もどる

    かけはし2015.年11月16日号

アサド政権支援は停戦の妨げでしかない


シリア

ロシアの軍事介入 ジルベール・アシュカルに聞く

戦争終結を可能にするものは
それが何であっても建設的だ

http://internationalviewpoint.org/spip.php?article4259


 以下に紹介するインタビューは、電子版情報誌「レフトイースト」記者のイリア・ブドライツキスが同サイト掲載のためにジルベール・アシュカルに行ったもの。シリアに対するロシアの軍事介入の意図、またそれがもたらす地域への影響、戦争終結が何としても必要であること、などが語られている。(「かけはし」編集部)

米ロ共謀によるアサド政権維持

――シリアにおけるロシアの軍事作戦が始まってから数日経ったが、この作戦の目標や戦略は依然はっきりしていない。ロシア当局者からの説明も不明確だ。彼らは一方では作戦の主な目標を反ISISとしているが、他方では、プーチンが国連で行ったように、それをアサドの正統な政府に対する支援とも打ち出している。あなたは、この作戦の本当の目標は何だと考えているか?

 この介入に対する当初の公式的理由は、西側、特に米国がゴーサインを出せるように考案された。西側諸国がシリアでISISに対し空爆を続けている以上彼らは確かに、ロシアが同じことを行うことに反対する立場にはなかった。その実行以前にプーチンがワシントンに彼の介入を売り込んだのは、そしてワシントンがそれを買ったのは、この口実が下敷きになっている。ロシアの航空機が爆撃を開始する前に、まさにその始まりに際して、ワシントンからの諸々の言明は、ISISとの戦闘に対するロシアの寄与を歓迎していた。これはもちろん、完全な思い込みの類――紛れもないペテン――だった。しかし私にとっては、ワシントンで彼らが、ロシアはISISと闘うことを目的に部隊を配置している、と本当に信じたとするならば、そちらの方が本当に驚きと思える。
彼らは、ロシアの介入に込められた真の目標がバシャール・アル・アサド体制を支柱で支えること、ということをおそらく無視することなどできなかったはずだ。しかし事実が示すこととしてワシントンは、モスクワの介入におけるこの真の目標――アサド政権崩壊の阻止――に対しても同意している。シリアでの反乱の初期局面以来米国政府は常に、アサドは退陣すべきと語り始めていた時ですら、その政府は適切な形でとどまるべき、と強調していた。
米国の過度に単純化思考の批評家たちが信じていることとは逆に、オバマ政権は、シリアにおける「体制変革」の仕事などまったくやっていない。むしろその逆だ。彼らが欲しているものはまさにアサド自身のいないアサド体制だ。これこそ、イラクにおける破局的な米国の破綻から彼らが引き出した「教訓」なのだ。つまり彼らはその回顧の中で、そこでは体制の機構を解体する代わりに、「サダムなきサダム体制」というシナリオを選択すべきだった、と確信している。
これこそが、ワシントンでプーチンの介入がむしろ好ましく見られた理由だ。ロシアの攻撃のほとんどがISISではないシリア反政権派に向けられているという事実に関する、オバマ政権による現在の不平には、大量の偽善がある。彼らは、ISISを十分には攻撃していないとしてロシアを責めている。つまり、ISISに対するロシアの攻撃の比率がもっと高くなっていたとすれば、それは共謀において彼らの気持ちをもっと楽にしただろう、ということだ。
彼らは、アサド政権を強化する攻撃に対しても大して反対はしないだろう。そして実のところワシントンの期待は、プーチンが政権の崩壊を阻止しそれを強化するだけではなく、この紛争に対する何らかの種類の政治的解決到達にも力を貸すだろう、ということにある。しかしさしあたりこれは、他のこと以上に希望的観測にすぎない。

