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    かけはし2015.年6月15日号

労働者派遣法改悪を葬り去ろう


資本のためのデタラメな悪宣伝を粉砕せよ

生涯派遣・雇用破壊の逆流を
全力をあげて阻止するために


不誠実極まる
与党の審議姿勢

 衆院厚生労働委員会での派遣法改悪案の審議は、委員長職権による強行開催が最初から連発され、政府、自、公が次々に指摘される問題点にまともに答えず頬被りしたまま、ひたすら早期採決を狙うだけの異常な形で進んできた。それは不可避的に特に自民党委員の緊張を欠いた不真面目な審議姿勢としても表れ、雇用共同アクション国会前行動では、傍聴した何人もの労働者から怒りを込めて報告されている。この法案に張り付いた反社会性、不公正さは、その内容はもとより、このような政権、自、公の不誠実な審議姿勢の形でもあぶり出されている。
 このような派遣法改悪の策動には何としても引導を渡さなければならない。あきらめることなく徹底的に、派遣法改悪案廃案に向けた闘いを尽くさなければならない。そして、派遣労働という本来不公正な雇用のあり方を抜本的に規制する道を、もう一度開かなければならない。
 そのためにも、衆院厚生労働委員会での審議が二回の参考人質疑を終えまさに緊迫した局面を迎えた今、あらためて今回の改悪案の悪辣さを確認しておこう。

期間制限なくし
永続的派遣使用


はじめに今回の改悪案だがその柱は、派遣先企業が同じ職場に派遣労働者を受け入れることのできる期間に、これまであった制限を事実上まったくなくすということだ。
現行では、いわゆる専門26業務と派遣元に無期雇用されている派遣労働者を除いて(この除かれた労働者の受け入れには期間制限はない)、派遣先企業が派遣労働者を受け入れることのできる期間は、原則一年、上限三年までの延長、に規制されている。
これが今回の改悪では、専門26業務という仕切りをなくしあらゆる業務で期間規制を三年に統一する。しかしその上で、派遣先企業は、派遣労働者個人を入れ替え、過半数労組代表の意見を「聴取」しさえすれば、つまり労組代表の合意がなくとも、何回でも派遣受け入れを延長できる。審議の中では、この「聴取」を労組が拒否したとしても、企業は「聴取」したものとして延長ができる、とまで答弁された。そして派遣元に無期雇用されている派遣労働者には、雇用の安定は確保されているとの理由で、今まで通り期間制限はない。
要するに派遣先企業は事実上どこからも制約されることなく、あらゆる業務で労働者を入れ替えながら永続的に派遣労働者を使用できることになる。まさに無茶苦茶な話だ。労働者の長期あるいは永続的使用ということは、その業務が派遣先企業の恒常的業務ということにほかならず、そうであれば派遣先企業はその業務に対し、労働者を直接かつ期限を定めずに雇用するのが筋であるからだ。しかしそうした業務に派遣労働者を当てることが合法になれば、雇用は直接、期限を定めず、という労働者の生活と権利の根幹をなす安定雇用の原則、国際標準は、まさに解体されるも同然だ。派遣労働者の受け入れ期間規制はまさに、そうした当たり前の雇用原則を派遣先企業に強制するためにこそあった。
そうであるからこそ二〇一二年の法改正では、まさに闘いの成果として「みなし雇用制度」が導入された。先の期間制限を超えて派遣されている(つまり違法派遣されている)労働者に対し、派遣先企業は直接雇用を申し込んだと「見なされる」のだ。ところが今年一〇月一日に発効するはずだったこの制度は、九月一日施行と規定された今回の改革案がもし成立すれば、一度も使われることのないまま事実上無意味化する。期間制限が取り払われれば、これまで違法であったものが合法となるからだ。
しかも厚労省は、今回の改悪がこのような効果をもち、それが派遣先企業、派遣会社に大きな利益を与えるものであることを明示した文書を五種類も作って、自、公、維新の議員に早期採択を精力的に働きかけていたことが露呈、塩崎厚労相が謝罪するはめになった。これがいわゆる一〇・一問題と言われるものだ。いずれにしろこの問題は、今回の改悪が直接・無期という雇用原則の破壊であること、そして改悪は派遣労働者のためなどではなく企業のためであることを、はしなくも明かした。
実際今回の改悪案が成立すれば、直接かつ期限を定めない雇用契約の労働者(いわゆる正規雇用労働者、あるいは常用労働者)の派遣労働者による置き換えも、間違いなく傾向的に進むだろう。団体交渉に応じる義務がなく、そもそも団結が困難な条件の下に置かれ、その上使用者責任からも逃げることのできる派遣労働者の方が、派遣先企業にとってはすこぶる都合がいいことはあまりに明らかなのだ。こうして、派遣労働規制の一つの根幹であった常用代替防止の原則も、事実上空洞化される。

