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    かけはし2015.年8月3日号

EUとユーロの転覆に向けた長期的戦闘へ


ギリシャ

急を要す戦略的論争

社会的、民主的、環境調和の
欧州と現行枠組の敵対性露呈

LCR/SAP(第四インター・ベルギー支部)


  緊縮の転換を求めたギリシャ民衆に対する欧州支配階級の暴力的な姿勢と、債務の部分的な軽減と引き換えにしたチプラス政権の最終的な屈服は、その中でも引き下がらないギリシャの労働者民衆の抵抗と一体となって展開する情勢の速度を増す展開共々、反緊縮の闘いの戦略をめぐる数多くの問題を左翼に突き付けている。それに応えることは、事態が、トロイカの勝利に見える表面の下に、EUとユーロに対する民衆レベルでの深い疑念の浸透を伴わざるを得ない経過をたどり、その意味で欧州支配階級自体も明らかに傷を負い、EUとユーロそのものも直接の争点に浮上することによって、一層重大な急を要する課題となっている。第四インターナショナル内での論争が始まっているが、この提起された課題について、ベルギー支部が一つの考え方を提起している。ギリシャ内部の動きやこの間の事態に対する評価を伝える記事と合わせて以下に紹介する。(「かけはし」編集部)

冷徹に突きつ
けられた試練


 労働者に対する驚くようなどう猛さとこの国の略奪、そしてこの国を彼らの諸機関の監督下に置くことによる、 ギリシャ危機(実体としてはEUの危機)の、一時的「解決」は一つの重大事となっている。シリザ政府が決定した国民投票に際して一週間前に起きた緊縮反対の大量投票にもかかわらず、この同じシリザのアレクシス・チプラスを中心とした執行チームによってこの「解決」が受け入れられたという事実は、新自由主義の緊縮に対するオルタナティブを求めて闘っている左翼勢力すべてに冷徹に試練を課している。歴史の印象的な加速化によって、この全左翼――ギリシャ内を含む、つまり、シリザの左派はまだ屈服していない――は突如、最大限の重要性をもつ戦略的論争に直面している。
 すなわち、国内と国際レベルで社会的諸闘争と政策をいかに接合すべきか。ユーロとEUに対してとるべき姿勢とはどのようなものか。採用すべき政治的/制度的展望とはどのようなものか。左翼の生き残りにとってのこの決定的な論争において、LCR/SAPベルギーは、討論の前進に向けて以下の命題を提起する。

「欧州構想」へ
の明確な反逆を


1.ギリシャの実験――社会民主主義に代わるものとしての反緊縮政党が勝利したこと、それが六ヵ月後新たなかつもっと厳しいとさえ言える緊縮という療法に導くことになったこと――は、全左翼勢力と労働運動に、ユーロだけではなくEU諸機関もまたそれを構成する巨大な障害であることをしっかり理解するよう義務を負わせている。EUは平和や進歩や民主主義のための力ではない。それは、産業と金融の主要グループの資本主義構想に全面的に奉仕する諸規則と諸機関からなる専制的な一組だ。これらは、世界の舞台での資本間競争に立ち向かうために、ひとそろいの社会的かつ民主的な獲得物を一掃したいと思っている。

2.この三番目のメモランダムがもし通るとすれば、ギリシャの搾取され抑圧された者たちが喫した敗北は、まず第一に、労働者運動の伝統的指導部の臆病さ、およびギリシャ以外の欧州の左翼(政治と労組両者の)が見せた怠惰とトロイカとの恥ずべき共謀、の結果だろう。これは、社会民主主義、キリスト教民主主義、そして欧州労組連合の「欧州構想」に基づく何十年にもわたる協力が結実した結果だ。
しかしこの敗北はまた、EUとユーロという枠組み内部での妥協の可能性という致命的幻想を基礎とした、シリザ指導部の政権戦略の結果でもあるだろう。実際、国民投票ではっきりと表現されたギリシャ民衆の意志を、こうした諸機構に対する「尊重」、並びにそれらの「安定性」に関する「責任感」という祭壇への捧げ物にするようチプラスを導いたものはこの幻想だ。

3.ギリシャ民衆に再度押しつけられた緊縮の残酷さは、欧州支配階級の怖れのこもった一手段だ。そしてその恐れとは、シリザの勝利とギリシャ社会民主主義の解体、したがって中産階級のための代替という政治解決の不在に対する恐れであり、ポデモスを抱えたスペインが一番手となる、欧州内の感染リスクに対する恐れであり、特に、国民投票を使った「反対」の勝利に導いた途方もない民衆的決起、そしてそれがこの感染に統制不可能な勢いを与えそうだったことに対する恐れだ。