米ロ間の新たな帝国主義間競合

 シリアにおけるロシアの軍事介入に込められた核心的目標は、この政権が昨年夏以後極めて重大な敗北を数々喫してきた時点において、政権を支える支柱を与えることだった。アサド自身七月には、その時まで政権が保持してきた領域のいくつかを確保し続ける政権の能力の欠如を認めた。モスクワの介入は、政権の崩壊阻止を目的とすると共に、昨年夏に失った領域をこの政権が再獲得できるようにすることだ。これこそがロシア介入の基礎的かつ最優先の目標だ。
しかしながら第二の目標もある。そしてそれはシリアよりもさらに先まで広がり、ロシア空軍力の選びぬかれた精鋭をシリアに派遣し、カスピ海から巡航ミサイルを発射したという事実に形をとっている。これは、ロシア帝国主義の「湾岸好機」のように見える。私が言いたいことは、プーチンが米国が一九九一年に行ったことを規模の小さい形で行おうとしている、ということだ。
当時米国は、第一次湾岸戦争でのイラク攻撃で、その先進兵器を陳列したのだった。それは、「われわれがいかに強力かを見よ! われわれの兵器がいかに効率的かを見よ!」と世界に言う方法だった。そしてそれは、決定的な歴史の瞬間に米国のヘゲモニーをあらためて主張することに向けた、議論の大きな柱だった。冷戦は終わろうとしていた。ご存じのように、一九九一年という年はソ連邦の最後の年であったことが判明した。米帝国主義は、グローバルシステムの中でそのヘゲモニー機能をあらためて主張することを必要としていたのだ。
力のこのショーをもってプーチンが今やろうとしていることは、「われわれロシア人もまた先進兵器をもっている、われわれはそれを引き渡すこともできる、そして現にわれわれは、米国よりも信頼に値する同盟者だ」と世界に向け語ることなのだ。プーチンの男っぷりを誇示する豪語は、中東におけるここ何年かにわたるオバマ政権の小心な姿勢とは大いに対照をなしている。
プーチンはこの地域で友人を獲得しつつある。彼は、エジプトの反革命独裁者のシシ、およびイラク政府との関係を発展させた。イラクとエジプトは米国の影響圏にある大きな部分と見なされてきた二つの国家であるが、それでも両者ともロシアの介入を今支持しつつあり、またそのどちらも今やロシアからの兵器購入を進め、モスクワとの軍事的かつ戦略的な関係を発展させつつある。
もちろんこれは、米帝国主義との競合におけるロシア帝国主義にとっての大きな突破だ。ロシアの現在進行中の介入はこの角度からは、帝国主義間競合の一部として理解されなければならない。私は一五年以上前、コソボ戦争を新冷戦の一部として分析した。この特性付けは当時批判された。しかし明らかなこととして、われわれは今や全面的にその中にある。

米国対シリア政策の混迷と破綻

――ロシアの介入も含めて今シリアでわれわれが抱えているものは米国の政策の全面的な破綻である、と多くの人が語っている。別の僅かな人びとは、米国にはこの紛争にロシアを巻き込む隠された計画がある、と信じている。そして米国のエリート内部には明らかに、シリア問題をめぐる本物の分裂がある。あなたは、この情勢における米国の立場はどのようなものと考えているか?

 シリアに関して、米国内のトップレベルには確かに今に続く不一致が存在してきた。シリアの主流的反政府派に対する支援供与問題に関して、オバマとヒラリー・クリントンの間に一つの論争があったということはまったく秘密ではない。それは彼女が国務長官の時期のことだったが、そこには彼女と観点を共にする軍とCIA内部の他の者たちも加わっていた。
この論争が始まった二〇一二年、主流的反政権派であった自由シリア軍(FSA)は反政権派内でまだ優勢な勢力だった。シリア政権に対する武装反対派内部でイスラム「ジハーディスト」勢力が平行して発展し、後により重要なものとなることを可能にしたのは、実際、ワシントンからの支援欠如を原因とする、特に対空防衛手段供与に関する米国の拒否の結果としての、先の主流的反政府派の弱さだ。クリントンや当時のCIA長官、デイヴィッド・ペトレアスのような、主流的反政府派への支援を主唱した者たちは今、ものごとは彼らの正しさを証明した、シリア情勢の破局的な展開は、その多くがオバマの誤った政策の結果だ、と確信している。
オバマは実際、シリアに関する彼の政策の恐ろしく否定的な収支決算にぶつかっている。それは、それについて人が見ている観点が人道的か、戦略的かに関わりなく、どこから見ても全面的な惨状にある。EU諸国はまったくのところ、大衆的な人道的惨害の結果である巨大な難民の波に悩まされている。
ロシアは罠に落ちようとしている、ロシアは自身の第二のアフガニスタンに置かれることになるだろう、とオバマ政権は言うことで自らを慰めようとしている。オバマがロシアの介入に対する先頃の批判で「泥沼」との用語を使用したのは、偶然の一致ではまったくない。それは、ベトナムにおける米国とアフガニスタンにおけるソ連に対して使われた用語なのだ。ロシアは今、シリアで泥沼にはまろうとしている、と言われている。これは再度、大失策の苦しみのやわらげを狙いとする希望的観測だ。

米欧は自滅的希望的観測で同じ


――ドイツやフランスのような米国の大同盟国は今、事実として、ロシアの介入に関し決定的に否定的な立場をとっているようには見えない。ロシアの介入は米国と欧州間に何らかの分裂を引き起こした、そしてロシアに米国から切り離してEUと取引する好機を与える可能性がある、この見方にあなたの考えは?

