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    かけはし2015.年11月9日号

人々にとって良いもう1つの道はあった


債務真実委員会はなお活動を続ける

第3次メモランダムの強制に
債務問題解決への回路はない

エリック・トゥサン

http://internationalviewpoint.org/spip.php?article4255


  ギリシャ議会で今年九月二五日に行われた「ギリシャ債務に関する真実委員会」による記者会見で、同委員会の学術的所見総括責任者であるエリック・トゥサンは、一人のジャーナリストからの質問に対し詳しく答えた。その質問は、ギリシャ政府が同委員会の勧告を心に留め、債務返済を凍結していたとしたら、何が起きたのだろうか、というもの。トゥサンは次のように説明した。すなわち、他の諸方策と組み合わせた返済凍結は、破局に終わるどころか、第三次メモランダムの実行という現行の道よりも、危機に対するもっとはるかによい出口をギリシャが見つけることを可能にしたと思われる、ということだ。以下にトゥサンの説明を紹介する。(IV編集者)

返済凍結は財政に余力残した


他にはまったく解決策はないと主張する者たちから挙げられている主な異議を取り上げているこの質問に感謝したい。質問は次のように言っている。つまり、政府が委員会の諸々の所見を考慮したとすれば、彼らは債務返済を凍結しなければならなかっただろう、そしてこれは、国全体にとっては恐ろしく有害なことになった、カオスと惨害に終わっただろう、と。
さて国民投票まで、ギリシャは何であれいかなる援助も受け取っていなかった。
回答のためにはわれわれは、現実には何が起きていたのかを振り返る必要がある。一月二五日の選挙と七月五日の国民投票の間に、ギリシャは七〇億ユーロ近くも返済したが、六月末まで延長された計画(注一)に従えばそこから少なくとも七二億ユーロがギリシャに支払われるべきであったにもかかわらず、その間ギリシャはどのような援助も受け取っていなかった。他にも、欧州金融安定制度(EFSF)とギリシャの諸有価証券から高利を得ているECB(欧州中央銀行)から利用できたはずの金額もあった。しかし債権者団は、チプラス政権を絞め殺したいと思っていた者たちだが、びた一文であれ自由にすることを拒否したのだ。
そこで自分たちに次の質問を問いかけてみよう。二月二〇日に、ギリシャ政府が債務返済を約束する代わりに、「われわれは、二〇一三年五月二一日にEU議会が採択した規定四七二号/二〇一三中の第九章を適用する」と言っていたら、と。ちなみにこの章は、「マクロ経済調整計画にしたがう一メンバー国は、特に、債務の過剰な水準積み上げに導いた諸々の理由を評価するために、またあり得るすべての不法行為をつきとめるために、その公的財源に関する包括的な監査を適切に実行するべきだろう」と述べている(注二)。
さらに交渉者が、「われわれは同規定を実行する。したがってあり得る不法行為をつきとめるための監査を継続中である以上、その後の諸結果を先取りするようなことはせずにわれわれは暫定的に返済を凍結する」と語っていたとしたら、さらに、ギリシャ政府が預金者の預金を保護しつつ銀行危機を解決する上で必要となる諸方策をとっていたとすれば、状況は今年二月と六月の間に起こったことよりもはるかに良くなっていたのではないだろうか、と。
さらに進もう。政府がわが委員会の諸所見を利用していたとすれば何が起こったのだろうか? わが委員会が二月二〇日のいくらか後、規定四七二号の観点において四月四日に設立されたということを思い起こそう。ギリシャ政府が、六月一七日と一八日に公表された予備報告の諸所見、および七月五日の国民投票を基礎として、「われわれはこの六ヵ月返済を続けてきた。これはわれわれに七〇億ユーロの負担となった。国家の金庫は今や空っぽだ。われわれはわが債権者たちにとんでもなく大きな譲歩を行ってきた。しかしその見返りは何も受け取ってこなかった。それどころか彼らは、要求をさらに高めてすらいる」と言っていたとすれば。その上で政府が、われわれの所見と国民投票結果を基礎として、七月五日から債務返済を止めていたとすれば、政府はその後七月と九月の間にECBに返済された七〇億ユーロを手元に留めていたと思われる。

