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    かけはし2015.年9月21日号

最賃審議への首相の介入


―「八〇〇円」以下の抑制

(「宮城全労協ニュース」287号より)


 全国の地方最賃が確定し、全国平均で過去最大の上げ幅と言われている。しかし生活を支える水準には遠く及ばず、まして多くの先進工業諸国で最賃の大幅引き上げが続いていることとの落差はあまりに大きい。また地域格差がさらに拡大していることも重大な問題であり、全国一律最賃の必要性はなお一層切実となったと言わなければならない。最賃闘争はこれからの労働運動にとって一つの要となる課題となっているが、それを考える素材として以下に宮城全労協ニュース二八七号に掲載された論評を紹介する。(「かけはし」編集部)

宮城地方最賃、「目安」と同額の答申


 宮城地方最賃審議会は八月七日、最賃改正決定の内容を宮城労働局長に答申した。「時間額七二六円(前年から一六円引き上げ)」、つまり「目安」と同額である。
 「目安」答申(七月二九日)以降、さほどの日数も経っておらず、審議内容が地域で報じられることもなかった。
 宮城全労協は、地方審議会に対して行った要請内容(資料)とかけはなれており、最賃審議の公開への改善も示されていないとして、異議を申し立てている。
 政権交代後の二度の最賃審議に比して、関心は大きく低下した。安倍政権の姿勢が影響している。
 首相は七月の経済財政諮問会議で「大幅引き上げ」に言及した。首相の意欲が過去最大の引き上げにつながったと、政府は評価した。しかし、この「介入」は「密室審議」「支持率対策」などの批判や懸念を呼ぶものだった。

内閣支持率の悪化と安倍首相の「介入」

 経済財政諮問会議(七月二三日)には厚労省と内閣府の二つの文書が提出された。
厚労省資料は、最賃の「真摯な議論」を強調しつつ、引き上げによる「労務コスト」増大にも注意を向ける。総じて、労使と公益三者への配慮がうかがえる。
内閣府資料は、「賃金の硬直性」を脱却するために最賃引き上げの役割を認め、「賃金が物価上昇をリードしていくことが必要」であり、「政府が一定の役割を果たすことも重要」だと述べる。中小企業対策の必要性は両者同じだが、内閣府資料は「生産性向上に向けた事業転換」などに踏み込んでいる。
首相は前回会議(七月一六日)で最賃引き上げの経済的な効果をただした。内閣府資料はこれに応えて「総雇用者所得への影響」を数値で示した。「プラス一〇円以下」「プラス二〇円以下」「プラス三〇円以下」に区分し、一〇円と二〇円について、それぞれ金額を試算している。ところが「三〇円」については記述がない。
「目安」は全国加重平均で「時間額一八円」、「七八〇円から七九八円への引き上げ」となった。過去最大の引き上げ額であるが、民主党政権時代の政労使合意でとりあえずの額とされた「八〇〇円」にはとどかない。内閣府資料が二〇円の試算にとどめ、二〇円以上にふれなかった意味はそこにあるのだろう。経営側にとっても顔の立つ額だということか。
毎日新聞は「首相が主導」と題して次のように報じた。
「最低賃金が審議会の『外側』で議論されたことには厚労省内からも『聞いたことがない』と驚きの声が上がった。ある同省幹部は『支持率対策だ』との見方を示す」(七月三〇日)。
日経新聞は経済財政諮問会議での首相「介入」による「異例の展開」を紹介し、「過去最大の賃上げは政権側の実績となり、労組側はお株を奪われた」と解説した(七月三〇日「最低賃金上げ、首相『介入』/支持率低下、焦り隠せず?」)。
過去最大にしては政権側のアピールが華々しいものでないのは、あまりも見え透いた首相の「政治介入」だったからではないか。