別の欧州へ反緊
縮戦闘の協調を


4.社会的、民主的政策、また環境政策はEUを転覆することなしには現実化しない、という証明が与えられた。オルタナティブは国民国家への後退――欧州大国間の戦争への回帰以外他の結果があり得ないと思われる道――ではなく、完全に異なった構造、つまりヨーロッパ社会主義合衆国の民衆による創造を可能にする目的で、EUを麻痺させ、次いでそれを壊すことを目標とした長期の戦闘だ。

5.もう一つの欧州(こうして欧州民衆の憲法制定会議)の方向に前進することは、反緊縮の戦闘の協調を直接に意味している。この協調は、伝統的諸組織の政策だけではなく、国毎のリズムや情勢の大きな違いや諸国間の分断――EUはそれを鋭くし、単一通貨もそれを、労働者の国際的分断と欧州それ自身内部の不均等な発展を力づけることにより深刻化させている――をも内容とする困難にぶつかっている。一国の左翼政府の行動はこうして、緊縮と圧政の拒否を基礎とした民衆的決起と国際主義的連帯を支えるよう、また数を増す諸国に広がり、収斂し協調し、EUとユーロを一層管理不能にする、そうした諸闘争の条件の創出を目的として、追求されなければならない。

ユーロ離脱要求
の位置づけとは


6.ユーロ離脱は緊縮との絶縁に対しては十分な条件ではない(英国の事例が証明している)。しかしギリシャの場合においては、周辺の諸国とユーロ圏の心臓部にはない諸国にとっては、それは明確に必要条件である。

7.ユーロと絶縁する必要は、ユーロ離脱を代わりとなる綱領の基軸にすることを意味するわけではない。非常に強烈に即刻の道として問題が持ち上がっているギリシャであっても、代わりとなる綱領の基軸は、緊縮すべての拒否、および労働者、若者たち、女性、レイシズムの犠牲者、また小規模農民の運命を直接に改善する、そうした社会的でエコロジカルな、また反資本主義かつ民主的な諸政策であるべきだ。

8.ユーロ離脱をオルタナティブの基軸にすることは、通貨は取引を可能にする単なる「中立的な」技術的手段である、との非常に全般的に保持されている通念と不必要に衝突することになると思われる。ところがそれに反して通貨は事実において、一つの社会関係の結晶化でもあるのだ。
ユーロ(あるいはEU)離脱を戦闘の基軸にすることは、調和的な社会―経済―エコロジカルな発展が国民的枠組み内部で可能であろうとの幻想を広げることにより、強硬派および極右のゲームに参加することにもなると思われる。
この幻想は国際主義的連帯には有害だ。しかしながらこの連帯は、ギリシャ内の戦闘にとってだけではなく、大陸上での経済統合には社会的必要と急を要するエコロジカルな必要を満たすために、欧州レベルでの反資本主義の展望が必要になる、との理由からも決定的なのだ。

9.(準)革命的時期の外側にある現在のもつれの中では、緊縮の完全に非妥協的な拒絶、民主的な諸政策と人民主権に対する尊重の非妥協的な要求、国内外の資本家のサボタージュに対する自衛手段の諸方策――たとえば銀行の社会化、資本統制、土地登記と相続税、債務返済の棚上げやその帳消し、企業内における労働者管理――は、この目標を達成するための不可欠の条件だ。

迷いなく進む決
裂への表明必要


10.情勢の鍵は、多少とも技術的な諸方策一覧である「プランB」――定義自体によってユーロにとどまる「プランA」を示唆する――を発展させることの中にはない。鍵は、搾取され抑圧された者たち(特に女性を含んだ労働者、若者たち、小規模農民、不法移民とレイシズムの対象者)を、資本の論理とそれを体現するEU諸機構との大衆的衝突という展望の中で結集する、一つのブロックによって思想的ヘゲモニーを勝ち取ることに集中された社会戦略にある。

11.はっきりと、決裂の瞬間まで進むことをたじろぐことなく、EU内にそれが巻き起こす制度的な危機に気を病むことなく、言われているところの「欧州構想」あるいは「ユーロの安定」に対して結果として生じる信頼性の喪失に思い悩むことなく言い切る一つの戦略が、守勢から攻勢へと動くことを可能にする。それは、そのことが搾取され抑圧された者たちの大衆的決起を鼓舞するからだ。ギリシャにおける国民投票に際したノーに向けた決起の一週間が、このやり方で解放され得る巨大な社会的エネルギーを、そしてそれがどれほど女性や若者や労働者を欧州で、また世界で引きつける可能性をもつかを示した。

