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    かけはし2015.年8月24日号

育鵬社版教科書を不採択!


8.5東京都大田区教委が決定

「東京書籍」版に変更かちとる

区民総がかりの運動が実った


 【東京南部】八月五日大田区教育委員会は、来年度から区内中学校で使用予定の歴史と公民の教科書について、前回(二〇一一年)区民の意表を突く形で決定した育鵬社版を覆し、東京書籍版採択を決定した。各教育委員の推薦は、歴史について、東京書籍四に対して帝国書院一、育鵬社一、公民について、東京書籍四に対し育鵬社二だった。前回決定以後多くの区民が採択変更を求めて声をあげてきたが、それが文字通り結実した決定であり、見守った多数の区民の間には安堵と喜びが広がった。

住民自身の
監視が重要
ところで今回の審議では注目点が二つあった。一つは、新しく着任した教育に関する区行政管轄領域の責任者である教育長(教育委員兼務)が、歴史、公民いずれについても前任者に引き続いて育鵬社版を推薦したこと。しかも推薦理由にも問題があった。特に公民については、家族の価値や市民の権利だけではなく義務と責任が強調されている点を評価し、都教委や安倍政権が推進する復古路線への迎合を露骨ににじませた。これは、現在の自治体行政が上意下達化、したがって自治の空洞化を深めている可能性を示唆するものであり、区民には重大な要警戒点を示すものとなった。
もう一点は、前回は育鵬社版を支持した教育委員(三人)全員が、今回は東京書籍版支持へと立場を変えたこと。一体何があったのか、少なからず気になるところだ。実は、前述の教育長が審議での冒頭発言者であり、その中で育鵬社推薦が明言されたことで前回同様これで方向が決められるのかと、傍聴席には緊張が走っていたのだ。ところが、次の委員長職代理(弁護士)の帝国書院推薦表明に続いて、上記の三人が次々と東京書籍支持を表明、傍聴者には安堵感と共に驚きを与えたが、同時に一抹の不審感も残した。
問題は支持理由。三人のうち一人は、特に個人の尊厳、人権、女性、民主主義の意義など記述内容に則した支持理由を多数挙げた上で育鵬社を除く二社(公民)、三社(歴史)に絞ったとして、最終的に東京書籍を推薦、教科書を丹念に読み込んで検討したことを伺わせ、傍聴者にも十分納得できるものだった。また多くの区民の声が届いたことも実感させた。
ところが残り二人の理由は、学力引き上げのためという一点を除いて今ひとつ判然とせず、一人はむしろ、個人的には育鵬社版が優れていると思っている、とまで明言した。この不可解さが消えない側面について、教育委員会後に行われた報告会の中では、大田区の中学生の歴史学力が学力調査で低く出たことが重しになったのでは、との見方が出された。確かに審議では、四人の教育委員が学力に問題があることを理由としてふれていたから、それも大きな要素となったことは十分に考えられる。
しかしいずれにしろ、今回の教科書採択についても、結果オーライでは済まない問題、不透明さが払拭されたわけではないことが明らかとなった。したがって、教育行政、さらに区行政全般についても、区民監視の重要性があらためて示されることにもなった。

盛り上がった
運動の成果だ
その上で今回の結果が、特に前回採択以後区民の運動が大きく盛り上がったことの成果であることをしっかりと確認したい。
大田区では一二年前に、「自虐史観」の教科書を採択しないように、との請願が出されたことを契機に「公正な教科書採択を求める大田区民の会」(以下区民の会)が結成され、この区民の会を中心に様々な区民と連携した集会、駅頭宣伝、区庁舎包囲行動などが展開され、育鵬社版、自由社版(最初は扶桑社版)採択の動きを阻止してきた。しかし半面、この成功体験の結果として前回採択時には運動にゆるみが出ていたことは否めない。実際この時には、教科書展示に際した区民意見が育鵬社版、自由社版支持意見を下回る状況になった。
この虚を突かれたのが前回の採択だったが、しかしこの育鵬社版採択は大田区民にまさに衝撃を与え、直後から区内の様々なグループが逆転に向け動き出した。区民の会もほぼ月一回の例会の中で学習を重ねながら運動のあり方を模索し、区民への宣伝、教育委員会の傍聴、教育委員会や区内中学校への申し入れなど、数多くの行動を積み上げてきた。
その中で一つの画期は、二〇一二年五月二〇日に開かれた、育鵬社版採択時の教育委員長であった櫻井光政さんの講演会だった。これは、当事者が語る講演会ということで大きな関心を呼び、多様な分野の区民が九〇人近く参加、規模の点でも成功だったが、むしろ内容の点で、様々な人びとの独自的動きだしを刺激し、その後の運動の広がりに大きな力を授けた。
桜井さんは弁護士として育鵬社版歴史教科書に疑問を呈し帝国書院版を推したのだが、委員会では少数として受け入れられなかった。この経験に照らして教科書をどう考えるべきか、実に多角的で新鮮な観点が語られ、参加者に多くの示唆を与えたのだ。そしてその感銘を広く伝えようと区民の会が編纂した講演録パンフレットも、図版を数多く配したレイアウトもあいまって評判を呼び、多くの区民に手渡され、区内の様々な場で活用され、運動の広がりを助けた。

