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    かけはし2015.年12月14日号

戦争法と連動した強権国家NO!


盗聴法・刑訴法改悪を阻止しよう

テロを口実にした共謀罪導入許すな


次期国会での
重要対決法案

 グローバル派兵国家建設の一環である戦争法とセットであった刑事訴訟法改悪法案(刑事訴訟法等の一部を改正する法律案)は、八月七日、衆院本会議で成立した(自民、公明、民主、維新、次世代、生活の党が賛成/共産党、社民党が反対)。法案審議は、参議院法務委員会に移ったが、参議院では戦争法案反対運動の高揚などを背景にして与野党の対立が緊迫した局面に入っていたため、民主党はすでに提出していたヘイトスピーチ(憎悪表現)規制法案の審議を優先すべきだと主張。与党は、戦争法案成立に向けて野党との対立を避けるために刑訴法改正案の審議入りを諦め、継続審議の扱いにした。国会内外にわたる戦争法反対運動の高まりは、対テロ治安弾圧強化にむけた刑訴法改悪の成立を第一八九回通常国会では阻止することができた。
安倍政権が二〇一六年一月四日にも召集する国会において、参議院法務委員会では刑訴法改悪法案をめぐる攻防にただちに入ることになる。法案成立派には、共産党、社民党を除いた与野党とともに村越進日本弁護士連合会会長が「取調べの可視化の義務付け等を含む『刑事訴訟法等の一部を改正する法律案』の早期成立を求める会長声明」(五月二二日)と表明しているように日弁連村越派も含まれる。われわれはこうした構造との闘いでもあることも確認しておかなければならない。

全面可視化放棄、
司法取引、盗聴


あらためて刑訴法改悪法案の攻撃性格を点検し、厳しく批判していかなければならない。
第一に、取り調べの全面可視化を投げ棄ててしまったことを厳しく批判しなければならない。取調べの一部可視化は、裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件に限定した(施行時期三年)。また、録音・録画すれば容疑者が十分に供述できないと検察官が判断した場合など可視化の例外も認めた。裁判員裁判の対象は、殺人・強盗致死傷・傷害致死・危険運転致死・現住建造物等放火・身代金目的誘拐などであり全事件のわずか二%程度、検察官独自捜査事件は年間一〇〇件程度でしかない。
つまり、任意の取調べも含めた可視化の排除は、強引な誘導尋問などが検証できず、実質的に権力の冤罪多発体質を温存したのだ。取調官の裁量を認めたことは取調べの自白部分、供述調書を被疑者に読み聞かせ、署名・押印させ、供述内容に間違いないと語っているような状況を録音・録画するという「よいとこ撮り」の定着でしかない。これでは人権侵害に満ちた自白の誘導と強要、「拷問」に近い脅迫場面を記録せず、えん罪防止にはならない。
日弁連村越派は、たとえ取調べの一部可視化であっても、法的根拠をもって実現することは一歩前進だと支持するが、裁判員裁判対象外の事件の冤罪発生の危険性に対してどのように阻止していくというのか。最初から放棄してしまった態度なのだ。取り調べの全面可視化の立場に立ち戻るべきである。
第二は、司法取引の導入(捜査・公判協力型協議・合意制度の導入)だ。捜査機関が容疑者や被告の処分を軽減することを「エサ」にして取調官の誘導により、虚偽自白、第三者を名指しする引き込みの危険の多発化だ。さらに所属組織のスパイになることを取引き条件にした処分軽減も横行することになる。
司法取引の合意には、弁護人の合意を条件にしているが、それだけでは冤罪を阻止する保障はない。多くの冤罪事件で元検事の弁護士(ヤメ検弁護士)が権力と一体となって被疑者に圧力、虚偽自白を誘導してきた事例が多発していることが報告されている。多くのケースではヤメ検弁護士が検察人脈を披露し、被疑者に「事件を認めれば早く出れるよ」と誘導することを常套手段としている。修正案として「協議の記録」を保管するとしているが、それだけで権力と弁護士の裏取引きを阻止することはできない。
第三は、やりたい放題の盗聴法(通信傍受法)の導入だ。これまでは盗聴の対象犯罪が@銃器犯罪A薬物犯罪B集団密航C組織的殺人の四類型だったが、それだけではなく傷害、詐欺、恐喝、窃盗などを含む一般犯罪にまで大幅に拡大することをねらっている。
通信事業者の常時立会制度を撤廃し、「捜査に関与しない警察官」が監視するとした。盗聴実行犯の身内がいったいどれだけ「プライバシー侵害」の摘発をするというのか。さらに傍受対象通信を通信事業者等の施設において暗号化したデータを警察施設に送信し自動記録ができることになっている。盗聴の全データを記録するからプライバシー侵害は最初から排除しているのだ。このように刑訴法改悪法案の反動性は、明白だ。