人権侵害必然化
させる雇用形態


派遣労働という雇用形態は本質的に不公正な雇用である、ということをあらためて思い起こさなければならない。それは雇用主(派遣元)と実際に労働者を使用する者(派遣先)が異なる間接雇用であり、事実としていわば人のレンタル、人材供給だ。それはピンハネを不可欠に埋め込んだ雇用であり、派遣元はそのピンハネを利益としている。結果として強搾取が不可避的に蔓延するばかりではなく、使用者責任の曖昧化の中で人権侵害をも必然化する。実際かつては口入れ稼業と呼ばれた人材供給業にまつわる悲惨は、蟹工船やたこ部屋を典型的事例として、繰り返してはならない歴史的教訓とされてきた。
それゆえこの歴史的な痛苦な教訓を糧として、人材供給業は、職業安定法四四条で厳然と禁止されている。労働基準法六条には、中間搾取、つまりピンハネ禁止の規定もある。それゆえ労働者派遣は、「臨時的・一時的な業務に限る」との厳正な規制を条件に、この禁止の例外として認められているにすぎない。
ところが今回の改悪は見たように、臨時的でも一時的でもない業務にほとんど無制限に労働者派遣を広げた。それは先の例外を成り立たせた規制をなくすに等しく、職安法四四条違反と言ってもいい。
では現代では先に見たような悲惨はあり得ないとでも言うのだろうか。リーマンショック時の大量派遣切り、数々訴えられているハラスメントは、そんなことはないということをはっきり告げている。
ピンハネはどうだろうか。二〇一二年の派遣法改正では強搾取抑止の意味を込めてマージン率(ピンハネ率)の公表が定められた。ところが現在進められている審議の中では、このマージン率に関して、派遣先の払った派遣料金一万円に対し労働者には千数百円しか渡っていない事例も明らかにされたという。驚くべき強搾取だが、厚労省はこうした悪質な派遣元の企業名公表を行おうとしないのだ。先のマージン率公表規定は、現在の厚労省の思考の中では事実上有名無実化しているのであり、今回の改悪が文字通り不公正蔓延の引き金になることをすでに暗示している、と言わなければならない。

