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    かけはし2015.年11月30日号

共産党議席倍増の意味を問う


宮城県議会選挙の結果について

特筆すべき1人区での無所属候補当選


 【宮城】宮城県議会選挙(一〇月二五日、定数五九)で共産党が八議席を得た。震災前は二議席、四年前は四議席だった。
 被災地の統一自治体選挙は震災の年の秋、半年ほど遅れて分散実施された。今年、二度目の被災地「統一選」が展開され、いま福島で県議選などが闘われている。
 被災地の議論を封殺しようとする中央権力の介入が繰り返されてきた。波乱要因が少なかった宮城で、今回、「異変」が起きた。

二度目の被災地選挙
震災二年後、福島で現職首長が相次いで敗退、「落選ドミノ」の怒りはどこに向かうのかと関心を集めた。翌年、現職知事はけっきょく退場を表明。自民党県連は県政奪還を果たそうと自前の候補を準備していた。党本部は敗北リスクを避け「相乗りによる県政継承」のレールを敷いた。
今年の岩手県知事選挙。現職との対抗選挙は土壇場になってご破算に。安保国会への影響が大きいとの政権判断が優先された。
いずれも被災地での政治争点化を回避しようという安倍政権の思惑による。
一方、四年前の宮城県議会選挙では、被災地で共産党が善戦するも、民主党など野党の退潮が目立った。一三年、参議院選挙区で民主党現職が落選、続く県知事選挙で民主党は不戦敗した。
今夏、統一地方選の第一段階で変化が起き「仙台ショック」と称された。八月、仙台市議選の各選挙区で民主党ないし共産党がトップ当選した。共産党の勢いは明らかだったが、仙台で候補を増やしたわけではなく、また周辺都市部では議席増に至らなかった。民主党の「復調」には疑問符がついた。こうして県議選が注目された。

共産党が議席倍増
共産党は倍増し、その時点で県政第二党に躍り出た。仙台の全五区で当選(前回二議席)、石巻・牡鹿と塩釜で防衛、県北の大崎で初当選した。
自民党は一議席減、四人の現職が落選。単独過半数に達しなかった(選挙後、過半数を確保)。
社民党と民主党は後退した。民主党は公認九人のうち四人が落選、現有から二議席を失った(注一)。民主党はいくつかの選挙区で複数候補を立てチャレンジしたが、及ばなかった。
争点は「創造的復興」への賛否だと主張した県知事は「理解は得られた」とした上で、「県政批判を県民が支持したという受け止め方もできる」と述べた。
安保国会とTPP合意以降、初の県議選として中央政界が注視した。結果は国政、とくに参院選にどのような影響を与えるだろうか。共産党の躍進は選挙協力議論を活性化させるか、むしろ共産党への警戒感をあおる材料として否定派、消極派に逆用されるか。
東京新聞は「自民苦戦が示すもの」と題する社説を掲載、「多様な民意を受け止めようとしない安倍政権に一矢を報いるために、政権をともにするか否かは別にして、野党勢力結集の具体策を真剣に検討すべき時に来ている」と宮城の結果を論じた。

原発、TPP、戦争法
「今回は共産党へ」という有権者の反応が話題になった。志位委員長は講演で「勝手連」的な支援が広がったと指摘した。地域住民の運動と結びついた一人区での無所属候補の勝利も特筆されるべきだ。県北部の三選挙区を紹介する。

【加美(定数一)】
「指定廃棄物最終処分場」を県内一箇所に集約するという国の方針により、「候補地」とされた三市町住民は抗議を続けている。とくに加美町では、町長を先頭に立て住民たちが環境省の立ち入り調査を拒否してきた。住民の声援を得て元町職員が立候補、「無風区」は一変した。自民党現職は自分も処分場反対だと訴えたものの、新人候補が圧勝(注二)。

【遠田(定数一)】
選挙区の一部が三〇キロ圏の原発事故避難地域に入る。無所属候補は県政新人とはいえ、二つの町長を歴任。「脱原発」宣言など住民運動と連帯した行政で知られる。女川原発再稼動反対を鮮明にして当選。

