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    かけはし2015.年10月12日号

戦闘的左翼勢力の共同行動を


ギリシャ

DEA(国際主義労働者左翼)声明

犠牲が大きすぎたチプラスの勝利

緊縮に反対する統一的な綱領が必要


解説

民衆連合は議席を得る
に必要な3%に達せず

 アレクシス・チプラスのシリザは九月二〇日の総選挙で、この党を初めて権力につけた二〇一五年一月総選挙と近い数の議席を国会に確保するという、めざましい勝利を収めた(得票率約三五%、第二党のNDに約七%の差をつけ、伯仲との事前予想を覆した:訳者)。
いわゆる「別のメモランダム」――ギリシャの病んだ金融システムを救済する見返りにEU諸政府と金融制度が求めた苛酷な緊縮措置――をチプラスが交渉しているにもかかわらず、この好結果(チプラスにとって)がもたらされたのだ。
チプラスは、新しい緊縮プログラム――それを引っ繰り返すためにシリザが選出されたのだが――を批准するために、以前のメモランダムに合意した政府を率いていた中道右派の新民主主義(ND)や中道左派のPASOKなど、緊縮支持政党の支援を必要とした。
先月の最終的な議決では、議会のシリザメンバー四〇人近くが、脅迫者たちへのチプラスの降伏に反対した。チプラスが新たな選挙への引き金を引くために辞任した時、この議会反対派は、民衆連合と名付けられた新しい左翼連合の核となった。そしてこの連合は、ちょうど四週間後に設定された投票に向けて共にキャンペーンを行おうと急いだ。しかし民衆連合は、議会に議席を得る資格として必要な得票率三%には達しなかった。
国際主義労働者左翼(ギリシャ語頭文字によるDEA)は、シリザの共同組織者であると共に、シリザ内左翼プラットホームの主要な一勢力だった。今彼らは、民衆連合の新たな左翼的挑戦に参加している。ここに紹介する声明は選挙後に公表され、その結果を振り返ると共に、前に控える左翼の任務を考察している。(ソーシャリスト・ワーカー〔米国〕)


マス・メディアは
チプラスを支援
1.九月二〇日の選挙はアレクシス・チプラスが主導したものだったが、彼は次に挙げる二つの目標を達成しようと狙った。
a)まず、力関係を確保し、七月一三日に債権者団との間で署名した協定の実際の内容を、彼らの苦い経験を通して労働者と民衆諸階級が実感する以前に、シリザ率いる政権の生存能力を再確立することだ。
 この努力においてシリザ指導部は、EUの指導者たちから全面的に支援を受けた。それは、選挙は「解決の要素であり危機の一部ではない」とのドイツ首相アンゲラ・メルケルによる象徴的な声明によってはっきり示された。シリザ指導部はまた、ギリシャマスメディアの圧倒的多数の支援をも受けた。それらは、選挙前の公衆向け討論を組織し推進する形で決定的な役割を果たした。実際その討論では、新しいメモランダムの問題――それこそ政治闘争の主要な問題だ!――に関するほとんど完全な沈黙があった。
b)チプラスの第二の目標は、そのために彼が払わざるを得ない犠牲がたとえシリザの組織的解体になろうとも、彼の党の左翼を粛清することだった。この目標においてもチプラスは、ブルジョアマスメディアからの全面的な支援を再度受けた。それらメディアは、離党の波の規模や、この間の全年月シリザを建設してきた巨大な数の活動家――その中には、党の書記、選出された政治局メンバーの半数、中央委員会メンバーのかなりの部分、さらに、地方支部や職場支部の数多い指導的幹部がいた――の撤退を隠しつつ、左翼プラットホームを情け容赦なく中傷した。
 急進左翼の統一的な組織としてのシリザは今日、首相と彼の追随者間のある種曖昧で公言されない「関係」を基礎とした、その指導者の周囲に完全に構築された党、で置き換えられている。