新メモランダムは何も解決せず


それゆえ、債務返済を凍結するために、またECBとギリシャ中央銀行によって諸銀行がほとんど閉鎖状態になっていたからには、金融部門に強力な策をとるために、ギリシャ政府が国民投票結果とわれわれの所見双方を利用することは完全にあり得ることだった。銀行を社会化し、並行的な通貨を導入しつつ、預金者の預金を保護するために、強力な方策をとる必要があった。そうした強力な策は、徴税の分野でもまたとられるべきだった。私が確信していることだが、こうしたプランBが実行に移されていたとすれば、それが惨害に終わることなどなかっただろう。債権者団は早々に交渉を始めるよう強いられていたはずだ。私はそう確信している。
チプラス政権は債権者団の圧力の下に別の道を選択した。議会における本物の論争や修正を存在させる可能性すべてを捨て、また国民投票結果に対する最低限の尊重すらも捨て第三次メモランダムに署名した時この政府は、第三の「財政投入」計画を引き受けたのだが、そこには、以前の債務に対する返済に使われるものとしての八六〇億ユーロに向けられた追加的な借り入れが含まれている。そしてその以前の債務に関してはわれわれが、正統性がなく不法、かつ持続不可能と識別していたのだ。その上先の債務には、二〇一〇年以来すでに四八〇億ユーロも受け取っていたギリシャの諸銀行に資本を再注入するための二五〇億ユーロが含まれていた。
そしてわれわれが充分に分かっていることとして、この二五〇億ユーロは、ギリシャの銀行の状況を変えるには不十分なのだ。それは、「不良債権」と呼ばれるもの、つまりおそらくは今後決して返済されることのない銀行貸し付けがギリシャの銀行の株式を超過しているがゆえに、十分ではないだろう。ギリシャの銀行は支払い不能なのだ。これが本当の状況だ。その真実は語られなければならない。六ヵ月ないしは九ヵ月以内に、一〇万ユーロを超える預金は、ギリシャの諸銀行を救うために削り取られるかもしれない。
私の同僚であるミシェル・ユソンが説明しているように、緊縮諸方策は、今後の年月に対してEUが設定した諸目標をギリシャが満たすことを妨げるだろう。欧州の債権者団は、これまでに干からびるほど搾り取られた者たちにもっと多くの努力を求め続けるだろう。

金融安定策はスキャンダル含み

 ギリシャが返済を凍結し、委員会の予備的な諸所見を心に留めていたとすれば状況は悲惨なものとなっていただろう、などと主張することは間違っている。私はそう言うことでこれから結論に入りたい。すなわち、私はまず第一に、正統性がなく不法な諸条件の下に借り入れを続けることは正しくない、そして実際第三次メモランダムはまさに同じほど不法かつ正統性を欠いている、と考えている。さらに第二に、この国の経済状況は、ミシェル・ユソンが説明しているように、回復の途上にはない、と考えている。
われわれはまもなく委員会が採択した文書を公表することになるだろう。そしてそれは、ギリシャの諸銀行の状態に関するもので完成されようとしている。それは、この状態がギリシャにとって今なおどれほど深刻に懸念されるものかを示すはずだ。
われわれは注意を次の事実に向けている。それは、諸銀行への資本再注入のために契約された二五〇億ユーロの追加的債務がすでに私的な株主たちの懐に落ちている、という事実だ。ギリシャ金融安定基金とギリシャ政府は諸銀行の主要株主でありながら、それらは株主としての責任に立った行動は行わない。なぜならばそれらが受け取った株式は、投票権のないいわゆる優先株だからだ。こうして、ギリシャの銀行は私的株主たちの手中に残されているのだ。
この金融安定基金はピエール・マリアニによって運営されるのだが、しかしこの者はデキシア銀行の破綻に責任のある者なのだ。そしてこの銀行について、それがこれまでベルギー、フランス、ルクセンブルクの各政府によって三度も財政投入を受けなければならなかったようなベルギー、フランスにまたがる金融機関である以上、私は多くのことを知っている(トゥサンはベルギー人:訳者)。
ギリシャの銀行に対する資本注入を管理することを使命としている機関の責任者が、ベルギー、フランス、ルクセンブルクの公的財政に大きな結果を残した金融的惨事で大きな役割を演じた者に委任される、などということが本当に考えられ得ることだろうか? ギリシャの銀行に対する資本注入を管理することを使命としている機関の責任者が、ベルギー、フランス、ルクセンブルクの公的財政に大きな結果を残した金融的惨事で大きな役割を演じ、地方自治体に毒を含んだローンを売りつけた者に委任される、などということが本当に考えられ得ることだろうか? マリアニを少しでも信用することなど、どうすればできるのだろうか?
デキシアがベルギー政府の財政投入で救済された時、ピエール・マリアニは彼の散々な経営を理由に解任されたが、一〇〇万ユーロという多額な退職金がなくなるということはなかった。デクシアは彼に二〇一二年分として一七〇万ユーロも払っていた。そして彼は、ギリシャの銀行管理のためにここへやって来たのだ。ギリシャの市民と全体としてのこの国の利益がこうした人びとに握られる、というのは正しいことなのだろうか? われわれが国民の利益をよく考えた場合、これはとんでもないスキャンダルと矛盾ではないだろうか?