【大崎(定数四)】
大崎市議会の有志議員は政党をこえて安保関連法案に反対するグループを結成、反対運動を展開してきた。
県農協中央会元会長が個人的な立場で共産党新人への支持を表明、TPP合意への異議を象徴するできごとだった。
県北部の元首長は、原発推進への異論を唱えてきた経緯から支持を表明した。
大崎での共産党の初勝利は「勝手連」的支援の広がりを実感させた。

「選挙に行こう!」
投票率は過去最低を更新した(四〇・〇三%)。仙台市は実に三三・六四%まで落ち込んだ。共産党の躍進がなければ、さらに低下していたと思われる。
低下予想のなか「シールズ」のメンバーたちが行った街頭宣伝が報道された。「政治の流れを変えるにはデモと選挙の両方が必要」だとツイッター等でも呼びかけたという。「戦争法」反対運動が一過性ではないことのアピールでもあった。
脚光を浴びた若者行動は、その後も人々の政治意識を感化させ続けている。「野党は共闘」の訴えや「落選運動」の提起など、その発想やスタイルは、すでに政治現場の重要要素となっている。
(一五年一一月一五日/仙台・八木)

(注一)選挙後の会派構成では、民主党系が従来と同じく第二会派に。
(注二)環境省は選挙結果にもかかわらず、連日のごとく候補地に押しかけ、抗議する住民と対峙している。新しい環境大臣の政治的な発信がないまま、環境省の挑発的な行動が続いている。

寄稿

杭偽装データ問題についての感想

小林健太

 三〇年程、都内において建築設計監理業務をしていた経験から、今回の杭打ち工事偽装問題について、感想を述べたい。
 
報道からの情報
 一〇月一四日頃、横浜市都筑区の分譲マンションの四棟の内一棟が、約五センチほど沈下し、全体が傾いたと報道された。この棟は全五二本のうち、八本にデータ偽造があり、六本が支持層に届いていないと報道された。
 また、このマンション三棟の四五本の杭に使用された、既成杭の根固め用の生コンのデータ改ざんも報道された。ただし報道からは、生コンの使用量なのか、生コンに使用される、セメント量の偽造なのかは明確ではない。もちろんどちらであっても建築物の基礎構造であるから、重大な問題である。
 一〇月二五日の報道では、元請け施工会社の三井住友建設が設計段階で支持層より二メートル短い既成杭を発注していたと報道され、設計ミスであることを認めている。もちろんこれは、設計だけではなく、施工上の手抜き工事である。
 その後の報道によれば一一月一一日現在、杭打ち業者である旭化成建材の杭データ改ざんは一都四県で二五棟に上ると報道された。この中には東京都所有の共同住宅等七施設も含まれると報道された。また三鷹市では保育園、母子生活支援施設の工事では四四本の内四本の杭セメント量のデータ改ざんが発覚、江東区の区立小学校のデータ流用も発覚、しかし行政庁はいずれも「安全性に問題がない」と発表した。なぜ「安全性に問題がない」のか理解できないのであるが。三・一一福島原発事故以来、手垢にまみれた「安全性に問題がない」発言である。
 