GDPマイナス/「肌感覚
の広がり」認めた甘利大臣

 八月一七日、注目のGDP値(四〜六月期)はマイナスだと発表された(速報値)。非政府系アナリストたちは、こぞってマイナスを予測していた。
甘利経済再生担当大臣は「輸出」「消費」「設備投資」を要因にあげた。とくに賃金と消費との関係について、物価の上昇に賃上げが追いついていないという「肌感覚が広がっている」と説明した。
国民多数、とくに「地方」「非正規雇用」「中小零細」は生活苦を訴え、アベノミクスへの不支持を表明してきた。甘利大臣の発言は、これまで各種の世論調査や統計が示してきたことを追認したものだ。
安倍首相は今年になって、アベノミクスは「トリクルダウンの政策」ではないと国会答弁した。首相は(したたり落ちるのを待つのではなく)全体を底上げするのだとして、大企業の労使賃金交渉に「介入」した。
首相は続いて、消費税増税の影響は一年を経て「剥落」し、実質賃金は(四月以降)上昇に転じるだろうという予測を持ち出した。
こうして、実質賃金が上昇していないという野党の「アベノミクス」批判は、賃上げと「剥落」効果なるものによって粉砕できるはずだった。しかし、実質賃金の上昇局面に至ってはいない。
大企業の賃上げ効果は、前年に続いて限定的だった。さらに年金や社会保障の削減などによる生活不安は深まっている。しかも、「はがれ落ちる」のは「前年比」という統計処理上のことだから、消費増税の影響は消えずに生活を圧迫し続けており、消費意欲を減退させている。
甘利大臣発言は、このような経緯のなかでなされたことだ。「トリクルダウン」ではない、「底上げによる好循環」だ、というのなら、最低賃金の大幅な引き上げは当然である。「八〇〇円」は超えないという程度の「政治介入」では打開できない。
五年前の政労使合意、「一〇〇〇円」がとりあえずの「目安」でなければならない。その実現に向けて最賃闘争を広げよう

資料/宮城全労協/2015年8月4日

最低賃金(2015年)改定審議にあたって

宮城地方最低賃金審議会への要請

中央最低賃金審議会小委員会は七月二九日、二〇一五年の引き上げ「目安」を時給一八円増の七九八円(全国加重平均)と決めました。前政権時代、雇用戦略対話での政労使合意が速やかに達成すべきと確認した八〇〇円にも達しない額であり、低所得労働者の生活改善への切実な要求に応えるものではありません。
 私たちは、地方最賃審議会での審議を通して、大幅な上積みを実現するよう求めます。

1.「健康で文化的な生活」から大きくかけ離れた最低賃金

 目安による引き上げでは月額にして一三万円程度であり、貧困ラインとしてあげられる年収二〇〇万円から絶望的に遠いものです。地方審議会は、そのような額が最低賃金とされることを深刻に受けとめ、審議すべきだと考えます。
「先進資本主義諸国」と比較して、日本の最低賃金はきわめて低く抑えられています。格差と貧困の拡大は、低すぎる最低賃金が大きく影響していることも指摘されてきました。
「子どもの貧困」と「シングルマザーの困窮」が大きく報じられました。これらの現実には低すぎる最低賃金が影響しています。
消費税率引き上げと円安による生活物資の相次ぐ値上げは、低所得労働者層の生活に重くのしかかっています。報道各社の世論調査がはっきり、そのことを示しています。
政府調査でも同様です。厚生労働省の国民生活基礎調査(七月公表)では、「生活が苦しい」と感じている世帯が過去最高に達しています。また世帯当たりの平均所得額も前年より少なく、一九九四年以降の減少傾向が続いています。
消費税の影響は一年が経過して「剥落」する、その結果、実質賃金も上がり始めると政府は説明してきました。あたかも消費税増税の影響がなくなるかのような言い分です。しかし、低所得労働者はますます生活苦に追いやられている、それが実態です。
内閣府によれば最賃水準で働く労働者は三〇〇万人から五〇〇万人です。「働く貧困層」の生活改善につながるよう、最低賃金の大幅な引き上げの実現を強く求めます。

2.政労使合意の実現を

 安倍政権は今回の「目安」を成果として強調しています。しかし、春闘での賃上げ「介入」に比して、当初、政府の最低賃金引き上げへの関心は薄いものでした。支持率低下が首相の「介入」の背景にあった、「支持率対策」だったという報道があるように、首相の対応は政治的な意図をもったものでした。
しかも、内閣府は、最賃引き上げ効果の試算において、一〇円と二〇円に限定しており、あらかじめ「二〇円以下」が想定されていたことをうかがわせます(七月二三日、経済財政諮問会議)。七九八円と八〇〇円の差が、意識的に設定されたと疑わざるをえません。
アベノミクスの成果により経済状況は一変したというのなら、二〇一〇年の政労使合意の実現が前倒しされて当然です。

