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    かけはし2015.年9月21日号

対話と対決が交差する8月


韓半島の危機 力の国際政治が安着させるか

危機打開の手段ないパク政府 歴史の孤児となる危険


 
 8月4日、非武装地帯韓国側地域で地雷が爆発し、韓国軍兵士2人が足切断などの重傷を負った。韓国軍は10日、地雷は北朝鮮が埋めたと発表し報復措置として11年間、停止していた体制批判の対北宣伝放送を再開した。これに反発した北朝鮮側が20日、韓国側に2度砲撃し、韓国側も対抗砲撃した。北朝鮮側は「準戦時状態」を宣言、一触即発の状況が作り出される中で21日、北朝鮮側が事態解決のための南北高位級会談を提起し翌22日から25日までの長時間にわたる会談が行われ25日未明に合意した。合意には@関係改善のための当局者会談をソウルまたはピョンヤンで行うA地雷負傷者に北朝鮮は遺憾を表明B韓国は宣伝放送を中止などのほか、南北離散家族の再会などが盛り込まれた。以下に紹介する記事は8月22日以前の緊迫した微妙な時期に書かれたものと推定され、事態の推移と予測とは違った部分もあるが、当時の状況と判断を伝えるものとして紹介する。(「かけはし」編集部)
 8月4日の北韓(北朝鮮)の地雷挑発から8月20日の砲撃挑発とそれに続いた軍の対応射撃によって軍事境界線(休戦ライン)一帯で危機の状況が高まっている。執権後半期に入っているパク・クネ政府は南北関係において楽観論をビジョンとして新たな成果を模索しており、北韓は対外貿易の増加によって経済が好転してキム・ジョンウン(国防)委員長の執権基盤が踏み固められ得る状況だ。
 南北韓いずれもが経済に専念しなければならない状況にあって、莫大な損失をものともせず相手方に対して戦争をも辞さずという強硬な軍事的対応の状況にかけ上がっている理由は何なのか。この危機にはいかなる国家の意志が働き、どんな戦略的目標が潜んでいるのか。

北の体制危機と外部への攻撃

 最近の韓(朝鮮)半島状況を見れば、南韓と北韓がそれぞれ異なった戦略的意図を持って相手方を圧迫しているものと判断される。まず北韓は2013年から今日まで、米国と現在の停戦協定を廃棄し平和協定を締結するための大胆な交渉を狙っているものと見られる。13年3月に北韓は「停戦協定の白紙化」を宣言し、軍事分界線一円の非武装地帯(DMZ)に武装兵力を大々的に投入し始めた。この頃、非武装地帯に投入された北韓軍の兵力数は、ある日は5千人を超えていた。これについて同年赴任したチェ・ユニ合同参謀本部議長は国会の人事聴聞会で「今後、北韓の挑発は地上の非武装地帯一円で現れるだろう」と予見したことがある。
それ以降、わが前方警戒哨戒所(GP)に接近する、一名「度胸訓練」を随時に実施し、軍事分界線を越えて来ることが最近になるにつれて持続的に増加してきた。その延長線で8月4日の地雷事件が起きた。これは非武装地帯を重武装地帯に変えていくという意味であり、紛争予防装置としての非武装地帯の効力を中止させるという意図と見なければならない。このような賭けが停戦協定の根幹を揺るがすことになれば米国との平和協定締結の機会をつかむことができるという期待感が、その背景にある。筆者が会った脱北者は「今年初めにキム・ジョンウン委員長が労働党幹部たちに下した教示で『今年は米国と平和協定締結の交渉をする年』だという点を強調した」と語っている。
韓国政府は、キム・ジョンウン委員長の恐怖政治が持続されるとともに北韓エリート階層の海外亡命が続出しているという点に注目している。パク・クネ大統領は6月30日に国家情報院を秘密裏に訪れた席で「北韓体制が不安になっている」と語った。7月20日の統一準備委員会の会議でも「来年、北韓に何らかのことが起こるかも知れない」とし「突然、統一ということもあり得るのでと統一準備委の委員たちにおかれては、しっかり準備されなければならない」との言葉を付け加えた。
最近、国会の国防委員に会った国防部(省)の核心的関係者は「キム・ジョンウンは年齢や地位の上下を問わず、人格を無視する強い調子の発言を繰り返していてエリート階層が恐怖におびえている」として、やはりキム・ジョンウン体制の不安定性を強調した。
これと共に、中国との関係が極度に悪化した北韓が中国との国境地帯に北韓軍を増強する異常動向が感知され、韓米情報当局を緊張させている。これまた北韓体制の危機の一環だと見た青瓦台と国防部は、最近の北韓の挑発が北韓体制内部の危機を外部への攻撃によって解消させようとする意図だと見る。いつ滅びるとも知れない北韓に生半可に対話や協力を推進することよりも持続的な圧迫を駆使して統一の機会をつかむ方向へと事実上、対北政策が流れてきた訳だ。

