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    かけはし2015.年6月29日号

本質は変えず「言葉遊び」に終始


4・16セウォル号惨事特別法施行令修正案

業務指揮・監督権の保障もなし


 「文言だけ少し変えた言葉遊びだ」。
 4・16セウォル号惨事特別調査委員会(特調委)は4月30日、次官会議を通過したセウォル号特別法施行令修正案(政府の施行令案)を、このように評価した。政府は「(立法予告期間に)提起された10カ所の争点事項の中で7カ所を反映した」とし、「大幅な修正」だと主張したけれども、特調委は「修正した所のない修正案」だと評価した。特調委を公務員が好き勝手にできる官製機構に転落させるという問題の本質が改まっていないという理由からだ。海洋水産部(省)は3月27日、施行令制定案を立法予告(立法予告案)したものの、特調委や遺家族らの反発によって修正作業をしてきた。
 イ・ソッテ特調委委員長は4月27日からソウル・光化門で、立法予告案を廃棄せよと訴え野宿籠城をしている。しかし4・29の国会議員補欠選挙が終わるやいなや政府は政府施行令案を押しつける態勢だ。チュ・ギヨンホ国務調整室長は4月30日、「今後、さらに変える可能性はない」と釘をさしつつ、5月4日に政府施行令案を国務会議(閣議)に上げて通過させるであろうと予告した。施行令は大統領令なので国務会議を通過しさえすれば効力を得る。セウォル号のように復元力を失った特調委が、強制出航する危機だ。

役割変わらず名称変更だけ

 政府施行令案の第1の問題は、真相糾明・安全社会・被害支援小委員長の業務指揮・監督権を保障しないという点だ。特調委は与野政治圏(10人)と法曹界(4人)、遺家族(3人)の推薦を受けた17人によって構成されている。このうち委員長と副委員長(事務処長)、各小委員長(3人)などは常勤者だ。この常任委員たちが特徴委の業務を分担し導いていくように特別法は規定している。活動期間が最長1年6カ月にすぎない一時的組織であるのに加え、独立性や中立性を確保しなければならないという特調委の特性を考慮した措置だ。
だが政府施行令案は常任委員に代わって国務調整室や行政自治部(省)、企画財政部(同)から派遣された行政支援室長が実務の最高責任者として特調委の業務を協議・調整するようにした。当初、立法予告案に入っていた「企画調整室長」を「行政支援室長」へと政府が名称をこっそり変えたけれども、その役割は「総合・企画・調整」から「協議・調整」へと、そう大きく変わってはいない。キム・ヨンソク海洋水産部次官は4月29日、政府施行令案を発表する記者会見において「業務、役割は大きな違いはない」とし、「用語を純化させたもの」だと説明した。
これに対してクォン・ヨンビン常任委員(真相糾明小委員長)は「委員会業務の総合調整は委員長と副委員長、各小委員長が毎日参加する常任委員会会議で処理するのが効率的であり実効性もある」「企画調整室長であれ行政支援室長であれ、そのような職責自体が必要ない」と説明した。先例を見ても、そうだ。真実・和解のための過去史整理委員会や親日反民族行為真相糾明委員会、軍疑問死真相糾明委員会など、過去のいかなる委員会も行政支援室のような行政部署を別個に置きはしなかった。
第2に、政府施行令案は事故原因の調査、特検(特別検事制度)の要請、聴聞会などを率いて総合報告書まで作成する真相糾明局調査第1課長を公務員(法務部4級)が担うようにした。特調委の調査範囲はセウォル号特別法(第5条1項・3項)は真相糾明の業務を「原因の糾明」と「救助・救難作業と政府対応の適正性についての調査」と規定した。事故原因だけではなく、その土台をなしている政府官僚組織の問題点を明らかにせよという趣旨だ。このためにはセウォル号惨事に直接的間接的に関与した公務員たちを集中的に調査しなければならない。また官僚組織を新たな観点から批判的にあばかなければならない。ところが政府施行令案は、その「死刑執行人」の役割をまた別の公務員にまかせてしまった。その理由をキム・ヨンソク次官は「バランスのとれた視点から調査を遂行するために」だと主張した。「調査第1課長を指揮・監督する真相糾明局長を民間が担当するのだから調査第1課長は捜査分野の専門性がある公務員が担うべきだ。局長と課長がいずれも民間ならば、むしろ調査の客観性を阻害しかねない」。

本音は調査範囲の縮小

 だが本音は、調査の範囲を何としてでも縮小しようとするものと思われる。当初の立法予告案を見ると、特調委の真相糾明活動を「政府の調査結果の分析および調査」と制限した。特調委の自主的調査を根本的に制限し、政府の調査に対する免罪符を与える任務を担わせようとしていたわけだ。批判の世論が高まると政府は「政府の調査結果の分析および調査」を「政府の調査結果の分析」という項目と「調査」という項目に分けた。そうしつつ海水部は「特調委は政府の調査結果とかかわりなしに特別法で規定している範囲内で真相糾明と関連したすべての事項を調査することができる」と発表した。
現実は、まるで違う。特調委は3月から海水部、検察、裁判所、監査院に真相調査のための公式資料を要請したものの、大部分が無視されている。検察はひと月余り答弁がなく、監査院はホーム・ページに公開した資料を出力して送ってきた。セウォル号惨事関連の裁判を担当している光州高裁は最初は肯定的答弁を送ってきたものの、後では大法院(最高裁)傘下の法院行政処の指針だとして資料の提出を拒否した。特調委が政府の調査結果を分析することさえ、政府が妨害しているのだ。
第3に、安全対策が大きく縮小する状況だ。セウォル号特別法(第5条6項)は安全社会小委の業務を「災害・災難の予防と対応方案準備など安全な社会建設のための総合対策樹立に関する事項」と規定した。韓国社会が直面した災害・災難について包括的な安全対策を準備せよ、という趣旨だ。けれども政府は施行令の各項目に「4・16セウォル号惨事と関連した」という文言を挿入した。キム・ヨンソク次官は「災害・災難の予防事項を特調委が扱えば国民安全処、国土海洋部など他の部署の固有の業務や政策の混線が招来するおそれがある」と語った。海水部が管轄している海難事故予防・対応策に手を入れよという事実上の指針だ。パク・ジョンウン常任委員(安全社会小委員長)は「『安全な社会を作ろう』として600万人が署名し、セウォル号特別法が制定された。その時、我々は海難の安全だけが実現すればよいという意味で署名したのか。そうではない。政府施行令は特別法の立法趣旨に明らかに反する」。