3.最賃格差の拡大は政府方針にも反する

 「目安」によれば、いわゆるAランクが一九円、Bランクが一八円、CとDランクが一六円の引き上げです。これは最賃の地域格差が自動的に拡大することを意味しています。
政府は「地方創生」が重要政策の一つだと強調していますが、最低賃金の格差拡大はその政策と反するものです。
目安どおりなら東京で九〇七円、沖縄など七県で六九三円。差額は二〇一四年の二一一円から二一四円となります。八〇〇円を越えるのは七都府県にすぎず、一六県が七〇〇円に届きません。
東北では宮城(C)七二六円、福島(D)七〇五円、山形六九六円、青森・秋田六九五円、岩手六九四円です。これらの県は過疎や人口減少という構造的な問題をかかえ、さらに東日本大震災からの復興も「順調」とはいえないばかりか、原発事故による雇用や生産の大きな影響を受け続けています。
地域の活性化、東日本大震災からの「復興」推進のために、東北地方の大幅上乗せが必要です。

以上、地方審議会への要請とします。(二〇一五年八月四日

 

9.5 
違憲立法に反対する愛知大集会

六〇〇〇人の結集で成功


新しい人びとも続々参加


 【愛知】九月五日午後五時半から名古屋市の白川公園で「集団的自衛権行使のための違憲立法に反対する愛知大集会&パレード」が愛知県弁護士会の主催で行われ、六〇〇〇人の労働者、学生、市民、弁護士が結集し成功した。
 弁護士会主催の集会は今年に入って三回目であり、この間の愛知県における戦争法案反対集会としては最大の動員数となった。民主党や一部の保守層をも巻き込み、連合も少数ではあるが参加し、愛教組も会場入り口で戦争法案反対を訴えるビラを配布した。

経済的徴兵制
の可能性も―
村橋泰志実行委員長の開会あいさつで集会が始まり、各方面からのリレートークで、中京大学教授の大内裕和さんが学生の奨学金による借金の問題について述べ、イラク戦争でアメリカの貧困層の若者が多く参加した例を出しながら経済的徴兵制が現実に起こる可能性について語り、戦争法案を絶対に廃案にしようと訴えた。また若者を代表して発言した日本福祉大学の石原史歩里さんは「戦争より平和を、軍事より福祉を望んでいる。今まで政治に関心がなかった若者や学生がたちあがっている意義は大きい」と述べた。
さらに生協労働者、大学教員などが発言し、それぞれの立場で戦争法廃案を訴えた。政党議員からの発言では最初に民主党国会議員団七人(議員五人と秘書一人)が勢ぞろいし、大塚参院議員が近藤昭一、鈴木克昌、山尾志桜里の各衆院議員と斎藤嘉隆参院議員、そして議員秘書二人を紹介し法案阻止を訴えた。次に社民党の福島みずほ参議院議員が登壇し元気いっぱいに戦争法案阻止を訴え、共に闘う決意を明らかにした。
さらに日本共産党の本村伸子さんが登壇し闘う決意表明を行った。メッセージの紹介では「維新の党」の牧義夫衆議院議員からの連帯メッセージが紹介され、集会参加者からは大きなどよめきがおこった。最後に出発宣言を川上明彦さん(愛知県弁護士会会長)が行い、二つのコースに分かれてパレードが行われた。土曜の夜の繁華街とあって通行人も非常に多く、圧倒的な注目を受けてパレードをやりぬいた。

愛知の各地で
同時刻に集会
この日は、ほぼ同じ時刻に愛知県下で各区、地域でも独自の集会やデモが複数行われており闘いの広がりを示した。この集会はもともと八月三〇日に行われる予定であったが会場が取れず一週間遅れての開催となったものである。一二万人を集めた国会行動の後で行われた大行動であったが動員は減るどころか、この間の最大規模の集会となって実現した。
若者や学生だけでなく年配者などの今まで参加したことのない人たちも続々と合流している。この高揚を階級的で国際主義に貫かれた闘いへと組織するために全力で闘おう。階級的労働運動の構築、安保体制廃棄、植民地主義と天皇制国家主義解体の闘いをつなぎ合わせ、シングルイシューの限界を突破する大闘争を組織しよう。     (越中)


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