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    かけはし2015.年11月30日号

移民問題―世界的な秩序崩壊


グローバルな難民危機とEUの危機

テロ、温暖化、レイシズム、原因は多岐

北と南の連帯を強固に組織しよう

ピエール・ルッセ

http://internationalviewpoint.org/spip.php?article4273


 世界のメディアはこの夏以来、欧州に殺到する難民に大きなスペースを割いてきた。しかし現在世界全体では、さまざまな特有の原因の下に、それをはるかに上回る膨大な数の難民が生まれている。以下では難民問題をそのグローバルな視野の中でとらえつつ、危機を構成する歴史的に新しい問題として、そして資本主義のグローバリゼーションが強制する世界的な秩序解体に民衆が払っている高い犠牲の表現として論じている。そこからルッセ同志は、急進左翼に新しい性格の任務が突き付けられているとも主張している。なおこの論考は一一月一三日に起きたパリでのテロ攻撃以前に発表された。しかしその中で、今回のテロ攻撃を口実に今欧州で進みつつある非常事態国家への動きが、欧州支配層がすでに準備しているものとして明示されている。現在進んでいる動きを理解する上でも注目すべき指摘だと思われる。(「かけはし」編集部)

生き延びるための移民の時代


強制的な民衆の追い立てがこれほどの大きさと死を呼ぶような規模――これほどリスクをはらんで危険な、これほどに非人間的な存在の条件という、ぞっとするような苦しみを耐え忍ぶことをこれほど多くの難民に強要する――で起きたことは、第二次世界大戦以後ではかつて起きたことはなかった。これは正真正銘の悲劇であり、資本主義のグローバリゼーションが据え付けた新しい国際秩序の真実をむき出しにしている。その証拠は、移動する人びとの規模と数として今そこにある。
今日注目は中東からの戦争難民に集められている。しかし特にアフリカには多くの他の軍事紛争がある。そのすべてには追い立てられた住民の列が伴われている。
それほど遠くはない過去、メディアの焦点だったものは、アジアで何百万人という姿で脅かされた、気候変動の犠牲者たちだった。アジアと太平洋地域では、二〇一〇年と二〇一一年、四二〇〇万人もの人々が土地を追われた(注一)。この数字が含むものは、嵐、洪水、熱波、干ばつ、また海面上昇によって追われた人びとだ。何人かは故郷に帰ったが、通常は彼らの国内で、しかしまた国境を越える形で、多くは移民になった。
そのようにいわゆる「経済移民」もまた「強制」されたものだ。彼らは、新自由主義によるたたきつぶしの下、また西側の大国により支援された政権の暴力の下で、社会的紐帯が解体されたことから生まれている。それゆえそれらもまた政治的だ。
移民には歴史がある。以前の時期われわれは、高望みをもたない一移民として暮らした。それは、イタリアで内々の奉公人となったフィリピン人教員によって形にされた。今日われわれは、生き延びるための移民の時代に生きている。
欧州人はまだその時点にはいないとしても、スペインやギリシャのような国々で実体のある移民の動きが再度作動していることは、この時代を表す一つの標識だ。若者たちは、彼らの将来が完全に閉ざされているがゆえに彼らの国を離れつつある。これは、この何十年かは経験したことのなかった状況だ。

源は資本主義の新支配様式


国境のフェンスが何百キロメートルに渡って、実際は何千キロメートルに渡って、建設されようとしている。これは欧州だけで起きていることではない。それは、彼らの農地に対するパレスチナ人の権利を無視するものとして、イスラエルにおいても同じものだ。それは、米国―メキシコ国境――そこでは、昏睡国家となるほどの国家解体と、女性殺しを含むまでになった驚くべき暴力の高まりが、住民の脱出に力を貸している――ではメキシコ人に対しても同じものだ。
こうして移民の爆発には多様な原因がある。すなわち、連続的な戦争、気候の危機、社会的紐帯の破壊、国民国家の分解、際限のない暴力の爆発であり、さらにまた、地球の破壊、漁業民の崩壊、小農民の農地の単一作物化、都市貧困層の周辺化、多国籍企業の利益に合わせた追い立て……と続く。
これらすべての特定化された原因には共通の源がある。すなわち、以前には知られていなかった状況をもたらしている、資本主義のグローバリゼーションが課す支配の一様式であり、地政学的カオスの永久的状態、そして過去の敗北が残した遺産としての、グローバル化したブルジョアジーの中核部分がどう猛にやり通そうとしている一方向的階級闘争だ。これは革命なき反革命であり、あらゆるタイプの酷薄さに道を開いている。それは、新旧の帝国主義、亜帝国主義、また中東におけるイランとサウジアラビアのような他の地域大国、こうしたものの間の鋭さを増した競争だ。それは、永久的な不安定性に対する回答としての永久的戦争だ。

