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    かけはし2015.年7月13日号

不正な債務は帳消しにせよ


ギリシャ 国民投票で明確な審判

国際的連帯でトロイカを追い詰めよう


予測を上回る
大勝利だった

 七月五日に行われたギリシャの国民投票は、一月二五日の選挙で成立したシリザ(SYRIZA、急進左翼連合)主導のチプラス新政権とEUの債務返済交渉において、EUが強制した諸条件を労働者・民衆が拒否したことを明確にした。
 報道では、EUが押し付けた、ギリシャ民衆への「緊縮・耐乏」をさらに強化する過酷な諸条件への賛否が拮抗しているとされていた。しかし蓋を開けてみれば、投票率六二・五%で、チプラス政権が呼びかけた「反対」票が六一・三一%、EU・ECB(欧州中央銀行)・IMFの「トロイカ」が多数を得るために圧力を行使した「賛成」票は三八・六九%となった。圧倒的多数で反対が上回ったのである。とりわけ五〇%の失業率にあえぐ若者や、年金支給の過半をカットされ、日々の食事にも事欠く高齢者などの貧困層は、なだれをうつ勢いで拒否の意思を示した。
 マスメディアは、ギリシャの労働者・市民が示したこの結果に驚愕し、チプラス政権やギリシャの有権者を罵倒しながら、もっぱらギリシャの選択が、新たな世界的金融危機・恐慌への引き金となる可能性について大騒ぎをしている。実際、七月六日の東京証券市場も大きく下落した。
 しかし言うまでもなく、このギリシャ危機の性格がどのようなものであるのか、ギリシャが抱える巨額の債務は何によって引きおこされたのか、そして誰が危機の最大の犠牲者なのかを理解することが「危機克服」への出発点である。

なぜ巨額の債務
が作られたのか

メディアでは、公務員が全労働力の五分の一以上を占める役人天国で、退職者の年金支給額も現役時の収入の九五%に達する放漫財政が、ギリシャ危機の根源だという報道がしきりになされている。「ドイツ人はコツコツとまじめに働くアリだが、ギリシャ人は遊んでばかりいるキリギリス」という揶揄が、ドイツのメルケルとギリシャのチプラスの対立に二重写しにされて語られる。もう三年前の話になるが「日経ビジネス」デジタル二〇一二年五月八日版は「ギリシャ人は、いつから『怠け者』になったのか 欧州統合が生んだ“最後のソ連型国家”の皮肉」という大竹剛の解説記事を掲載した。
「今や、世界は市場原理を軸にした熾烈なグローバル競争に飲みこまれている。一方、EU加盟後のギリシャは、こうした潮流に逆行するかのように、『最後のソビエト型国家』と呼ばれるほど社会主義的な政策に傾倒していった」(同記事)。これが資本の意を体現したマスメディアの「ギリシャ危機」報道の、現在にまで至る基調なのだ。
しかしギリシャが抱えた巨額の債務はどのように形成されたのか。欧州の金融機関は、二〇〇四年のアテネ五輪を見据えて過剰な資金の投資先をギリシャに求めた。EUの金融機関からギリシャに貸し付けられた資金の一部は、ギリシャにとって過大なまでの軍備拡張にまわされた。そこで潤ったのはEUの軍需産業だった。
金融バブルがはじけ、二〇〇八年の「リーマン・ショック」以後、PIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン――ここには豚(PIGS)を連想させる差別的な意味が込められている)と名指された諸国に対して、債務取り立てのためにとりわけ過酷な緊縮=耐乏政策が強制された。危機のツケは、民営化、雇用の非正規化、解雇、給料引き下げ、年金の大幅カット、公共サービスの停止、社会福祉の解体という形で労働者・民衆に強要された。とりわけ若者、高齢者、女性は、生存そのものが困難になる状況に追い詰められている。

持続可能な社会
を作り上げよう


しかしギリシャの労働者・民衆は、「トロイカ」が強制し、ND(新民主主義)、PASOK(全ギリシャ社会主義運動)などの新自由主義政党が遂行する破滅的政策に決して屈服しなかった。幾度も決行されたゼネスト、職場占拠と自主管理、そしてアテネ・シンタグマ広場を連日連夜埋め尽くした占拠運動、さらには「黄金の夜明け」など反移民のファシスト勢力との闘い。こうした一連の行動が、今年一月にシリザ政権を誕生させた原動力だった。
こうした経過の上に、ギリシャの労働者民衆にのしかかり、その人権・生存権を奪う債務の重圧をはねかえす闘いが展開されている。ギリシャ議会に設立された公的債務監査委員会で重要な役割を果たしているエリック・トゥサン(CADTM 第三世界債務帳消し委員会)は不正・不当な債務について次のように規定している。
「持続不可能な債務とは、その返済が諸政府に住民の原理的な人権(良質な公的医療システム、良質な公教育システム、良質な社会的保護システム、尊厳ある賃金と年金その他)を保障することを不可能にさせる債務だ」と(本紙四月二〇日号六面記事参照)。
市民参加のこうした公的債務監査活動を通じて問題の所在を明らかにし、「持続不可能な債務」の帳消しを求めていかなければならない。労働者・市民にとって、問題は「金融システムの混乱」ではなく、「尊厳ある、持続可能な生活・環境」である。
昨年、われわれも参加した「国際シンポジウム実行委員会」は、ギリシャの反資本主義左翼連合(ANTARSYA)のマノス・スコウフォグロウさんを招請し、ギリシャ労働者民衆の闘いを共有していった。ギリシャ民衆への悪意と恐怖に満ちたキャンペーンを打ち破り、連帯の訴えを発していこう。
(七月七日 平井純一)

緊急の声明 

優先されるべきは基本的人権

反対票のみごとな勝利

エリック・トゥサン

 「反対」票のすばらしい歴史的な勝利は、ギリシャの市民が債権者からの恐喝を受け入れるのを再び拒否したことを示すものだ。ギリシャ議会が創設した公的債務真実委員会の予備的報告が示したように、不法であくどく正統性のない債務に対し、国家が一方的に支払いを猶予したり、拒絶したりすることを認める法的論拠が存在している。
 ギリシャのケースでは、こうした一方的行為は以下のような論拠に基づいている。
?国内法や、人権に関する国際的義務に違反するようギリシャに強制した債権者側の背信
?前政権が債権者やトロイカ(EU、欧州中央銀行、IMF)との間で調印したような協定に対する人権の優越
?その抑圧性
?ギリシャの主権や憲法を無法にも侵害する不公正な用語
?そして最後に、故意に財政的主権に損害を与え、あくどく不法で正当性のない債務を引き受けさせ、経済的自己決定権と基本的人権を侵害する債権者の不法行為に対して国家が対抗措置を取る、国際法で認められた権利
 返済不可能な債務について言えば、すべての国家は例外的な状況において、重大で差し迫った危機に脅かされる基本的利害を守るために必要な措置に訴える権限を、法的に有しているのである。
 こうした状況の中で、国家は未払い債務契約のような危険を増大させる国際的義務の履行を免除されうる。最後に諸国家は、不正な行為に関与せず、したがって責任を負わない場合には、自らの債務の支払いが持続不可能な時に一方的に破産を宣告する権利を持つのだ。

▼エリック・トゥサンはギリシャ公的債務真実委員会の科学コーディネーター。CADTM[第三世界債務帳消し委員会]国際ネットワーク代表世話人


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