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    かけはし2015.年9月7日号

取り調べの全面可視化放棄


刑事訴訟法改悪案衆院可決を糾弾する

日弁連村越会長の責任は重大


反対の声が
無視された

 八月七日、グローバル派兵国家建設の一環である対テロ治安弾圧体制強化にむけた刑事訴訟法改悪法案(刑事訴訟法等の一部を改正する法律案)を衆院本会議で自民、公明、民主、維新、次世代、生活の党の賛成で可決を強行した。共産党と社民党は反対した。安倍政権による戦争法案の強行制定と一体である刑訴法改悪法案の衆院可決を糾弾する。参院での成立阻止にむけて刑訴法改悪の反動性と人権破壊をあらためて暴露し、批判を強めていかなければならない。
法案の衆院制定のプロセスには、用意周到な根回しが水面下で進行していた。そのイニシアチブとなったのが村越進日本弁護士連合会会長の「取調べの可視化の義務付け等を含む『刑事訴訟法等の一部を改正する法律案』の早期成立を求める会長声明」(五月二二日)だ。
日弁連村越派は、国会議員に対して法案成立にむけてロビー活動まで行っていた。千葉県弁護士会会長の刑訴法改悪反対声明、「通信傍受法の対象犯罪拡大に反対する一八弁護士会会長共同声明」、冤罪被害者の抗議の申し入れ(六月八日)など全国の闘う弁護士、市民運動から刑訴法改悪法案を支持する村越派に対して抗議が殺到していたにもかかわらず、無視し続けた。
この日弁連村越派の取り調べの全面可視化から部分可視化への変質をバックアップにして民主、維新が自民、公明に修正協議を持ちかけ、四日に修正合意(@司法取引について協議過程を透明化するため、協議の記録を捜査機関が作成し、公判が終了するまで保管するA捜査機関と容疑をかけられた人が協議する過程に、弁護士が常時、関与するB通信傍受では、事後に不服申し立てがあれば記録を閲覧できることを通知するよう規定する。捜査に関与しない警察官が、不適正な傍受を監視する)し、五日の衆院法務委員会で修正案を含む改悪法案を強行採決したのである。

えん罪多発
体質を温存


修正合意は、取り調べの全面可視化を投げ棄て、えん罪の大量生産、人権侵害、監視社会の構築、すなわち安倍政権の戦争国家づくりへの加担である。取調べの可視化は、裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件に限定した(施行時期三年)。また、録音・録画すれば容疑者が十分に供述できないと検察官が判断した場合など可視化の例外も認めた。裁判員裁判の対象は、殺人・強盗致死傷・傷害致死・危険運転致死・現住建造物等放火・身代金目的誘拐などであり全事件のわずか二%程度、検察官独自捜査事件は年間一〇〇件程度でしかない。任意の取調べも含めた可視化の排除は、強引な誘導尋問などが検証できず、実質的に権力の冤罪多発体質を温存したのだ。取調官の裁量を認めたことは取調べの自白部分、供述調書を被疑者に読み聞かせ、署名・押印させ、供述内容に間違いないと語っているような状況を録音・録画するという「いいとこどり」の定着でしかない。これでは人権侵害に満ちた自白の誘導と強要、「拷問」に近い脅迫場面を記録せず、えん罪防止にはならない。

処分軽減を
エサに取引


こんな取り調べの全面可視化を否定した改悪法案のいったいどこが、「全体として刑事司法改革が確実に一歩前進」(日弁連村越声明)だというのか。民主、維新と自民、公明の修正協議では最初っから取り調べの全面可視化にむけた協議は対象にも入っていなかった。
司法取引の導入(捜査・公判協力型協議・合意制度の導入)は、捜査機関が容疑者や被告の処分を軽減することを「エサ」にして取調官の誘導により、虚偽自白、第三者を名指しする引き込みの危険が発生することを前提にしている。すでに薬物などの組織犯罪、企業犯罪、汚職など経済事件で秘密裡に適用しているが、この手法を拡大強化していくことをねらっている。所属組織のスパイになることを取引き条件にした処分軽減も横行することになる。
司法取引の合意には、弁護人の合意を条件にしているが、権力の誘導によって協力者となった被告人に依頼された弁護士が動員され、冤罪事件に加担する危険性がある。「弁護人の合意」は、冤罪歯止めの保障とはならない。多くの冤罪事件で元検事の弁護士がどれだけ権力と一体となって被疑者に圧力、虚偽自白を誘導してきたか。いわゆるヤメ検弁護士は、検察人脈があることを「売り」にして被疑者に「事件を認めれば早く出れるよ」と誘導することを常套手段としている。「協議の記録」を保管するといっても、権力と弁護士の裏取引きに基づいて作り上げたストーリーによって簡単にデッチあげることも可能となってしまうのだ。だから「協議」そのものを可視化することは絶対に拒否するだろう。