与党の言い分は
デタラメづくし


今回の改悪案の不公正はさらにある。見た通りこの改悪が派遣先企業にとっては極めて好都合であるのに反して、派遣労働者にとって改善は何一つないどころかむしろ苦難が増すばかりだからだ。
端的に、一人の派遣労働者が同じ職場で働くことのできる期間は三年で打ち切りとなる。派遣労働者は最良の場合でも、三年毎に職の不安を強要される。そして次の派遣先がたとえ見つかるとしても、その労働条件がそれまでの水準を維持できる保証は何もない。ちなみに最良というのは、多くの派遣労働者は短期契約の繰り返し反復で働いているからであり、職の不安はそれこそ恒常的、というのが実態なのだ。
しかしそれでも今までは、専門26業務の場合、同じ職場で長く働き続けられる期待をもつことはできた。しかし今回は、その期待すら奪われる。日本労働弁護団は六月二日、緊急の電話相談を実施した。今回の改悪の動きを見て、専門26業務で働いてきた派遣労働者から雇用不安の声が寄せられ出したからだ。
その上、正規雇用の派遣での置き換えが進むとなれば、今派遣で働いている労働者が正規雇用に移る希望は必然的にいっそう狭められる。まさに「生涯派遣」が現実の問題となる。
派遣先企業の好都合と比べてあまりにひどい非対称ではないだろうか。
しかし政府や自、公はそうではないとして、派遣労働者の雇用安定化措置やキャリアアップ措置を盛り込んだと吹聴し、安倍首相を先頭に正規雇用化を進めるものだ、労働者のためになるものだ、とまで宣伝に務めている。しかしそれらは誰が見ても実効性のない空の器にすぎない。
例えば派遣元にキャリアアップのための教育・訓練の実施を義務づけたことが正規雇用促進だと宣伝されている。しかしそれは、正規雇用されないのはキャリアが不足しているため、という自己責任論に立つものであり、出発点がそもそも間違っているだけではなく、現実にも反している。
実際、キャリアの実態をなす資格などの有無と正規雇用の間に直接の関係などない。まして自社に実務の現場のない派遣元が用意できる教育訓練は、良くても座学による一、二ヵ月の研修にすぎないと予想され、それが本当に正規雇用につながるなどと誰が信じるだろうか。
あるいは、期限上限三年に達した労働者に対して派遣元が、@派遣先に直接雇用を依頼する、A新たな派遣先を紹介する、B派遣元での無期雇用とする、のうちどれかを行うこと、としていることが雇用安定化であり、正規雇用促進だと言われる。しかしこれもまさに噴飯ものだ。
まず@は、「依頼」にすぎず、派遣先がそれにおいそれと応えるわけがないことは誰でも分かる。その上派遣元にとっては、自己が抱える労働者が派遣先に移ればその分ピンハネ収入が減るのだ。派遣元には派遣先に「依頼」する利益がそもそもない。それを派遣元がまじめにやると考える方がよほどおかしい。
そしてAは、元々それが派遣元の本来業務なのだ。それを雇用安定措置などと持ち上げることは、文字通り虚偽広告と言う以外ない。
さらにBも実態を無視した空論。リーマンショック時には、派遣元での無期雇用とされた労働者が派遣先業務の喪失を理由に大量解雇されたという事実を思い返すべきだ。そして現在も、派遣元無期雇用の労働者が派遣先業務の終了を理由に派遣元待機となった場合、賃金保障がないばかりか、返品などとハラスメントを受ける、として相談が持ち込まれる事例は数多いのだ。雇用共同アクション国会前行動では、そのような相談を受け闘いを組んだ事例が生々しく報告されている。賃金保障がないにもかかわらずそれを無期雇用と称し平然としている厚労省こそ厳しく批判されなければならない。
正規雇用促進などという言い草には真実のかけらもない。むしろそれは見てきた通り不誠実の塊であり、それこそが今回の改革の真の姿を映し出していると言うべきだろう。

