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    かけはし2015.年6月8日号

8人中7人が親パクの重要人物


カネを数えたことのない人

道徳性への痛手、リーダーシップの危機


  「キム・キチュン、ホ・テヨルにのみ渡したのだろうか」。
 「ソン・ワンジョン会長(注)は、あちらにもこちらにも声をかける人だ。親交を広めるために政治を、そしてもう1つの政治をやるためにカネを一杯ばらまいたのだろう。カネがたくさん出回ったと考えればよい」。
 「その人々だけがもらったのだろうか?(リストに登場した人々は)カネをもらった多くの人々の中に大統領と関連のある人々がいるのだろう」。
 「大選(大統領選挙)の際に取り乱れた人々は汝矣島(国会を指す)でかなりうわさになった」。

名簿が示しているのは「大統領」


いわゆる「ソン・ワンジョン・リスト」があらわになった直後、与党関係者たちの反応だ。「起きるべくして起きた」事件だ。与党の雰囲気をのぞいてみると、今回の事件が「パク・クネ政権をつぶすための陰謀」だと考える人は誰もいないようだった。ソン・ワンジョン前セヌリ党議員からカネをもらった人間は実際にはそれほど多かったし、こういった事実は与党内部では公々然たる事実として知られていたという意味だ。
検察が司法の物差しをあてる以前に、既に政治的判断は終わったわけだ。このような雰囲気にふさわしく、与党セヌリ党の収拾対策は「死者の根拠のない主張を正す」のではなく、「この事態を最小化し、来年の総選(総選挙)前に鎮めること」に焦点が合わされている。ところで、この混沌の中から遠く避けている人物がいる。他ならぬパク・クネ大統領だ。
ソン前議員が4月9日、自ら命を断つ直前に残した8人の名前の中で、7人が親パクの重要人物だ。ホ・テヨル、キム・キチュン両元青瓦台秘書室長、イ・ビョンギ現青瓦台秘書室長はパク・クネ政府の秘書室長をすべて網羅する。それに加えてイ・ワング国務総理、ユ・ジョンボク仁川市長、ソ・ビョンス釜山市長、ホン・ムンジョン・セヌリ党議員は親パクの核心中の核心と呼ばれる人々だ。これらの人々は2012年にパク・クネ(当時、大選候補)陣営でそれぞれセヌリ党忠南選対委名誉委員長(イ・ワング)、職能総括本部長(ユ・ジョンボク)、党務調整本部長(ソ・ビョンス)、組織総括本部長(ホン・ムンジョン)などの主要な職責を担った。この名簿が指し示しているのは、これらの人々個人ではなく「パク・クネ大統領」だという意味だ。
そうであるにもかかわらずパク大統領は事件があらわになって以降の1週間、特有の「幽体離脱」の話法を使い、中南米への海外歴訪に旅立った。パク大統領は事件があらわになって3日後の4月12日、「検察が法と原則に従って聖域なしに厳正に対処することを望む」と語った。現政権の核心的人々や側近らが不法資金疑惑を受けている状況に対する遺憾の表明はなかった。以降、4月15日には「不正腐敗に責任のある人は誰であろうと受け入れられないであろう」とし「過去から現在まで完全に明らかにしなければならない」と語った。
「受け入れない」という表現は、今回の事件は完全にカネを受け渡しした人々の過ちであり、自身はその人々に断罪を下す主体として立つという意志の表現だ。不正腐敗に対する政治的責任を取らなければならない中心人物がまさに自身であるという事実を完全に排除した典型的な幽体離脱の話法だ。「過去から現在まで完全に明らかにしなければならない」という発言も、非理捜査の対象を以前の政府や野党勢力まですべて含めるという意味で事実上、検察に捜査のガイドラインを提示したのではないのかという論難があった。そしてイ・ワング国務総理の去就については「(中南米歴訪を)終えた後に決定する」として旅立った。

