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    かけはし2015.年12月7日号

住民投票の勝利とダブル選挙の敗北から何を学ぶか


大阪ダブル選挙の結果と課題

安倍=橋下による明文改憲、戦争法制具体化を許さない闘いを



 一一月二二日に投票が行われた大阪府知事選・市長選、いわゆるダブル選挙は、維新候補の勝利に終わった。知事選ではほぼダブルスコア、市長選でも予想以上の大差で、反維新陣営には完敗とも言える結果だった。府知事選では当初から現職の維新候補有利が伝えられていたが、住民投票勝利の記憶もまだ新しい中、拮抗あるいは接戦と見られていた市長選でも惨敗したのはなぜか?次の闘いにむけて、選挙結果、とりわけ大阪市長選結果を住民投票と比較して分析してみたい。

維新候補の完勝
だったダブル選挙

 大阪府知事選の投票率は四五.四七%で、選挙結果は以下の通りである。
松井一郎(維新) 二、〇二五、八八七
栗原貴子(無所属)一、〇五一、一七四(自民推薦)
美馬幸則(無所属)   八四、七六二
無効(白票含む)    四四、〇六三
 前回(二〇一一年)の選挙では、投票率五二.八八%、得票数は、
松井一郎(維新) 二、〇〇六、一九五
倉田薫(無所属) 一、二〇一、〇三四(民主・自民が支援)
梅田章二(無所属)  三五七、一五九(共産推薦)
その他の候補計    一〇一、一二二
無効(白票含む)    五三、三四八
だった。
 この結果を見ると、維新の松井候補は前回選挙とほぼ同数の得票を確保したのに比べ、反維新ブロック(自民・民主・共産・社民など)が支援した栗原候補は、前回の倉田・梅田両候補の得票よりも五〇万票少ないことがわかる。つまり、投票率が七%以上下がった分のほとんどは、維新を支持しない層の棄権によることになる。
 また、大阪市長選では、投票率五〇・五一%、得票数は以下の通りである。
吉村洋文(維新) 五九六、〇四五
柳本顕(無所属) 四〇六、五九五(自民推薦)
その他の候補計   五三、八二六
無効(白票含む)  一八、二六七
 前回(二〇一一年)の選挙では、投票率六〇.九二%、得票数は、
橋下徹(維新)  七五〇、八一三
平松邦夫(無所属)五二二、六四一
無効(白票含む)八、八六四
 さらに、五月におこなわれた大阪市解体への賛否を問う住民投票では、
賛成 六九四、八四四
反対 七〇五、五八五
だった。
 したがって、大阪市長選でも、反維新ブロックは二〇一一年市長選での平松候補から十二万票弱、住民投票からは実に三〇万票減らしているのだ。

住民投票と大阪市長選の比較@?大阪維新の会


次に、住民投票と大阪市長選を比較して、維新支持層の動向を考えてみる。
住民投票結果を分析した「かけはし」二三七二・二三七三号大森論文でも指摘したように、大阪市内の有権者のうち、維新の固定的な支持層は三五万から三八万と見ることができる。このコアな支持層は、何があっても維新に投票する。実際、出口調査では維新支持者の九七%が吉村候補に投票した。今回の市長選では、このコアな支持層に二〇万以上の上積みがあったことになる。 前述大森論文では、住民投票で賛成票(維新支持)に上積みされたのは、維新以外の政党支持者から一五万強、「支持政党なし」層から一八万強と出口調査の結果などから推測した。市長選においても、毎日・産経・共同などの出口調査では、各党支持者のうち、自民三〇%、民主二五%、公明二〇%、共産一五%が吉村候補に投票している。総選挙比例での各党得票数から推測すると、これら四党の支持者のうち一五万票以上が吉村候補に投じられているのである。
上記出口調査では、「支持政党なし」層は投票者の二〇%を占めており、計算すると二一・五万人になる。これらの人々から吉村候補は四五・三%、一〇万弱の支持を得ている。しかし、住民投票ではこの層は四〇万近いボリュームを占めていたと推測され、住民投票からの一〇万票近くの減少は、「支持政党なし」層の投票率が減少したことに起因するものと考えられる。
当日投票者における維新支持者の割合について、出口調査では各社でかなりの違いが出た。前述の毎日・産経・共同などによると維新支持は二三%だが、NHKでは四〇%、朝日新聞では四六%に達する。これはNHKと朝日が「おおさか維新の会」「日本維新の党」の支持者を合算しているためである。維新の固定的支持層の数から考えると、こちらの数字の方が信じるに足るように思える。そうだとすると、住民投票時よりも維新の支持層が増えていることになる。住民投票時に「支持政党なし」で賛成票を入れた人々の一部が、維新支持層に転化したのかもしれない。それにしても維新の党内部のゴタゴタや分裂騒ぎが、維新支持層に全く影響を与えていないことに驚かされる。毎日新聞の選挙後の特集記事で、維新幹部が「大阪維新の支持層が固定されてきた」と語っているのは、このあたりの事情を説明している。

