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    かけはし2015.年10月5日号

喜ぶべき政治的激変が起きた


英国

労働党党首に「極左」就任 

シリザ、ポデモス、その他に
続く同質の民衆的動き始まる

ソーシャリスト・レジスタンス


 今年五月総選挙の大敗直後の党首辞任を受けて行われた労働党党首選は、議会投票における党指導部の指示に対する記録破りの造反実績をもつ「極左」、ジェレミー・コービンの立候補により、英国の政治エリートを驚愕させる大衆的な熱気を日々かき立てる形で進み、それはついに圧倒的な票差でコービン選出に導いた。英国政治と民衆の運動には新しいページがめくられたように見える。以下はそれがどのような現象か、そして左翼に何を提起しているか、を論じている。(「かけはし」編集部)

多様な大衆的抵抗運動を背に


ソーシャリスト・レジスタンスは、労働党党首としてのジェレミー・コービン選出を熱烈に歓迎する。そのような結果は、左翼の再創出と再形成に向けた潜在力と一体的な英国政治における政治的地震を意味し、五月七日総選挙における保守党の勝利の後には想像不可能のように見えた(注一)。
彼の精彩を欠く対立相手に対する第一ラウンドでのコービン勝利の圧倒性は、このキャンペーンを通じて彼の理念と彼の実績を成功を見ることなく掘り崩そうと再三再四試みたニューレイバー機構(労働者基盤の影響力をそぎ落とし中間層に狙いを定めたブレア以後の労働党を指すものとして、ニューレイバーとの呼び名がしばしばつかわれている:訳者)に、破壊的な強打を加えた。こうした注目に値する展開の背後には支持の多様な高まりがある。
学生や若年労働者に対する諸攻撃を通して保守党によってゴミ捨て場に投げ出された若者たちが、ここで傑出した役割を演じたが、それには驚くようなものは何もない。
手当受給権が大規模な攻撃の下に置かれている障がいを持つ人びとは、そうした冷酷な諸攻撃に反対する彼らのキャンペーンの中で、ジェレミー・コービンがともに歩を並べてきたことを記憶にとどめている。
パレスチナ民衆と連帯して立ち上がってきた人びと、トライデント(注二)反対のキャンペーンを続けてきた人びと、さらに平和運動の一部と自らをみている人びと、こうした人びとは、ジェレミーが彼らのもっとも信念の固い支持者の一人であり続けたことを知っている。
ストライキ権に対する保守党の諸攻撃に反対している労組活動家たちも参加している。UNITE、UNISON、CWUのような大労組の支持は、中心的なものとなった(注三)
コービンのキャンペーンにおける強さの第一の可視的な標識となった一つは六月二〇日に行われた「民衆会議」の大規模な行進だったが、それはまったく偶然ではなかった(注四)。
コービンの必然的な連携者には、無数の異なったやり方で難民と連帯して行動してきた人々が含まれている。政府は戦争を逃れたこの人びとを支えるためにもっと多くのことをやらなければならないのだ(注五)。

オルタナティブへの叫び可視化


コービンの高波が映し出しているものは、ギリシャでシリザの発展に、あるいはスペインでポデモスの急速な成長に導いたと同じ過程、さらには米国におけるバーニー・サンダースキャンペーンや英国での緑の党の高波と同じ過程だ。それは、緊縮に対する、そしてコービンキャンペーンの場合にはその中心に反戦の動きをも一体化した、実体あるオルタナティブを求める始まったばかりの叫びだ。
こうした諸々の発展には、それ以前に登場した反グローバリゼーション運動と共通した諸要素があるが、しかし今回のものは、当時急進化の局面を特徴づけた反政党的理念を克服している。
そこで最大の要素を一つあげれば、おそらくそれはスコットランド独立の国民投票であり、そこで特に若者たちの間に起きた左翼に向かう巨大な急進化だ。それは、総選挙キャンペーン期間中の緑の党、スコットランド国民党(SNP)、プライド(ウェールズ国民党)間の反緊縮連合がもたらした波及力、その後の英国議会におけるSNPの波及力を反映している。ちなみにその議会でSNPは、キャメロン(首相)とオズボーン(財務相)に対する唯一の真の反対をしばしば突き出した。
それは、総選挙後の労働党指導者たちのへつらうような対応に反対する反応であり、その対応は、選挙敗北はミリバンド(労働党前党首:訳者)が左翼に偏りすぎたためだった、今必要なことは保守党の政策を大量に取り入れること、というものだったのだ。
先の対応の後には、等しく注目すべきハリエット・ハーマン(エド・ミリバンドの選挙後の辞任を受けた労働党首代理)の決定が続いた。それは、第二子で打ち止めとする非道な措置(一家族での第三子とそれに続く子どもには子ども手当を支給しないという)、若者からの住宅手当取り上げ、さらにもっと多くをもって、一三〇〇万以上の家計の生活に実体的な怖れをもたらすことになった福祉法が含まれているにもかかわらず、予算案への棄権を呼びかけたことだ。
コービンの対立候補者は、彼の考えは常軌を逸し、首相に選出される可能性はない、と論じた。コービン自身が得た成長を続ける多数派、また緑の党議員であるカロリン・ルーカスのそれやもっとも鮮明にはこの五月におけるSNPの圧倒的成功は、急進的諸理念は幅広い多数を得ることはできないという考えが一つの神話である、ということをはっきり示している。
主流諸政党間並びに彼らの縁故主義や腐敗の間に違いがあるとはみてこなかったがゆえに投票しない、そうした人びとに声を届かせる、これがジェレミー・コービンが進めた考えだ。彼は、住宅や教育に関し暮らしにとって基本となる回答におけるブレアの主張の下で、労働党から見捨てられた人びとを、UKIP(英国独立党、英国で台頭著しい極右民族主義政党:訳者)から取り戻すことを可能としてきた。
彼のキャンペーンの勢いは、議論が行われさえすれば可能になることを示している。