見せかけにも程がある

 特調委の活動を縮小し、それさえも公務員が掌握するようにしたという本質は変えないまま、政府は一歩ひきさがっているかのように、幾つかの数字を改めた。立法予告案には特調委が90人の定員で発足し、後でこれを120人に拡大しようとする時には施行令を改正するようにしたけれども、修正案は6カ月後に自動的に120人に拡大するようにした。「セルフ調査」という批判を意識したかのように、海水部や国民安全処からの派遣公務員数を8〜9人から4人に減らした。その結果、派遣公務員数は42人から36人になった。だが本質は改めておらず、特調委が反発するのを政府も予測した。「(セウォル号特別法が)国務会議を通過すれば海水部の役割は相当に低下する。万が一、相当なレベルの合理的な特殊性をもって(特調委が)改正案を提出すれば、次官会議、長官会議に再び上げて改正することのできる条件となるだろう」。キム・ヨンソク次官の言だ。「もちろん特調委の改正案が相当なレベルの合理的な特殊性を備えたかは我々がまた決定するはずだけれども」という本心は吐き出してはいない。政府の「言葉遊び」のオンパレードは終わるところを知らない。(「ハンギョレ21」第1060号、15年5月11日付、チョン・ウンジュ記者)

シャワー後も熱さでヒリヒリ

過量露出時、死亡しかねない

放水銃に何を混ぜたのか

 5月1日、ソウル鍾路区安国洞交差点で進められた「政府のセウォル号特別法施行令案の廃棄を求める徹夜集会」を取材中だった私を含む記者たちと千人余の集会参加者たちは夜10時12分に最初に発射された放水銃に身の縮むほどに驚きました。以降、断続的に発射されていた放水銃が夜10時39分から9分間、休むことなくデモ隊に向けて発射され続けました。
 周りを見渡すと極度の呼吸困難症状を示している人々もいました。素肌に直接放水を受けた首筋や腕はシャワーで洗い流しても火傷を負ったように熱く、ヒリヒリと痛みました。路面にたまっていた水を見ると牛乳のように白い色でした。放水銃の液体の正体は「催涙液の混じったもの」でした。

至る所で嘔吐
と呼吸困難者が
この催涙液は「パーバ」(PAVA)という合成カプサイシンの一種です。警察は1980年代から「シーエス」(CS)を放水銃に混入して使ってきたが、発がん物質など人体への有害性の論難が起こると2009年にCSの使用を中断しました。産業安全保健法によって作成された「物質安全保健資料」(MSDS)に、PAVAは「深刻な過量露出時、死亡に至りかねないこと。皮膚の接触、目の接触、摂取時は極めて有害。かゆみの症状、水疱をもたらす」などの問題をひき起こすことがあると書かれています。
「催涙液放水銃」についての内容は、警察の内部指針にすぎない「散水車運用指針」にのみ出てきます。同指針でも「不法行為者の制圧に必要な適正濃度で混合」して射すことができるとして「あいまい」に規定しています。催涙液の濃度や催涙液として使うことのできる化学薬品の種類などに関する規定は、どこにもありません。警察は「『0・5%、1・0%、1・5%』という上、中、下の基準をもって使用する」と言います。この基準は内部「指針」よりもさらに下位レベルの単なる「公文」に出てくる内部であるにすぎません。
人体に有害な催涙液の放水銃を、あいまいで恣意的に変えることのできる指針に基づいて使用したのです。そこでセウォル号惨事の家族や市民など3人は5月6日、憲法裁判所に警察の恣意的な催涙液放水銃の使用を止めてくれという憲法訴願(違憲訴訟)を出しました。請求人たちの法定代理人である「民主社会のための弁護士の会」のパク・チュミン弁護士は「催涙液放水銃は市民の生命権、集会の自由などの基本権を侵害しているが、警察は法律的根拠なしにこれを使用しており憲法に違反している」と明らかにしました。

「再び繰り返される可
能性はない」と却下
憲裁は昨年6月、放水銃の使用について「すでに発射行為が終了し、基本権の侵害状況が終わり、憲法訴願を提起する実益がない。今後、集会の現場で当時のように近距離から放水銃を発射する行為が再び繰り返される可能性があると考えがたい」として審理自体をしないまま却下しました。それ以降、憲裁の却下理由とは反対に放水銃が繰り返し使用され、さらに今回催涙液が混入された放水銃が用いられて危険性が一層、高まりました。憲裁の新たな判断が必要だと考える理由です。(「ハンギョレ21」第1061号、15年5月18日付、キム・ユナム「ハンギョレ新聞」24時チーム記者)

【訂正】本紙前号(6月22日号)1面下から4段目右から9行目の「日本に」を「日本が」に、3面川内原発集会記事の上から2段目左から21行目の「九州実行委員会委員会」を「九州実行委員会」に訂正します。


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