住民投票と大阪市長選の比較A?反維新ブロック


住民投票後の分析(前述大森論文)では、出口調査から考えて、維新以外の党派からの反対票を四八八、八〇〇と推定した。したがって、二一万強が「支持政党なし」層からの反対票だった。これは、「わからんかったら、とりあえず反対票を」というキャンペーンの成果だったと言える。しかし、今回の市長選では、反維新ブロックは四〇六、五九五しか取れなかった。三〇万票近く減った勘定になる。
出口調査の結果を総選挙比例での票数と照合して計算すると、維新以外の政党支持者が約四五万強、「支持政党なし」層から十万弱が柳本候補に投票するはずであった。その通りにいけば、少なくとも接戦に持ち込めたことになる。ところが実際には、それよりも一五万票少ない得票数しかなかった。つまり、この一五万人は「棄権」「柳本・吉村以外の候補に投票」「白票」という態度をとったと思われる。柳本・吉村以外の候補と無効票(白票を含む)を合わせると、七二、〇九三票にのぼっている。

維新完勝の背景にあるもの@?反維新ブロックの分断に成功


柳本候補に対しては、出身の自民党が推薦したほか、民主系の「府民のちから」も推薦し、さらに共産、社民、新社会、緑の党などが勝手連的に支持・支援した。住民投票で活動した市民運動グループも反維新の立場で、柳本候補を支援した(公明は「自主投票」)。住民投票に続いて反維新ブロックが形成されたのである。にもかかわらず、ダブル選挙で維新が完勝した、言い換えれば反維新ブロックが惨敗した要因はどこにあるのだろうか。
第一の要因は、維新が反維新ブロックの分断に成功したところにある。維新は自らの支持者を固めることと並行して、反維新ブロック、とりわけ自民党支持者の切り崩しに全力をあげた。その戦略の下、徹底して「自民党と共産党との共闘」を攻撃した。「共産党と共闘する」自民党というキャンペーンを繰り返した。このネガティブキャンペーンの結果、住民投票ほどではなかったが、自民支持者の三〇%が吉村に投票したと考えられる。
そして、自民が維新のキャンペーンに対抗して支持者をつなぎ止めようとして、安倍と候補者が握手する写真をビラやポスターに掲載し演説会でも大きく取り上げるなど、官邸との連携、中央とのパイプを強調すればするほど、自民支持者以外では戸惑う人々も多かったと思われる。私の経験では、選挙戦最後の街頭演説会で自民府連幹部が「安倍総理から柳本・栗原候補への推薦状をいただきました」と叫んだとき、周りでは失笑とともにしらけた雰囲気が広がった。新聞報道によると、住民投票で「反対」票を入れた人たちをできるだけ投票所に行かせないことが維新の戦略だったそうだが、それは十分に功を奏したと言える。
また、公明党支持者の出足が悪かったことも報道されている。朝日新聞によれば、期日前投票の出口調査(城東区)では、公明支持率が住民投票では一一%だったが、市長選では六%にとどまったという。コアな公明支持者は期日前投票を利用する傾向が強いので、同じ自主投票方針の下でも、市長選では相当数が棄権したことも考えられる。

