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    かけはし2015.年12月7日号

可能性とリスク―急進左翼が負う任務


ポルトガル

社会党政権閣外協力めぐる意見交換

緊縮逆転に向けた可能性を
開く挑戦はどうあるべきか

スタティス・クーヴェラキス/カトリーヌ・サマリー

http://internationalviewpoint.org/spip.php?article4282


 ポルトガルで何が起こることになるのか? この議論は国際的な左翼をつかみつつある。以下でわれわれは、シリザ内左翼プラットホームのそして今ではギリシャの民衆連合の指導的メンバーであるスタティス・クーヴェラキスと第四インターナショナルの指導的メンバーであるフランスのカトリーヌ・サマリーの間で行われた見解の交換を掲載する。(IV編集部)

ギリシャの経験に基づいて
いくつかの危険を懸念する

スタティス・クーヴェラキス


近頃のポルトガルにおける展開にコメントすることには非常なためらいがあるが、私は昨日、史的唯物論評議会で同志マリアナ・モルタグアの議論を十分な注意を払って聞いた。そしてまた、左翼ブロックの歴史的に指導的人物であったフランシスコ・ルカのインタビューを読んだ。
しかしながら、ギリシャの諸経験、それについて欧州の急進左翼が今や広範に理解し始めることになったもろもろの教訓、これらを基礎に私は、ポルトガルの急進左翼(左翼ブロック――BE――と共産党―――PCP―)の同志たちに同志的に警告を発する何らかの責任がある、と感じている。
情勢は彼らにとって単純とはほど遠い、ということを私は理解する。EUの全面的な後押しを受けてカバコ・シルバ(現大統領)とパソス・コエロが計画している右翼少数政権確立というもくろみを打ち倒し、社会党(PSP)に政権樹立の「チャンスを与えよ」、という有権者の巨大な圧力がある。はっきりしていることは、急進左翼に依存し、少なくとも公式にはいくつかの緊縮策の逆転を約束している社会党政権が、その最初からEU並びに国内の支配階級両者の砲火を浴びるだろう、ということだ。これを背景とした時、社会党が無視すれば無効となる何らかの三党協定を基礎とした、社会党政府に対する「閣外」支持という戦術を、おそらく人は理解可能だと思われる。
しかしそれでも危険性は巨大であり、私には期待される成果をはるかに上回るように見える。それは以下のように、三つの筋道でまとめることができる。

1.第一は、PSPのような政党がいくつかの、つつましいとすら言える反緊縮策の実行に向けて、EUと国内ブルジョアジーと対立する用意があるという考えは、私には完全に幻想と見える、ということだ。ポルトガルでは経験のない強さをもつ諸々の社会運動を経験してきた国における、シリザのような急進左翼の政党ですら、最小限のものであれ「譲歩」を得るために必要とされる対決的踏み込みを結局はやり切ることができない、ということが分かった。
極めて単純に考えて、債務およびユーロ圏という拘束衣の問題に正面から取り組むことなしに緊縮の「緩和」ですらどうすれば起こり得るか、それを知ることはまさに不可能であり、PSPがそれを行う(この二つの問題に関しては、BEとPCPですら相対的に慎重だ)意志があるあるいはその準備があると一瞬でも想像することは、まさに常軌を逸している。

2.第二に、ギリシャの経験がさらに示したことは、総力をあげる衝突と屈服の間に中間の道はまったく、本当にまったくないということだ。そしてこれは、何らかの種類の急進的な反資本主義的要求からなるセットに対してではなく、シリザがそれに基づいて今年一月の選挙に勝利した、極めて穏健な綱領に対して当てはまるのだ。ある種恐ろしいほどのメモランダムに署名し、その実行を約束している現シリザ政権ですら、銀行による住宅再差し押さえからの超最小限かつ不十分な保護のような諸課題に関し、EUからは最小限の譲歩もまったく得ることができていない。
EU諸機構は、BEとPCPによって支えられたPSP政権に寛大になるつもりはさらにないだろう。そして彼らは、これ以上ないほどの確実さで、第一次シリザ政権がさらされた脅迫と同等のやり方で行動するだろう。

