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    かけはし2015.年11月9日号

左翼 緊縮に歯止めかける挑戦


ポルトガル

前途には政治的混乱の日々


まず右翼連合の権力復帰阻止へ

ジョアオ・カマルゴ

http://internationalviewpoint.org/spip.php?article4258


 既成主流政党いずれも過半数獲得に失敗した一〇月四日の選挙結果を受けて、ポルトガルの政治が不透明化している。第二党となった社会党が大方の予想を超えて左転回の姿勢を見せていることが、その状況に拍車をかけている。この中で大躍進を果たした左翼ブロックは、社会党を左に引っ張りつつ、緊縮に歯止めをかけるべく政治流動化をさらに深めようとしている。ポルトガルはEUのもう一つの不安定要因となるかもしれない。以下はこれらを伝える現地からの報告。(「かけはし」編集部)

選挙結果が政権
構成を不透明化


他のところでは一つの驚きとして現れたのかもしれないとはいえ、「トロイカのはるか先まで」進んでいたポルトガルの中道右派の超自由主義政権が今回総選挙で相対的勝利を収めた。三六・八%、一九九万四〇〇〇票をもって、前政権連合(PSDとCDS)が勝者となった。二番手には、三二・四%、一七四万六〇〇〇票をもって社会党(PS)がつけた。最大の驚きと最強の伸長は左翼ブロック(BE)であり、この党は得票率一〇・二%、五五万一〇〇〇票を得、八・三%、四四万
六〇〇〇票をもって共産党がその後に続いた。前回二〇一一年と比べれば、右翼諸党は七〇万票以上を失い、PSは一六万票、BEは二六万票、PCPは三四〇〇票それぞれ積み増した。
社会民主党(PSD)および保守派の民衆党(CDS)と共に過去四〇年間この国を運営してきたPSは、選挙に先立つ数週間世論調査がこの結果をはっきり予測していたとはいえ、大きな衝撃を受けた。この党は、右翼の緊縮に対するオルタナティブと見られることのないまま、そのもっとも知られた指導者、前首相のジョゼ・ソクラテスが汚職を理由に逮捕された後に、悲惨な運動を行うことになった。
この党は今最大のジレンマを前にしている。つまり、右に向き右翼政権を承認するのか、それとも左に向かい、ポルトガル政治ではこれまで一度も見たことのない全体的な新シナリオ、議会で左翼諸政党(BEとPCP、それは今合計で一八・五%、一〇〇万票となる)から支持されるPS政府、の幕を開けるのか、だ。
共和国大統領で元首相(一九八五―一九九五年)のカバコ・シルバは前もって、相対的多数にしかならず不安定な政府に権限を与えることはないだろう、と彼の権限を越えて言明していた。結局のところ彼は嘘を言っていたように見える。選挙二日後彼は、彼自身の党(PSD)とのみ話し合った後、パソス・コエロ(前首相、並びに勝者となった連合のトップ)に安定政権形成を依頼した。そしてこの政権に「国際的かつ歴史的な諸条約と諸協定」並びにこの四〇年間に採用された「大戦略的選択肢」を当然視しない政党は存在できないだろう、と国に告げた。ちなみにここでの「」内に該当するものは、NATO、EU、ユーロ、EU財政条約、将来のTTIP(環大西洋貿易・投資パートナーシップ)などだ。したがってこの言明がはっきり意味することは、すべての政権解答案からBEとPCPを排除する、ということだ。そうであるにもかかわらず、PS指導者のアントニオ・コスタがはじめに向かったのは、左翼へ、だった。

左翼政府の可能
性に支配層逆上


政権内に存在できる者に関して共和国大統領が彼の「規則」を開陳した一日後のPS―PCP会合は、一つの衝撃として現れた。つまり共産主義者たちは、PS政権を支持する、結論的にその政権の一員となることも可能だ、と語ったのだ。共産党ははっきりと、左翼ブロックから再度追い越されつつあることから圧力を感じていた。そして、幅広い連合への参加という諸々の政治的可能性に対し一つの政治的合図を送った。
BEのスポークスウーマンのカタリナ・マルティンスは選挙運動中、PS指導者との論争の中で、その選挙綱領の三点に関し引き下がるよう、つまり現行年金に関する凍結ノー、将来の年金削減を含んだ福祉改革ノー、諸労働法の柔軟化ノーをPSに語りながら、左翼政権に関する話し合いに対していくつかの条件を定めた。マルティンスは開票日夜の演説でもはっきりしていた。すなわち「左翼ブロックは右翼連合による政府形成を阻止するためにあらゆることをやるつもりだ」と。
社会党はPCPの支持を受けて、左翼政権形成の好機について語り始めた。これは、右翼連合とあらゆる専門家たちを恐怖に駆られた逆上に突き落とした。それを一つのクーデターと呼ぶことから反民主主義と言うことまで、あらゆることが語られてきた。諸々のニュースや論評欄は、赤の恐怖やポルトガル革命期(訳注)を内容とする旗を振りながら、極度の緊縮に対する連続性遮断という単純な見通しが、主流メディアからの全般化された敵意の門をどれほどまで開いているかを明らかにしてきた。EUからは、右翼連合の貧弱な勝利をポルトガル人がさらなる緊縮を支持している合図として拍手を送ったヴォルフガング・ショイブレ(ドイツ財務相:訳者)を間に置いて、極左政党が支持する政権は市場からの大反動に直面するだろう、とのドゥラン・バローゾ(元ポルトガル首相、二〇〇四年から二〇一四年までEU委員会委員長:訳者)の主張が出てきた。
PSと連合(PSD―CDS)の挫折感を抱かせるような会合の後コスタは、BE本部でのカタリナ・マルティンスとの会談に向かった。それは様々な可能性を今後に残した会談だった。左翼ブロックのスポークスウーマンは、「パソス(PSD)とポルタス(CDS)の政府は終わっている」と宣言した。一日後、この会談と宣言の結果として、株式市場での下落が示された。

