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    かけはし2015.年7月20日号

憲法裁判所の決定は国際協約違反


全教組設立取り消しに怒る万国の教師たち

「労働組合」ではあるが「労組」ではないという矛盾



  解職教員を組合員から除外するようにした法条項(教員労組法第2条)に問題はない、と憲法裁判所が5月28日に決定した。当該条項は政府が全国教職員労働組合を「法外労組」だと宣言した根拠だった。憲裁の決定は法外労組化をめぐる法的闘争において政府に有利に作用する可能性が大きい。現職の全教組教師であり「教育の希望」の記者が政府の「全教組締め付け」を見ている世界の教師たちの視角を伝えてきた。(「ハンギョレ21」編集部)
 「全国教職員労働組合(全教組)は労組だと判断しない」。2013年10月24日、雇用労働部(省)は全教組に、このような短い文言が書かれた公文書をファクスで送った。
 「『労働組合』ではあるが『労組ではない』」というこの矛盾した内容を込めた通報文1枚。これが世界の人々の首をかしげさせた。そしてその人々は「法外労組」通報のイシューが「全教組の活動をしていて解職された教師9人を除名しなかったため」という消息を伝え聞いて激しく怒った。

フォーラム開催する資格はない


国連傘下の国際労働機構(ILO)は2013年にも2度にわたって韓国政府に「緊急介入」を通知した。同年、世界172カ国401教育団体が加入している世界最大の教員機構である世界教員団体総連合会(EI)をはじめ、3つの国際労働団体は「Dear President Park Geun-hye」(パク・クネ大統領へ)という文で始まる電子メールを青瓦台に送る緊急行動を決議するまでに至った。
文字通り「万国の労働者たち」が乗り出したわけだ。教員労組設立の取り消しをめぐって、このような国際的抗議が繰り広げられたのは初めてのことだった。パク・クネ政府が国際的恥さらしを受ける受難の歴史が始まったのだ。
これから20カ月余りが経った5月17日、仁川・松島のあるホテル。「世界人の教育オリンピック」と呼ばれる世界教育フォーラムの事前行事として開かれた世界教師フォーラムでも韓国政府に対する苦言がどっと出てきた。全教組法外労組通報を批判する声だった。
この日、スーザン・ホフグットEI会長とモニック・フユ・グローバル教育運動(GCE)議長は共に「全教組に対する法外労組の措置はILO協約違反であり『みんなのための教育』を目指す世界教育フォーラムの趣旨にも反すること」だと口をそろえた。
EIは世界の3000万人教師を代表する世界最大の教員団体であり、GCEは世界100余カ国の教育市民団体が所属する世界最大の教育団体だ。
世界教育フォーラムを主管してきたユネスコの準備運営委に参加してきた両団体代表の、このような警告を帯びた発言は韓国政府を緊張させないわけがなかった。5月21日、ホフグットEI会長は世界教育フォーラム閉幕式での代表演説でも「政府と教師は協力しなければならない」と強調した。実際、国際社会では「韓国政府が世界教育フォーラムを開く資格があるのか」という資質についての論議が続いてきた。
「5月に韓国は2015年以降の世界的教育目標を扱うことになる世界教育フォーラムの行事を開く。韓国政府が、質の高い教育のために努力してきた全教組を法外労組にしつつ世界教育フォーラムの行事を主催するのは極めてアイロニーなことだ」。4月3日の午後4時、英国ウェールズ・カディフで開かれた英国最大の教育団体・全国教員連合女性教師連盟(NASUWT)の全国大会場。30万教員が加入するNASUWTのクリス・キッツ事務総長が同団体300余人の役員たちの前で投じた言葉だ。