左の左に新政党
建設は不可欠だ


12.敵はドイツではなく資本主義、並びにその諸機関であり、その一番手がEUだ。ユーロはドイツが欧州に押しつけた通貨ではなく、欧州資本がその取引費用を引き下げるために、財政を強化し、その多国籍企業のためのより広い市場を確保するために必要とした通貨だ。新自由主義は、ルター派イデオロギーないしはドイツのナチスという過去が生み出したドイツの教条ではなく、社会的かつエコロジカルなその二重の袋小路に闘いをしかけている国際資本主義の唯一の現実的存在形態なのだ。
EUに対するドイツの支配は、民族的支配ではなく、ドイツ労働者もまたその犠牲者である資本の支配だ。われわれの注意をわれわれの真の敵からそらすデマに満ちた意見を脇に捨てよう。オルタナティブは、ドイツに反対する「民主主義者の戦線」ではなく、資本とその諸機構に対決する搾取され抑圧された者たちの戦線だ。
ベルギーの雇用主たちとベルギーの諸銀行とベルギーの政府は、「社会主義者」の参加を得たその前任者同様、彼らに利益をもたらしたギリシャ民衆に対する社会的戦争を精力的に支援した。

13.われわれが提案する戦略は、政治的レベルと労働組合のレベル双方における労働者運動と左翼の再構成を必要とする。この二つの領域は分割できない。一方において、大量失業、欧州の制度的障害、そして社会民主主義の社会自由主義への全面的かつ不可逆的な転換を前提とすれば、社会民主主義と緑の勢力の左に立つ新しい政党の建設はかつて以上に基本となる。加えて、遂行されるべき戦闘の高まる鋭さは、徹底的な社会的動員を、したがって、職場内でのまた現場での勤労民衆と若者たちの活発な包含に基づく、民主的に組織された社会運動を必要とする。この枠組み内部で、組合員による労組の取り戻しは、「労働組合の独立」と「ノンポリ姿勢」を混同する誤った考えに対する闘いがそうであると同じく、一つの戦略的な場をしめる。

ギリシャから
の教訓を学べ


14.部分的に新しい背景の中で戦闘は続く。これを書いている時点で結果は確かではない。トロイカがこの戦闘で勝利を得るとすれば、それは、ギリシャ危機を、特に債務危機を中長期的に解決することなく、またユーロの弱体化によって、全体としてのEUに対する、特にドイツという駆動源に対する信頼性への大打撃を対価としたものとなるだろう。
ギリシャでは、絶対命令に対する「賛同」を軸とした議会内の「国民的団結」へのもくろみに対しオルタナティブを提供するために、左翼の左翼の新たな政治的再構成が日程に上る。
それはかつて以上に、ギリシャの労働者と若者たちと歩を共にして行動する連帯を発展させる問題だ。すべてのところでそれは、反緊縮のまたその戦闘の政治的表現を求める闘いの急進化を刷新する問題であり、ギリシャからの教訓を学ぶ問題だ。

15.特にベルギーでそれらの教訓を引き出そう。なぜならば、チプラスの戦略(「より良い交渉に向けた国民投票」)と国内の労組指導部の戦略(「対話を始めるための行動計画」)の間には明らかな平行関係があるからだ。ギリシャの敗北はわれわれに、方向を変えるようわれわれの諸組織をわれわれが強要しないならば、この「合理的な」戦略がわれわれをどこに導くことになるか、を示すものにならなければならない。

(二〇一五年七月一五日、ブリュッセル)

▼LCR/SAPは、第四インターナショナルベルギー支部。(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年七月号) 


ギリシャ

シリザ中央委員多数合意拒否

中央委員一〇八人(二〇一人中)の声明

 七月一二日ブリュッセルで一つのクーデターが起きた。それは、欧州の指導者たちの目標が、極度の緊縮という新自由主義モデルとは異なったもう一つの道を心に描いてきた一国の民衆に見せしめ的な処罰を負わせることだった、ということをはっきり見せつけた。それは、民主主義と人民主権といういかなる考えにも敵対するクーデターだ。
 「諸機構」との間で署名された合意は、直接的経済絞殺という脅迫の結果だった。そしてわが国とわが民衆にとっては破壊的であるあくどく侮辱的な監督という諸条件を押しつける新たなメモランダムを意味している。
 われわれは、ギリシャ側に行使されている人を窒息させるような圧力を自覚しているが、そうであってもわれわれは、国民投票における勤労民衆の誇り高いノーは、この債権者団の圧力を前に政府が屈服することを許すものではない、と考える。
 この合意は左翼の理想と諸原則とは両立できず、しかしまた他の何ものにも増して、労働者階級の必要と両立できるものではない。シリザの党員と活動家はこの提案を受け入れることはできない。
 われわれは中央委員会に即刻の会議招集を求める。そして、党員、活動家、またシリザの国会議員に、われわれの大会決定とわれわれの綱領的約束という基盤の上に党の統一を保つよう訴える。

二〇一五年七月一五日、アテネ
(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年七月号)


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