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    かけはし2015.年11月2日号

「移民はわれわれの街の住民だ」


難民の無条件受け入れのための七つの真実

多くの難民を受け入れ過ぎているというのは嘘だ

NPA移民・反人種差別主義委員会


 【編集部解題】イラク侵攻をはじめとするアメリカの中東政策とそれを後押しする多くの欧米諸国の介入によって、今日、アラブ諸国家の既存の統治機構の解体が進み、その機に乗じて偏狭なイスラム原理主義の武装勢力が台頭している。アラブ・中東地域でのこの大混乱の最大の犠牲者は地域の民衆である。この大混乱と戦火を逃れた難民がヨーロッパに避難の場を求めている。それは決死の旅であり、その途上であるものはボートの沈没による溺死、あるものは冷凍トラックの中での窒息死という痛ましい形で何百人もの人々がすでに死亡している。心痛む現実を前にしても、ヨーロッパ各国首脳は、難民の「受入れ」という建前を表明しているが、その偽りの涙とは裏腹に、舞台裏では自国への受入れをできるだけ少なく、他国への受入れの押付けを画策するという醜い争いを繰り広げている。
 この難民問題について本号では三つの記事を掲載する。ひとつは、このヨーロッパやフランスの政府の立場の欺瞞性(ぎまんせい)を暴くものである。「ヨーロッパは難民をすでに余りにも多く受け入れすぎており、これ以上は無理だ」、「今回受け入れると、それが呼び水となって、さらに多くの難民が殺到するという」とするこうした主張はまったくの嘘である。
 本紙七ページのDAL(住宅権利協会)代表へのインタビューである。エロー代表は、現在、パリのサン・トゥアンで展開されているホームレスの空き家占拠闘争を報告している。フランスでは、DALなど支援団体の闘争の成果として、DALO法(住宅請求権法)がシラク大統領の時代に成立した。この法律は、家を持たない人でこの法律によって優先的権利を持つ人々に住宅の権利を認め、もし国がそれを実現しなければ、その人が国を訴追する権利を認めるというものである。すばらしい法律だ。
だが、法律はあくまで紙の上のものでしかない。それを実施させようとする闘いが必要だ。この法律を受けて、多くのホームレスがこの住宅の権利を申請した。だが、新自由主義の路線の下で、低家賃の公共住宅建設の予算を大幅に削減しているフランス政府はこの間、ホームレスの人々の住宅申請に応じて、迅速に住宅を提供できていない。こうして、申請しても住宅がすぐには提供できない「待機児童」ならぬ「待機ホームレス」が急増した。
 例えば、二〇一三年段階で、セーヌ・サンドニ県だけで三〇〇〇人の待機者がいたという。そうした中で、DALをはじめとするホームレスの運動は、政府の対応をいつまでも待っていられないとして、家を持たない多くの家族たちによる空き家占拠闘争を展開してきた。今回のサン・トゥアンの占拠闘争も、古い公共住宅にたて壊しで追い出された家族たちによる空き家占拠である。だが、今回は空き家占拠闘争に難民問題という新たな要素が加わっている。もちろん、ホームレスのかなりの人々は、移民系の人々なのだが、その中にはすでにこの間、中東からやって来た難民も参加しているのである。
 本紙六ページ下段の記事は、難民の無条件の受入れを要求する一〇月四日のデモの報告である。今述べたように、今日では、ホームレスの空き家占拠運動とサンパピエ(正式滞在許可証をも持たない移民)の運動と難民の闘いの共闘が形成されつつあるが、それがデモとして最初に実現されたのが、この一〇月四日のデモである。ここでは難民自身は、単なるかわいそうで救うべき対象ではなく、自身を組織して闘う主体として登場しつつある。

 この数年来、研究者たちはヨーロッパの国境が開放されつつあるとする神話を科学的に調査してきた。これらの研究は、支配的なメディアや指導的政治家たちによって宣伝されている誤った考えが本当でないことを明らかにしている。CNRS(国立科学研究センター)の研究主任のカトリーヌ・ウィトル・ドゥ・ヴァンダンは次のように断言している。「われわれは誤った考えのもとに生きている。世論は未だに移民がフランス人の職を奪うだろうし、移民は高くつくと信じ込んでいる。このような嘘に対して政治の側からまったく反論がなされていない」と。

一、大量流入ではない

 数字は実に雄弁に物語っている。国連難民問題高等弁務官は、今年一年間に四〇万人の難民がヨーロッパにやって来たし、来年は四五万人になると語った。これは、ヨーロッパの全人口に対する割合で言うと、〇・一%未満である。難民高等弁務官が言わんとしている難民(難民としての地位の恩恵を受けているもの、庇護や亡命を求めている人々)のうちの一〇人中九人までが経済的にヨーロッパよりも豊かでないヨーロッパ以外の国で受け入れられているのだ。一九九〇年以降、難民を最も多く受け入れて来たのは、トルコ、ヨルダン、レバノンである。一般に広く信じられている見方に反して、世界の移民の半分以上は南の諸国同士の間の移動なのである。