1996年の約束を忘れるな


今年2月初め、パリで開かれた世界教育フォーラム・ユネスコ準備運営委に出席した韓国代表団はEI代表からも苦言を聞かなければならなかった。ファン・ヒョンスEIアジア太平洋委執行委員(全教組国際局長)は「当時、会議に参加した韓国政府のキム某協力官はEI代表から『なぜ韓国最大の教育労組である全教組を排除したまま世界教育フォーラムを準備するのか』との非難を受けた」と説明した。
そうであれば、世界の諸機構はなぜこれほどに全教組法外労組通報について怒っているのだろうか。国際教育界の事情に詳しい専門家らは、「全教組に対する労組ではない」という通報が国際社会で?約束違反?国際協約違反?国際常識とのかけ離れという「3つの違背」として目をつけられたからだと分析する。
まず約束違反だ。韓国政府は経済開発協力機構(OECD)への加入承認2日前の1996年10月9日、外務部(省)長官を通じてOECD事務総長に以下のような書簡を送った。
「韓国政府は結社の自由や団体交渉などの基本権を含め、現在の労使関係関連法令を国際的な基準に符号できるように改定することを確約します」。
この書簡はOECD理事会で米国、フランス、ドイツ、イタリア、スペインなどが「『結社の自由』未保障」を理由に韓国のOECD加入にブレーキをかけると、韓国政府がこれを説得するために「確実に約束(確約)」したものだ。この手紙を受け取ったOECD側は2日後の10月11日、理事会を開いて韓国のOECD加入を最終承認した。
当時、韓国政府を代表して駐OECD代表部で福祉・労働担当官を担当していたチャン・シンチョル氏の回顧録「OECDの韓国労組法モニタリング」(韓国労働研究院)によれば、韓国政府はOECDに加入するために全教組の合法化と「解雇者の労組加入を許容する」と国際社会に約束した。
チャン氏は291頁分量のこの冊子で「米国とヨーロッパの諸加盟国は韓国のOECD加入交渉の初期から労使関係の法制を国際基準に合わせることを要求した」と回顧した。
これによって、韓国ではそれほど知られてはいなかったけれども、2013年12月11日にアンヘル・クリアOECD事務総長は「韓国政府の教員労組に対する弾圧状況をOECDも鋭意注視するだろうし『全教組法外労組』の問題が数カ月以内に解決されることを期待する」と語った。この日午前、フランスにあるOECD事務局で開かれたOECD理事会・OECD労組諮問委(TUAC)の定例協議会の場でだ。
国際協約違反もまた国際社会において口の端に上ってから久しい。憲法裁判所の「全教組法外労組」関連法の判決日の5月28日、国際労働組合総連盟とEIは共同意見書を憲裁に出した。内容は以下の通りだった。
「韓国政府の全教組法外労組決定はILO87号協約に違反している。ILO加盟国家はこの基本原則を守らなければならない義務を負っている。ところで解職者がいるという理由で全教組の登録取り消し決定をしたのは国際協約に明白に違反するものだ」。

解職者含めたから法外労組?

 1948年、「労組の団結権保障」のために制定されたこの協約は、第3条と第4条で「すべての労働者と使用者の団体は彼ら自らが規約を作ることができるし、行政機関によって解散されたり活動中止の命令を受けない」と規定している。
最後に、国際的常識についてだ。労組活動をしていて解雇された者を労組が保護するのは国際社会の長きにわたる美徳であり常識だ。けれども韓国政府は、これらの人々を排除しなかったという理由で全教組に法外労組であることを通報した。当然にも没常識的なことであると国際社会には映らざるをえないことだ。しかもこのような韓国政府の行動は世界で最初のことであるとまで語った。
昨年9月、憲裁に違法法律の審判を提唱したソウル高裁第7行政部の判決文も以下のように語っている。「現職教員でない者の教員労組加入を法によって禁止する立法は類例を見ることができない。フランス、ドイツ、日本、英国、米国などでは現職教員ばかりではなく、解雇者などにも組合員資格を付与している」。(「ハンギョレ21」第1064号、15年6月8日付、ユン・グニョク「教育の希望」デジタル新聞局長 bulgom@gmail.com)

死亡の可能性もあるというMERS(中東呼吸器症候群)

MERSより恐ろしい解雇

伝染病より怖い政府の態度

 ラクダから感染するというかわいらしい名前のこの伝染病について初めてニュースに接した時は、これといって気にもとめなかった。そうするうちに5月31日日曜日午前、協進旅客に通うキム・サンヒョン同志から電話がかかってきた。協進旅客の専務がMERSに感染したというのだ。他人事のようになじみがうすかった名前の伝染病が突然、身近なものになった。同志と対策について協議した。専務との接触者を調査および隔離し、そして協進旅客すべての職員のMERS検診の2つの対策が実行されるまで、バスの運行を全面的に停止することを会社に要求した。しかし会社は、疾病管理本部が「問題なし」と判断したとして、措置の要求を拒否した。
 「蟻子1匹通さないように徹底的に管理する」というムン・ヒョンピョ保健福祉部長官の自信満々の発言とは裏腹に、伝染病は広がり中国にまで脅威をもたらしていった。

