もどる

    かけはし2015.年11月16日号

反貧困全国集会2015


10.17

生きぬくためにつながろう

子ども・高齢者・働く世代を貫く貧困の実態


青年の死亡原因
第1位は自殺
 一〇月一七日、東京・田町の交通ビル六階ホールで、「死ぬのはイヤだ! 生きぬくためにつながろう!」をスローガンに「反貧困全国集会2015」が開催された。三五〇人が参加した。午前中は東京メトロの売店で働く契約社員の女性たちの「雇い止め」阻止の闘いを描いた「メトロレディーブルース3」などが上映された後、反貧困全国ネットワークの活動報告会が「子どもの今を考える」「自分が貧困?なんでやねん」「下流老人のリアル」の三つの分科会に分かれて行われた。
 午後の部は「死ぬのはイヤだ! 生き抜くためにつながろう!」をテーマにしたシンポジウム。反貧困全国ネットワーク世話人代表の宇都宮健児弁護士が「戦争法を成立させた安倍政権が、社会・福祉支出をどんどん削っていく中で、削られないのは軍事費だけだ。青年層の死亡原因で一番多いのは自殺、というこの絶望的現実に立ち向かってつながろう」と呼びかけた。

ブラック雇用と
生保打ち切り
雨宮処凛さんがコーディネーターを務めたシンポの発言者は、SEALDsで活動している小林叶さん(国際基督教大)、福島原発事故で札幌に自主避難した方、キャバクラユニオンの女性、高校生の子どもが給付型奨学金を受給したという理由で生活保護を打ち切られた件で訴訟を行っている弁護士と当該の女性、反貧困ネットワーク北海道のメンバーなど。
SEALDsの小林さんは「安保関連法と貧困は表裏一体の関係にある。安倍首相は『安全保障環境の変化』を理由に戦争法を持ちだしたが、『生活保障』についてはどうなのか。私は四年間で六〇〇万円の奨学金を受けているが、多くの場合、学生たちは大学を出た途端に不安定で低額の雇用しか見いだせず、多額の債務の返済を背負わされることになる」と語った。
「ニート、ひきこもりを経て、今は活動家」と自己紹介したキャバクラユニオンの「えりこ」さんは、仕事を休めば多額の罰金を背負わされ(その罰金を計算に入れたら、「日当五〇円」などという場合もある)、「やめる」と言ったらこれまた罰金。未払いも多く、「野宿」せざるをえない、という雇用実態について語った。
キャバクラユニオンのもう一人の女性は「一七歳でこの業界に入り、七年つとめてユニオンに入ったことで、初めて給与がちゃんと支払われていなかったことが分かった」と語り、「マージャン店もブラックの中のブラック企業だ。バイトも賭けマージャンに入らなければならず、負けたら給料から引かれる。働きに行ってマイナスになって帰ってくる」と訴えた。
弁護士の関根さんは、福島市の生活保護世帯の子どもが給付型奨学金を受給したことが、市から「収入」と認定されて生保を打ち切られ、ネット上でバッシングされたことを報告した。厚労省はこの打ち切り処分を不当として取り消したが、それは「奨学金を収入と認定したことは不法とは言えないものの手続き上問題がある」という理由だった。一方、福島市は弁護士・当該女性の話し合いの申し入れを拒否している、という。
福島県生活と健康を守る会は、二〇一一年に原発被災者への義捐金が「収入」と認定され、生活保護費を差し引かれた(その後、収入認定しないことになったが)例を紹介し、「貧困を作って徴兵へ」という動きが進むことへの闘いを訴えた。
反貧困ネットワーク北海道からは、「貧困の問題とは自分の居場所がなくなるということ。人びとのつながりが密になる社会が必要だ」と強調した。

