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    かけはし2015.年10月12日号

セヌリ党が通秘法改正案を提出


通秘法が査察に翼を付ける

市民団体は4月「サイバー査察禁止法」立法請願


 監聴(盗聴)装備の設置を通じた携帯電話に対する実質的監聴は、国家情報院の長きにわたる宿願だった。与党セヌリ党は国情院のこのような要請を受け入れ通信秘密保護法(通秘法)改正を試図し、これに対し新政治民主連合など野党は国情院の無制限監聴が行われかねないとして憂慮を表明してきた。

「国情院の手足が縛られている」


現在も検察や国情院は裁判所の令状を受ければ携帯電話など、有線・無線通信の通信制限措置(監聴)が可能だ。通信秘密保護法では重大の捜査、国家安保(スパイ、テロ行為など)犯罪などに、監聴を申請できる要件を制限している。一般重大犯罪の場合、最大2カ月、国家安保の事案は最長4カ月まで監聴することができる。一部の緊迫した状況の場合、直ちに監聴することができるが、監聴を開始してから36時間以内に裁判所の許可が得られなければ即刻中断しなければならない。
国情院はこれまで監聴装備がなくて、法が制限的に保障した携帯電話の監聴が不可能だとして装備設置の拡大を要求してきた。国情院は、かつての安全企画部が1997年に不法盗聴していた事実が2005年7月に、いわゆる「Xファイル事件」を通じてあらわになった後、自ら保有していた携帯電話の監聴装備を廃棄したと主張した。今年3月に就任したイ・ビョンホ新任国情院長は国会の人事聴聞会で現行通秘法のゆえに「国情院の手足が縛られている」と語ってもいた。
これに対してセヌリ党は17〜18代国会に続き19代国会でも「移動通信社に携帯電話の監聴装備設置を義務化」する内容の通秘法改正案を出した。19代国会では2014年1月、ソ・サンギ・セヌリ党議員が代表発議した。さらに2015年6月、パク・ミンシク・セヌリ党議員が「電話、インターネット、SNS等の通信サービスを担当している電気通信事業者に監聴装備の設置についての義務化を賦課」する通信秘密法改正案を提出した。
検察や国情院などが携帯電話の通話内容などを監聴できるように、移動通信社が監聴装備を設置しなければならないという内容だ。通信社が設置義務を果たさなければ「通信事業者の売り上げ額の100分の3以下に該当する金額を履行強制金として1年に1回に限って賦課」する条項も加えた。これらの法案は国会の未来創造科学放送通信委員会に付されている。
パク議員はこの改正案を提案した理由について「現行法は携帯電話を含むすべての電気通信について裁判所の令状によって監聴を許容しているけれども、携帯電話の監聴に必要な設備などの不備によって捜査機関が令状を執行できていないというのが実情だ。携帯電話などに対する監聴の失敗は、単純に捜査機関に困難さを招来するというレベルを超えて、国家安保の守護ならびに国民の生命保護に致命的な脅威の要素」だと説明した。

信頼が回復されない状況で

 けれども野党は、この改正案に反対する。「国情院の無差別個人情報収集や査察への憂慮を拭える対策もなしに携帯電話の監聴を拡大することはできない」というのだ。また「通信社が国情院の監聴の付属機関に転落しかねない」と憂慮した。市民の安全や国家安保のために制限された監聴は不可避だけれども、国情院に対する信頼が回復されていない状況にあって携帯電話の監聴を実質的に保障することに対する国民的共感は得難い、というのが野党の主張だ。
チョン・ヘチョル新政治民主連合議員は5月に行われた「通信秘密保護のための立法討論会で「捜査機関が監聴の延長を通じて通信資料を収集しつつ、犯罪容疑と関連のない第三者との私的対話まで無分別に収集している」として、国家機関による通信の秘密への侵害の憂慮を指摘したりもした。
「民主化のための全国教授協議会」など33の団体は2910人の請願人が参加した、いわゆる「サイバー査察禁止法」(通秘法改正案)を4月に立法請願した。現行法が、むしろ捜査・情報機関の広範な情報収集を許容しているというのだ。これらの人々が出した立法請願案には「犯罪捜査のために提供されたサイバー情報の査察用利用禁止、分期別監聴報告書の国会提出ならびに公表の義務化」などを盛り込んでいる。
国情院の幅広い携帯電話監聴の憂慮が提起されているのは、国情院が不法な盗・監聴、サイバー査察などを繰り広げてきた不信が累積してきたせいでもある。1993年に通秘法が制定されて以降も、当時の安企部が1998年4月まで法の網を逸脱した不法盗聴専担組織「ミリンチーム」を運営し、政・財界人士たちの活動を監視した事実があらわになった。
国情院は2005年の「Xファイル事件」についての自主調査の結果を発表し、「盗聴作業が2002年3月まで続けられた」と明らかにしたりもした。このような中で、2012年の大統領選挙で国情院がインターネットのテックル(コメント)やツイッターなどを通じて世論操作に乗り出したことが追加され、国情院に対する不信が加重された。