軍事的緊張と耐久力競争

 結論から言うならば、北韓式の大仰な振る舞いや南韓式の北韓崩壊論は今なお現実性の希薄な「希望的思考」のレベルだ。だが、そのような希望的思考が今まで南北韓の政治権力をして相手方を極端な観点によって見さしめる一種のモルヒネとして作用したし、その結果として南北韓の関係は梗塞化されてきた。
今回の地雷事件に続いた南北韓の砲撃戦へとつながっている戦争の危機の局面は相手方に対する武力示威の水準を漸進的に増加させ、少なくとも1〜2カ月の間、膠着状態が続く様相を見せるだろう。希望的思考に慣れきった南北韓の政治権力は相手方が破局へと陥る結末を頭の中に描きつつ、軍事的緊張を長く耐える耐久力競争に突入した。この軍事的緊張局面を長く耐えぬくことのできる側が勝者だと見ているのだ。我々が断固とした対応を行い軍事的緊張を辞さないならば、そう遠からず相手方が屈服するだろうという期待だ。
北韓の場合、8月20日に「完全武装状態の準戦時体制」を宣布したし、韓米は地雷事件が発表された8月10日、全軍最高警戒態勢に続き20日には6軍団地域に非常事態である「チンドッケ・ハナ(作戦レベル名称)」を発令した。このような非常措置は少なくとも1カ月以上の長期対峙局面に備えるものだと言えよう。また相手方に対する圧迫を強化するために北韓は首都圏を脅かす長射程武器の射撃準備態勢を取るものと見られる。後方にいた移動式車両の前身配置を通じて短距離ミサイルを発射する核ミサイルの恐怖も覚醒させることができる。
反面、韓米は対北監視態勢であるウォッチコンを格上げさせて、地上軍ばかりではなく北韓を精密に打撃する航空戦略・海上戦略を主軸とした地・海・空合同戦略を誇示することによって北韓に「指揮部壊滅」という恐怖を強要するだろう。共に南と北は、この際の緊張局面を活用して戦闘準備システムのすべてを1度、稼働してみる点検の機会としても活用中だ。
今回の戦争の危機は過去20年間の主要な戦争の危機とは画然と異なる特徴を示している。
第1には、戦争が起こるほどの危機でもない前方地雷事件に国連司令部が危機管理の一切を引き受けたという点だ。戦争が起きるかのようだった2010年11月23日の延坪島砲撃事件の時は「南北韓の問題」だとして最初から知らないふりをしていた国連軍司令部だ。当時、わが合同参謀本部とウォルター・シャープ司令官の間には全部で11回の電話通話がなされた。ところで、返ってきた答弁は「撃つにせよ、そうでないにせよ韓国政府が判断して行え」というものだった。
ところが今回の地雷事件の場合、国連軍司令部は直接調査して声明を発表し、対北対話の提案を行ったし、米国防省がこれに同調する声明まで発表した。国連軍司令部の調査ならびに声明のゆえに、わが政府の公式発表や政府声明がそれ以降に出てくるという奇妙な現象も現れた。青瓦台の核心的関係者は8月初め、地雷事件に対する韓国政府の対応が遅かった理由について、「国連軍司令部からの要請があったため」だと明らかにした。8月20日の砲撃戦以降には韓米共同局地挑発計画が初めて適用された。

対話を有利にするための脅し

 このような現象は韓国軍単独で指揮権を発動することのできる余地を大幅に蚕食しつつ南北韓の極端な衝突を遮断する肯定的効果もある。国連軍司令部が危機管理を主導するので韓国政府の存在感は、かなりの程度に弱化した。韓国軍単独で北韓の戦略的攻勢に耐えることが難しいという不都合な現実は、韓国政府が当面する危機を解消するために、国連安全保障理事会を初めとする国際社会に北韓の侵略性を告発する行為へと踏み出させることになるだろう。パク・クネ大統領は9月の中国訪問によって北韓に孤立感を強要しつつ、韓中日首脳会談を通じて北韓に対する機先制圧を試図するだろう。
第2には、戦争の危機と対話が同時に試図されるという矛盾した状況が続いている、という点だ。北韓の地雷挑発直後の8月5日から10日まで、わが政府は1日だけを除いて毎日、北韓に高位級の対話を提案したし、光復節(8月15日)の祝辞でもパク・クネ大統領は北韓に対する糾弾よりは対話に重きを置いた。国連軍司令部と米国務省は8月10日、北韓に将軍クラスの対話を提案した。北韓は砲撃戦が繰り広げられた8月20日にキム・ヤンゴン統一戦線部長が、キム・グワンジン安保室長に対話で解決しようという書信を送ってきた。結局、敵対的行為者たちの間で共に対話を叫びつつ、その対話を有利に展開するために軍事的脅しを加えるという二重の状況が続いている。