伝染病が広がり
恐怖が広がる
政府は「混乱を招く」として情報を統制した。平沢(ピョンテク)では、MERSの発生源が平沢聖母病院といううわさ、そして協進旅客の運転手たちがMERSにさらされたいう話が広まった。協進旅客の労働者たちは5月31日、保健当局に対して積極的な対策を要求した。疾病管理本部は、協進旅客専務が診断確定の判決を受けた5月28日以降、接触した人がいないという理由で要求された対策を拒否した。
6月1日、協進バスの労働者の1人が匿名で保健所に電話をかけた。「協進旅客を利用する市民ですが、MERSの診断を受けた人と接触した人々を調査してバス運転をするべきではないでしょうか?」という問い対して保健所職員は「協進旅客の専務と接触した22人全員を隔離しています。協進旅客に対して何の対策も取っていないという話はデマです」と回答した。6月1日まで協進旅客は、全職員が通常の出勤を行い、基本的な検診さえ行わなかった。平沢地域では「危険ではない」という保健当局の発表が「デマ」として扱われ始めた。保健当局に対する不信と恐怖が広がった。

市民の安全より
「平沢の経済をため」
平沢市民は6月2日、平沢市庁前で記者会見を行い、情報公開とともに積極的な対策を要求した。平沢市長は面談を拒否し、保健所長が面談に応じた。すでに感染が確認された者25人、死亡者2人と発表された後であった。面談の席上、協進旅客に対する質問が相次いだ。協進旅客の専務と接触した22人の隔離措置対象者のうち、協進旅客職員がいるのか、という質問に対して保健所長は、資料を確認した後「いません」と回答した。理由は、協進旅客の専務が高熱を訴えたのは5月23日午後であり、協進旅客の専務が通常の業務で職員らと接触したのは5月23日午前までのため、隔離対象から除外したというのだ。市民は質問した。「5月23日午後に高熱を訴えた時以前に、発病の可能性は全くないのか?」保健所長は「ありません」と回答。市民が「根拠が何か?」と問いただすと保健所長は「疾病管理本部からはそのような回答を受けています」と回答した。
科学どころか常識でも納得しがたい回答に対して市民から非難が相次いだ。「バス1台が一日に1000人の乗客を乗せるのに、バスの運転手が感染した場合、対策はあるのか?」という問いに対して保健所長は回答をしなかった。市民の「正確な情報公開や積極的な対策が行われない理由は何か?」という問いに対し保健所長は「詳細にわたる情報公開や行き過ぎた対策は、厳しい平沢の経済の現状を、さらに困難な状態にする可能性がある」と回答した。

恐怖の根本は
政府と資本
保健所長との面談が終わった後、何人かが協進旅客に移動した。協進旅客の労働者にバスを止めるように説得するためであった。協進旅客に到着すると、協進旅客労働者たちは、その日に発表された死亡者二人のうち1人が協進の専務ではないか調べており、死亡者が協進の専務でないことを確認したりしていた。保健所を通じて死亡者が協進の旅客がすべてであることを確認して労働者らは、怒りとともに恐怖感を募らせていた。協進の労働者はバス運行の中断を要求し、労働部に危険状況の申告をした。
雇用労働部は「伝染病と業務は関連性がない」として対策を拒否した。絶対多数を占めている御用労組は「すべてデマだ。社長と疾病管理本部を信じなさい」と居丈高に言い放った。職場の休憩室のそばの洗面台には手洗いの石けんが置いてあり、それが会社が行ったすべての対策だ、と言った。
キム・サンヒョン同志が保健所から持ってきたマスクを配ると、すぐに皆がマスクを着用した。JTBC(韓国のケーブルTV放送局)やKBS(韓国放送公社)が取材を来て、現場労働者たちにインタビューを行った。
すべてが恐ろしく、勤務をすることが怖い、と口々に訴えていた。取材陣が帰ってから現場労働者に尋ねてみた。「そんなにも不安で恐ろしい状況であれば、すべてを会社にぶちまけて運行を中断するべきではありませんか?」。現場労働者は「もちろん恐ろしいです。でも、会社に抗議して解雇されたらたまりません。恐ろしくてもどうしようもありません」と訴えた。現場の労働者たちにとって、解雇は伝染病よりも脅威であった。
その頃、双竜自動車や起亜自動車でも感染の疑いのある者が発見された、とのうわさが聞こえた。だが、現場での業務は止まらなかった。人々を恐怖に追い詰めるのは、伝染病よりも政府の態度かもしれない。労働者を恐怖に追い詰めるのは、伝染病にも止められない資本の利潤創出行為かもしれない。私たちは、もしかしたら毎日伝染病よりも恐ろしい敵とともに暮らしているのかも分からない。

 [労働者階級政党推進委員会の機関誌「変革政治」6月15号(最新号)より]


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