二、フランスには移民はわずかしかいない

 移民受入れの地、フランス。これは神話にすぎない。どのような待遇を受けようと、毎年、フランスに二〇万人の移民がやって来て、六万人がフランスから出ていく。フランス政府自身の集計によってさえ、この数字を人口に対する割合で見てみると、フランスはヨーロッパで最も移民の数が少ないのだ! フランスの移民の割合は、一万人の住民に対して四六人であり、ドイツが五六人、スウェーデンが二三三人、ラトビアが一三二二人である。

三、移民が高くつくことはない

 サルコジが大統領の任期中に指示して作成された報告書によれば、国家予算に対する移民の正味の寄与は、二〇〇五年では一二〇億ユーロの黒字だった。この結果に異議を唱えようと試みた別の報告は、わずかな赤字という調査結果に達した。経費に入管の費用を含めたからである! 今日、フランスでその多くが夜間労働に従事しているサンパピエ(正式滞在許可証をもたない移民)への正式滞在許可の承認は、とりわけ経営者による社会保障分担金の増加を通じて政府の財源を増大させることだろう。同時に、これは、すべての労働者、とりわけ飲食業、清掃業、警備業にのしかかっている賃金と労働条件の低下への圧力を削減することになるだろう。リベラル派の経済学者のミシェル・クレマンスは、二〇一一年、『ジャーナル・オブ・エコノミック・パースペクティブ』の中で自らの研究をこう結んでいる。「国境の全面的な開放は世界の国内総生産を大幅に増やすだろう」と。

四、すべての人を住まわせることは可能だ

 フランスでは劣悪な住宅状態が急速に拡大していて、次のような考えを広めることになっている。すなわち、移民の受入れは最貧層の待遇をより悪化させる、と。しかし、二人のジャーナリストの調査は、一一〇〇万平方メートルの面積に相当する空き家となっている住宅や事務所や兵営が存在することを実証しているのだ! アベ・ピエール財団は、この面積からフランスで一八万戸の住宅需要に対して二六〇万戸の空き家住宅が存在すると見積っている。しかも、法によれば空き家を国が収用することが可能なのだ!

五、難民とサンパピエは移民である

 次のような議論がある。戦争を逃れてきた難民と「われわれの富」を利用してもうけようとする「経済的難民」とがいるのだから、前者を受け入れて、後者を追い出さなければならない、と。この議論は、戦争と貧困を生み出しているのが経済的支配と軍事的支配の同じ二つの支配なのであり、マリやコートジボアールでわれわれが見ているように、この二つの支配が相互に結びついていることを忘れているのだ。爆撃で死ぬのも、餓死するのも、それはやはり死なのである。しかも、今日の難民の大多数は、明日には亡命の要求が却下され、サンパピエとなるだろう。亡命を求める五人のうちの三人か四人は今後、その要求が退けられることになるだろう。

六、与党社会党は受け入れてはいない、選別しているのだ

 受け入れるということは、平等に生きることができる条件を与えることである。それは他の住民にも対等の権利を与えるということを前提としている。政府当局と与党社会党は、圧力を受けて、現時点では移民を受け入れると主張している。だが、サンパピエの追出しは続いていて、現在準備中の法律はすべての外国人をより不安定な地位に追いやろうとするものである。難民については、現在の政策は、仮の宿泊施設を提供した上で、難民の地位を要求できる者と再び街頭に放り出すか追放するかする者とを選別するというものなのである。

七、「受入れはさらなる呼び水になる」というのは神話にすぎない

ヨーロッパは移民に対してこの間、国境を開放して来たのであり、これ以上難民を受け入れるとそれが呼び水となってさらに多くの難民がヨーロッパに殺到するという「神話」は、いかなるデータにもとづくものではなく、根拠はない。カトリーヌ・ウィトル・ドゥ・ヴァンダンは、このような「呼び水」現象がスウェーデンやデンマークのような社会的待遇や亡命者への保護が非常に発達している諸国では生じていないことを指摘している。これは、EUの東方への門戸開放によって生じているヨーロッパ内部の状況についても当てはまる。この間、全世界の研究者は、ヨーロッパが移民、難民に国境を開放してきたという仮説について研究を始めてきた。一五年間にわたるこれらの調査は、同じ地域内で(たとえば中東地域内で)、近隣諸国相互間で難民がいわゆる振り子のように相互に出たり入ったりしていたり、この同じ地域内への移動が増加したりしているという事実にもとづいて、ヨーロッパに難民が大量に流入しているという神話が事実でないことを明らかにしている。

 人々を相互に対立させ、国境を強化し、人々へのコントロールと監視のためのいっさいの警察的手段を強める社会に反対し、われわれは、移民の無条件の受入れ、国境の開放、すべてのサンパピエ(滞在許可証を持たない移民)への正式の滞在許可の承認、移住と定住の自由、公的機関による空家住宅の収用、軍事介入の停止、南の諸国の債務ならびに自由貿易協定の取り消しと破棄、を求める。

 『ランティ・カピタリスト』(NPAの新聞)(三〇四号、二〇一五年九月二四日)

移民、難民、ホームレスのデモ

この日のデモで突破口が切り開かれた!