EUとしての統合は破綻した

 民衆は世界のこの秩序解体に対し、恐ろしく高い犠牲を払い続けている。その見返りとして、今日「難民危機」がEU構想の破綻を白日の下に引き出しつつある。先頃には、ユーログループ(EUを構成する二八ヵ国中一九カ国)が、ギリシャをその監督下に置くことを欲した。そうしてそれは、EU心臓部にある諸機関、つまりEU委員会とEU理事会を犠牲にして自身の法を強要した。ところが今日、問題が特にシリア人を迎え入れるやり方のことになると、それは各自めいめいのことになっている。二六ヵ国にはシェンゲン協定と呼ばれるものがある。これら諸国間では人びとの自由な移動があると想定されている。しかし今や国境はバタンと音を立てて閉められている。これは、東欧においてだけではなく、フランスとイタリアの間でも起きつつあるのだ。国境は、シェンゲンの「自由移動」空間の中心部ですら閉じられようとしている。
いくつかの国々、特にドイツでは、巨大な市民的連帯の運動が難民を受け入れるために動員されてきた(注二)。他の国々、特にハンガリーでは、外国人嫌悪とレイシズムが勝利を得つつあり、極右が成長中だ。
EUは存在しているが、しかし欧州統合は破綻した。EU建設の反民主的なプロセスは、欧州市民権をつくり出すにはいたらなかった。欧州社会フォーラムあるいは失業と不安定に反対するユーロマーチの枠組み内部で連帯のアイデンティティが草の根から成長する、ということを期待することにも可能性があったかもしれない。しかしこの勢いは失速した。
EU建設のトップダウンプロセスは、二つの構想を基礎としていた。一つは単一市場だが、それは危機の時代においてどれほど無能であるかを示している。もう一つは、米国並びに今では中国を前にして、世界でその役割を果たすことのできる一つの力としての欧州だ。しかし、欧州の帝国主義諸大国には歯がない。フランス軍と英国軍の予算は、緊縮の名の下で縮小されてきた。ドイツは経済的には巨人だが、軍事的にはいまだ小男だ。それ自身の門口でプーチンが乗り出した挑戦に立ち向かうことさえできない時に、国際舞台で際立つことなどどうすればできるだろうか?

永久的非常事態の押しつけ

 「難民危機」の根源に取り組むことは、グローバリゼーションとの格闘を意味する。「EUの危機」の根源に取り組むことは、地中海地域をその手始めとして、東と南の民衆に開かれた欧州を新しい基礎の上に再確立することを意味する。この展望は、それによってわれわれが長期的行動に携わることを可能にし、われわれの指導者たちの人を欺く諸々の言明――人道主義に合わせた彼らの主張を始めとする――によってごまかされないようにするためには、決定的だ。
ドイツにおける市民的決起の運動は、正真正銘の連帯感を今現在示している。しかしドイツのボスたちは、完全に冷笑的に行動しようとしている。つまり彼らにとっては失業率が低すぎるのだ。彼らは、この国が充分に教育を受け熟練した、しかしまた絶望的にもなっている、それゆえどのような種類の労働でも受け入れる準備のできた、そうした労働力を取り入れることになる、と期待をかけようとしている。
欧州諸国の応答はまったく多くの場合、人道主義というよりはもっと多く軍事的だ。それは、「人の密輸業者に立ち向かう戦い」という名目で行動している。しかしそれは、移民のために合法的で安全なルートを開く代わりに、彼らを運ぶ小舟に対する武装作戦を行うことにゴーサインを出している。フランスは、その空軍による介入域をイラクからシリアへと拡大することを正当化するために、難民たちの悲劇を利用しようとしている。数を増すEUメンバー諸国では兵士たちが、「外国の」住民統制のために警察と歩を並べて動員されつつある。
これは、われわれがフランスで極めて馴染みある大きな傾向だ。そのフランスでは、テロリストの脅威に立ち向かうとして軍の部隊がパトロールしているのだ。多くの専門家は、この政策はコストが非常に高いが効果は低い、と確信している。軍がすでに中東やアフリカでの諸作戦がはらむさまざまな脅威でのっぴきならない立場に立たされていることを前提とした場合、それは、力量の過剰な引き延ばしなのだ。この傾向は現実には、戦争情勢(軍の仕事)と平和情勢(警察の仕事)の間の境界をぼやけさせるために考案されている。それは住民を、一種の永久的非常事態に慣れさせるように導いている。今難民危機は、この同じ目的に利用されようとしている。