次のねらいは
共謀罪導入


安倍政権は、この刑訴法改悪の制定のうえで共謀罪の成立をねらっていることは間違いない。一一月一三日のパリ同時多発テロを受けて自民党幹部らは、共謀罪の制定を言い始めた。そのうえで河野太郎国家公安委員長は「(2020年)東京五輪・パラリンピックを安全に開催するのはホスト国の責任であり、慎重に検討していく必要がある」(一一月三〇日)と述べ、共謀罪創設にむけて踏み出すことを表明した。菅義偉官房長官、公明党の山口那津男代表は、過去に三度も廃案に追い込まれた経過を踏まえつつ、表向きは「慎重な対応を」などと言わざるをえなかった。安倍政権・与党として意志一致ができていないことの反映だが、河野発言にみられるように東京五輪・パラリンピックまでには制定するということなのだ。刑訴法改悪制定後、共謀罪制定にむけた攻撃を強行してくることは間違いない。
そもそも共謀罪は、諸大国の談合によって作られた「国連国際組織犯罪防止条約」(一九九九年に成立)に日本政府が二○○○年一二月に署名し、○三年五月、小泉政権が国会で批准を承認したことにより、国内法整備のためとして共謀罪新設を打ち出した。しかし共謀罪法案を〇三年、〇四年、〇五年、〇六年に国会提出したが、いずれも廃案に追い込まれてきた。
法案の名称は、「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」。四年以上の懲役・禁固にあたる犯罪行為を話し合い、「合意」すれば「実行」しなくても二年〜五年以下の懲役・禁固になるという反動法だ。
「産経新聞」(一一月二〇日)によれば法務省は、共謀罪の基本的性格を踏襲しつつ、適用対象団体を「組織的な犯罪集団」に限定し、法案名を「組織犯罪準備罪」「組織犯罪遂行罪」に変更するというのだ。さらに共謀だけでは処罰対象とはせず、犯罪実行に必要な資金や物品の準備などがあって初めて法令を適用することも検討しているという。従来の共謀罪との違いを安易に強調しているが、デッチアゲを得意とする公安政治警察は、不当な家宅捜索によって押収した現金・貯金通帳、日曜大工道具を「組織犯罪準備」のための証拠として構成要件の成立として作り上げてしまうだろう。

労組や市民
団体も対象に


法務省は「組織的な犯罪集団」に限定すると言っているが、その構成は二人以上であり、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀したもの」という規定は引き継ぐだろう。つまり、市民団体、労働組合、サークルなどに対して「組織的な犯罪集団」と規定するだけでいいのだ。すでに法務省は、共謀罪の対象犯罪について刑法犯だけでなく商法、消費税法、道路交通法など六一五種類も挙げていた(二〇〇五年七月)。つまり、改憲の先取りであり、言論の自由、結社の自由、通信の秘密、基本的人権の破壊、サイバー弾圧など日常生活に関わる法律まで処罰対象を広げようとしているのだ。共謀罪は「未遂を罰する」という基本性格を維持し、権力の恣意的判断でやりたい放題の「武器」になってしまう。この攻撃は、安倍政権の改憲攻撃と連動して近代法の「既遂」処罰の原則の現法体系を根本的に破壊することなのだ。
安倍政権は、刑訴法改悪をやりきったうえで、現代版・治安維持法である共謀罪の制定攻撃を加速化してくるだろう。反撃の陣形を準備していこう。(遠山裕樹)

11.27

監視社会はゴメンだ!