安保の危機と株価暴落


それならば一定の名分さえ与えられるならば、この危機は新たな対話の機会として進展する可能性が高い。だが青瓦台や国家安全保障会議(NSC)は8月20日午後5時以前に到着した北韓の対話の書信についてのブリーフィングを省略し、それよりも遅く到着した北韓中央軍事委員会の「48時間以内の拡声器撤去通告」を主たるニュースとして発表した。北韓の書信があったという事実は8月21日に対北強硬世論をかもし出す上で相当部分の影響を及ぼしたと見なければならない。地雷事件当時、北韓との対話に積極的だったわが政府が8月20日のNSC常任委員会以降は膺懲(ようちょう)の側に旋回したのではないのかとの疑いの残るところだ。
第3には、今回の韓(朝鮮)半島の危機が経済に及ぼす影響が以前とは違うという点だ。これまでの2度にわたる延坪回船天安艦、延坪島砲撃の当時には安保の危機が株価の暴落や経済の沈滞にはつながらなかった。2013年3〜4月の戦争の危機は米国防衛産業の株式が暴騰し、株式市場に肯定的影響を及ぼすまでに至った。ところが今回の安保の危機は、この前に中国発のショックによって既に揺らいでいた株式市場に否定的影響を与え、8月20日の株価暴落へとつながった。外国人投資家たちが韓国から撤収する名分を探している時、今日の危機状況はまさにピッタリの名分として作用している。この点は経済発展に専念しているパク・クネ政府にとって執権以来、最も困難な時点が迫っていることを予告している。経済と安保の両面において激しい挑戦に直面することになる現政府は、北韓に対する戦略的判断を改めて要求されることになるだろう。
第4には、今回の危機を通じて北韓を初めとする周辺国が東北アジアにおいて一斉に力を押し立てた新たな国際政治の様相へと進むだろう、という点だ。今回の韓半島の危機はアジアに軍事力を集中したがっている米国、対外的に力を誇示している中国、平和憲法の殻を破り軍事大国へと浮上している日本、東北アジアの情勢に新たな介入を試みているロシアをみな刺激し、周辺国が力を誇示するあり方を促進することになる。もしかしたらパク・クネ政府は歴代韓国政府の中で、周辺国がすべて力を誇示しつつ攻撃的な民族主義を勃興させる無政府的な国際政治の舞台では最初の政府となるだろう。韓半島の危機は、そのような力の国際政治を定着させる核心的要因になる。
このような諸特徴を勘案する時、今回の韓半島危機の否定的効果は長くひきずって、韓国が歴史の孤児に転落するかも知れない極めて危険な事件だ。こうなったのはパク・クネ大統領自らが標榜した韓半島信頼のプロセスがキチンと実行できないことによって、現在の危機を打開する政策的手段が枯渇してしまった結果だ。北韓に対する主導権を行使することのできない韓国が今回の北韓の脅しをキチンと管理することのできない理由が、ここにある。(「ハンギョレ21」第1076号、15年8月21日付、キム・ジョンテ「ディフェンス21プラス」編集長)

北韓の準戦時状態宣布の事例

1968年 プエブロ号拿捕事件
1976年 板門店・斧蛮行事件
1983年 チーム・スピリット韓米合同軍事訓練
1983年9月 ビルマ(ミャンマー)アウンサン事件
1993年 チーム・スピリット韓米合同軍事訓練および核武器非拡散条約脱退宣言
2006年7月 ミサイル試験発射後、国連安保理決議案採択
2010年11月 延坪島砲撃事件
2015年8月20日 非武装地帯(DMZ)地雷挑発および砲撃挑発事件

【訂正】本紙前号(9月14日付)5面ISに関するノートの下から4段目右から13行目の「GDP」を「HDP」に、6面EU記事上から4段目左から12行目の「ECB」を「欧州中央銀行(ECB)」に、8面上から3段目右から18行目の「国情委」を「国情院」に、8面下から3段目右から12行目の「監視よう」を「監視しよう」に訂正します。


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