社会党に左右
から揺さぶり


PSと連合の二回目の会合は、もう一つのいらいらの募る会議であったことが明らかになった。そこでは、PS選挙綱領にある諸方策のうち二〇項目を支持するという右翼政党側の申し出があり、一方PS側からは、少なくともさらにもう二〇項目の要求(それに対し右翼側は、あらゆることを交渉する意志があると語った)があった。この時点でPSは明らかに左翼的回答に傾いている。とはいえPS隊列内部には、左翼的回答への支持と反対双方の古参指導者たちを伴った混乱がある。今コスタは、左翼的回答を全党投票にかけると約束している。
今や右翼両政党は、彼らが地歩を失いつつあるという考えを受け入れるにいたり、共和国大統領の拒否権を大いに頼りとしている。パソス・コエロはPSとの二回目の会合の後、これ以上の会合は一切ないだろう、と発表した。
議会内で左翼ブロックと共産党から支持される社会党政府という可能性は今や説得力のあるものとなっている。もちろん悪魔は細部に宿る。PSが反資本主義の立場をまったく取るつもりがないことははっきりしている。この党は、何とか一つの合意にこぎ着けたとしても、EUの緊縮体制に対する無視を受け入れることはないだろうし、BEおよびPCPとの間で作成する諸々の合意のいくつかの実行には、重大な困難を抱えるだろう。
左翼諸政党は今、短期的には緊縮に対し一つの歯止めを確保し、労働者の所得における何らかの回復を確保するために戦闘中だ。そして、「トロイカの先に行く」連合が権力に復帰することを止めている。同時に彼らは今、PSを左に引っ張り、またその多数のメンバーと指導者を事実上の右翼代表として暴き出しながら、PASOKと労働者の間で道を選択するようPSに迫るあらゆる可能性を利用中でもある。
大統領は、左翼的回答に拒否権を行使し、BE並びにPCPと共に不信任案を提出する可能性と予算案否決に反対するようPSに迫りつつ、議会多数(PS+BE+PCPは議会の五三%)に逆らってパソス・コエロ指名にこだわるかもしれない(一〇月二二日、大統領は実際にこの指名を強行した:訳者)。ちなみに不信任は政府の倒壊に導くだろう。

EUの危機が
流動化を加速


次のことが問題になる。つまり、大統領選が一月に予定される中、現大統領はこの議会を解散できず、もう一回の選挙を要求できないということだ。その上、すべての当選した大統領は、権限を得た最初の六ヵ月、議会を解散できず、もう一回の選挙を要求できないことになる。それは、現在の議会が最低九ヵ月とどまる、ということを意味する。もう一つの可能性は、カバコ・シルバが前政権が権力に留まり、予算のないまま、つまり新しい方策は何一つ実行できないまま管理にあたるよう指示することだ。
今後の日々は混乱の日々となるだろう。PSは割れている。そして実行可能な解決をめぐってつくり出されている圧力は高まりつつある。PSはすでに、左翼に向けた合意に達することができなければ、右翼が権力を引き受けることを止めるつもりはない、と語っている。
この全過程にある諸矛盾がPSの本性を白日の下にさらすだろう。それが左翼への転回を行わない(すなわち、緊縮を止め、過去の年月に民衆から取り上げられてきたすべての一部を取り戻すという最小限綱領を受け容れない)と選択することになれば、この党は、左翼諸政党、特に左翼ブロックに成長の重要な空間を残しつつ、PSDへと融解する危険に直面する。彼らがもし左へと動くならば、全一連の可能性の新たな組が現れる。
われわれは完全に確信しているが、彼らは彼らが今分かれ道にいることを自覚している。おそらくEU内の一定の混乱が、全面的な危機を前にしてアンゲラ・メルケルとフランソワ・オランドがEUの将来に関して嘆願するためにEU議会に出かけるというような混乱が、緊縮を超える動きをつくり出すまでに、PS指導部の一部を大胆にした。ポルトガルブルジョアジーから出ている合図はすべて、PSとPSD間の政権とすべき、というものになった。今その政治の中心部が粉々にされている。左翼は圧力をかけ、中間部分の土台を確実に流砂にする必要がある。PSが局外中立を選択するとすれば、この党はどっちつかずのまま終わりを迎えるだろう。
(二〇一五年一〇月一六日、リスボン)