杭施工偽装問題
から見えるもの
 旭化成建材の杭データ偽装問題は拡大し、その他業者のマンション工事にも疑心暗鬼の疑念が広がっている。しかし今回は、最初に問題の発覚した横浜市のマンションについて検証してみたい。
 このマンションは分譲マンション会社である三井不動産レジデンシャルが発注し、三井住友建設が設計、監理、施工と建設に関するすべてを受注したようである。杭工事はまず「株式会社日立ハイテクノロジーズ」が受注し、孫請けとして旭化成建材が施工した。「日立ハイテクノロジーズ」はブログで調べる限り建設工事とは無関係の電子、科学、医療関係会社であり、なぜこのような企業に杭工事の発注がされたのか不明であり、建設業の資格があるのかさえ分からない企業への発注は、不透明なシステムであることが予測される。
 杭工事はいわゆる「セメントミルク工法」と言われる工法(まずコンクリート製杭を工場で製作し、杭ドリルで開けられた穴に杭を入れ、その前後に生コンクリートを杭周りに流し込み、基礎杭を支持層に打ち込む工法)の一形態であるらしい。杭の長さを決めるのは設計前のボーリング調査(標準貫入試験)であり、この試験により支持層といわれる砂礫層等を五メートル以上確認することが求められている。そしてこの層に一メートル杭を打ち込むことが必要である。私の経験からすると、支持層に杭打機が到達すると、硬い地盤のため、機械が動きにくくなり、支持層に到達したことが確認できるはずである。まして一六メートル前後の短い杭であれば現場担当者の判断は難しいことではない。そしてそれから支持層に一メートル貫入するのであるから経験者であれば現場での確認は容易である。また、この時点を現場管理者は確認しなければならないし、杭長の検尺が行われなくてはならない。
 本来建設工事は施主が、設計監理会社に業務依頼し、この会社が敷地調査、地盤調査を行う。特に横浜は地盤の起伏の激しいところであることは、建築業界では広く認識されている。それだけにボーリング調査は敷地内で、他の場所より数多く行われるはずである。(当該敷地周囲の地質データは横浜市でも閲覧でき、支持層の不均等状況が把握できる)その後施工会社が入札か、特命で決定される。
 しかし昨今の現状は、ほとんどが、設計監理、施工が大手ゼネコンにより一括に行われ「○○建設一級建築設計事務所」が監理も行い独立した監理形態はとられていない。監理会社の現場監理が厳しければ当然工事が遅れることもある。こうした工事の遅れ、設計監理料の節約等のために、分譲マンション会社はゼネコンに一括発注するのであり、
 後は施工会社の「信頼、誠意」に頼るだけであり、安全、確実に施工されているかどうかはわからない。施工会社の設計部はいかに施工費を抑えるかにかかっているし、そのために設計上の安全率はほとんど考慮しない。
 さらに現在の大手ゼネコンは現場管理の「現場監督」さえ工程管理担当者、資金管理担当者以外はほとんどが派遣会社からの派遣社員であり、一つの現場だけの「監督」である。この派遣社員は真面目に現場管理すれば工事の手直しなどのために工事の遅延につなが恐れがあるし、「管理業務」は適当なやり方にならざるを得ない。
 今回の杭施工不正問題の根本は、人間の命の軽視、安全無視の施工費圧縮、工期圧縮という経済優先政策にあり、一番の責任は発注者、元請け企業にあるのだ。
 
資本主義的
契約の崩壊
 本年一一月一四日の東京新聞によれば、旭化成建材のデータ偽装は二六六件に及び、現段階調査の一〇%を超える、ことが判明し、別の杭施工会社、ジャパンパイルからのデータ改ざんが見つかり、杭業界及び建設業界の腐敗が扮出してきた。
 この問題の前には東洋工業の免振構造用の免震ゴムの性能不良問題が騒がれたばかりである。いずれも取り上げられた物件は、マンション、都営住宅、学校、保育園などの施設であり、人々が日々生活し、命の営みを繰り返している場所である。
 建物を支える杭、基礎部分は通常、建物が完成してしまえば目に触れることはない。
 しかし、これらは建築物すべてを支えるものであり、支持層に貫入されない杭などは、巨大地震が来れば、沈下、浮き上がり現象が起き、倒壊することがなくても建物は傾き、屋上に雨水がたまり、微妙な勾配で配管されている汚水管は逆流し、歩行する人間の平衡感覚に支障が起きる。つまり建築物として使用することは出来ない。
 そして分譲マンション等は賃金労働者が二〇年以上の借金をかかえた、唯一の「財産」とも言える物であろう。このように資本主義的契約関係さえ破壊されていく社会に、未来はあるのだろうか!
 本来資本主義社会の契約は、「信用」を基礎として契約、発注、支払、商品引き渡しが行われてきた。しかし企業利益を無制限に最優先するために、この「信用」が破壊されるのであれば、このシステムは機能しないことになる。今回の事件は、労働現場で「信用」の基礎が維持できないほどに過酷な状況が拡大していることを示すものである。
 これは建築業界だけではなく、福島原発事故処理現地でも常態化していることであり、除染処理現場でも常態化していることである。
 こうした人間の生活や、営みが破壊されていく社会は、資本のグローバル化によりますます進行するであろうし、安倍政権の暴力的な社会構造の変更はさらなる社会的腐敗を拡大していくであろう。この乱暴で、暴力的な資本主義社会に未来はない。
 目の前の生活、暮らしにさえ安全性、安定性を望めない社会を我々は拒否しなければならない。
 資本の無制限な収奪を拒否しよう。安倍政権の戦争社会化に鉄鎚を!


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