 そうは考えない。何よりも、フランスと米国の立場に大きな違いはまったくない。それらは実のところまったく似ている。ドイツの立場は少し違っている。ドイツがISISに対する軍事行動に直接は関与していないからだ。フランスは、ISISではない反政権派を標的にしたとしてロシアを批判した。そしてフランスの立場は、アサド問題に関して極めて厳しい。
パリはワシントン同様、むしろもっと断固として、アサドは退陣すべきであり、彼の参加と一体となったシリアでの政治的移行はあり得ない、と語っている。そしてこれは事実としてまったく明らかだ。なぜならば、政治的移行が一つの合意、政権と反政権派の妥協を基礎とすることになるとしても、バシャール・アル・アサドの大統領職下での、何らかの種類の連合政権受け入れを可能にする道はまったくないからだ。
ワシントンとパリの立場はここに基づいている。それは、アサドを正統性をもつ大統領と考える、そしてすべての合意は彼によって承認されるべきと主張するモスクワと対照的だ。これは当面、二つの立場の間にある重要な食い違いだ。
私があなたに話したように、ワシントンとその同盟者たちは今希望的観測に熱中している。彼らは次のように期待している。つまり、プーチンがいったんシリア政権を打ち固めれば、ついには選挙となる移行期の後それによってアサドが権力を引き渡すことを受け入れると思われる妥協に向けて道を開くよう、彼が政権に圧力を行使するだろう、という期待だ。
アンゲラ・メルケルはある時点で、翌日彼女の立場を修正したとはいうものの、国際社会はアサドと取引しなければならない、と語った。そしてわれわれは、欧州と米国のほんのわずかな筋からだが同じことを聞いた。つまり「結局のところアサドはISISよりマシだ。われわれは彼とビジネスを行うことが可能だ。そうであれば、彼との間で何らかの種類の移行について合意しよう」と。
これは実際のところ自滅的だ。それは、ISISではない反政権派をそうした展望への反対で統一することで終わるにすぎない。武装した反政権派には、アサドへの反対の点ですべてが互いにより高い値をつけて張り合っている、「ジハーディスト」のあらゆる色合いを宿したものが含まれている。反政権派の信頼に足る部分のどれであってもアサドの存在継続を含む取引に合意できるような、そうした道などないのだ。アサドの排除は、シリアでの戦争を止めることを目標としたいかなる政治的解決にとっても、不可欠な条件だ。それ以外では戦争は絶対に終わらないだろう。
ワシントンはロシアの行動に最初はゴーサインを出したにもかかわらず、それを非難する偽善的な声明を数多く出した。それに対する主な理由は、彼らがアサド政権救出を支持しているように公然と現れたくはないということであり、こうしてまた地域のスンニを遠ざけたくないということだ。現実に、モスクワとスンニが多数である諸国との間に楔を打ち込むための、ロシア介入の利用がある。サウジはロシアとの話し合いを始めていた。そして、シリアに対するロシアの姿勢変更と引き換えに、原油価格引き上げに関する一定の合意を申し出た、と伝えられた。そして彼らは、プーチンが最終的にアサドの離脱を強制できると今なお期待しているかもしれないとしても、モスクワの介入によって今ひどく失望させられている。
しかしながらさしあたりは、プーチンの軍事的冒険を聖戦と表現したロシア正教会をはっきり反転する形で、ムスリム同胞団やサウジ王国のムスリム聖職者のような源流にある者たちが、ロシアの第二のアフガニスタンに対決する聖戦を呼びかけることとなっている。近年に起きたこれまでの帝国主義戦争との違いを心に留めよう。つまり戦争はこれまで、宗教的であるのはムスリム側においてのみ、として表現されたのだ。長い歴史の中で今はじめてわれわれの元には、「聖なる勇士」の衝突がある! この意味でプーチンは、ジハーディストへのいわば「天の賜」、完璧な敵となっている。

イランとロシアには共通の利害


――おそらくあなたも知っていることだが、この夏、イランの将軍であるクアセム・ソレイマニの秘密訪ロがあった。ロシアの介入に向けた最終決定は、そこでの会談後に行われた。イランはこの決定に大きな役割を果たした。そこで、ロシアの介入におけるイランの利益をあなたはどう考えるか?