債務軽減には何の保証もない


委員会の勧告が心に留められていたとすれば、ギリシャの課題に対する一つの解決策が見つけられていた可能性があるだろう。われわれの所見は考慮されなかった。とられた道は第三次メモランダムによる緊縮の道だ。ギリシャが抱える諸々の問題は解決されるどころではなく、債務は、すでに債権者団が強要した五年の緊縮に直面せざるを得なくされてきた人びとの背に、さらに耐え難い重荷となるだろう。
債権者団はその後、降伏と引き換えに、返済期限の延長を見せかけとする形で、何らかの債務軽減を考えるかもしれない。しかしあなただけではなく私も知っていることとして、ギリシャが署名した協定の中には、債務軽減の約束はどのようなものもまったくない。あるものは、ギリシャ政府が債権者団の要求に応じるという条件で、債務に関して何かをやる単なる可能性だけであり、それ以上のものは何もないのだ。
IMFは、自身の請求を減額するつもりはないと一方で言明しつつ、ギリシャの債務がGDPの二〇〇%まで跳ね上がると予測しているが、そのこともあなたと私は知っている。IMFは債務の減額を求めているが、しかし自らはそこに参加するつもりはない。「債務は持続不可能だが、われわれは、われわれに返済義務のあるカネは一銭たりとも放棄するつもりはない。君たち欧州人が犠牲を払わなければならない」、こう言いつつIMFがギリシャ債務を減額するよう欧州人を説き伏せる、あなたはこうしたことを想像できるだろうか?
第三次メモランダムの論理受け入れがこの国を救い出すことができると、あなたは本当に信じているのか? われわれはそうは考えない。すなわちわれわれは、ギリシャ債務という課題は今後の年月中心にとどまり続ける、と考えている。
ギリシャ債務監査は二〇一一年に始まった。その時、後になって二〇一五年四月に生み出された現在の委員会のメンバーになると思われた一定数の人びとを含んで、ギリシャ債務のための市民監査委員会が設立された。そして最初の委員会が、ギリシャ議会議長のおかげにより復活させられ、議長は当時首相および共和国大統領から支持を受けた。彼らは四月四日に出席していた、ということを思い起こそう。

民衆に力かす委員会の決意は不動


不幸なことだが、政府はわれわれの勧告を心に留めなかった。議会が新しい議長となった今(注三)、われわれの資格がどうなるのか、われわれには分からない。しかしそんなことは問題なくわれわれは仕事を続けるだろう。われわれに報酬はなかった以上、何も変わることはないだろう。ギリシャに力を貸すというわれわれの決意に揺らぎはない。われわれの航空運賃を自腹で負担し、ギリシャの仲間たちへの用立てをわれわれが見つけ出さなければならないとしても、われわれは続けるつもりだ。
そして私は、ギリシャ民衆の利益という観点からわれわれの所見を考慮するギリシャの政府がいつの日にか生まれる、ということを期待している。私はあなたに断言するが、われわれのただ一つの目的は、ギリシャ民衆の権利、さらに欧州と世界の全民衆の権利を擁護するということであり、正統性のない債務という問題に対する公正な解決策を見つけ出すことだった。

注一)第二次メモランダムの計画は二〇一五年二月二八日に終わることになっていたが、チプラス政権とユーログループ間の二月二〇日に達した合意により四カ月間延長された。
注二)財政安定に関して深刻な困難を経験するかそれに脅かされているユーロ圏メンバー国の財政監視、および経済強化に関する、二〇一三年五月二一日のEU評議会並びにEU議会の、規定(EU)四七二号/二〇一三。
注三)二〇一五年一〇月四日、チプラス政府前内務相のニコス・ヴォウツィスが議長に選出された。ゾエ・コンスタントポウロウ(前議長)は、第三次メモランダムに関する委員会報告を引き渡し、彼女は同委員会の使命に対する支援を引き続き行うだろう、と断言した。(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年一〇月号) 

 


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