もどる

    かけはし2016.年1月1日号

放射能汚染廃棄物を押しつけるな


「指定廃棄物最終処分場」問題

環境省と宮城県知事は白紙撤回を!

(宮城全労協ニュース291号より)

 東電福島原発事故で放出された放射能で汚染された廃棄物の処分場を住民の頭越しに押しつけようとの画策が、環境省主導で進められ、各地の住民から頑強な抵抗を受けている。宮城県では本命と目されている加美町で、町を挙げた現地調査阻止行動が続き、ついに今年度中の現地調査断念に追い込んだ。この阻止行動に参加してきた宮城全労協が同ニュース二九一号(一一月二五日付け)にこの間の経緯を掲載した。この問題を考える一つの素材として紹介する。文中の「今年」は、二〇一五年。(「かけはし」編集部)

環境省、今年度も「詳細調査」を断念


宮城県内の里山も降雪の季節を迎えた。環境省は昨年同様、加美町・田代岳での年内調査を断念した。
環境省は一一月一九日夕刻、加美町に対して「本年度の詳細調査を断念する」と正式に通知した。候補地とされた県内三ヶ所での調査を、今年も実行することができなかった。
「指定廃棄物最終処分場」候補地への現地調査に着手すべく、環境省は加美町の田代岳周辺で執拗な動きを繰り返していた。町と住民は毅然として反対意思を表明、環境省はそのつど現地から撤退せざるをえなかった。
押しかけ続けた環境省に対して、「土下座」して訴えた住民や「私たちが勉強した結果だ」と県議会選挙を説明する住民の姿があった。一方、「環境省として努力したという事実をつくる」という環境省(東北地方環境事務所)職員の発言が報じられた。威圧的な姿勢を、住民たちは到底、受け入れることはできない。

二度の選挙で
民意は明白


今年七月下旬に告示された加美町長選挙では、現職町長が無投票で再選された。町長は「何としても候補地の白紙撤回を実現する」と発言し、また行動の先頭に立ってきた。
町長は今年の「新年あいさつ」で、最終処分場など厳しい年だったが「自分たちの町は自分たちで守るという自治意識と一致協力の精神」が高まったと前年を振り返り、次のように記した。「身を挺して環境省の現地調査を阻み、流れを変えた町民の勇気ある行動に敬意を表します」。
無投票再選は広域合併(二〇〇三年)以降、初めてのことだという。町政に対立点がなかったわけではない。それでも無投票となったのは、指定廃棄物最終処分場問題が町民にとって最大の関心事であり、そこで現職の方針と行動が信任されたことを示していた。
続いて一〇月に実施された県議会選挙(「加美」一人区)では、反対運動に支持された元町職員が同じく処分場建設白紙撤回を掲げて立候補、現職(自民)に圧勝した。これもまた、通常では考えられない事態だった。
県知事は投開票日の深夜番組で、落選した現職も従来から処分場建設反対を主張していたので、新人候補が勝ったからといって影響はないと感想を述べていた。知事の本音は不明だが、町民の反対は圧倒的であると追認したに等しい発言だった。

問われる新環境大臣の政治姿勢

 八月下旬、環境省は「詳細調査」に踏み切ろうとしたが、加美町の現場で住民の抗議に直面し、強行することができなかった。九月上旬、宮城県も豪雨に襲われ、三自治体はそれぞれ大きな被害をこうむった。加美町では現場周辺で崖が崩落し、町道が閉鎖された。
一〇月に入って環境省は現地入りを再開、直後に内閣が改造された。大臣交替に際して副大臣が再任されるのは、通例はないことだという。そのこともあって、新環境大臣の動向が注目された。
三候補地の首長はそれぞれ、環境大臣に事態を打開する取り組みを求めるコメントを発表した。知事は東京で副大臣と会談し「現状打開」を要請したと報道された。
当の大臣は新任会見で、経緯の確認からはじめると述べた。いずれにしても新大臣が動くことはなかった。環境省は内閣改造をはさみ、既定方針として調査強行を繰り返したことになる。
改造内閣には被災地で懸念が表明された。原発推進を公言する復興大臣の就任は、驚きと失望をもって受けとめられた。環境大臣の能力を懸念する声があがった。改造内閣は復興離れ、被災地離れを実感させるものだった。

県知事は白紙に戻せ


その環境副大臣が一九日、村井知事に対して年度内調査の断念を正式に伝えた。
知事は環境省の対応を強く批判。新環境大臣が就任以来、宮城県を訪れていないことを問題とする場面もあった。
今後「市町村長会議」が開催される方向だというが、副大臣は「基本的には今の方針を理解いただく努力を続けたい」と話した。しかし、「今の方針」が破綻したから今年も調査が実現できていない。専門家からも候補地は建設に適していないし、そもそも環境省による選定は不適切な基準でなされたという指摘がなされてきた。
知事はやりとりの中で「政府が腹をくくらなければ進まない」と述べた。知事は現行方針の貫徹のために「腹をくくれ」と環境省に迫っているのか。知事に求められているのは、環境省とともにボタンの掛け違いを認め、現行計画を撤回し、白紙に戻すことだ。
知事は沖縄の事態に触れて「政府のがんばり」に言及した。会談後、「沖縄のように強制的にでもやれという意味か」との報道陣の問いに対して、宮城では住民が反対するからやらないというのでは、政府として矛盾しているという意味だと述べた。
知事が求める「政治のリーダーシップ」とは、住民を強制的に排除し、異議を封じて調査を強行せよということなのか。候補地とされた三自治体と住民に、そのような手段で一方的に進めることはないと確約しなければならない。知事は、報じられた発言の真意を明らかにしなければならない。

沖縄に共感
する想像力


この会談の数日前、河北新報は「自治と人権」と題する社説を掲載していた(「自治と人権/沖縄に共感する想像力を」一一月一六日)。
「どうやら政府は、沖縄の民意をことごとく踏み付けにする腹らしい」。社説は現状を戦後沖縄史のなかで振り返り、「現代の『琉球処分』は理不尽の度を増す」と指摘する。
「自治と人権が著しく損なわれている点で、戦後の沖縄は震災後の東北に通じる」「(福島第一原発や仮設住宅など)逆境に生きる私たちだからこそ、沖縄の人々の怒りに共感する想像力を働かせたい」。
そのような「想像力」は被災地の中でも求められているはずだと、社説は主張したかったのではないか。最後に加美町での事態がとりあげられている。
「『水源を守りたい』と訴える住民に向けられた、県内の冷ややかな視線が気に掛かる」「調査受け入れの根拠に『市町村会議の決定』を振りかざすのは、果たしてそれほど説得的だろうか」。
「汚染稲わらの処分を急ぎたい気持ちは分かる」としたうえで、「だが、全体の利益のためなら特定地域が犠牲になるのもやむを得ないというのは、日米安保の影を押し付けられた沖縄の痛みに鈍感でいるのと同じだ」と論じ、「被災地の分断につながる動きには敏感でありたい」と結んでいる
(社説全文は河北新報のウェブサイトで公開されている)。
このような主張が地元紙の社説に掲載されるのも、住民たちのひたむきな訴えと行動が持続しているからこそだろう。
(二〇一五年一一月二三日記)


もどる

Back