 イランは、両国の戦略的同盟国であるアサド政権保持に関し、ロシアと共通の利害を分かちもっている。イランにとってシリアは、イラクとシリアを通じてテヘランからレバノンのヒズボラにいたる軸の中で鍵を握る環だ。シリアは、ヒズボラに向けたイランの支援供給にとって急所だ。それはイランに地中海への戦略的アクセスを与えている。そしてロシアにとってシリアは、ロシアに海・空軍基地を許している、地中海圏では唯一の国だ。われわれが今日、アサド政権の軍、イラン自身とその代理の部隊、そしてロシアの空爆と砲火の支援を組み合わせた対抗攻勢を見ている理由こそそれなのだ。
意図と目的すべてに対してアサド政権は、丸々一定の時期、完全にイランに依存していた。イランは今もシリアでのショーを演じ続けている。そしてもちろんロシアは、兵器の主要な調達先であることによって、ダマスカスに同じく大きな影響力をもっている。現在進行中のロシアの直接介入は、ロシアの役割を決定的に大きく高めることになった。イランを犠牲にしてこれが起きているとして、この高まりを歓迎している者が西側にいくらかいる。またもや希望的観測だ!

アサド政権に正統性は皆無


――ロシアのメディアはシリア情勢を、一方では正統性のある政府と「正常な」秩序のある情勢、他方ではさまざまな勢力が国家を破壊しようと挑み混乱を持ち込んでいる情勢と、偽って描いてきた。しかし、内戦の期間でアサド政権に深い転換が起こった、それは反国家諸勢力と闘っている「正常な」国家であるなどとは言えない、との別の観点もある。そこでは国家の退廃があった。現在のアサド体制はこの産物だ。そうだとすれば、アサド体制の真の本性とは何であり、それは戦争の年月を通じてどのように変化したのだろうか?

 アサド政権に対する「正統な」政権とのプーチンとラブロフ(ロシア外相)の変わらぬ表現から始めさせてほしい。まずそれは、正統性に対する非常に限定された観念に根をもっている。もちろんあなたは、アサドは国際法の観点からは正統な政府を代表している、と言うことができるだろう。しかしそれは確実に、民主的正統性という観点からはそうはならない。それは、国連の基準による「合法的」政権であるかもしれない。しかしそれは、民主的に選出された政権ではまったくなかったがゆえに、決定的に「正統」ではない。
これは、四五年前に起きたクーデターの産物の政権なのだ。それは、秘密警察と軍事独裁という手段によって国を支配している準王朝内部での相続による大統領職伝達を経て、今もまだ権力にある。シリアは、半世紀間公正な選挙も政治的自由もまったくなかった国だ。そしてこの政権は、人口の広範な部分の、特に地方における貧困化、さらに失業率と生計費の急上昇に導いた、新自由主義改革の加速化を手段にこの二〇年間以上住民を疎外してきた。
状況は耐えがたいものとなった。そしてそれこそが、二〇一一年に民衆反乱が起きた理由なのだ。当然考えられることだが、このもっとも残忍な独裁体制は、大衆的デモにうまく対処することなどない。ちなみにそれらのデモは当初、真に自由な選挙を組織するようなあらゆる民主的なやり方で、極めて平和的なものだった。そこに疑問を差し挟む余地はなかった。