04年、天幕党舎での第一声


パク大統領のこのような無責任な対処のやり方は、2004年にハンナラ党(現セヌリ党)代表として総選勝利を率いていた姿とはまるで違う。03年末に起きた大選不法資金の事態は、ハンナラ党に「白ばっくれ党」という汚名を抱かせ、総選敗北の危機をもたらした。このような状況にあって党代表として選出されたパク大統領は不正腐敗根絶の意味で、天幕(テント)党舎を建てた。04年3月24日、天幕党舎での第一声は、「国民の皆さんに、背負った罪を心からざんげする」だった。「不正腐敗・非理関連者を保護しないであろうし、有罪が確定すれば永久除名の措置を取る」とも語った。それから韓国仏教の総本山・曹渓寺で108拝、ヨンナク教会で悔改礼拝、カトリック総本山の明洞聖堂で告解聖事を捧げた。このような反省の姿を通じてパク大統領は危機の中でも議席数121席を確保し、「選挙の女王」というタイトルを手にすることができた。
当時に繰り広げられていた問題と現在わき起こった問題は一緒だ。党の大選不法資金だ。だがその時、頭を下げて謝罪していたパク・クネ大統領の姿は、現在はない。なぜ、そうなのだろうか。今までパク大統領が行っていた謝罪や遺憾表明の数々を探ってみると、一つの共通点が発見できる。問題の核心からの「他者化」が可能だったという点だ。
04年、パク・クネ当時ハンナラ党代表は、大選不法資金の主体ではなかった。ハンナラ党から脱党して韓国未来連合を創党した後、02年に再び復党したパク大統領は主流から外れていた。このような状況で党が危機に追い込まれると、ナム、ウォン、ジョン(ナム・ギョンピル、ウォン・ヒリョン、チョン・ビョングク)ら党内刷新派たちが出て、道徳的に清潔なイメージを持つパク大統領を党代表として推戴したのだ。結局、パク・クネ当時ハンナラ党代表の謝罪は「代理謝罪」であったのであり、自らの過ちに対する謝罪ではなかった。本人もそれを承知していたがゆえに喜んで謝罪と反省の言動が可能だったのだ。
12年の総挙の時も同様だった。パク大統領は当時のサイバー攻撃のDDoS(分散サービス拒否攻撃)事態などで危機に追いやられたハンナラ党の「リリーフ投手」として登場したのであり、パク大統領とハンナラ党の非理は徹底して分離されていた。
だが今は状況が違う。彼女は今、現職大統領であり、リストの8人のうち7人が核心的人物または側近だ。「他者化」が不可能だ。大統領が謝罪をすれば完全に大統領自らが過ちを認める形となる。これは道徳性を武器に持ちこたえてきたパク大統領としては受け入れることのできない行為であるだろう。
セヌリ党内でも、今回の事態とパク・クネ大統領は分離させなければならないという声が出ている。セヌリ党関係者は「大統領は何としても保護しなければならない、という共通意識がある。今回の事態が大統領にまで及ぶことになれば党内の各系列を離れ、来年の総選で跡形もなく亡びることになる。そこまで言ってはダメだ」と語った。

「なんで必要なんですか」

 
党内ではソン・ワンジョンの事態とパク・クネ大統領を分離させようとする論理として「パク大統領はカネには関心のない人」という話をする。与党関係者は「パク大統領は、本人は生涯ゼニ計算をなさらない方だ。そうやって生きてきたので下で仕事をしていた人々が活動費を各自で調達してきたというのだ。ところで(選挙陣営には)いささかカネがかかる。事務所の賃貸料、常勤者の給料など、かかる費用が少なくない。(それを充当するために)企業人たちから引きぬいた人々もいただろう」と語った。
別のセヌリ党関係者は「大選陣営でVIPにカネをくれと言うと『なんでおカネが必要なの?』という状況なので、各自が判断して調達した。だが、それぞれがどうやって調達したのかは知りようがない」と語った。結局、大選の不法資金はパク大統領とは関係なく、下の人々が勝手にやったことだ、という話だ。
これが事実だとしたとしても、これによってパク大統領の道徳的・政治的責任が免じられるわけではない。自らが率いている組織のカネ問題に全く関心がなく、どうやって回っているのか分からなくなったというのは、リーダーとしてそれぐらい無能だったということを示しているからだ。キム・ジョンベ時事評論家は「政治的脈絡や政治的責任の帰属問題について語らなければならない。(誰がカネをもらったにせよ)パク大統領の政治資金として使われたのだ。もちろん、パク大統領が知らなかったというのはあり得る。だからと言って究極的な責任の当事者がパク大統領となることは否定できるのか。違う」と語った。
チェ・チャンヨル龍仁大教授も「カネの流れを把握できなかったとしても、候補として総体的な道徳責任があると見なければならない。大統領がそこから自由であることはできない。自らの陣営で起きたことなのに『私は知らなかった』という言葉で国民をどれだけ説得できるだろうか」と語った。
パク大統領の「知らぬ存ぜぬ」式のリーダーシップが、むしろこのような事態を招くことになる原因となったとの指摘もあった。セヌリ党非常対策委員会を担ったイ・サンドン中央大名誉教授は「本人は完全に知らないと言う話が、こういう時は得になりもする。直接的な火の粉を避けることができるという点で、そうだ。反面、そのようなやり方のリーダーシップのゆえにこのように根っこまで揺らぐという側面もある。両面性があるのだ」と語った。「刑務所の塀の上を歩いていてまかり間違えば刑務所の塀の内側に落ちる」という政治の場で1人、道徳性を維持しつつ敏感な問題にははなから神経を使わない方式のリーダーシップが、むしろ周辺の腐敗を拡大するブーメランとして作用した、という指摘だ。
検察の力を借りて競争者に司定(誤りを正すこと)の刃をかざす式の権威主義的国政運営が作り出した惨劇だとの分析もある。パク・サンフン・フマニタス代表は「パク大統領が政府を運営する方法から生じた側面が大きい。これまでパク大統領は公約していたことを熱心に実践するというのではなく、本人の権力を漏水なしに熱心に管理しようとするだけであった。最初から検察を活用した政治を行いつつ、ライバル勢力を管理してきたという思いだ。今回の事態は、そのような方法が生み出しかねない妙な復讐劇のような感じがする。本人の権力装置がこのような事態をもたらした面がある」と語った。