プライバシー
侵害を拡大


盗聴法(通信傍受法)は、対象犯罪が@銃器犯罪A薬物犯罪B集団密航C組織的殺人の四類型から傷害、詐欺、恐喝、窃盗などを含む一般犯罪にまで大幅に拡大した。つまり、盗聴のやりたい放題が可能となってしまった。修正案では、通信事業者の常時立会制度も撤廃し、アリバイ的に「捜査に関与しない警察官」が監視するとしたが、盗聴実行犯の身内がいったいどれだけ「プライバシー侵害」の摘発をするというのか。
これまで表向きは通信事業者による常時立会によって@傍受記録の改ざんの防止A通信傍受の濫用的な実施を防止するとしていたが、このようなハードルを排除するだけでなく、傍受対象通信を通信事業者等の施設において暗号化したデータを警察施設に送信し自動記録ができることになった。つまり、技術的にも盗聴のやりたい放題が可能となってしまった。しかも盗聴の全データを記録するからプライバシー侵害は最初から排除したシステムなのだ。すでにコンピュータ監視法(一一年六月)によってインターネット接続業者などに通信履歴(電気通信の送信元、送信先、通信日時など)の保全とコンピュータの差押え、電気通信回路で接続されているすべてのコンピュータに保存されたデータのコピーが可能になっている。
法務省は、二月に二〇一四年の通信傍受の実施状況発表(発布を受けた令状は二六件、傍受した通信は計一万三七七八回)しているが、ほとんどが大麻取締法違反、覚せい剤取締法違反、銃刀法違反事件だ。刑訴法改悪が制定されることによって盗聴のやりたい放題が可能となり、盗聴の実施状況が飛躍的に拡大することは間違いない。公安政治警察の非合法の盗聴も含めれば盗聴社会はすでに定着していると言える。盗聴法とコンピュータ監視法は、憲法二一条「通信の秘密」の破壊の先取りであり、なし崩し的にプライバシー侵害を拡大しようとしている。
以上のように刑訴法改悪と修正案の反動性は、明白である。法案推進派を糾弾し、戦争法案廃案の闘いとともに刑訴法改悪法案の制定阻止にむけて奮闘していこう。(遠山裕樹)

台頭する中国と香港雨傘運動

區龍宇さん 出版記念の講演会へ


【日時】9月19日(土)午後1時半〜5時
【場所】四谷地域センター 多目的ホール(地下鉄丸ノ内線・新宿御苑前駅 大木戸門側2番出口3分)
【地図】
http://ycc.tokyo/about.html
【資料代】500円
【共催】出版記念会、柘植書房新社 
連絡先?03-3372-9401(新時代社)

「台頭する中国」
の社会闘争


アメリカに次ぐ大国となった中国の動向に注目が集まっています。腐敗一掃で権力基盤を確立したとされる習近平指導部が進める「新常態」(ニュー・ノーマル)政策は、グローバル資本主義大国への新たなステップであるとともに、周辺国との政治的、領土的摩擦を惹起しています。しかし中国の新たな外交戦略は内政の延長ともいえます。「台頭する中国」の貪欲なエンジンとしての官僚支配体制のもとで、労働者民衆がどのような抵抗を続けているのか。2014年夏に『台頭する中国 その強靭性と脆弱性』(柘植書房新社)を出版された區龍宇さんを招きお話を伺います。香港を拠点にグローバルな視点でオピニオンを発信してきた區龍宇さんは、今年4月2日付の朝日新聞でもインタビューで取り上げられるなど、その分析や主張に注目が集まっています。

香港雨傘運
動から1年


區龍宇さん来日の時期は2014年9月28日に始まった「雨傘運動」の一周年にあたります。香港の幹線道路を79日間にわたって占拠しつづけて「真の普通選挙」を求めて香港の学生や労働者の新しい世代が中国政府・香港政府と対峙しました。區龍宇さんは「雨傘運動」の渦中で、普通選挙という民主的要求を労働者・庶民の労働や生活という民生的要求と結合させようと訴え続ける一方、運動内部における極右的傾向を果敢に批判してきました。雨傘運動は勝利できなかったが、これまでにない社会運動の理論的、実践的飛躍に向けた助走になったという區龍宇さんの総括を収めた、この数年にわたる區龍宇さんの一連の論評集『雨傘運動 プロレタリア民主派の政治論評集』が9月中旬に出版されます。香港における自決権運動と中国における民主化を固く結びつけることを訴える區龍宇さんに雨傘運動の総括と展望を伺います。

戦後70年の日中関係にもうひとつの視点を


安倍政権の極右的歴史修正主義は、中国や韓国、北朝鮮をはじめ東アジア諸国との関係に亀裂をもたらしており、安保法制整備を通じたグローバルな派兵国家へ向けた動きは、その亀裂をさらに広げるものになっています。戦争のできる国家へ進もうとする安倍政権は、極度の全体主義的支配をつづける中国共産党の一党支配に「反ファシズム戦争勝利70周年」という大義名分を与える余地を与え続けています。階級協調の「日中友好」や「平和共存」を中心とした日中関係は、中国資本主義の台頭と日本資本主義の没落の中で、その有効性を見いだすことは難しいでしょう。「搾取と大衆的殺害の資本主義世界に、諸民族の平和と友好のプロレタリア的世界を対置せよ!」(バーゼル宣言、1912年)のスローガンをたぐり寄せる戦後70年の議論が求められています。9月19日の講演会にぜひご参加ください。


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