▼筆者は、非正規労働者運動の活動家であると共に、「トロイカをつぶせ」(反緊縮・反トロイカの社会運動、二〇一二年九月一五日の大デモを皮切りに何度もの大デモを実現:訳者)プラットホームの活動家。(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年一〇月号)
訳注)カーネーション革命と呼ばれた一時期。一九六八年のサラザール独裁政権の倒壊後に民主化後退の動きが復活したが、それに反対する一九七四年の青年将校を中心とする軍事クーデターを発端に、急進的な社会変革を求める闘いが一九七六年まで続いた。  

スペイン

ポデモスへのギリシャからの警告

金融の独裁に立ち向かう者には
最後まで進む意志が求められる

ホセ・マリア・アンテンタス

http://internationalviewpoint.org/spip.php?article4260

 昨年以来スペイン政治を揺さぶってきたポデモスが今勢いを失っている。九月に行われたカタルーニャ州議選でも、社会労働党系列のカタルーニャ社会党に先を越された。以下に紹介する論評にはこの状況への深い危機感が表れている。特に、ポデモス指導者のイグナシアスが先のギリシャ総選挙でシリザをはっきりと支持したことを重大な過ちとして指摘し、方向転換の必要性を訴えている。(「かけはし」編集部)

心に留められる
べき戦略的教訓

 チプラスの緊縮と新民主主義のそれとの間で選択を迫られ、ギリシャ人のあきらめが海のようになっている真ん中で、シリザは九月二〇日の総選挙に勝利を収めた。その勝利の後では、祝いも喜びの表出などもまったくない。アテネの街頭にあるものは、現実のいつも通りの受容という印だけだ。それは、諸々のものごとはさもなければ苦しさを軽くしないまま消し去られる可能性がある、という考えだ。
 今日のチプラスは今年一月二五日の勝者の暗転した陰、彼自身の戯画だ。一年も経たないうちに、金融の世界の指令に腰をかがめつつ、変革の希望は埋葬されてしまった。歴史における数多い例の時と同様、未来の墓堀人は民衆陣営の隊列から現れた。こうしたことが起きる時、その結末は破壊的だ。逸脱と混乱は歯止めなく広がる。その克服には時間がかかる。
 民衆連合は、国民投票で表現された「オヒ」を政治的にはっきり表そうとの防衛的かつ絶望的な試みに失敗した(得票率二・八%)。そしてそれは、落胆、混乱、また怖れが変革への希望や願い以上に行き渡っていた、ということを示している。しかしわれわれは闘いを続け、今後来るものに対して、社会的荒廃の新しい局面に対して準備しなければならない。
 チプラス政権の限界は、金融の独裁に立ち向かう者たちは最後まで進む意志をもたなければならない、ということを示している。もしそうでないのなら、それは挑戦する価値のないものだ。どこへも行き着かない道をなぜ歩き始めるのか? これは、スペインの場合には、心に留められるべき原則的な戦略的教訓だ。代わるものがまったくない時というものがある。丸を四角にすることはいつであっても不可能だ。

ゲームプラン変
更が絶対必要だ


チプラスに対するポデモスの支持は、今日のパンかつ明日の飢えだ。それは、ギリシャの「勝者」と共にあるという見せかけを可能にしているとはいえ、実際にはポデモスの運命を、トロイカの前に屈服した一政党の運命に結び付けてしまったのだ。しかもその一政党は、スペインでの次回総選挙以前に、ひとそろいの厳しい切り詰めの実行をせまられるだろう。直近の将来にギリシャからのグッドニュースなどまったくないだろう。シリザ新政権が実行する政策各々は、ポデモスに対する信頼性、さらに変革に対する信頼性これらに対し、本物の魚雷となるだろう。
悪夢だ。チプラスは、ギリシャだけではなく遠く離れたイベリア半島でも、社会変革の紛れもないフレディ・クルーガー(ホラー映画『エルム街の悪夢』シリーズの登場人物:訳者)となるかもしれない。「エルム街の悪夢」には六本の続編が続いたことを思い起こそう。その各々が一層悪くなっている。敗北の螺旋は悪質だ。
二〇一五年という年は、一月二五日におけるチプラスの勝利、およびスペインにおける年末のポデモス勝利という可能性をもって、トロイカと国際金融体制にとって神経が非常にぴりぴりする年となっていた。しかし飼い慣らされたチプラスと勢いを失いつつあるポデモスをもって、金融体制とその従者たちは、もっと心地よくこの年を終えることができる。それは、二〇一六年が緊縮諸政策が強化される年であることを予示している。
一つの結論が押しかけている。すなわち、一つのショックを起こすために、動きを作りゲームプランを変えろと。また国民党―社会労働党二大政党システムがその弱さにもかかわらず、そのお好みの代替品であるシウダダノスをもってその後退を安定化する、ないしはやわらげる、というようなことを確実にやらせるなと。

▼筆者は「ビエント・スル」誌編集部メンバーであると共に、バルセロナ自治大学の社会学教授。(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年一〇月号) 


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