運動の強調と議論推進を歓迎


ソーシャリスト・レジスタンスは、コービンが政策の全領域について、そこにはわれわれが彼と全面的に一致してはいないものも含まれるが、大議論を始めようとしている事実を歓迎する。しかし、緊縮反対の、彼の綱領を基礎として彼が率いる一つの政権は、人びとの圧倒的な多数にとっては――この国でまた世界中で――、保守党の候補者たちの政権は言うまでもなく、敗北した労働党指導部のそれよりも、限りなくよりマシとなるだろう。
コービンは、多くの人々には常識と見える考え方を押し進め、彼らがより良い何ものかを生み出す一部となることができる、という希望を与えている。彼の話は人びとを前にしたもの、あるいは彼らに対してのものですらなく、彼らと共に行われている。逆に何千人という人びとに達しているものは、民衆より先に利益があるという考えこそ信じがたい嘘、という考えなのだ。
彼の詳しい政策文書の多くは、二一世紀に向けてあらためて旗印とされトニー・ベン(労働党左派としてブレアと対立した著名な指導者:訳者)の考えと共通するものを多く含むが、支持者たちに彼らのコメントおよび補足を送るよう求めている。しかしもっと重要なことはおそらく、集団的行動――情勢を転換できる大衆運動の建設に関する――の強調だ。そしてそれは、この驚くべき夏を通じて疑いなく始まった歩みだ。
理念かつ大望としての社会主義は、新たな正統性を得ている。われわれの共同体と職場における集団的組織化は、一つの理念として、またわれわれが今もっているもの並びにわれわれが必要とする要求を防衛する目標として、その双方で強化されている。
トライデントから交通にいたるまで、移民問題から私有化にいたるまで、そうした広がりをもつ諸問題に関し、左翼はわれわれの観点を持ち出す場を与えられるだろう。これは同時に、様々な違いを持つ左翼に関し、つまりどのような社会主義構想か、そしてそこにいたる最良の道はどういうものか、を徹底的に論争するより良好な機会を生み出している。
非民主的な完全小選挙区制早期放棄の約束が新たな有権者の支持に道を開くと思われるからには、われわれは、コービンに選挙制度改革に踏み出すよう強く勧める。われわれはまた、スコットランドの独立への支援が前向きな動きとなるだろう、とも考える。

コービン押し上げた波vs労働党


党首選キャンペーンを通じて続いた試みは、労働党内外の力ある者たちの利害によるコービンへの中傷だった。しかしここまで彼らは、彼の選出を阻止することができていない。
労働党内のそうした者たちは、彼を取り囲む運動の強さのゆえに、選出直後に彼を辞任に追い込むという当初の計画を変更せざるを得なくなったように見える。しかしもちろんそれは、彼らの目標が幾分かでも弱められようとしている、ということを意味しているわけではない。
労働党内右派は、彼らの仲間の党首が次期総選挙に彼らを引き連れることができるように、二〇二〇年よりかなり前に彼を取り除こうとの決意を保持している。誰を軸に彼らが団結するか、それを知ることは難しい。彼らは今回そうすることができなかったからだ。
メディアと国家――英国国家はハロルド・ウィルソン(一九六三年から一九七六年までの労働党党首、六四年には首相に就任:訳者)を、モスクワのために働いており、一つの脅威だと考えた――の力ある者たちは、ジェレミー・コービンに心を開くつもりなどない。
コービンのキャンペーンに群がった何万人という人びとは、この社会を動かすやり方を変えたいと思ったがゆえにそうした。彼らの多くは、緊縮反対のまた社会的公正を求めるキャンペーンに、既に参加している。多くは学生活動家や労組活動家だ。しかし、コービンの高波から生まれ出た集団行動や急進的な諸理念に対して、新たな聴衆が現れることになるだろう。建設的な変革に向け活動するあらゆるキャンペーン、あらゆる組織は、こうした人々が確実に喜んで迎え入れられ、巻き込まれるようにする必要があるだろう。
コービンが今率いている労働党は、彼が入党した労働党ではない。労働党の民主主義、一九八〇年代に左翼の核心的基軸であったものは、綱領四条(訳注)の象徴的な転覆によってだけではなく、決定作成過程に対する草の根の関与に向けた他の諸々の仕組みの抹消によっても、ブレア派により破壊された。労働党大会は、党員がたとえば政策を決定する場というよりも、むしろある種のメディア向け集会のようなものに成り果てた。こうした変革は、労働党員からニューレーバー機構と連携した諸労組内の労働党支持者へと権力を移す上で、本質的なものだった。
そしてもちろん今回のキャンペーンを通じてわれわれは、何千人という人びと――おそらくそれらの圧倒的多数はコービン支持者――が投票からはじかれたということを見ることになった。その理由は、彼らが明らかに「労働党の諸価値」を支持していない、というものだ。これらのいわゆる諸価値の定義は、全面的にあまりにしばしば、緊縮のエリートを支持し、諸々の切り下げと私有化を推し進め続けてきた人びとの手中に握られてきた。