維新完勝の背景にあるものA?自民党候補支持へのためらい

 第二の要因は、反維新ブロックの側の問題として支持者の中に自民党候補支持への強いためらいがあり、それを最後まで払拭できなかったことである。
私の周辺でも、投票日直前までどういう投票行動をとったらいいのか、迷っている人が結構いた。「自民と維新やったら究極の選択やな」との声が聞こえていた。それに対して、このダブル選挙は住民投票で示された「都構想NO」の民意を確定させるための闘いだ、さらにここで維新を敗北させることは安倍の改憲戦略に打撃を与える最良の手段だ、と訴えてきた。共産党も支持者に対して同様に訴えていたと思う。しかし、結果としてこの訴えでは不十分だったことが明らかになった。
自民が安倍との結びつきを訴えたことは、戦争法案に反対した層の反発を招いた。たとえば、共産支持者のうち一二%が「その他」、つまり柳本、吉村以外の二人の候補者、あるいは白票を投じたという出口調査の結果が出ている。この数字は他政党の支持者に比べて著しく高い。共産支持者の相当数が棄権したとも言われている。「戦争法案を推進した自民党には投票できない」というある意味では当然の反応である。ただでさえ、戦争法案を推進した自民党の候補者を支援することへの困惑、躊躇、反発があった上に、安倍と候補者との「蜜月」をアピールされるのでは、共産支持者を含めて戦争法案に反対した人々が白けていったのである。
そもそも今回のダブル選挙は、「労働者の闘いを基礎として、労働者民衆の要求実現のために闘う候補者を持っていない」(関西地方委声明)中での闘いだった。つまり候補者を立てることができないという決定的な弱さを前提としていた。柳本、栗原両候補の主張には共感できる部分があったのも事実だが、われわれにとってやむを得ざる選択という側面を抱えていたのである。

維新完勝の背景にあるものB?維新追撃の闘いの不在


第三の要因として、より直接的、戦術的な部分ではあるが、反維新ブロックに統一した「司令部」がなかったことがあげられる。これが「オール沖縄」で闘って勝利した沖縄知事選との決定的違いであろう。「オール大阪」とは言いながら、よく言えば「勝手連」的に、悪く言えば「バラバラ」に自民候補を支援する形になった。
しかし、敗北のより根本的な要因は、住民投票での勝利以降、維新をさらに追いつめる闘い、キャンペーンをほとんど展開できなかったことにあると言わなければならない。住民投票の勝利によって「これで都構想は終わった」というある種の安堵感もあった。その隙を維新に突かれた。ダブル選挙に向けて、維新が再び「都構想」を持ち出してきたとき、「住民投票で決まったことをもう一度持ち出すなんておかしい」との訴えは、住民投票で効果を発揮した「わからんかったら、とりあえず反対」に代わるキャッチコピーとはならなかった。「わからんかったから反対した」人たちを柳本支持へとつなげることができなかったのである。
しかし、ダブル選挙の中で、新しい闘いの芽が生まれたことも事実だ。SADL(民主主義と生活を守る有志)やSEALDsKANSAIに集う若い仲間たちが積極的な活動を展開し、選挙後も活動を持続させようと決意していることがその一つである。

ダブル選挙の敗北を超える安倍=橋下との闘いを準備しよう

 われわれは、ダブル選挙にあたって、二つの視点から維新候補敗北のために闘うことを訴えた。つまり、橋下=維新は安倍政権の明文改憲、安保法制具体化の強力な援軍であり、ダブル選挙での維新の敗北は安倍政権への直接の打撃となること、ダブル選挙は住民投票の闘いの継続であり、橋下=維新による強権的、独裁的府政・市政に終止符を打ち、住民自治のための民主主義的空間を継続的に拡大していくことが重要であることの二点である。
しかしながら、ダブル選挙の敗北を受けて、安倍=橋下ラインによる明文改憲、戦争法制具体化、新自由主義的な労働者への攻撃に拍車がかかることが確実となった。彼らは来年七月の参院選で、改憲発議に必要な三分の二を自民・大阪維新で確保することも視野に入れている。
予想される安倍=橋下による明文改憲、戦争法制具体化新自由主義的な労働者への攻撃に対して、われわれの闘う陣営を整え、反撃を準備しなければならない。そのために何が必要か、何を訴えていくのか、大衆的な論議と課題の共有化が絶対に必要である。われわれはそのために全力で闘わなければならない。
(大森敏三)


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