盗聴法・刑訴法改悪
に反対する市民の集い

 一一月二七日、盗聴法廃止ネットは、スペースたんぽぽで「監視社会はゴメンだ!盗聴法・刑訴法改悪案を廃案へ!市民の集い」を行い、三五人が参加した。
 中森圭子さんが主催者あいさつを行い、「刑訴法改悪法案は、前国会の参議院法務委員会で継続審議となった。安倍政権は、一月四日に通常国会を召集している。参議院法務委員会の審議日程はどうなるかわからないが、改悪法案の審議に入ったとたんに採決される危険性がある。厳しい状況だが、刑訴法改悪法案を批判し、新たな取り組みを準備していきたい」と呼びかけた。
 川崎英明さん(関西学院大学大学院司法研究科教授 刑訴法)は、「盗聴法の改悪で私たちの人権はどうなるのか」というテーマで講演した。
 川崎さんは、@変貌する盗聴法A第三者チェック(通信事業者の立会)なき秘密処分について提起し、「盗聴対象通信該当性は盗聴を実施して初めて判別可能になる。通信内容は通信当事者の間で無限に変容するから、犯罪関係通信に限定することはできず、全通信盗聴だ。通信の秘密、思想・良心の自由への脅威であり、市民の自由への脅威であることを明らかにしていく必要がある。同時に盗聴の違憲性に対応した現行盗聴法の抑制的側面を抹殺し、警察・検察にとって使い勝手の良い盗聴法へと変質させようとしている」と強調した。
 そのうえで盗聴法改悪によって「市民的自由はどうなるのか?」について、「盗聴法の運用実態(国会報告二〇〇四年〜一二年)の総数が四五六六二件、犯罪関連通信が七一〇七件で残りの八五%が日常生活の通信だった。改悪によって盗聴数は飛躍的に拡大する。すなわち日常通信の補足数の飛躍的拡大であり、その盗聴が明らかにされないのだ。将来的には防犯カメラ、スマホ等のGPS位置探索と結びつけることをねらっている。まさに監視社会だ。残念ながら改悪法の修正の余地はない。付帯決議などしても歯止めにならない。粘り強く盗聴法の違憲性、人権侵害を訴え続け、廃案をめざそう」と批判した。
 刑訴法改悪法案批判と今後の取り組みについて今井恭平さん(盗聴・密告・冤罪NO!実行委員会)、井上和彦さん(共通番号いらないネット)、日本国民救援会、海渡雄一さん(弁護士)から提起された。 (Y)

11.12朝鮮学校を守るための裁判支援集会 大阪

今こそスクラム!今こそトライ!

子どもたちの笑顔と希望のために

 【大阪】朝鮮学校の無償化を求める裁判支援の集会が一一月一二日、大阪市立北区民センターで開かれた。
集会のはじめに、大阪朝鮮学園の生徒・教職員がつくったテンポのいい歌「モア」(朝鮮語の「集まれ」と英語の「もっと」を懸けている)が披露された。
金尚均さん(朝鮮学校襲撃事件裁判を支援する会共同代表、龍谷大学法科大学院教授)が、「民族教育と排外主義」と題して講演をした(別掲)。
 講演に続いて、弁護団から大阪朝鮮学園裁判についての報告があった。

「補助金」裁判について(金星姫弁護士)
橋下徹が大阪府知事であった二〇一〇年三月、四要件(朝鮮総連と一線を画す・北の指導者の肖像画をはずす・日本の検定教科書を使用し、学習指導要領に従う・学校の財務状況を明らかにする)をクリアしなければ大阪府の補助金は支給しないと表明した。しかし、次年度は朝鮮初級中級学校には補助金が支給された。その後のW選に勝利し、維新の橋下は大阪市長に、そして同じ維新の松井が大阪府知事になる。肖像画は撤去されていたが、朝鮮学校の生徒が北の共和国で迎春公演をしたことを理由に、二〇一二年三月大阪府と大阪市は補助金不交付を決めた。二〇一二年九月大阪朝鮮学園は大阪府・市を相手に訴訟に踏み切り、この年の一一月第一回口頭弁論が行われた。
被告の大阪府は例えば、「われわれは民族教育を否定していない。朝鮮学校も学校教育法第一条に規定する一条校(教育課程、教員の免許や人数、敷地の広さや設備等の条件を満たしている学校)に準じた学校になればいいではないか」という。教育の機会均等に基ずいて補助金を出す目的を考えたら、この主張は不当である。補助金は、私立学校の独自の教育に対する補助であるはずだ。無償化除外は、自民党が政権に返り咲き、当時の中井拉致問題担当相が「朝鮮高校は暴力団と同じだ」と発言したことがきっかけだった。判決は来夏頃だと思う。