3.もちろん、閣内に入らずに政府を支えることは、そこに全面的に入ることよりも危険性は小さい。政府が何らかの「停止線」を超えた場合に、支持を撤回することは想定し得ることだ(しかし経験は、こうした「停止線」の確定が単純とはほど遠い、ということを示している)。
いずれにしろ、完全にありそうなことは、降伏の道を掃き清めつつ譲歩の下り坂へとチプラスが入った時に、自党の左派と向かい合って彼が振る舞ったやり方同様、PSPはBEおよびPCPとの協定を利用するだろう、ということだ。それは、「君たちはこの国の左翼政権を打倒する勇気はあるのか」と言うことによって、左派を変わることなく脅迫し続けるというものだ。
そして彼の計算は正しいことが分かった。つまり彼は、もはや「遅すぎた」となる時点まで、すなわち、左翼反対派にとっては政府からの引き上げの犠牲が高いものとなり、彼にとっては完全に処理可能となる時まで、シリザ内左派を罠にかけた。共産主義再建党(イタリアの:訳者)の第一次「中道左翼」プロディ政権(一九九六―一九九八年)に対する「閣外支持」の経験、二年後にその支持を撤回した経験もまた、左翼をめざす「劣位のパートナー」はそのような実践の場合主力の「穏健左翼」よりも失うものがより多い、ということを示した。
私が考えるに、私が極めて近いと感じているBEに関してはもっと特別に、それらの同志たちがギリシャの悲劇から諸々の教訓を引き出し、ユーロに関する立場を相当に変えたという、その明晰さ――上述したマリアナとフランシスコ両者の議論並びにカタリナ・プリンシペの長い一篇の中で強調された一つの点――と今回の動きは矛盾している。
他の国で戦いを行っている同志たちとの不一致を表明することは常に、極めて敏感な問題だ。しかし私が恐れていることは、ここ何年かまさに苦しい思いをして獲得することに成功した、その貴重な政治的資本を荒れ果てさせることに終わる道にポルトガルの急進左翼が入りつつある、ということだ。しかしながら、ギリシャ民衆と私の国の左翼が受けた惨害の程度、そしてこの結果における私自身の責任が、その危険性の取り上げを私に義務づけている。
もちろん、この何カ月か私がシリザについて書いてきた時にそうだったように、私が間違っていたと分かることを希望するが。(二〇一五年一一月八日、ロンドン)

具体的状況に即した判断
を行う手続きが最も重要

カトリーヌ・サマリー

 スタティス・クーヴェラキスは、「危険性は巨大であり、私には期待される成果をはるかに上回るように見える」と言っている。さてこの見解を「まとめる三つの筋道」と彼が呼ぶものは何だろうか?

 第一の観点は? 債務問題が回避されている――社会党はEUへの参加という枠組み内部にとどまりたいと繰り返しているにもかかわらず――ということだ。
これは本当のことだ。そしてそれは今後大きな問題となるだろう。
しかし以下の問題がある。
a)ポルトガルでのGDPに対する債務比率はイタリアよりも低く、ベルギーのそれに近い。そしてそれは、欧州安定メカニズム(EMS)における通貨の従属を意味してはいない。つまり、(ポルトガルには)ギリシャよりももっと余地がある。そして、今回の協定とその実行に向けて推奨されている財政諸手段が何であるかを、もっと詳細に見る必要がある。スタティスは、民衆にとっての利点と術策……の余地を具体的に評価しないままに、「コスト/便益評価」を断定しているように見える。
b)債務に関するEU会議のテーブルにチプラスが提起した問題を戻すよう、そうしてユーログループとの二者関係にはらまれた支配力を緩めるよう、EUとポルトガルの全左翼になぜ提案しないのか。このユーログループこそ、支配的諸政策のための主要な「錠前」であり、EUのための受け入れ可能で首尾一貫した「諸規則」を、それゆえ諸原則の尊重を求めている実体なのだ。
民主的に、かつ多元的基礎の上で討論をわれわれに認めさせよう。つまり、債務が課す挑戦に関する欧州的な政治問題化をわれわれに追求させ、ユーログループからの圧力の正統性に対する民主的な異議申し立てを可能にし、課税と財政的有効性に関する基準と仕組みについて、また国民的債務に関しはびこる「諸議論」と対立する欧州共通の民衆的利害とは何かについて、われわれが光を投じることを認めさせよう。
c)これはまた、政府問題の協定からは独立してポルトガルで始められた――市民社会内の諸グループが始めた――監査手続きによっても、準備される可能性があるだろう。
この同じ問題に関する最後の注意点。シリザ指導部も、その左派も(論争を終わらせないという反対の理由から)、「ギリシャ債務に関する真実委員会」の仕事を支援せず、こうしてこれらの挑戦をめぐるキャンペーンを本気では行わなかった。欧州キャンペーンは、欧州にまたがる戦略的かつ国際主義的利害関係は明確な形では一つもないと考えている人びとに、関心をもたせていない。
これは事実として第二の点に結びついている。