組合で活動始め
自分を取り戻す
討論の中でSEALDsの小林さんは「生活できる雇用を求めて自衛隊に行き、死んだら『自己責任』ということになりかねない。この国がどういう状況を作り出しているのかを論議すべき」と強調した。福島からの自主避難者は「自主避難者の多くは母子避難だ。また避難区域指定が狭められれば、補償が打ち切られたところからどんどん困窮が増していく。なにが原発事故収束なのか!」と怒りを表明した。
キャバクラユニオンの女性は「組合で活動するようになってウツが治った。これまでキャバ嬢・ウツ・生活保護のサイクルの繰り返しだった。貧乏人が自己を取り戻す作業として組合活動をやっていると楽しい。誰かに相談すれば気持が楽になるという場が必要だ」と語った。
次に山本太郎参院議員(生活の党と山本太郎と仲間たち)が「貧困に苦しむ人の生の声を議会に上げることが重要だと思って活動している。子どもの六人に一人が貧困というこの現実を変えなければ!」と訴えた。
最後に「集会宣言」(別掲)を大きな拍手で確認した。        (K)

資料

反貧困全国集会2015集会宣言

死ぬのはイヤだ! 生き
ぬくためにつながろう!


子どもの貧困が注目されて大分時間がたった。2月、中学生の男の子が仲間に暴力を受け殺された。5人の子どもを抱えたシングルマザーの母親は、朝から深夜まで働いていたという。
子どもだけじゃなく、高齢世代の貧困も深刻だ。5月、川崎の簡易宿泊所で火災が発生し、10人が犠牲となった。居住していた74人のうち、70人が生活保護を利用し、多くは高齢者だった。
働く世代も大変だ。労働者派遣法が改悪され、働く土台はどんどん崩れている。
「生活が苦しい」と答えた世帯は62・4%(国民基礎生活調査)となり、過去最悪を更新した。
東日本大震災・原発事故から4年半が過ぎたが、いまだ約20万人もの人が避難生活を続け、多くの被災者が生活の不安を抱えたままだ。

 すべての世代で貧困が拡大し、一部の富裕層に富が集中し格差が拡大している中で、政府は、社会保障費を年間3000億円から5000億円規模で削減する方針を決め、他方、軍事費は過去最大の5兆円規模まで膨らませ、9月19日、多くの市民の反対を無視して、戦争法を強行採決で成立させた。

 貧困を悪化させ、格差を広げ、この国を戦争へと向かわせる政府を、私たちは認めない。誰もが、平和な社会で、人間らしく生きられることを保障している憲法を勝手に壊す政府を、私たちは認めない。人のいのちを軽んじ、人の尊厳を踏みにじる傲慢な政府を、私たちは認めない。

 貧困で、そして戦争で死ぬのはイヤだ!民主主義の力で希望をつむぎ、生きぬくために、つながろう!

10.30

「安保法制NO! 内田雅敏講演会

東アジアの平和を民衆自身で

地域での持続的運動形成へ

 【東京東部】一〇月三〇日、カメリアプラザで「安保法制NO! 内田雅敏講演会」が江東講演実行委員会の主催で行われた。戦争をさせない江東アクションは七月一二日のJR亀戸駅緊急行動から、八月・九月毎週土曜日にJR亀戸駅での宣伝行動や国会への包囲行動に参加してきた。そして今後も毎月第二土曜日正午から午後一時までJR亀戸駅北口での宣伝活動を継続していくことを決めた。今後どのような運動を作っていくのかを深めるために、「戦争をさせない1000人委員会」事務局長の内田雅敏弁護士の講演会を開催した。
 内田弁護士は「この夏を忘れまい――安保法制を巡る日本市民運動の展開と今後の展望――」と題して、講演を行った。内田さんは今後の具体的運動について提起し、その後、国家間の対立や矛盾を戦争法・軍事力ではなく、民衆同士がつながっていくことによって解決していくべきであり、それは可能であることを歴史的な日中共同宣言・声明などを諳んじて紹介しながら熱弁をふるった。 (M)