政権はノック・ダウン寸前

大統領自身がどんなに否定しても、今回の事態はパク・クネ政権の道徳的正統性やリーダーシップに致命打を抱かせざるをえない。パク・クネ政権は強固な道徳性に対する信頼を土台として積みあげられた政権だ。有権者たちの間で、ほかのことはいざ知らず、カネの問題だけでは清潔だろうという信念があった。ところが、それが砕けた。これはイ・ミョンバク政府など、当選以前から道徳性の問題があらわになっていた政権などのような状況から受ける打撃とはレベルが異なる。
イ・ジュナン仁川大教授は「(大選不法資金が実際にハッキリすれば)政権を創出したことからして根本的に否定されるだろう。そうであるがゆえに(検察の捜査は)そこまでは連続性はないという方向で結論づけられる可能性が大きい。だが(政権の核心的人々が事件に関連したということだけでも)既に道徳的・政治的には打撃が大きい」と語った。
パク・クネ政権の無能さや責任回避を待ってやるには、国民はもう疲れはてたという点が危機を迎えている主要な原因だ。「これまでとは状況が違う。有権者の立場からすれば、これは最初の衝撃ではない。この政府の正統性と関連して見る時、まず執権するやいなや国家情報院による大選介入問題があった。パク大統領は『知らなかった』と言ったけれども、有権者たちは信じなかった。だが、選んでやったばかりの政府だったし、ほかに対案もないので飲み込んだのだ。
2度目にはセウォル号の衝撃があった。政府の対処は遅々として進まず、解決されることは何もなかった。遺族らの要求が無理だと考える人々も、何も回らないようにしている政府の無能に対する認識は明らかに持っていた。そして今回が3番目の衝撃だ。有権者の立場からも、今は臨界点を超える可能性が高い」。ソ・ブッキョン西江大・現代政治研究所選任研究員の分析だ。
道徳性への痛手はリーダーシップの危機をもたらす。昨年末に表沙汰になった「チョン・ユネ国政介入の事態」を聴聞会の過程で露顕した新任総理の道徳的欠陥は、既に国政の動力喪失をもたらした。ところが、これを克服するために推進した「非理との戦争宣言」が再びパク大統領と結びついた不正腐敗をさらけ出すブーメランとして作用した。政界の内外では、これによってパク・クネ政権のリーダーシップは既に大痛手被ったと見る見解が多い。
チェ・チャンニョル教授は「きれいな選挙をやっていくと言ったのに大選資金に関係したのであれば国民らが見るに、道徳的打撃は到底、語りつくせない。これは執権3年目にレーム・ダックと連結すると見なければならない」と分析した。チェ・ジノン慶煕大フマニタス・カレッジ教授も「人事の失敗が蓄積され続けるとともに信頼は崩壊した。国政の動力が喪失し、何かを新たに始めるには、もう遅い。政権はノック・ダウン直前だ。ところで、この状況でうんざりする攻防戦を繰り広げ、水鬼神作戦(自分が窮地に陥ったとき他人までも引き込もうとすること)に進めば亡びの度合いは一層、大きくならざるをえない。国政を刷新しようとするのであれば超党的で中立的な人士を総理に推戴し、中立内閣を新たに構成し、残された日程を率いていかなければならない。それが国民に対する礼儀」だと語った。

「知らなかった」は通じない

今、この状況でパク・クネ大統領に最も必要なものは何だろうか。事件にフタをしたり回避しようとせずに、一切の疑惑について国民に事実関係を明確にし、誠実に説明することだ。この過程が、むしろ国民が持った不信の感情を政治的に緩和するうえで効果を発揮できる。「私は知らない」というやり方は今やもう通じない。謝罪の道へと踏み込まなければならないのだ。ソ・ブッキョン選任研究委員は「すぐにも急がれるのは有権者たちの不信をまずなだめなければならないし、捜査をキチンと進めることのできる構造を作るのでなければならない。その程度のことをしなくては、事は解決されない」と指摘した。
さらには、政権ごとに吹き出す大選不法資金問題を根本的に解決することのできる制度改善策を用意すべきだ、との声もある。パク・サンフン代表は「ちゃんとした政治あれば社会からカネも集まるし、後援者も進み出てボランティアも活動する。ところがわが国の政治は社会的基盤もなしに権力や影響力にしがみついている構造だ。こうだから良い政治をしたいと思っている人もこのような構造では権力を持つ人、カネのある人、メディアなど影響力のある所を通じて政治的資産を得ようとする。長期的に解決しなければならない部分は、まさにこのような問題ではなかろうかと思う」と語った。
ソン・ワンジョン前議員が権力を得るためにカネをばらまかざるを得なかった歪んだ韓国の政治構造を変えることなしには、このようなことが繰り返されるという指摘だ。(「ハンギョレ21」ソン・チェギョンファ記者)
注 成完鍾、建設・開発会社「京南企業」前会長。横領などの疑いで検察の捜査を受けている中の4月9日、ソウル山中で自殺。遺品の中から名前や金額が記されたメモが発見され、パク・クネ大統領関係者の疑惑が表面化することとなった。



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