「無償化」裁判について(鄭文哲弁護士)
被告である国の本音は、北との関係がある朝鮮学校には税金を使いたくない、ということだ。しかし、表向きは、適用するための根拠規定がなくなったということ。無償化法は、一条校の他に、各種学校のうち高等学校の課程に類する課程を有することが認められる各種学校にも適用される。つまり、無償化法を受けてつくられた無償化規則の一条一項二号のイ・(大使館を通して確認できる)民族系外国人学校、ロ・インターナショナルスクール、ハ・高等学校の課程に類する課程を置くと文部科学大臣が認め指定した学校だ。朝鮮高級学校はハに該当するが北の不当な支配を受けているから、ハの項目は該当校がないから不必要とされ削除された。政権交代の直後、下村文科大臣によるものだ。
不当な支配とは何か。外国人学校で本国と無関係な学校はない。本国と関係があればそれは不当な支配になるのか。今年一二月に第一四回口頭弁論が予定されているが、今後の裁判で、証人申請(朝鮮学園理事長、卒業生、元教員、保護者、学者、下村元文科大臣)をしている。来夏あたりが判決ではないかと思う。
国の論理は、朝鮮学校の学生には問題はない、総連と北が悪い、学校は総連・北と手を切れということ。現在、保護者の負担は大変なものだ。金がなければ民族学校に行けないという状態の直前まで来ている。半分あきらめている人もいる。でも、この裁判では、譲歩できない。譲歩すれば、国は次は教育内容や教員人事にまで介入してくるだろう。この裁判は、希望を取り戻す裁判だ。

文科省への
要請行動報告
次いで、全国のオモニ連絡会による文科省要請行動の報告があった。交渉の窓口役の文科省役人は、適用の根拠規定がないのでの一点張りで、「もう二度と文科省には来ないと一度は思ったが、考え直し、粘り強く何度でも来てやるぞと今は思う」と、オモニは語った。
最後に、韓国からきた孫美姫さん(「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の集い」共同代表)が、連帯のアピールをした。この市民の集いは、熱い民族愛を持って在日朝鮮人社会の力となり、日本社会と連帯するため、遅ればせながら(孫さんの言葉)二〇一四年六月につくられた。昨年一二月五日「金曜日行動」をすることを宣言し、先週までで四五回、日本大使館前で続けられているという。
最後に、宇野田尚哉さん(朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪共同代表、大阪大教授)が、微力ながら勝利まで全力を尽くすとまとめのあいさつをした。(T・T)

金尚均さんの講演から


在特会は二〇〇九年から一〇年にかけて、その都度一〇〇人ほどで京都朝鮮初級学校を襲撃し、器物を破損させたり、罵詈雑言を浴びせ、学校の周りをデモ行進した。在特会幹部四人が逮捕された。
刑事・民事のいずれについても確定判決が下りており、初級学校側は、学校の横にある公園の使用について都市公園法違反により罰金一〇万円の略式命令を受け、在特会等は、構成員等が刑事事件として侮辱罪・威力業務妨害罪・器物損壊罪について執行猶予付の判決を受けたほか、朝鮮学校側提訴の民事訴訟においても「公園の不法占拠を糾弾するだけでなく、在日朝鮮人を劣悪な存在であるとして嫌悪・蔑視し」「(在特会の行為が)公益を図る目的であったということはできない」として街宣の禁止と計一二二六万円の賠償命令を受けた。
判決は、「朝鮮学校は教育業務を妨害されたのみならず、民族教育を実施する権利を侵害された」と、認定した。この裁判を提起したことの意義は、厳然とある差別をなかったことにせず、あったことはあったこととして示し、不当であることは不当であると示すという点につきる。
なぜ、在特会は襲撃したのか。在特会は、朝鮮人を人間以下に扱い、権利の享受主体ではなく、攻撃の客体と見ているからだ。彼らは、ゴキブリ朝鮮人という。つまり、朝鮮人はたたきのめす対象なのだ。この考えは、ウリハッキョを排除しようとする論理と同じだ。無償化を朝鮮学校にだけ適用しないのは、朝鮮人だというだけで教育を受ける権利を奪うということだ。同じ論理は、ヘイトスピーチについても当てはまる。その動機が問題なのではなく、その効果が問題だ。(反ナチの運動家であったニーメラー牧師が戦後に語った『彼らが最初共産主義者を攻撃したとき……』を引用し)朝鮮人に対する暴力は、日本人にとっても人ごとではない。戦争法は日本人自身に向けられた攻撃ととらえることができる。朝鮮学校は民族的アイデンティティ回復のための営みだが、朝鮮学校への攻撃を止めることは、日本の民主主義のための闘いでもある。 (発言要旨、文責編集部)

 


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