人道的危機への回答は不可欠

 われわれが難民に対してもっと良い防衛を提供することを義務とするならば、われわれは反軍国主義運動を復活する必要がある。そしてわれわれは、外国人嫌悪とあらゆる形態のレイシズムに反対する戦闘を広げる必要がある。
この任務は、極右の運動が内向き志向の波に乗りつつあるその時――フランスでは、国民戦線が支持を高めてきた――に突き付けられている。加えて、ファシズム国家の諸傾向をまさに欧州の門口に迫って(トルコで)、さらにはEU内部でさえ(ハンガリー)見ることができる。資本主義のグローバリゼーションが抱える破壊的残忍性がファシズムの新しい形態を生み出しつつあるに違いない、と考えることは完全に論理にかなっている。
「難民危機」はこうして、資本主義のグローバリゼーションによって巻き起こされた全体的危機のいわば悲劇的な相だ。しかしそうであるとしてもそれは、その諸特性を考慮に入れることによって対処される必要がある。そしてその諸特性は、われわれからの「現代化」という大きな努力を求めている。
この期間を通じてわれわれは、フランスでの対外・対内移民の流れは一定のままだったということを示す諸々の統計を使って説明しながら、外国人嫌悪に発するデマに継続的に回答しなければならなかった。それは明らかにもはや適性を欠いている――政府が実践に移した「要塞化されたフランス」の抑圧策が難民請求権からあらゆる意味をはぎ取り続けるということがなくならない限りは――。
われわれは今、例外的広がりをもつ人道的危機を前にしようとしている。しかしながら急進左翼の伝統的な「ソフトウェア」は、連帯に関するそのような挑戦には適合していない。急進左翼は基本的に、人道的緊急事は政府だけ(赤十字あるいは赤新月社)あるいはそれに特化した市民団体の仕事、と考えてきたのだ。幸運なことだが重要な例外があり、その一例はフィリピン南部ミンダナオにおける、マイハンズの注目すべき動員だが、そこからわれわれは数多くの教訓を引き出すことができる(注三)。
事実としてわれわれは、人道主義実践と政治的実践の間にある関係を再考する必要がある。もはや遠くなった過去においてだが、いくつかの解放戦線にわれわれは医療支援員を派遣することを習いとしていた。そしてそれらの戦線は、次には自前の効果的で確立された医療サービスをもつことになった。現在まで、追い立てられた住民の圧倒的多数からは、出身地を基礎とし、情報交換のためにインターネットや携帯電話を利用した非公式ネットワークを除けば、あらゆる形態の組織がはぎ取られてきた。
さまざまな人道危機に対する応答は、国際主義者の取り組みにとっては鍵となる領域とならなければならない。難民の圧倒的多数は、欧州内にではなく南の諸国内にいる。そしてそこには、北の諸国がもつインフラも諸々の資源もないのだ。そして北の指導者たちは、現在の状況に対する大きな責任を負っている。加えて、今なお故国にいる膨大な数の「国内難民」がいる。ある人びとは、他の場所に避難場所を見つけることができなかったがゆえに、気候惨害の犠牲者の場合のように、そのままとどまってきた。問題の大きさを有効性をもって伝える公式数字はまったくない。北と南の連帯が組織され、強化されなければならないのは、まさにここにおいてだ。

▼筆者は、第四インターナショナルの指導部メンバーであり、特にアジアとの連帯を担当。フランスNPAメンバーでもある。 

注一)アジア開発銀行報告。
注二)マヌエル・ケルナー、本紙一〇月二六日号六面、ドイツの新しい何か……「難民歓迎」。
注三)サリー・ルッセ、ソシオ・エコロジカル危機と気候の犠牲者:アジアからのいくつかの教訓(ESSF)(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年一一月号)



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