もどる

    かけはし2015.年9月7日号

世界の核被害者が連帯する時


国際対話集会「反核の夕べ」

先住民族の訴えに強い共感

核のない未来を共に作り出そう



科学の限界と
研究者の役割
 八月六日、午後三時からシンポジウム「8・6ヒロシマ国際対話集会――反核の夕べ」が広島市まちづくり市民交流プラザ6Fで開催された。この日の集会は、一一月二一日〜二三日に開催される「広島・長崎被爆七〇周年 核のない未来を!世界核被害者フォーラム」の第四回プレ企画として「被爆の日」に開催されたもの。
 森瀧春子さん(核兵器廃絶をめざすヒロシマの会共同代表)の司会で進められた集会の開会のあいさつで、世界核被害者フォーラム実行委共同代表の朝長万左夫さんは、「核被害」と言う時、と指摘し、ウラン採掘に伴う労働者被害、核実験の被害を受け続けた先住民族など「核利用サイクル」全体にわたる被害の深刻さを理解する必要性を訴えた。
 今中哲二さん(京大原子炉実験所助教)が「広島・長崎、チェルノブイリ、福島の被曝調査から 科学の限界と研究者の役割」と題して基調講演。
 今中さんは「科学で言えることはしれている。たとえば被ばくした土地に住めるのか、住めないのかは分からない。被ばくによってどうなるのかということは分からないことが多い」という前提に立って対処しなければならないことを前提的に強調した。そして福島原発事故直後に飯舘村に入った経験と、人口六〇〇〇人の村に七五〇〇人の除染作業労働者が働いている現実の中から、安易に「帰還」を強制するキャンペーンを批判して、個々の住民が「被ばくを避ける」権利について訴えた。

福島の被ばく
と教育現場
続いてパネルディスカッションに移る。
最初に福島県教組原発災害対策担当執行委員の日野彰さんが報告。日野さんは楢葉町の中学教員だったが、現在は県教組の原発担当執行委員としての活動に専念している。
日野さんは放射能汚染の福島県全域への汚染の拡大と、「除染」の遅れが「復興」を遅らせていることを紹介した。双葉郡では大熊、双葉の二町は放射性廃棄物の中間貯蔵施設の受け入れを「容認」したが、用地取得はほとんど進んでいない。その一方で原発事故を風化させる動きが顕著になり、危険を口にする人は「不安をあおる人」「場を乱す人」として孤立させる風潮ができあがりつつある、と語る。
安倍首相は「福島の復興なくして日本の再生なし」と語り、「復興」の進展をイメージさせているが、看板となった国道6号線の再開通や常磐高速道の全線開通も、双葉地方を「通過」するだけで、住民は帰還できない。
教育現場はどうか。原発事故前には双葉地方には二八の小中学校に六四〇〇人の子どもが学んでいた。現在は県内各地で双葉郡内町村立の学校が再開し(現在は二二校)ているが、双葉の学校に戻ってきた子どもたちは約一割に過ぎない。同時に、避難生活を送る家族の中での子どもたちが抱える問題、教職員が抱える負担、疲弊も大きい。日野さんはそうであればこそ、「学力・体力低下」のみを問題とするのではなく、放射線教育・人権教育に力を入れる必要がある、と訴えた。