投票数は前回
より 万票減
2.このシリザ指導部の戦略にとって主要な前提は、政治的支持を構成するシリザの基盤を含んで、社会運動で活動していた人びとの間に広がっていた失望と疲労だった。
それこそが、新メモランダムを正当化する「オルタナティブはまったくない」論の主眼点であると共に、目標だった。このメッセージは、七月一三日に署名された新たな恥知らずなメモランダム批准という合意を軸に議会内に構築された五党連合――シリザ、ND、PASOK、独立ギリシャ人、ポタミ――と並んで、シリザの指導的メンバーによって、一種の呪文のように、変わることなく繰り返された。
この政策の結果は前例のない棄権だった。投票数は、二〇一五年一月よりも八〇万票も少なかった。政治生活の「アメリカ化」〔現存政党からは疎外されていると感じている有権者、また政治に無関心な有権者のかなりの部分による、高率な棄権を意味する――英訳者〕は今、見ることのできる脅威となっている。悲劇的なことだがこの脅威は今、急進左翼……を代表すると主張する一政権の諸行動においては、その結果であると共に道具ともなっているのだ。
この点に、ヴァシリス・レヴェンティス〔彼のテレビ番組を見苦しく攻撃的な言葉で政治家を攻撃するためにつかっている取るに足りないテレビタレントで、二〇年以上もの間あざけりの対象だった――英訳者〕率いる奇っ怪な中道連合が一回でかなりの票を得たという事実を加えれば、われわれは次第に迫るもう一つの危険から警告を受けなければならない。つまり、シリザが生み出した失望は、ギリシャの歴史ではこれまで一度も経験したことのない、政治的しらけやシニシズムというレベルへと移し替えられる可能性がある、ということだ。
社会運動や左翼で活動していた人びとの希望や期待に起きたこの後退の背景は、二〇一〇年から二〇一二年の時期後の、大衆的闘争の後退、およびわれわれは選挙という手段を通せば緊縮に挑むことができるという幻想の高まりだ。
これを背景として、国民投票に込められた政治的メッセージの完全な逆転――その時、七月五日の労働者階級の大量「ノー」投票は、シリザを含む主流諸政党指導者たちの会合を経て七月六日恥知らずな「イエス」に、そして一週間後のチプラスによる新メモランダムへの署名に変えられた――は、政治的気分における、および――少なくとも一時的な――大衆意識における一つの変化を刻み付けた。住民の大きな部分は、シリザの反緊縮構想は崩壊しつつあると見つつ、メモランダム転覆は不可能と確信し始めた。この部分は、「人間の顔をした」メモランダム履行に挑戦することがただ一つの現実的なオルタナティブ、ということを受け入れ始めることになったのだ。
九月二〇日選挙のアレクシス・チプラスの勝利を生み出したものは、当時政府を支配したNDとPASOKによる諸政策の蛮行に対するつい先頃の記憶と並んだ、この退却だった。

ユーロ圏離脱を
過剰に強調し過ぎ
3.これは大きすぎる犠牲を伴った勝利だ。チプラス政権は、一〇月をスタートに、新メモランダムの反労働者、反民衆「改革」即時実行という義務を負うことになるだろう。社会保障システムの解体、低所得階級に対する前例のない課税攻撃、そして私有化の大波が来ようとしている。メモランダムが指令する諸政策の結果から貧困層を保護するとされるそれに応じた諸方策追求に関する嘘は、投票以前の時期には助けとなったとはいうものの、今はそれらの助けも終わりとなっている。
アレクシス・チプラスを中心とする指導的グループはこの点で、現実――彼らは彼らが署名した協定の内容に向き合わなければならないだろう――を前にすることとなる。これこそを理由として――少数派としての独立ギリシャ人を連立相手とした「安定」政権形成能力に関する大いなる自讃にもかかわらず――彼らは、PASOKとの将来における連携に向けすでに道を掃き清め終えた。さらにNDを含んだもっと幅広い「挙国一致」政権さえ、テーブルから下ろされてはいない。
こうした見通しを前にした時、われわれに唯一あり得る対応は下からの闘争、すなわち、労働者の諸権利と社会的諸権利防衛の、ストライキ、デモ、占拠、さらにそれ以上のものだ。九月二〇日の選挙結果によってつくり出されたシリザ政権の正統性というイメージを砕くために、これらの闘争は左翼の活動家によって断固として支援されなければならない。
直近の経験がわれわれに示していることは、こうした闘争を勢いづかせるためには、それらは政治的表現を必要とする、ということだ。それらは、緊縮への挑戦を組織することを目標とする政治潮流を軸に連合しなければならない。この点で、チプラスの策謀に抵抗し、それに反対して立ち上がった左翼の部分には極めて特別な任務がある。