アサド体制への信頼は完全崩壊

 さてそこで体制の唯一の対応は残忍な力となった。それを彼らは徐々にエスカレートさせ、日々多くの人々を殺害し、反乱が内戦へと変化するまでに導く情勢を作り上げた。それに加えてよく知られていることだが、政権は二〇一一年の夏から秋にかけ、投獄中であったジハーディストを釈放した。それは政権が、彼らに武装ジハーディストグループ――反乱情勢の中で彼らの釈放がもたらす不可避的な結果――を作り出させたかったからだ。その目的は、政権が始めから広めた嘘、すなわち体制はジハーディストの反乱に直面しているという嘘、に証拠を与えることだった。これは実際にいわば自己実現的予言であったことが明らかとなり、政権が釈放した戦士たちは今や、シリアの中心的ジハーディストグループのいくつかを率いている。
次の事実に自覚的であることが重要だ。つまり、政権と戦闘中の者たちの大きな部分がもつ反動的な性格についてどのようなことを言うことができようとも、第一番に彼らを生み出した者は体制なのだ。もっと一般的に言って体制はその冷酷さによって、ISISにいたるまでのジハーディストの発展を養う憤激をつくり出した。実際ISISは、私が「バーバリズムの衝突」と名付けた形における、体制のバーバリズムに対する一つの残忍な応答だ。
それにはもう一つの側面がある。アサド体制は今、反乱以前にあったものよりも完全にもっと悪くなっている。その体制は今や、一独裁国家というだけではなく、アラビア語での呼称をシャビーアという、殺人的で制限を受けることのないならず者集団が采配をふるう国ともなっている。そしてそれらが今住民を恐怖に陥れているが、それこそが、欧州に逃れるシリア難民の最近の波に占める大きな部分が政権支配地域からやって来た理由だ。それらの人びとは非常に多く、アサド体制が育成してきたそうした犯罪的なならず者集団にしたがってとどまることにもはやがまんできなくなっている人びとだ。
シリアの住民は体制の未来には完全に何の信頼も置いていない。それゆえ、この体制に耐える余裕のあった者たちもすべて、欧州に逃れることを決断した。欧州に逃れている難民の多くは、あなたも多くのTV報道から見ることができるように、人口の最貧困層の人たちではない。難民の中には中産階級に属する人の相当な比率があるのだ。彼らは多くの場合、シリアに所有していたものすべてを売り払った。戻る希望がまったくないからだ! これは、この国の未来にとっては巨大な負担となるだろう。シリアにとどまっている者たちは、他にやりようのない人びとか、戦争利得者か、そのどちらかだ。
情勢は極めて暗い。シリアの未来に何らかの希望をもち続けるには大きな楽観主義が必要となる以上、良い結果を求めて彼らの国を去ることを決断したことで、シリア人を責めることのできる者は誰もいない。そうであるとしてもわれわれはこれまで歴史上、たとえ多くの年月を必要とするかもしれないとしても、その後に回復が続いたもっと悪い劇的な情勢を見てきた。しかしながら、シリアにおける停戦と何らかの復興過程の始まりに向けた第一の条件は、アサドの退場なのだ。彼がそこにいる限り、この恐るべき悲劇を終わらせることはありそうにない。

非ISIS反政権派の限界

――西側のメディアは依然としてシリアの穏健な反政権派について話を続けている。そしてプーチンのそれに対抗する主張は、武装反政権派内の穏健派とジハーディスト間には明確な境界などまったくない、というものだ。ラブロフはつい先頃、次のようにさえ語った。つまり、自由シリア軍と話し合うことは可能だがしかし、問題はその指導者が誰か、またそれが本当に実在しているかどうか、それがはっきりしていないことだ、と。あなたは、ISISではない反政権グループについて一定の評価を示すことができるか?

 これらのグループには全一連の広がりがある。相対的に世俗的かつ非宗派的な自由シリア軍の当初の武装諸グループから、アルカイダのシリア支部であるアルヌスラにいたるジハーディストのすべての色合いまでだ。ジハーディストのすべては、シャリア法の強制という綱領を共有し、それを彼らの支配下にある地域に強要している。しかしながらこれらのグループのどれ一つであっても、アルヌスラを含めて、ISISの信じがたいバーバリズムには近づいていない。ISISは原理主義国家のもっとも醜悪な戯画だ。その戯画は本来であれば、信じがたいほどに虚構の作品と見なされただろう。ISISではないイスラム反政権グループは、ムスリム同胞団からアルカイダまでのイスラム原理主義諸勢力の一つの連続体を代表しているが、そのすべてはISISに反対している。もちろんこのいずれも、シリアの未来に向け楽観主義を力づけるものではない。本当に、体制のバーバリズムが、ISISを含む他の誰よりもはるかに多くの民衆を殺害してきた。しかしほとんどの反政権派諸勢力は、元気づけにはまったくならないオルタナティブを代表している。とはいえ、私が説明したような体制自身によってつくり出されているこの傾向を逆転するための前提は、アサドを取り除くことなのだ。それがなければ、この傾向は逆転されないだろう。
シリアにはクルド勢力もいくつかある。そしてそれは、ただ一つではないとしても、この全体的な戦闘に参加しているもっとも進歩的な武装グループだ。彼らの主要な戦闘は今までISISに対するものだった。他方彼らは、政権および反政権派の残りとの間で幾分中立的立場を採用した。昨年以来、彼らはこれまで、そして今も、空爆や武器供与を通して米国から支援を受けている。彼らは本質的に、クルド居住地域の支配と防衛に取り組んでいる。
クルド地域を越えた戦闘で、また全体としてのシリアの運命を決める点で一つの役割を果たすためには、彼らはアラブ人や他の少数派と同盟する必要がある。これは、いくつかの成功に基づいてワシントンがうるさく催促し続けてきたものだ。この成功は、最初は彼らをFSAと、そして今はアラブ諸部族と協力する気にさせることによっている。そして後者の協力は、米国がアルカイダとの対決でイラクで以前追求し、今ISISに対しそこで復活しつつあるパターンに沿うものだ。