仏核実験と
マオリの闘い
マオリ民族のヘイユイス・ルイ・カイユさんは一九六六年から九六年まで、フランスによって一三九回もの核実験が行われたタヒチで生まれ、育った。現在はマオリ国の独立と反核を訴える政党の役員で放送局の局長もつとめている。
カイユさんは二〇一三年に起きたある事件にショックを受けたという。それは核実験を忘れず親の世代の犠牲を忘れないための記念碑が撤去されたという事件だった。撤去に抗議し、記念碑を守るために八〇〇人がデモした。そして幾多の証言を掘り起こし、この運動は勝利した。今年のデモには多くの新しい人たちも加わった。
「若い人たちは核実験について知らされていない。教科書にも載っていない。われわれはどのように暮らしてきたのか知りたい。フランスに謝罪を求めたい。フランスはわれわれがいなければ核大国にはなれなかった。マオリ国の独立は認められるべきだ。独立を認められるべき地域の国連リストにも掲載されている。われわれは独立の権利を持っている。マオリ人民は世界から核兵器をなくす心を共有している」。
同じくポリネシア地域から参加したローランド・オルダムさんが次に発言。「核実験地域だったムルロア環礁を訪問したが、そのうち半分は今にも崩れそうだ。フランスが行った一九三回の核実験のうち一四六回が地下核実験で、四七回が大気圏での実験だった。大気圏の実験では放射性降下物がニュージーランドやチリにまで到達した」。
「一九七四年からの地下実験でも重大な問題が起きている。ムルロア環礁の半分がいつ崩壊してもおかしくはない。崩壊すれば大量の土砂が海中になだれ込み高さ二〇メートルの津波が発生する。しかし専門家も政治家も問題ないと言い続けてきた」。
「四年前の福島で起こった事故では、日本の専門家は放射能はすでに封印されたと言ったようだが、それはおかしい。フランスの専門家は、チェルノブイリ事故の時に放射能の雲はフランスの国境で止まった、と発表したがそれと同じだ。ムルロア環礁が崩壊すれば、大量の放射能がまき散らされ、深刻な海洋汚染が広範囲に起きるだろう。専門家は『問題ない』と言うが、いまここで黙っているわけにはいかない。われわれには糾弾の義務がある」。
「核被害者の共通に抱える問題は、被害の補償だ。運動の目的は『正義と真実』だ。そのために一人一人が勇気を持って、自力でやっていくしかない。自分たちのいる所で運動を作っていこう。当面の戦略は、ハードルは高いが国民投票だ。最初の核実験から五〇年、被害者の記念碑建設から一〇年になる二〇一六年四月二日を目標にしている。この記念碑にはヒロシマ、ナガサキ、フクシマ、アルジェリア、フィジーなど世界各地の被害者から送られた石が埋め込まれている」。
南太平洋の核被害者からの訴えに、参加者は大きな拍手で応えた。

高校生平和大使
が語る福島の今
つぎに福島から来た「高校生平和大使」の本田歩さん(福島高専四年生)がアピール。本田さんは一昨年八月、韓国の高校生に事故を伝えたことがきっかけとなって、「核の被害」という点では立場を同じくする人びとの交流という問題意識が生まれ、ヒロシマ、ナガサキとフクシマとのつながりを意識した、という。
「これまで一〇代の甲状腺ガンの発生は一〇万人に二人と言われてきたが、最近福島県は、県内の小児性甲状腺ガンは震災前に比べて数十倍になっていると正式に発表した。チェルノブイリの小児甲状腺ガンの問題も、国際的に認められるまで八年間かかった。安倍首相は『科学的にはまったく問題ない』と言うが、それが東京五輪開催のための隠蔽ではないかと疑ってしまう」。
「高線量地域から避難した住民への『気にしすぎ』『神経質』という言葉も聞こえてくる。気をつけている人が生きづらい状況もある。自分でお弁当を持っていく生徒たちが『風評被害をまき散らしている』という非難もある。避難者への住宅の無償提供が打ち切られようとしている中、『安全神話』にしがみつき、放射能に気をつける人たちを差別することがあってはならない」。
本田さんは、このように自らの体験を語った。

私たちも加害者
にされていた
アンエリス・ルアレンさん(カリフォルニア大学助教授)は、先住民族の核被害問題に取り組んできた。ルアレンさんは、カリフォルニア唯一の稼働原発の立地が先住民族スー族の土地であることを指摘し、この地域を先住民族の保護地域にするよう申請したが、認められなかったという。
日本語の達者なルアレンさんは、一九九七年から二〇〇八年まで、アイヌ民族の人びとに非常に御世話になったと語った。彼女は一八七五年に樺太から強制移住で北海道に連れてこられたカラフト・アイヌの研究を行っている。
ルアレンさんは、「原発は『近代性』の最先端にあるが、こうした考え方と『祖先の土地への責任感』に貫かれたアボリジニーの世界観とは大きく異なっている」ことを強調。また、オーストラリアの先住民にとってはウランが埋まっている土地は「毒なる大地」として行ってはならない場所とされてきたことを紹介した。
そしてあるアボリジニーが「福島事故をもたらしたウラン燃料の一部が自分たちの土地から掘り出されたものであることを悲しむ」と語ったことを伝えた。一九九八年八月六日には、ウラン鉱のある土地に住むカナダの先住民が広島を訪れ、「知らず知らずに私たちは原爆の被害者であるとともに加害者にもなっていた。私たちの祖先の土地から掘り出されたウランがヒロシマ原爆に使われていたからだ」と謝罪した、という。