4.この責任の大きな部分は民衆連合――シリザ左翼の大部分と反資本主義左翼の諸組織並びにその活動家たちによって生み出された、統一戦線の政治構造――の肩にかかっている。
民衆連合は九月二〇日の選挙に敗北した。その得票率は二・九%だった。それはほんのわずかの票数によって、議会に代表を得るための閾値、三%に達することができなかった。
この敗北には客観的な理由がいくつかある。われわれには、新しい政治構造を作り上げる上で、それと同時平行で全国レベルの選挙運動をそれを始める資金がまったくないまま組織する上で、一ヵ月の時間しかなかった。敗北の可能性は、はじめから変わることなく大きかったのだ。
しかし、同じく重要な主体的な過ち、政治的な過ちもあった。EU指導部への忠誠は義務的だと強調したわれわれの政治的敵対者からの圧力を前に、われわれはユーロ圏離脱を過剰に強調した。ある程度、われわれの全体的な議論を構成するこの必要な部分は選び抜かれ、緊縮に反対する統一的な階級運動を組織するもっと全般的な綱領、そして、社会主義的解放に向かう反資本主義綱領、こうしたもの以上に掲げられた。それはチプラスとマスメディアへの一つの贈り物となった。そして彼らは、われわれを「ドラクマ(ユーロ採用以前のギリシャ通貨:訳者)左翼」として中傷するあらゆる機会をつかもうと求めた。
こうしたことすべてにもかかわらず、民衆連合は一五万二〇〇〇票を得た。そして労働者階級の運動と左翼の数千人の活動家および経験を積んだ古参の組織された層をすでに結集している。これはわれわれに、最初の戦闘での敗北にもかかわらず、今後の戦争に取り組む強さを与えている。
もちろんこれが実現するためには、われわれは効果的で民主的なやり方で、選挙以前の短い期間では必然的に脇に置かれた、民衆連合に関する政治的かつ綱領的な諸問題を解決する必要がある。

「ナチ勢力」が
第3政党に
5.共産党(KKE)はその得票率を、今年一月の五・四七%から今回の五・五九%へと僅かだが上げた。しかし、シリザが危機にあり分裂したという状況で、その上チプラスが厳しい緊縮を含んだ新メモランダムに署名した直後だったという状況で先の僅かな上昇が起きたという事実は、この党がそれを祝う理由などまったくないということを示している。KKE指導部の政治は、ほとんどないような好機に乗ずることができなかった。
KKEは投票日にいたる時期を通じて、シリザ左翼反対派の票すべてを自身のものと主張できる期待の下に、その攻撃をほとんどもっぱら民衆連合へと狙いをつけた。この諸戦術は、何らかの種類の民衆連合形成に向けた主導性に関して、党機関紙一面を飾った諸々の約束すべてを疑問符の中に残している。

6.より小さな反資本主義連合であるアンタルシアもまたその得票率を、今年一月の〇・六四%から今回の〇・八五%へと僅かながら引き上げた。アンタルシアの主要構成組織の一つである新左翼潮流(NAR)は選挙後の声明で、その目標として「反労働者諸方策の今後の嵐を覆すための幅広い戦闘的戦線……共産党や民衆連合を含む戦闘的左翼の全部分からなる共同行動への注力」を設定した。
問題は、この声明が選挙の一日後に出され、その三週間前ではなかったことだ。二〇一五年九月の選挙戦では、「戦闘的左翼諸勢力」は、それが必要とされた共通の対応を提供することに失敗したのだ。

7.ナチ勢力である黄金の夜明けは、得票率六・九五%で第三党となった。その得票率上昇は棄権の水準を理由に起きたことだった。つまり実際には、それは今年一月後に九〇〇〇票失った。しかしそれでも、それが選挙における支持を安定させた――その指導者がパヴロス・フィサス殺害に対し「政治的責任」を公然と引き受けたほんの二、三日後――という事実は危険を示すものだ。緊縮逆転のためのわれわれの闘争、メモランダムに反対するわれわれの闘いは、資本家の貪欲を打ち砕くためだけではなく、同時にファシストの脅威を粉砕するための闘いでもある。
(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年九月号)

 



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