対立の枠組み
を乗り越えて
そして、このような形で広がった運動は、今年六月七日重要な到達点を印した。この間区内で別個に運動を展開してきた主要六団体がここで一同にそろい、「新しい中学校検定教科書を考えるつどい」を共催として開催できたのだ。その中では、長い間深い溝の中で別々の運動を続けてきた日教組(連合)系の運動と都教組(全労連)系の運動が、ある意味で初めて行動を共にできたことが特筆すべき成果と言わなければならない。そしてこの共同は多くの区民にまさに希望をともし、会場から溢れる二〇〇人を超える参加者がつめかけた同つどいは、熱気と行動への意欲が充満する集まりとなった。
この成果は直後の教科書展示会での区民意見にたちどころに表現され、今回提出された区民意見数は一三八二件(大田区教委発表)、前回の一〇倍という水準になった。また前回は歴史に関する学校意見が二件だけだったものが今回は全校(二八校)に達し、区民意見、学校意見とも、育鵬社版に否定的と教育委員会に報告された。
さらに教育委員会には傍聴希望者が殺到、七月二二日には一三〇人以上、八月五日には二〇〇人以上が受付に列を作った。この中で当初三〇席とされていた傍聴席も、五〇席、九〇席と拡張された。七月二二日、八月五日、傍聴受付に先立つ教育委員激励集会が、区庁舎前で多数の区民と共ににぎやかに行われたことは言うまでもない。この熱気の中、八月五日、集まった区民の誹謗中傷のために宣伝カーを引き連れて登場した次世代の党の区議が早々に引き返したことは、ちょっとした座興と言えた。要するにこの問題で、区庁舎はいわば一つの騒ぎとなったのだ。
今回の採択変更は、まさにこの区民の立ち上がりが引き出した。そしてそこに長年の対立を克服した共同が大きな力を発揮したことも確実だ。これは、草の根の運動が成果を実らせることができるという事実、そしてそのための運動のあり方双方の点で、貴重な経験を区民に残した。それを今後に確実に生かすことが、政治を民衆の下に取り戻す上で、戦争法案に反対する総がかり行動の発展ともつながる重要な課題となる。
(D)

8.6総がかり行動実の木曜行動

国会前に3000人

戦争法案の本質を示した礒崎暴言


核兵器輸送も
排除されない
 八月六日、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会は、第一二回目の「止めよう戦争法案  国会前木曜連続行動」を衆議院第二議員会館前で行い、三〇〇〇人が参加した。
 戦争法案(重要影響事態法案、国際平和支援法案)を審議する参院特別委員会では、審議すればするほど戦争法案の性格が次々と明らかとなっている。最もストレートにそれを示したのが、戦争法案に深く関わった礒崎陽輔首相補佐官の「法的安定性は関係ない。わが国を守るために必要な措置かどうかを気にしないといけない」、「時代が変わったのだから政府の解釈は必要に応じて変わる」(七月二六日/大分講演)の発言だ。立憲主義を否定し、時の政府の判断で限りなく武力行使の範囲を拡大することが可能だというのだ。この「法的安定性」の否定は、まさに安倍政権の本音である。
 礒崎は八月三日の参院安保法制特別委員会に参考人として出席し、表面的に暴言について陳謝したが、辞任要求を拒否し、「『国際情勢の変化に一定の配慮をすべきだ』という部分は間違ってはいない。撤回する考えはない」と居直った。安倍首相は野党の礒崎更迭要求を拒否し、擁護し続けている。
 第二は、中谷元・防衛相の発言だ(三日)。法案は、戦争中の他国軍への後方支援に関して自衛隊は武器の提供はできないが、弾薬の提供はできるとしている。だが弾薬の規定があいまいなのだ。中谷は、弾薬を「一般的に武器とともに用いられる火薬類を使用した消耗品」と規定し、「手りゅう弾」も「直接、人を殺傷することなどを目的としているが、火薬類を使用した消耗品で、提供は可能」と強引に解釈を広げた。さらに具体的に輸送物資を明記していない「輸送」任務のため核兵器、化学兵器、毒ガス兵器の輸送も「法律上は排除していない」と答えた。法案のあいまい性によって政府の拡大解釈によってなんでも可能となってしまう欠陥を浮き彫りにした。礒崎・中谷発言を糾弾し、戦争法案を廃案に追い込んでいこう。