イタリアからの購入と大統領選


このような状況にあって国情院がコンピュータや携帯電話をハッキングしてリアルタイムで盗・監聴できるプログラムをイタリアのソフトウェア会社から購入した情況が最近、表沙汰になるとともに、国情院がハッキング・プログラムによって携帯電話の監聴などに乗り出したのではないのかという疑惑を買っている。国情院の偽造名称として知られた「大韓民国陸軍5163部隊」が2012年にイタリアの該当業者に購入費用を支払い、今年初めまで維持・保守費用を出したことが確認されるとともに、2012年の大統領選の時から不法監聴を繰り広げたのではないのかという疑惑も提起される。
2012年から今年初めまで国情院に在職した国情院長は、大統領選の世論操作の容疑で拘束されたウォン・セフン前院長、ナム・ジェジュン元院長、現在大統領秘書長として勤務中のイ・ビョンギ元院長だ。キム・ソンス新政治連合代弁人は「国情院は、このプログラムの購入の可否や使用場所などを詳細に明らかにしなければならない。そうでないならば国会次元での真相糾明に乗り出すであろう」と語った。(「ハンギョレ21」第1070号、15年7月20日付、ソン・ホジン記者)

今週のキーワード/南北関係と新安保世代

ウォァボーイたち「私を覚えていて」

「職業に貴賤はない」という詭弁

 それこそ一触即発の状況にまでいっていた南北が、何やら合意した。保守メディアは一斉に「原則」において一貫しつつ北韓(北朝鮮)を圧迫したわが政府の勝利だとして、これを大書特筆した。パク・クネ大統領は4日間、眠ることができず目を充血させ、恩着せがましく拍手を受け、キム・グワンジン青瓦台国家安保室長が「私は一時、全軍を指揮していた人間です!」として北韓代表団に大声で叫んだという美談も肯定的に評価された。パク・クネ大統領が3回もの交渉を「もうやめにしよう」という指示を出したが、イ・ビョンギ青瓦台秘書室長が口を極めてなだめたおかげで合意に至ることになったという裏話も伝えられた。これらすべての事実は、おそらく民主政府時代になされた合意であったなら、北韓の責任認定の有無も明らかでないし再発防止の約束もなくて「屈辱だ」と評価したであろう保守各メディアの紙面に報道された。
 南北が通算40時間超のマラソン交渉を繰り広げて合意に至ったのは、互いの必要性が切実だったからだ。米国と日本が緊密になり、日本が直接中国との対話に乗り出している状況にあって、韓国はまかり間違えば外交的に疎外される状況に置かれる危機に直面した。北韓もまた第3次核実験やチャン・ソンテク処刑などによって中国との距離が遠ざかっている上に、核交渉の妥結などによってイランの雰囲気も微妙になり、かつてなく深刻な国際的孤立状態に置かれた。戦勝記念日という国際的イベントを前にした中国もまた葛藤が激化することも望まなかった。米国もイランとの核交渉だけでも労しているのに、もう1つの頭痛の種を抱えるのを避けなければならなかった。「終わり良ければ、すべて良し」と言うが、こうして見ると南北の交渉妥結はすべての利害関係がかみ合った結果だ。

若い世代と
安保意識
今回のことを経験しつつ特に保守勢力を興奮させたのは、若い世代たちの安保意識がしっかりしているという点が確認されたということだ。20〜30代の若者たちは、軍事的危機感が高められている状況にあって国防部(省)のフェイス・ブックなどの空間に、自分の軍服や軍靴、軍番ジュル(認識票を通して首にかけるヒモ)などを「認証」しつつ、いつでも戦闘に跳び込む準備ができている、と書き込んだ。
戦役の延期を選択した現役兵らもいた。保守メディアは、これを積極的に報道し社説を書き「新保守世代」が誕生したと、そそっかしく振る舞った。
フェイス・ブックで軍服を立証している若者たちは「マッドマックス:怒りのロード」に登場している「ウォア・ボーイ」たちを思い浮かばせる。これらの人々が闘いに乗り出したのは、何か価値のあることをしている自分のかっこいい姿を認められたがってであって、大層な名分や目標を想定したものではなかった。ウォア・ボーイたちが危険な争いを強行する際「私をおぼえていてくれ」(Witness me)と叫ぶ場面は、このような脈絡をよく示している。
わが若者たちが愛国心を表出したこともまた、理念に染まったものだというよりは、価値あることをして認められたいという欲求が反映されたものと解くことができる。わが社会は若者たちの自尊感を培うというよりは、むしろ反対に踏みにじり無視している。人間らしく生きることのできる環境を用意してやることもできないままに、「職業に貴賤はない」とか何とか言いながら失業の責任を青年たち本人にすべて押しつけている。たまに対策気取りで出すのは低質の働き口を増やすか、たかだか職業訓練をさせてやるということぐらいだ。
軍隊は若い男性が公共性に自らを服属させる最初の経験を与える国家の機関だ。すなわち、「敵」が我々を脅かしている状況において若い男性が何か社会に貢献する「良いこと」をしようとするならば、何よりもまず「軍」を思い浮かべざるをえないのだ。若者たちは彼らの理想的軍人像を自ら再創造し、これを示すことによって自らの損なわれた自尊感を復元した。表面的には彼らは国家主義や極右主義に傾倒したものと映るけれども、彼らを動かしている基底のエネルギーは、むしろ社会的公共性を復元する可能性をまた持っている。その力をどこに導いていくのかは、ひたすら我々の政治にかかる問題だ。(「ハンギョレ21」第1077号、15年9月7日付、コンピューターグラフィック、キム・ミナ「メディアス」記者)


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