歩を築くことができた。問題は、その地点にとどまるのではなく、さらに橋下・維新を追いつめる闘いを続けることである。七年半にわたる橋下・維新による府政、市政の壟断にもかかわらず、住民投票で七〇万近い大阪市民が賛成票を投じていることは決して軽視できない。
選挙戦の中で、スーパー前や商店街入口で街頭宣伝を行うと、「もう期日前投票で反対を入れてきた」と励ましてくれる人が多くいる一方、「大阪市がなくなる」ことを知らない賛成派の市民がかなりいた。維新が作ったTシャツを着た運動員の中にも「大阪市はなくなりません」と信じている者がいて驚かされた。つまり、「都構想」の内容で支持しているのではなく、橋下の言うことだから賛成する人が多数なのである。いわばカルト的な支持層と言えよう。
こうした橋下・維新の支持者や議員たちが半ば士気喪失しており、反「都構想」共闘が成立している間に、橋下が成立させた諸条例、とりわけ労組敵視・職員弾圧の条例や「国旗・国歌」条例などの廃止、労組と係争中の中労委・裁判事案の取り下げ、地下鉄などの民営化完全撤回などを要求して闘いを進める必要がある。「橋下・維新を追撃する闘いを!」、これが住民投票に勝利したあとのわれわれの課題である。
(JRCL関西地方委・大森)

5.25

教科書歪曲に反対し集会

「戦争する国」誘導ノー

市民の力で公正な教科書採択へ


教科書への攻撃
強化される一方
 五月二五日、安倍教育政策NO・平和と人権の教育を!ネットワーク、子どもと教科書全国ネット21の呼びかけによる「教科書ではじまる『戦争する国』STOP! 5・25みんなのつどい」(主催:教科書集会実)が文京シビックセンターで行われ、一八〇人が参加した。
 安倍政権は、グローバル派兵国家建設の一環として新自由主義・愛国心を軸にした教育再生路線を押し進めている。とりわけ教科書に対しては、領土教育、慰安婦、戦後補償問題などをターゲットにして政府の統一見解を加筆するよう強要してきた。文部科学省は、四月に二〇一六年度から使われる中学校用の教科書検定結果を公表したが、例えば、社会科の検定を申請した教科書一八冊すべてが尖閣諸島と竹島について取り上げて「日本固有の領土」と記述し、周辺諸国の主張を一切無視した。下村博文・文科相は「これまで光と影のうち影の部分が多かった。政府見解を載せることで、よりバランスがとれる」と居直った。
 それだけではない。天皇制・侵略戦争を賛美する育鵬社、自由社の教科書(歴史・公民)の採択にむけた右派の策動が強まっている。日本教育再生機構が作った教育再生首長会議に参加している首長が教科書採択に介入して育鵬社教科書を採択させようとしている。また、自民党、日本会議、日本女性の会、幸福実現党などが反動教科書採択運動を展開している。安倍政権による不当な教科書介入を許さず、育鵬社、自由社の教科書採択阻止にむけた取り組みの強化が求められている。集会は、五月以降の各地区運動に向けた意志一致として行われた。

出版社の自主規
制と右翼教科書
野平晋作さん(ピースボート共同代表)が開会あいさつを行い、「安倍政権は戦争法案を国会に提出し、なにがなんでも成立させようとしている。この流れとセットで教育・教科書に介入し、反動的な教科書を採択させようとしている。この動きをストップさせよう」と訴えた。
寺川徹さん(出版労連副委員長)は、「育鵬社教科書の問題点と教科書をめぐる情勢」というテーマで報告し、中学校検定(社会科)の特徴について提起した。
「教科書を国家統制するために政府、自民党の圧力が出版社にあり、結局、出版社が自主規制してしまう。そのうえで検定・採択段階での規制によって政府が求める教科書ができあがってしまうシステムだ。検定審査要項・学習指導要領解説の改悪が行われ、次々と検定基準が改悪された。戦後補償問題では『国家間での賠償問題は解決済み』という政府の立場を追加させた。慰安婦記述では『軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような資料は発見されていない』という政府の立場を追加させた。関東大震災で軍や警察・自警団によつて数千人の朝鮮人が虐殺されたという記述に対して『数千人』は通説的な数字ではないことを追加させた」。
「原発記述、沖縄戦記述など、総じて安倍政権・文科省の意向を出版社側が過度に反応している。全体的に戦争加害の記述なども後退した」。
さらに育鵬社教科書に対して「歴史教科書は、天皇中心の国家観の育成、戦争を美化し,肯定的に受け止める歴史認識の育成にねらいがある。公民教科書は、憲法改正のためのパンフレットとも言える。立憲主義を否定し、国民をしばる憲法観の醸成だ。つまり、もの言わぬ国民・労働者の育成にある」と批判した。
田代 美江子さん(埼玉大学教授)は、「『戦争する国』づくりに対抗できる教育をつくる―安倍『教育再生』政策の意図を見抜く力を若者に―」というテーマで基調講演し、@「戦争する国」づくりのために否定される権利として教育A育鵬社の教科書にみる人権・権利の否定B若者の歴史認識と現状認識と未来認識などについて紹介し、問題提起した。

広大な大運動へ
多様な連携確認
リレートークが行われ、公正な採択を求める大田区民の会、横浜教科書採択連絡会、子どもたちに「戦争を肯定する教科書」を渡さない品川区民の会、武蔵村山子どもの教育と文化を育てる会、江東区中学校教科書の採択を考える会、東京教科書採択連絡会から報告と今後の取り組みについての発言があった。
最後に「まとめと行動提起」が俵義文さん(子どもと教科書全国ネット21)から行われ、「育鵬社、自由社教科書をどの子どもにも渡さないために」@教育委員会への取り組みA地域の住民に広げていく取り組みB安倍政権の諸政策に反対する様々な運動と手をつなぎ、広範な大運動をめざす―ことを提起した。参加者全体で確認し、スクラムを強化した。     (Y)


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