 第二の観点は? 「ギリシャの経験もまた、降伏と総力的対決の間に中間の道はまったくない、ということを示した」とされている。
さてそれは「示された」のか? そしてそれゆえ一般的なのか? つまり人は、ユーロとEUから離脱するための全諸国向け欧州キャンペーンを必要とするのか? EUおよびユーロと対決する、あるいはその枠内での、諸権利を求める闘争に場は一つもないのだろうか?
そしてそれは、ギリシャの事例一つだけで「示され」たことになるのか? 言い換えれば、この問題に関する全論争がある中で、チプラスの政策――あるいは離脱――以外には他の政策はいかなるものもあり得なかったのか?
付け加えれば、ギリシャよりも相対的に良好な状況にある諸国における闘争にとって、もはや余地などないのだろうか? ギリシャの実験は、唯一で最後のものだったのか、あるいは特に、全EU民衆の利益を大義とした、反緊縮の国民的闘争を遂行する最初の試みだったのか?

 第三の観点。ギリシャあるいはポルトガルでの「停止線」の難しさ、そして「あなた方に左翼政権を置き換える勇気はあるだろうか?」という論理、はどうだろうか?
これは本質的な問題だ。しかしこの点でもまた、ギリシャの事例はどのような事態の中で、問題とされたことを確かめ尽くし、あり得る基準や防止手段の不在を「明らかに示した」のだろうか?
わたしはAttac学術評議会報告次号向けに書かれた寄稿で、特にこの議論にコメントしている。そしてそれは私の見解では、はっきりとした革命情勢を別として、あらゆる政治闘争にとって本質的だ。つまり次のような問題のことだ。受け入れ可能な妥協とは何か? それをだれが判定するのか? その基準とは?
すべての裏切りは「より小さな悪」という名目で行われる(本心からであろうがそうでなかろうが)。人は、あらかじめできあがっている処方箋を手段としてこうした困難なジレンマと向き合うことなどできない。そこで唯一可能な姿勢は、提案された妥協がもたらすと思われるものをそうした妥協の背景と力学の中で具体的に吟味すること、すなわちそれらは人びとの具体的な状況を改善するのか、また代わりとなる政策に信頼を与えるのか――あるいはそうでないのか――、を吟味することだ。
これを判定する手続きは、選択それ自身よりも、失敗を将来の支持に変える上でもっと重要だ。これが各段階での決断のためにポルトガルの同志たちが学び取った原理的な教訓となることを期待しよう。
これ自身は、外からの判定――利益がないわけではないとしても――はまさに少なくとも相対化されるべき、ということを意味している。
チプラスが受け入れた第三次メモランダムは、緊縮政策を継続し、緊縮に対する抵抗という大きな希望を壊している。これは、ポルトガルで交渉された七〇項目にわたる合意が切り開いた情勢とは逆の情勢だ。それらの合意は、ポルトガルで作動中の諸政策との実体的断絶に対する約束であり、諸々の新たな可能性を開いている。