貧困層をねらう
「経済的徴兵制」
集会は、「戦争法案絶対反対!今すぐ廃案!安倍政権退陣!」の怒りのシュプレヒコールで始まり、次々とアピールが行われた。
鎌田保さん(憲法共同センター)は、「政府答弁は、戦争の悲惨さに立脚しない机上の空論だ。憲法九条を守り、育てることで平和を実現できる。戦争法案を廃案にしよう」と発言。
広田一参議院議員(民主党)、辰巳孝太郎参議院議員(共産党 )、吉田忠智参議院委議員(社民党党首)から戦争法案を審議する参院特別委員会の論議を報告し、政府答弁と法案の欠陥を厳しく批判した。
高田健さん(解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会)は、「今日の集会は、八・六広島行動の仲間たちに連帯しながら戦争法案廃案をめざす取り組みだ。安倍首相は広島発言で非核三原則に触れず、昨日の中谷防衛相は『核兵器を運ぶことは許される』などと発言した。さらに川内原発再稼働を強行しようとしている。八・六広島を迎え、腹だたしい。八・三〇に国会一〇万人包囲、全国で一〇〇万人で法案反対のうねりを実現し、廃案に追い込んでいこう」とアピールした。
福山真劫さん(戦争をさせない1000人委員会)は、「戦争法案は、米国の軍事戦略の下に自衛隊が中東から東アジアまで武力で威嚇し、行使し、戦争をすることにある。日本が初めて外国で戦争をするということだ。安倍政権は沖縄・辺野古新基地工事を一カ月中断することを決めたが、支持率下降を避けるために先延ばしにした。そこまで安倍は追い詰められている。闘いを広げ安倍政権を退陣させよう」と訴えた。
稲葉剛さん(自立生活サポートセンター・もやい)は、「昔から経済的徴兵制は存在している。安保法制が成立してしまえば、自衛隊員は殺し殺されるリスクは高まる。隊員不足になる。防衛省は、これまで以上に貧困家庭の子どもたちにターゲットを絞って経済的徴兵制を強化していくだろう。安倍政権は、生活保護基準引き下げ、社会保障制度の後退、労働者派遣法改悪などによって貧困を拡大させようとしている。政権は率先して経済的徴兵制を拡大するために社会的環境を整備しているのだ。世代を超えて非戦を刻み、戦争法案の制定を許してはならない」と強調した。
山岸良太さん(日弁連憲法問題対策本部長代行)は、「中谷防衛相は、弾薬の中に核兵器も入っているという解釈をした。もう日本は、唯一の被爆国として核兵器の廃絶を世界に訴える正当性が失われてしまう。戦場で核兵器が使われることを前提に輸送することが可能な戦争法案を作ることを許さない」と糾弾した。
奥田愛基さん(SEALDs/自由と民主主義のための学生緊急行動)は、「自民党議員から『戦争に行きたくないと利己的なことを言っている』など色々と批判されている。自分たちで戦争法案そのものだと言っている。世代を超えて声を上げていきましょう。国会の前に民主主義があります。八・三〇国会を一〇万人で包囲しよう」と呼びかけた。
最後に行動提起がされ、抗議のシュプレヒコールを国会に向けて行った。(Y)

【訂正】本紙前号(8月10日付)の1面最下段の左から1〜2行目の「作り出し」を「作り出す」に、2面7・28記事の上から3段目左から2〜3行目の「プラカードの掲げ」を「プラカードを掲げ」に、3面上から2段目右から7行目の「侵害させる」を「侵害される」に、4面IS論文の下から5段目左から20行目の「一八八年」を「一八八三年」に、7面編集部リードの右から5行目の「不確性」を「不確実性」に、8面サムスン新事業記事の下から3段目左から20〜21行目の「電話ででも薬を処方してもらいとの」を「電話でも薬を処方してもらいたいとの」に訂正します。



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