ドニ・ゴダール

 パリ一九区のリセ(公立高校)を占拠している人々の隊列とともに一〇月四日に、難民、サンパピエ(正式滞在許可証を持たない移民)、空き家を占拠するホームレスの人々、三五〇〇人がデモを行った。

テレビや新聞は
一言も報道せず
レピュブリック広場に着いて最初に発言した難民の男性はこう訴えた。「われわれが要求しているのは何か特別なことではない。ただ生きるための屋根と滞在許可証だけだ。私は皆さんに自分がどの国の国籍なのかを言うつもりはない。私はスーダン人であり、アフガニスタン人、チュニジア人、エリトリア人であり、全世界からやって来た人間なのだ」。この後に次々とマイクを握った難民たちはこれと同じ趣旨のことを繰り返し、語るのだった。続いて、サンパピエ(正式滞在許可証を持たない移民)の団体であるUNSP(サンパピエ全国連盟)、CLSPM(サンパピエと移民の国際共闘会議)の代表たちが、移動と居住の自由を求める移民たちの団結を訴えた。
「移民問題の危機」がたえず人々に対して語られているのに、テレビも新聞もこの三五〇〇人のデモについて一言も報じていない。というのも、それは、まず何よりもここに結集した人々が、まず第一に国境を緊急に開くという真の解決策を要求してデモをしているからである。死者の発生やテント生活や収容センター内の劣悪な待遇に終止符を打つための唯一のこの解決策こそ、EU各国政府や既成政党指導者が、たとえ仮の話であったとしても想起したくない方策にほかならないのだ。

難民・支援団体が
ともにデモに参加
第二に、このデモに参加している移民たちは、当局が時として語ったり、語らなかったりする対象でも、選別する対象でも、立ち退かせたり、隠したり、最後には弾圧したりする対象ではないからである。これらの人々は、立ち上がり、デモの先頭に立って、「私はここにいる! 私はここにとどまる!」と主張しているのだ。この日のデモには、占拠中のリセからかけつけた数百人だけでなく、パリ第一三区の数か所の宿泊センター、ジェンヌヴィリエやライリー兵営の宿泊センター、クリシー広場のセンターからの、難民が参加していた。さらに、サンパピエ共闘会議七五、アンテグラシオン二一、サンパピエ共闘会議九三、サンパピエ共闘会議九五、ホームレス支援団体のドロワ・ドゥヴァン〔権利向上協会〕などの団体の参加も見られた。宿泊センターでの移民たちによる八月のハンストを支援した罪に問われて、一人の難民と三人の支援者が起訴されてパリで裁判所にかけられている時なので、当局はこうした闘う移民とそれに対する戦闘的連帯を何よりも恐れているのだ。

社会の将来の姿
が問われている
さらに、移民がわれわれの闘う兄弟・姉妹であり、これは正義の問題であるだけでなく、われわれの社会の将来の問題でもあると主張するために、多くの人々は、社会運動団体、労働組合、政党の隊列に加わり、参加していた。その集会に掲げられていたパリ第一八区の横断幕には、次のように宣言するスローガンが書かれてあった。「移民はわれわれの街の住民だ。受入れ――権利の平等」。デモの最後に発言に立ったNPA(反資本主義新党)のオリビエ・ブザンスノーは、「フランスには移民が多すぎるわけではなく、多すぎるのは人種差別主義者だ」とあらためて語った。
このデモが十分でないことは確かだが、それは、闘いが存在していることを、そしてそれが今後も展開できることを、証明したのである。というのも、スーダンから来た人々が、県知事によって、追放され、生命の危機から逃れてきた国に再び送り返されているからであり、ヴァンティミルやスタメリラでここ数日、負傷者や追放者が出ているからである。また、パリの市長が、今後一か月以内に、六〇〇人以上の難民とサンパピエを占拠中のリセから追い出すことを決定したからであり、宿泊施設内での怒りが高まっているからでる。さらには、極右国民戦線のマリーヌ・ル・ペンが地域圏選挙でノール県において勝つ可能性があるからである。
このデモで突破口は切り拓かれた。われわれの未来はその拡大にかかっている。

『ランティ・カピタリスト』(NPA=反資本主義新党の新聞)(三〇六号、二〇一五年一〇月八日)



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