――この国の将来のために進歩的な展望を表現する可能性のある、何らかの種類の連合が前面に登場する可能性があるとあなたは考えるか?

 率直に言えば私は、現存の勢力――そのすべて――に関して少しも楽観的ではない。現在人が期待できる最良なものは戦争の停止だ。この国のこの恐るべき流血と破壊を止めることが優先だ。進歩的なオルタナティブは今なお存在している潜在的可能性から再建されることが今後必要になるだろう。
進歩的なオルタナティブを表現する重要な組織された勢力が今まったくないとはいえ、二〇一一年に反乱を先導した数多くの若者たちから構成される重要な潜在力は今なおある。彼らのうち数千人は今亡命している。他は投獄されている。そして他は依然シリアにいるが、この内戦の中では決定的な役割を果たすことができない。
われわれがまず必要とすることは戦争の終結だ。戦争の終結をもたらすことができるものは何であれ、それはこの観点から建設的となるだろう。しかし、この情勢が何らかの楽観主義に力を与えるためには、現存する潜在力を基礎とした、新たな進歩的なオルタナティブの出現を必要とするだろう。

ロシアの介入は戦争長期化招く


――しかし、この対立を止めることは外国からの何らかの助けや何らかの介入に基づいてのみ起きるかもしれない、と言うことは可能だろうか? あるいはあなたは、ロシアであれ西側であれ、外国の介入は現実にはこの戦争を引き延ばしていると考えるか?

 西側の介入は今まで、もっぱらISISを標的としてきた。米主導連合の攻撃はすべてISIS地域に向けられ、政府支配地域を完全に回避してきた。一方ロシアの攻撃はほんのわずかだけが対ISISであり、その圧倒的多数は、政権と反政権派との間で争われている地域での、ISISではない反政権派に向けられてきた。それゆえこの点で大きな違いがある。ロシアの介入は実際にはシリアの内戦を引き延ばしつつある。
ロシアのあり得る役割に関して西側にあるかもしれない希望的観測が何であれ、一つの事実は残っている。それは、ロシアの介入以前、体制はへとへとになっていた、それは地歩を失いつつあった、そして崩壊の途上にあるように見えた、という事実だ。私がすでに述べたように、実際にはこれこそがプーチンが介入した理由だ。アサド体制が崩壊していたとすれば、それは彼にとって恐るべき敗北となっていたと思われる。
ISISのめざましい拡張は一年以上前に起きた。そしてロシアもアサド政権もそれと真剣に闘うためには何もしなかった。プーチンの主な心配は、その問題に対するアサド同様、体制の生き残りだ。この体制に支柱を与えて支えることによって、プーチンはこの戦争を引き延ばそうとしている。それは犯罪的だ。
もちろん人は結局、西側の希望的観測が真実であるとわかり、プーチンがアサドが引き下がるよう強要する、ということを願うことしかできない。これに関するプーチンの展望がどのようなものであるかを言うことは困難だ。しかし真実であることは、もし戦争が短期に終わらなければ、ロシアは、オバマの言葉を使えば、「泥沼」にはまり込む高いリスクをおかしている、ということだ。それゆえわれわれは、ものごとがどう展開するかを見つめなければならないだろう。シリアの普通の人びとがもっている楽観的な夢はさしあたり、秩序を維持し国家と国を再建するための、国連軍の展開に基づく戦争の終結だ。(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年一〇月号)  




もどる

Back