大衆運動建設の中で共に決起を

 ブレアが労働党の民主主義を閉じることに成功して以来、われわれは政治的オルタナティブを押し出す構想を支えてきた。われわれは、統一左翼が二〇一三年はじめ創出に向け歩みを始めて以来、そこに精力的に関与してきた。そして今もそこに全面的に力を注ぎ続けている。
統一左翼はコービンキャンペーンを歓迎し、数多くの問題に関し、コービンがそのために立ち上がっているものと統一左翼が押し出しているものとの間には大きな重なりがある、ということに留意してきた。あり得ることだが、統一左翼が占拠しようと挑戦している空間を、変革を遂げた労働党が埋めるかもしれない。しかしそれは、コービンが指導的立場に立ったとしても目下の情勢ではない。
コービンは再度綱領四条を論争の課題に挙げることについて話してきた。これもまた、社会主義――再び広められる上で彼が助けとなった一語――によってわれわれが言いたいことを確かめる歓迎すべき機会となるだろう。
そうした変革の駆動源の一部となる方法で労働党を転換する上では、はるかに多くのことが必要となるだろう。あらゆるレベルにおける真の民主主義と説明責任が、一九八〇年代にはまだ到達していなかったやり方で、導入される必要があると思われる。諸々の禁令、掟、また排除はひっくり返される必要があるだろう。
政治における沈黙は危険なことだ――特に今年のような夏の後では――。しかし、この種の変革がなければ、われわれにとっての労働党は、コービンの勝利をもってしても、戦争と私有化の政党であり続ける。
われわれは、緊縮と戦争とレイシズムに反対し国際主義を求めて闘うために、大衆運動を建設するジェレミー・コービンと彼の支持者と共に、全面的に堂々と立ち上がるだろう。そして幅広い労働運動内部での彼を辞任させようとする内戦においては、われわれは絶対的に彼の側にあるだろう。(二〇一五年九月一三日)

▼ソーシャリスト・レジスタンスは、スコットランド社会党、社会主義連合、レスペクト党に反映された左翼再編を支持した英国のマルクス主義者によって二〇〇二年に創立された。その支持者たちは二〇〇九年、この組織を第四インターナショナル英国支部として再創立した。

注一)「ジェズ・ウィー・キャン」は、今回のキャンペーンの特にツイッター上の主要スローガンの一つだった。ジェズは、ジェレミーの愛称。 
注二)英国の核ミサイル原潜、更新が予定されている。
注三)英国における最大労組の三つ。UNITEは多くの部門を横断して組織し、UNISONは公共部門、CWUは郵便・通信部門の労組。
注四)総選挙後最初の反緊縮全国抗議行動、約二五万人が決起。
注五)コービン選出の日(九月一二日)には、「難民たちはここで歓迎する」とのスローガンを掲げた、約五万人の大規模デモがロンドンで見られた。コービンは受諾演説で、彼が常に温かく迎えられたこのデモに大会会場から出かけるつもりだ、と語った。(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年九月号)

訳注)生産・流通・交換手段の共有を基礎とした、生産の民衆管理に基づくシステムを主張した条項で、第一次世界大戦後に導入された。労働党が社会主義を約束した条項と広く理解された。しかしこの条項は、党首に選出されたブレアの主導の下に、一九九五年、抜本的に改変され、これを転換点として労働党はニューレイバーと呼ばれることが多くなった。本文にもある通り、コービンはそれを復活させる意志を示唆している。


【訂正】本紙前号(9月28日付)3面下から2段目左から9行目の「採決しよとしている」を「採決しようとしている」に、同3面最下段左から7行目の「平和続けていこう」を「平和を続けていこう」に、4面9・18〜19集会記事の下から2段目右から7行目の「SEALDs」を「SEALDs」に、5面下から5段目左から3行目の「取り組むこと強調」を「取り組むことを強調」に、同じく5面下から2段目左から24行目の「組織的意識的も鮮明」を「組織的意識が鮮明」に、6面編集部前書き右から11行目の「以下は」を「以下に」に訂正します。


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