内田弁護士の講演から

この夏の経験を忘れず
現実を理想に近づける

集団的自衛権
違憲訴訟を
戦争法が強行採決され成立した九月一九日を忘れないために、毎月一九日を行動日とする。一一月一日から、戦争法の廃止を求める二〇〇〇万人署名を開始し、来年の五月を目途に達成する。本気になって二〇〇〇万人署名をやり抜けば安倍を倒す力を持つ。総がかり行動は沖縄辺野古問題を取り組むことを確認した。そして、来年の参院選へ。
また、集団的自衛権行使容認の内閣決定は違憲であるとする訴訟を起こす。いまいろんなグループが準備している。元裁判官の弁護士たち七〇数人、厚木の爆音訴訟をやっている弁護士たち、行政法の関係弁護士たち、日弁連。訴訟のためには事件性が要求される。一九五二年、自衛隊ができた時、裁判を起こしたが、不利益が起きていないと敗訴した。いま考えられるのは自衛隊員が戦争に参加することを拒否したことに対して処分が出される。それに対して取り消しを要求する裁判になる。憲法違反ではなく、破壊であると主張して裁判に持ち込みたい。
訴訟には二種類がある。@差し止め訴訟。これは自衛隊を派遣してはならないというもの。来年の三月に今回の戦争法が施行されるのでその後になる。訴訟をする人は基地周辺の住民など相当数。なぜなら、一般的に請求額は一六〇万円となると印紙代は一万余円となり、大勢の人が参加とはならない。A国家賠償だ。(イ)平和的生存権の侵害(ロ)憲法制定権の侵害。これは印紙を一円にでも抑えることができるので、できるだけ多くの原告が必要だ。訴状の作成、骨子案を作る。一二月三日に呼びかけ人が記者会見を行う。来年明けに訴訟に持ち込み、第二次、第三次と続けたい。
この裁判は門前払いにさせないことが重要だ。元裁判官ががんばっている。最高裁元長官などが違憲だと主張し始めている。それは憲法制定七〇年を経て、立憲主義が否定される。内閣の必要性によって、法がないがしろにされる危機感だろう。いままでとは質的に違って運動に直結した裁判になる。山口二郎さん、青山リカさんなどが一二月二五日に提訴する。皆さんも原告になり支えてほしい。
戦争法に反対する人々は日本の安全保障をどうするのかとよく聞かれる。二〇〇〇年一二月三〇日、憲法調査会があり、石原慎太郎が「国会で憲法廃止を決議すればよい」と発言した。こんな憲法を破壊するひどい発言はないのだが、その委員会ではだれも批判しなかった。昨年の集団的自衛権容認の閣議決定はこれ以上のことをやってしまった。一九五二年サンフランシスコ平和条約の締結と日米安保条約の締結により、憲法と日米安保体制という両立できないことをやってしまい、憲法の空洞化が始まった。しかし、それでも自国が攻撃されていないのに自衛隊は出動できないという(集団的自衛権行使の否定)、憲法九条があるがゆえに、その一線は超えることはできなかった。
環境が変わったと安倍政権は言う。そして内閣法制局長の更迭を行った。しかし、現在の戦争法の流れはすでに、二〇〇〇年一〇月、アーミテージリポートから始まっている。「日本は東洋の英国たれ」とし、安全保障政策の柔軟化を求めた。二〇〇一年三月に三つの提言をした。@集団的自衛権の容認A武器輸出Bスパイ防止法の制定を要求してきた。

日中共同宣言
という平和資源
中国は南沙諸島への進出、国内の人権弾圧を行っており、これは困ったものだ。中国の軍拡派がやっている。それと対峙する日本は中国との緊張関係が起こると、軍需産業がもうかり、沖縄の基地強化・建設を促進している。経団連が国家戦略として武器輸出を提言している。中国の軍拡派と連動する動きとなっている。
どうしたらよいのか。民衆同士の交流が必要だ。日中の間には四つの重要な基本文章がある。一九七二年、七八年、九八年、二〇〇八年に出された共同宣言だ。「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」とし(七二年、日中共同声明)、第六項と七項では次のように声明している。
日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。
両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。(第六項)
日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。(第七項)
日本政府に、中国政府に、この共同声明を活用してせまるべきだ。平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言(小渕首相・江沢民主席、1998年)で、七二年日中共同声明と村山首相談話を遵守するとうたっている。国家間の取り決めなので、安倍政権は村山首相談話を継承すると言わざるをえなかった。日中共同宣言の精神に基づけば日中関係は改善できる。こうした「平和資源」を生かすべきだ。現実を理想に近づけることが必要だ。
いま、政府・与党が頼みとするところは「忘却」である。私たちが二〇一五年の夏を「忘却」せずに、闘い続けることができるかどうかにすべてがかかっている。運動は負けてはだめで、勝つためにがんばろう。
(講演要旨、文責編集部)


もどる

Back