資本主義が強制
する生活を変革
ルアレンさんは、「資源の植民地主義的支配をもたらす資本主義は、先住民族を複雑な位置に置かれた被害者にさせる。先住民族にとって土地は『資源』ではない。『資源』にさせるのは植民地主義的占領と搾取だ。私たちは資本主義がもたらす暮らしを変革しなければならない」と強調した。
以上の発言と質疑応答をうけて、集会は最後に、一一月二一日〜二三日に広島で開催される「核のない未来を!世界核被害者フォーラム」の成功を呼びかけた。      (K)

8.19

福島原発告訴団が東京行動 

東京第一検審に激励行動

行政の責任も追及しよう


ついに東電幹部
を法廷で裁く時
 八月一九日、福島原発告訴団は、東京電力の元幹部三人(勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元社長)に東京第五検察審査会が七月三一日に「起訴相当」の議決を行い、強制起訴が実現されたことを受けて、「東京第一検察審査会激励行動&院内集会」を行った。
 この日の行動は、旧原子力保安院などの国の責任を追及する告訴案件に関して起訴相当議決を求めて、東京第一検察審査会への「激励」を行うと共に、これから始まる東電幹部三人の刑事責任を問う裁判の意義を明らかにし、そのための態勢を整えることを目的にしていた。
 一二時半からの東京第一検審激励行動には福島をはじめとする告訴団メンバーなど約二〇〇人が集まった。海渡雄一弁護士は、七月三一日の「起訴相当議決」が出るか否かに関して「実は不安もあった」と語った。なにしろ議決には一一人中八人以上の「起訴相当」判断が必要であり、しかも「強制起訴」のためにはそれを二回繰り返さなければならないという大きな壁があったからである。その不安を吹き払った議決に、海渡弁護士は改めてほっとした表情で、裁判で必ず三人の刑事責任を明らかにする決意を語った。
 福島からは、八月九日の郡山市議選で四選を勝ち取った蛇石郁子さんをはじめ、次々と感謝と裁判闘争への決意が語られた。

誰かを犠牲にする
のではない社会を
続いて午後二時から参院議員会館講堂で院内集会。開会のあいさつでは司会の仲間から「事故の責任者が裁かれることなしに、被害者が前に進むこともできない。裁判が開かれることを日本中に知らせよう。いま私たちの生活は立ち直っていないし、放射能、汚染水、被ばく労働など問題は山積している。誰かを犠牲にするのではない社会の在り方を追求し続けよう。長い闘いになることを覚悟しよう」と訴えた。
弁護団を代表して海渡さんは、「電力会社役員の高い注意義務を認めた」「まれな自然現象をも考慮しなければならない」「原子炉が浸水すれば致命的であることは分かっていた」「東電役員被疑者らには具体的な予見可能性があった」「予見可能性を補強した新証拠の数々」「第二次告訴事件の検審での解明が待たれる保安院と東電の歪んだ共犯関係」「福島原発事故は避けることができた」などの各項目に関して、今回の「起訴相当」議決の意義を説明した。
今回の検察審査会の議決では「適切な津波対策を検討している間に、福島第一原発の一〇m地盤を大きく超える津波地震が発生して、その津波により福島第一原発が浸水してしまう可能性を一定程度あったといえる以上、浸水した場合の被害を避けるために、適切な津波対策を検討している間だけでも福島第一原発の運転を停止することを含めたあらゆる結果回避措置を講じるべきだった」としている。そして「大きな地震やそれに伴う大きな津波が発生する可能性が一定程度あったにもかかわらず、それに目をつぶって無視していたに等しい状況」と東電側を批判している。
続いて河合弘之弁護士は、「第二次告訴では、いま現役で、再稼働のために暗躍している官僚たちをも引きずり出し、国の責任を裁きたい。自民党政権には真相解明の意思はない」と訴えた。
八月二一日、裁判で検事役をつとめる弁護士三人が決まった。東京第二弁護士会が推薦した三人の弁護士を東京地裁が指定したという形になっている。
山内久光弁護士は、東京第五検察審査会で審査員のアドバイザー役をつとめた審査補助員。今回の事案を熟知している。石田省三郎弁護士はロッキード事件、リクルート事件にもかかわったベテラン。神山啓史弁護士は、石田弁護士とともに東電女性社員殺害事件で冤罪被告の再審無罪をかちとった。
今後とも、この裁判闘争を支援し、原発事故被害者の「正義」を実現しよう。(K)



もどる

Back