社会的大義の
旗を掲げよう

 このように不公正に満ち、労働者には百害あって一利なしの法案を許すわけにはいかない。派遣先、派遣元双方に、二〇一二年改正として結実した派遣労働規制強化の流れを逆転し、それ以前の自由化への流れに戻そうという意図が歴然としているからにはなおさらのことだ。
与党圧倒的多数という国会構成の中でその道は確かに容易ではない。しかしそれはまったく不可能ということではない。現に、この法案は昨年の通常国会、臨時国会と、二回にわたって廃案になっている。政権側にミスがあったとはいえ、それだけを理由と見れば間違うことになるだろう。少なくとも政権側に、多数を頼んだ無理押しの強行をためらわせる何かがあったのだ。
そこにこの法案の本質的な社会的欠陥が隠然と影を落としていることは間違いない。その基礎の上で、全労働団体、日弁連、労働問題研究者多数の一致した強い反対は、その欠陥を不断に顕在化させる機能として作用している。今回、そのような重圧の一端はもう一つ現れた。改悪推進側も今回三回目の上程にあたっては、前二回の案に若干の修正を加えざるを得なくなったのだ。厚労相が法律の適用の際に考慮すべき事項として、「派遣就業は臨時かつ一時的なものであることを原則とする考え方」を追加すること、そして、常用代替促進という批判に対し、雇用状況を見ながら見直しを行う、という規定の追加だ。
もちろんこの修正はまさに単なる形、あるいは化粧にすぎず、そこに実質的な意味はない。しかしそれでもそれは、柱となっている規定との間に明らかな矛盾、不整合をはらむ規定を入れ込まざるを得なくなったという形で、彼ら推進派が感じている一定の重圧を明かすものであることも確かだ。
そして今この法案のあまりの欠陥は無視できないとの圧力は、例えば毎日新聞の意欲的な取り上げなど、メディアにも一定の反響を広げつつあるように見える。おそらくそこには、二〇〇八年末の日比谷年越し派遣村が社会に衝撃的な形で巻き起こした、派遣労働というあり方に対する不信の広がりも、奥深いところで作用しているのではないだろうか。
雇用の不安定化と劣化が進む一方にある状況を前に、社会は、派遣法改悪を少なくとも望んでなどいない。直接の当事者である派遣労働者は、もちろん圧倒的多数が不安に駆られている。派遣法改悪案を廃案へ、は紛れもなく社会的な大義であり、それこそがこの改悪を推進しようとする者たちを焦らせ、それを正当化しようとする議論を主張すればするほど空虚なものにする正体、と言わなければならない。決してあきらめることなく、廃案に持ち込もう。そのための闘いを尽くそう。     (神谷)

6.5派遣法改悪阻止 国会行動

ほころび露呈する政権の意図

絶対廃案めざし追撃へ

 衆院第二議員会館前では派遣法改悪案絶対廃案を訴えて、雇用共同アクション呼びかけによる国会前行動が重ねられている。五月二〇日以来衆院厚生労働委員会審議日に合わせ、同委員会傍聴行動と組み合わせ継続されてきた。六月五日も正午からこの場で、労働者の怒りの訴えが続いた
 実は、当初強行採決もあり得ると警戒されていたこの日、同委員会での派遣法審議は中止になっていた。例の年金情報流出問題がゆるがせにできない問題となったからだ。おざなりな審議で早々に衆院通過、という政権、自、公のもくろみにまたも現れたほころびと言える。
 雇用共同アクションは、絶対あきらめずどんなチャンスもとらえて廃案をめざそう、このほころびを追撃しよう、とこの日も敢えて行動を呼びかけた。思いは結集した労働者も同じ。年金情報問題は思いもかけない事態の展開だが、闘いをあきらめれば、そのような展開も活用しようがない。
 この日も数多くの労働組合から代表が次々にマイクを握った。中で映演労連や民放労連の代表からは、彼らの現場が数多くの派遣労働者や非正規の労働者によって支えられている実態、しかしその労働者が劣悪な処遇に苦しめられている実態が具体的に告発され、今回の改悪案がその処遇改善の闘いに完全に敵対するものであることが強く訴えられた。下町ユニオンの仲間は、偽装請負との闘いを取り上げながら、今回の改悪が派遣先の使用者責任からの逃亡に免罪符を与え、それをさらに横行させるものになると、今回の法案の悪辣さを厳しく批判した。
 そして同アクションを代表し井上久全労連事務局長が、大奮闘でギリギリと敵のもくろみを押し込んできた、三たび廃案に追い込もう、一二日には連合も七五〇人規模の座り込みを予定している、共に決起し闘いをさらに大きく登場させようと呼びかけた。同じく、中原純子全労協常任幹事も、全労協キャラバンも紹介しながら、先輩が血のにじむような闘いで獲得してきた労働法制の改悪は絶対に許さない、と決意を語った。
 今後も情勢は急転をはらんだ不透明さが続く可能性がある。まさに引き下がらない闘いが決定的だ。あくまで廃案を追求し力を尽くそう。      (神谷) 


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