 その道には数々の障害が一面にばらまかれ、それは困難な諸々の衝突と矢継ぎ早に提起される諸々の選択に直面するだろう。保証されているものは何もない。しかし各々の戦闘は、それが基本的な人権、社会的権利、政治的な権利の防衛として遂行されるならば(そしてそれこそがあらゆる通貨と財政が従うべき指導原理なのだ)、ユーログループ並びにユーロの機能の正統性を揺るがすことができ、またそうしなければならない。
新たな可能性を広げてくれたことに対しポルトガルの同志たちに感謝する。そこからわれわれはさらに学ばなければならない。(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年一一月号) 

ポルトガル

政権攻防大づめ

社会党政権容認へ大統領最終決断

エスケルダネットより
http://internationalviewpoint.org/spip.php?article4297

 一一月二四日午後ポルトガル大統領は最終的に、政権形成をSP(社会党)書記長に要請した。左翼ブロックスポークスパーソンのカタリナ・マルティンスは、「この決定は議会多数派が現に存在していることを尊重するものであり、達成された合意の安定性を認めている」と述べた。左翼ブロック英語版サイトの以下の記事は、カバコ・シルバ大統領とアントニオ・コスタ(SP書記長)の間で議論された諸条件について説明している。(IV編集部)

 先週のマラソン的な諸会議を経て大統領は最終的に、アントニオ・コスタに見解表明を求め、左翼の協定に関する六項目についてアントニオ・コスタが説明することを条件に、彼を首相に指名することを考えるだろう、と公表した。
 カバコ・シルバ大統領は先週を通じて、雇用主諸団体、銀行家たち、エコノミスト、諸労組、議員をもつ全政党と、合計で三一回の会合をもった。しかし彼は、新首相を指名する時期について、また彼の選択がどのようなものになると思われるかについて、どのような示唆も与えなかった。今日、選挙後五〇日、政府不信任後一二日のこの日、カバコ・シルバはあらためてSP書記長に見解表明を求めた。話し合いは三〇分続いたが、その後でアントニオ・コスタが公的に話すことはなかった。大統領は、左翼諸政党との協定に関する以下の六項目について説明するよう社会党に求める声明を出した。
1)信任動議の可決。
2)国家予算と特に二〇一六年国家予算の可決。
3)全ユーロ圏諸国に適用される、そしてそれをポルトガル国家が約束している財政規律の遵守。すなわち、安定成長協定、財政条約、欧州安定メカニズム、さらに欧州通貨同盟と銀行同盟へのポルトガルの参加、こうしたことから派生している諸規律の遵守。
4)集団的防衛諸組織の範囲内でポルトガルが行っている国際的関与の尊重。
5)この国の発展と社会的結集力に対するその貢献の重要性を仮に認めるとして、常設社会対話評議会の役割。
6)ポルトガル経済への資金供給におけるその軸芯的枠割りが仮りにあるとして、金融システムの安定性。

 社会党は文書化された回答を大統領に提供するだろうが、おそらくそれは今日の午後にはならない。

 議会は暫定政府の下でも、左翼多数派が推し進める法案を討論し、採択を続けてきた。先週通過させたこうした法案の一つは、右翼政権が導入した妊娠中絶法での変更を無効にしている。SP、左翼ブロック、緑の党が提案したもう一つの法は、同性婚カップルが子どもを養子にする権利を認めているが、これはポルトガルでは市民権における歴史的前進だ。
来週には、左翼が提出した数々の法案の討論が続くだろう。議会は一一月二六日、右翼が実行してきた緊縮策、すなわち公共部門労働者の賃金カット、所得税に関する累進区分階層の削減や除去、そして連帯税、これらを変更するための、左翼諸政党が支持するSP法案を可決するだろう。同じ日のこの論争には、こうした同じ緊縮策を維持あるいは緩和するという、右翼提出の対案も含まれる。
この日には、SPと左翼ブロックが提出した法案に基づいて、医療的生殖支援の問題が討論されるだろう。さらに、小学四年生に対し標準化された試験を終わらせることも討論される。この試験もまた、以前の任期中右翼政権が導入したものだ。

▼エスケルダネットは、ポルトガル左翼ブロックのウェブサイト。(「インターナショナルビューポイント」二〇一五年一一月号) 


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